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第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編
第464話 ヴァントウ巣穴殲滅作戦事後
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比較的軽傷だった兵士たちが、戦後処理に当たる。
「すまんが一人光魔術師をこちらに寄越してくれ。光源を増やしてほしい。薄暗くて細かいものが拾えん」
光源が増やされ、改めて現場の惨状を目の当たりにする兵士たち。
光が増やされた影響で見えてなかった物が見えるようになり、中には嘔吐する者も……
「うっ……酷いなこれは……身体の原型が無い者が結構いるぞ?」
「これは個人を特定するのは難しいかもしれないな……」
「ネームタグが残ってれば良いんだが……」
「このまま置いておくと獣に持って行かれてしまう。町の方々には悪いがヴァントウの町の広場を一時的な収容場所にさせてもらおう。収容場所を作っておいてくれ」
「了解」
「納体袋を持って来てくれ、とりあえず見えているものから回収していく」
◇
また、別のところでは救護班が忙しく動き回る。
「重傷の方からこちらに来てください!」
瀕死の重傷を負っている者にも回復が施される。
アルトラ考案の【癒しの水球】により、身体が上下に分断されるような即死級の大怪我でも生きてさえいれば回復する可能性が大幅に高まったためだ。
魔法で急激な再生を促した場合、再生時に受けた時のダメージとほぼ同等の痛みをもう一度味わうことから、以前までなら即死級の大怪我は『もう一度痛みを味わう』という観点から回復した瞬間にショック死する可能性が高かったため、そのまま死なせてやるのが温情という風潮だった。
ただし、この【癒しの水球】は水・光・闇の三属性が必要なため、三つ全てを一人で賄える者はほとんどおらず、二人一組、あるいは三人一組で回復に当たる必要がある。
ちなみに、『アルトラ考案』と書いたが、この魔法が出来た経緯はただの偶然の産物にしか過ぎない。たまたまゆっくり回復することを選んだだけである。 (編み出した経緯は第103話を、正式に確立した経緯は第133話を参照)
「マルク殿もこちらへ。脇腹、重傷を負ってますよね?」
「ああ……すまないが回復を頼む」
服をたくし上げて脇腹を見せる。
「これは……木の精霊の方々には骨が無いんですか?」
「無いな。我々には骨が無いから骨折の痛みは分からないが……相当抉られてしまった」
木の精霊であるマルクには骨に当たるものは無いが、身体を構成している木の組織が抉り取られ、風穴が開いた状態になっている。
「ち、血も出ないんですね……いや、よく見れば何か液体が……」
「樹液だな。怪我したところを治そうとするために樹液が分泌される」
「痛みは無いんですか?」
「物凄く痛いよ」
「それにしては落ち着いてますが……」
「訓練の賜物だな。魔力を帯びた攻撃では我々精霊でもダメージを受ける。ヒトと違って出血多量になることが無いから放っておいても死ぬことは無いと思うが再生にはそれ相応の時間がかかる。ずっと鋭い痛みが続いている、すまないが早めの施術をお願いしたい」
「了解しました」
「消化器官とかは大丈夫ですか?」
「まあ影響はしてるだろうな。今は腹が減ってはいない」
「内臓ってあるんですか?」
「ヒトが思い浮かべるような内臓ではないが、食人植物や食虫植物とは違って食べ物を消化するための器官は存在している」
◇
マルクが回復施術を受けた矢先、通信兵から質問を受ける。
「マルク殿、他の場所への援軍はどうしますか?」
「もう援軍に行けるほどの余力は無いな……」
「そうですよね……カゼハナへ報告しなければならないので一応聞いたまでですが……」
「援軍に行ったところで、この満身創痍の軍では足手まといになるだけだろう。ボレアースとカゼハナの行く末は担当しているアルトラ殿とアスタロト殿に任せよう。カゼハナの司令本部へは『ヴァントウの巣穴の殲滅が完了した』との報告も送っておいてくれ」
「了解しました」
「ふぅ……ここまで厳しいジャイアントアント駆除は初めてだ……この分では他の場所も苦戦しているかもしれんな……」
そしてマルクが独り言のように呟く。
「しかし、アレはそのまま残っているのだな……身体の内部は燃えていたのに、外骨格は煤けた程度で済むとは……一体どんな生体組織で出来ているのだ……」
目線の先には先ほどまで戦っていた銀色のアリの立ち往生した姿。
その近くで子供のようにはしゃぐフリアマギアが居た。
「見てくださいよ皆さん! この銀色のアリの外骨格! 中身だけ燃え尽きて外側だけ綺麗に残ってますよ! しかも立ったままだなんて! カッコイイ!」
「は、はぁ……そうですね……」
「今まで殺し合いしてた相手なのに……」
もはや疲れ過ぎて、そんなことどうでも良いと思うエリザレア、ラッセルたちとは対照的にハイテンションで外骨格の周りをうろつくフリアマギア。
「惜しむらくは、左側の顔壊しちゃったことですねぇ……どうにか壊さないで中身だけ燃やせれば良かったんですけど……」
「そこを壊さないときっともっと死人が出てますよ」
「くぅ~~……壊すと美しい姿じゃなくなり、壊さないと勝てなかった、ジレンマですね……」
「害虫である以上仕方なかったのでは?」
「こんなに金属質で美しいのに害虫だなんて……ところで、これって持って行って研究しても良いですかね?」
「まあそんなの興味あるのはあなたくらいでしょうし、好きにしたら良いんじゃないですかね?」
近くに座って項垂れていたエリザレアが雑に応答。
「やったー、雷の国の総隊長にも許可取れましたし、じゃあこれはもう私のものです! 誰にも渡しませんよ!?」
「いや、残念だが樹の国の総隊長として、それは許可できない」
回復施術を受けながらマルクが異を唱える。
「ム! な、何でですか!?」
「珍しいアリの外骨格だからな。オークションにかけて今回の報奨金や戦死者の賞恤金 (※)に充てる。それに恐らく今後の貴重な資料にもなり得る。多分また博物館行きだ」
(※賞恤金:本作二回目の登場。公務員に危険任務で死亡したり傷害を負ったりした時に、弔意やお見舞いの意味で支払われるお金だそうです)
「それならオークションの落札額と同等の金額用意しますよ!」
「そう言うなら君もオークションに参加して堂々と落札したら良い」
「うっ……それもそうか。開催される日取りを絶対教えてくださいよ! 貴重な研究資料なんですから!」
「だがフリアマギア、数億じゃ済まんと思うぞ? 希少性に加えて、造形美もあるし」
「お! マルク殿にもこれの造形美が分かるんですか?」
「少しはな。蒐集家やマニアならもっと価値を見出すだろう」
「数十億くらいなら今まで稼いだ貯金をはたけば何とか……」
「そんなにしてまで欲しいものか……?」
研究のことしか頭に無いフリアマギアには、この謎の素材である外骨格は是が非でも欲しい。
「だって、これが何の薬品で壊れたのか気になるじゃないですか! ああ~~……薬品を三つに分けて一つ一つ別の弾丸にするべきでした……」
「そんなことしたら二発目以降は対策されてたかもしれないだろ……まあ、再びコイツが現れた時のために研究しておいた方が良いのは確かかもしれないが……」
「え? じゃあ……貰って良いんですか!?」
「ダメだと言っただろ……だが、左顔面の壊れたところなら少しだけ持って行っても良い」
「え~……それだけですか~……?」
「文句があるならオークションに出品されたのをきちんと買ったら良いさ。それなら誰も文句を言わん。今回働いてくれた兵士のこともあるから、全部フリアマギアが持って行くのは許可できない」
「分かりましたよ……左側全面持ってくくらいは良いですよね? 左顔面は面積なんてほとんど残ってないですし」
「ああ」
「ですが……問題はどうやって切り取ったら良いのかってことなんですよね……普通の刃物じゃ傷つかないですし……」
「さっきソイツを撃ち抜いた薬品を使ったら良いだろ。すぐに研究結果が出るじゃないか」
「すぐ出る研究結果なんて面白くないですよ。それにもしかしたら薬品以外に外的要因があるかもしれませんし。例えば壊すのに雷の衝撃が必要だったとか」
「まあどうでも良いから、左顔面だけなら好きにしろ」
「じゃあ、とりあえず内側の燃えカスと煤を綺麗にしてしまおうかな」
一部とは言え銀色の外骨格を貰えることになり、ご機嫌なフリアマギアにラッセルが訊ねる。
「そういえば、作戦前に話してもらえなかった手袋型の魔道具を作った用途って何だったのですか?」
「あ~……子供の頃に傷を作った友人がいましてね。私たちは光魔法がそれほど得意な種族というわけではないので回復魔法が使える者がいなかったんですよ。結構深い傷だったので『塗り薬の効果を十倍にしたら良いんじゃないか』と思ってこの魔道具を考案しました。子供ながら浅はかな考えではありましたが……」
「それで、実際に治りが早くなったんですか?」
「まあ……傷の治りは早くなったとは思います。薬を塗って二時間後くらいにはもうほとんど傷が塞がっていたので。しかし同時に毒のような性質まで帯びてしまって、その友人は一日二日腹痛で寝込んでしまいました。薬も過ぎれば毒になるってやつですね。よくよく考えれば無闇に使うと危ないってことで今まで封印しておいたんですが……こんなところで役立つ日が来るとは思いませんでしたね」
「逆に考えると、その日の出来事が無ければ、今回のアリを倒すことはできなかったかもしれませんね。ところで……外骨格に入れてるその液体は何ですか?」
先ほどから外骨格に流し入れている液体が気になって再び質問するラッセル。
「ああ、これは煤を食べてくれるバクテリアを溶いた水ですよ。炭まで行ってしまうと硬すぎて食べてくれませんけど。煤や灰程度なら除去してくれます。燃えカスにこれを付着させるだけで徐々に徐々に綺麗にしてくれるんですよ。仕事柄燃え残ったものに遭遇することも多いので常に少量携帯しているんです」
「へ、へぇ~……そんなのあるんですね……」
「オークションにかけるにしても綺麗にしておくに越したことはないですから」
◇
フリアマギアたちが雑談に興じる中、巣穴内部を調査していた兵士から中の様子がマルクに報告される。
「マルク隊長、巣穴内部にもヒトのものと見られる遺体があるようですが……いかがいたしますか?」
「恐らくヴァントウの町の住民と、我々が到着する前に働きアリによって巣穴に連れ込まれたアーヴェルムの第一陣の兵士たちだろうな。状態は?」
「レッドドラゴン八人もの炎で焼かれていますからね……全ての遺体が原型を留めていません。一番マシと思われる状態でも炭化しているような状態でして……酷いのになると骨までほぼ灰になっているものも……装備していたと見られる鎧も高熱でドロドロに溶けていて、恐らく個人特定は不可能かと」
「そうか……やむを得なかったこととは言え、ご遺体には可哀想なことをしたな……ではアーヴェルムに連絡を取って、適切に埋葬しよう。出来る限り見つけてやってくれ。国の方で回収を望むのであればお返しする」
「了解しました」
「あ、いや、ちょっと待ってくれ! フリアマギア! ちょっと来てもらえるか?」
エリザレア、ラッセルらと雑談していたフリアマギアを呼び寄せる。
「何でしょうか?」
「君が開発した魔力紋というのは遺体を判別することができるのか?」
「できますよ。しかし炭化まで行ってしまった遺体は不可能に近いです。そういう遺体は個人を特定できる魔力が残っていないことがほとんどですし。骨があまり損壊していなければそれを取り出すことで可能だと思いますが……ただ、個人特定をするにはそれに加えて比較のために、それが誰のものであるかか確定している身体の一部が必要です。例えば髪の毛とか爪とか。それに魔力が少しでも残っていなければなりません」
「そうか……では今回の巣穴内部の遺体は特定がほぼ不可能ということだな……君、引き留めてすまなかったな。引き続き遺体の回収を急いでくれ」
「了解しました」
こうしてしばらくの間戦後処理は続けられる。
ジャイアントアント駆除の報は、アーヴェルム国の国家機関へも伝えられ、ヴァントウの町民へも避難命令が解除されたことが伝わる。
町民も徐々に戻って来ることだろう。
「すまんが一人光魔術師をこちらに寄越してくれ。光源を増やしてほしい。薄暗くて細かいものが拾えん」
光源が増やされ、改めて現場の惨状を目の当たりにする兵士たち。
光が増やされた影響で見えてなかった物が見えるようになり、中には嘔吐する者も……
「うっ……酷いなこれは……身体の原型が無い者が結構いるぞ?」
「これは個人を特定するのは難しいかもしれないな……」
「ネームタグが残ってれば良いんだが……」
「このまま置いておくと獣に持って行かれてしまう。町の方々には悪いがヴァントウの町の広場を一時的な収容場所にさせてもらおう。収容場所を作っておいてくれ」
「了解」
「納体袋を持って来てくれ、とりあえず見えているものから回収していく」
◇
また、別のところでは救護班が忙しく動き回る。
「重傷の方からこちらに来てください!」
瀕死の重傷を負っている者にも回復が施される。
アルトラ考案の【癒しの水球】により、身体が上下に分断されるような即死級の大怪我でも生きてさえいれば回復する可能性が大幅に高まったためだ。
魔法で急激な再生を促した場合、再生時に受けた時のダメージとほぼ同等の痛みをもう一度味わうことから、以前までなら即死級の大怪我は『もう一度痛みを味わう』という観点から回復した瞬間にショック死する可能性が高かったため、そのまま死なせてやるのが温情という風潮だった。
ただし、この【癒しの水球】は水・光・闇の三属性が必要なため、三つ全てを一人で賄える者はほとんどおらず、二人一組、あるいは三人一組で回復に当たる必要がある。
ちなみに、『アルトラ考案』と書いたが、この魔法が出来た経緯はただの偶然の産物にしか過ぎない。たまたまゆっくり回復することを選んだだけである。 (編み出した経緯は第103話を、正式に確立した経緯は第133話を参照)
「マルク殿もこちらへ。脇腹、重傷を負ってますよね?」
「ああ……すまないが回復を頼む」
服をたくし上げて脇腹を見せる。
「これは……木の精霊の方々には骨が無いんですか?」
「無いな。我々には骨が無いから骨折の痛みは分からないが……相当抉られてしまった」
木の精霊であるマルクには骨に当たるものは無いが、身体を構成している木の組織が抉り取られ、風穴が開いた状態になっている。
「ち、血も出ないんですね……いや、よく見れば何か液体が……」
「樹液だな。怪我したところを治そうとするために樹液が分泌される」
「痛みは無いんですか?」
「物凄く痛いよ」
「それにしては落ち着いてますが……」
「訓練の賜物だな。魔力を帯びた攻撃では我々精霊でもダメージを受ける。ヒトと違って出血多量になることが無いから放っておいても死ぬことは無いと思うが再生にはそれ相応の時間がかかる。ずっと鋭い痛みが続いている、すまないが早めの施術をお願いしたい」
「了解しました」
「消化器官とかは大丈夫ですか?」
「まあ影響はしてるだろうな。今は腹が減ってはいない」
「内臓ってあるんですか?」
「ヒトが思い浮かべるような内臓ではないが、食人植物や食虫植物とは違って食べ物を消化するための器官は存在している」
◇
マルクが回復施術を受けた矢先、通信兵から質問を受ける。
「マルク殿、他の場所への援軍はどうしますか?」
「もう援軍に行けるほどの余力は無いな……」
「そうですよね……カゼハナへ報告しなければならないので一応聞いたまでですが……」
「援軍に行ったところで、この満身創痍の軍では足手まといになるだけだろう。ボレアースとカゼハナの行く末は担当しているアルトラ殿とアスタロト殿に任せよう。カゼハナの司令本部へは『ヴァントウの巣穴の殲滅が完了した』との報告も送っておいてくれ」
「了解しました」
「ふぅ……ここまで厳しいジャイアントアント駆除は初めてだ……この分では他の場所も苦戦しているかもしれんな……」
そしてマルクが独り言のように呟く。
「しかし、アレはそのまま残っているのだな……身体の内部は燃えていたのに、外骨格は煤けた程度で済むとは……一体どんな生体組織で出来ているのだ……」
目線の先には先ほどまで戦っていた銀色のアリの立ち往生した姿。
その近くで子供のようにはしゃぐフリアマギアが居た。
「見てくださいよ皆さん! この銀色のアリの外骨格! 中身だけ燃え尽きて外側だけ綺麗に残ってますよ! しかも立ったままだなんて! カッコイイ!」
「は、はぁ……そうですね……」
「今まで殺し合いしてた相手なのに……」
もはや疲れ過ぎて、そんなことどうでも良いと思うエリザレア、ラッセルたちとは対照的にハイテンションで外骨格の周りをうろつくフリアマギア。
「惜しむらくは、左側の顔壊しちゃったことですねぇ……どうにか壊さないで中身だけ燃やせれば良かったんですけど……」
「そこを壊さないときっともっと死人が出てますよ」
「くぅ~~……壊すと美しい姿じゃなくなり、壊さないと勝てなかった、ジレンマですね……」
「害虫である以上仕方なかったのでは?」
「こんなに金属質で美しいのに害虫だなんて……ところで、これって持って行って研究しても良いですかね?」
「まあそんなの興味あるのはあなたくらいでしょうし、好きにしたら良いんじゃないですかね?」
近くに座って項垂れていたエリザレアが雑に応答。
「やったー、雷の国の総隊長にも許可取れましたし、じゃあこれはもう私のものです! 誰にも渡しませんよ!?」
「いや、残念だが樹の国の総隊長として、それは許可できない」
回復施術を受けながらマルクが異を唱える。
「ム! な、何でですか!?」
「珍しいアリの外骨格だからな。オークションにかけて今回の報奨金や戦死者の賞恤金 (※)に充てる。それに恐らく今後の貴重な資料にもなり得る。多分また博物館行きだ」
(※賞恤金:本作二回目の登場。公務員に危険任務で死亡したり傷害を負ったりした時に、弔意やお見舞いの意味で支払われるお金だそうです)
「それならオークションの落札額と同等の金額用意しますよ!」
「そう言うなら君もオークションに参加して堂々と落札したら良い」
「うっ……それもそうか。開催される日取りを絶対教えてくださいよ! 貴重な研究資料なんですから!」
「だがフリアマギア、数億じゃ済まんと思うぞ? 希少性に加えて、造形美もあるし」
「お! マルク殿にもこれの造形美が分かるんですか?」
「少しはな。蒐集家やマニアならもっと価値を見出すだろう」
「数十億くらいなら今まで稼いだ貯金をはたけば何とか……」
「そんなにしてまで欲しいものか……?」
研究のことしか頭に無いフリアマギアには、この謎の素材である外骨格は是が非でも欲しい。
「だって、これが何の薬品で壊れたのか気になるじゃないですか! ああ~~……薬品を三つに分けて一つ一つ別の弾丸にするべきでした……」
「そんなことしたら二発目以降は対策されてたかもしれないだろ……まあ、再びコイツが現れた時のために研究しておいた方が良いのは確かかもしれないが……」
「え? じゃあ……貰って良いんですか!?」
「ダメだと言っただろ……だが、左顔面の壊れたところなら少しだけ持って行っても良い」
「え~……それだけですか~……?」
「文句があるならオークションに出品されたのをきちんと買ったら良いさ。それなら誰も文句を言わん。今回働いてくれた兵士のこともあるから、全部フリアマギアが持って行くのは許可できない」
「分かりましたよ……左側全面持ってくくらいは良いですよね? 左顔面は面積なんてほとんど残ってないですし」
「ああ」
「ですが……問題はどうやって切り取ったら良いのかってことなんですよね……普通の刃物じゃ傷つかないですし……」
「さっきソイツを撃ち抜いた薬品を使ったら良いだろ。すぐに研究結果が出るじゃないか」
「すぐ出る研究結果なんて面白くないですよ。それにもしかしたら薬品以外に外的要因があるかもしれませんし。例えば壊すのに雷の衝撃が必要だったとか」
「まあどうでも良いから、左顔面だけなら好きにしろ」
「じゃあ、とりあえず内側の燃えカスと煤を綺麗にしてしまおうかな」
一部とは言え銀色の外骨格を貰えることになり、ご機嫌なフリアマギアにラッセルが訊ねる。
「そういえば、作戦前に話してもらえなかった手袋型の魔道具を作った用途って何だったのですか?」
「あ~……子供の頃に傷を作った友人がいましてね。私たちは光魔法がそれほど得意な種族というわけではないので回復魔法が使える者がいなかったんですよ。結構深い傷だったので『塗り薬の効果を十倍にしたら良いんじゃないか』と思ってこの魔道具を考案しました。子供ながら浅はかな考えではありましたが……」
「それで、実際に治りが早くなったんですか?」
「まあ……傷の治りは早くなったとは思います。薬を塗って二時間後くらいにはもうほとんど傷が塞がっていたので。しかし同時に毒のような性質まで帯びてしまって、その友人は一日二日腹痛で寝込んでしまいました。薬も過ぎれば毒になるってやつですね。よくよく考えれば無闇に使うと危ないってことで今まで封印しておいたんですが……こんなところで役立つ日が来るとは思いませんでしたね」
「逆に考えると、その日の出来事が無ければ、今回のアリを倒すことはできなかったかもしれませんね。ところで……外骨格に入れてるその液体は何ですか?」
先ほどから外骨格に流し入れている液体が気になって再び質問するラッセル。
「ああ、これは煤を食べてくれるバクテリアを溶いた水ですよ。炭まで行ってしまうと硬すぎて食べてくれませんけど。煤や灰程度なら除去してくれます。燃えカスにこれを付着させるだけで徐々に徐々に綺麗にしてくれるんですよ。仕事柄燃え残ったものに遭遇することも多いので常に少量携帯しているんです」
「へ、へぇ~……そんなのあるんですね……」
「オークションにかけるにしても綺麗にしておくに越したことはないですから」
◇
フリアマギアたちが雑談に興じる中、巣穴内部を調査していた兵士から中の様子がマルクに報告される。
「マルク隊長、巣穴内部にもヒトのものと見られる遺体があるようですが……いかがいたしますか?」
「恐らくヴァントウの町の住民と、我々が到着する前に働きアリによって巣穴に連れ込まれたアーヴェルムの第一陣の兵士たちだろうな。状態は?」
「レッドドラゴン八人もの炎で焼かれていますからね……全ての遺体が原型を留めていません。一番マシと思われる状態でも炭化しているような状態でして……酷いのになると骨までほぼ灰になっているものも……装備していたと見られる鎧も高熱でドロドロに溶けていて、恐らく個人特定は不可能かと」
「そうか……やむを得なかったこととは言え、ご遺体には可哀想なことをしたな……ではアーヴェルムに連絡を取って、適切に埋葬しよう。出来る限り見つけてやってくれ。国の方で回収を望むのであればお返しする」
「了解しました」
「あ、いや、ちょっと待ってくれ! フリアマギア! ちょっと来てもらえるか?」
エリザレア、ラッセルらと雑談していたフリアマギアを呼び寄せる。
「何でしょうか?」
「君が開発した魔力紋というのは遺体を判別することができるのか?」
「できますよ。しかし炭化まで行ってしまった遺体は不可能に近いです。そういう遺体は個人を特定できる魔力が残っていないことがほとんどですし。骨があまり損壊していなければそれを取り出すことで可能だと思いますが……ただ、個人特定をするにはそれに加えて比較のために、それが誰のものであるかか確定している身体の一部が必要です。例えば髪の毛とか爪とか。それに魔力が少しでも残っていなければなりません」
「そうか……では今回の巣穴内部の遺体は特定がほぼ不可能ということだな……君、引き留めてすまなかったな。引き続き遺体の回収を急いでくれ」
「了解しました」
こうしてしばらくの間戦後処理は続けられる。
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友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、
「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」
「「「違う、そうじゃない!!」」」
これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。
※他サイトにも投稿中
※旧タイトル
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
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