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第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編
第466話 世界中に出現したジャイアントアント
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風の国のボレアースに出現したジャイアントアントたちに呼応するように、世界各地でジャイアントアントの出現が相次ぐ。
■風の国隣国、樹の国・第一首都ユグドグラン王城、魔王代理トライアのところ――
「トライア様! 風の国に派兵されたマルクからの事前連絡の通り、国内にジャイアントアントが発生しました!」
「そうですか。それで数はどれほどですか?」
「それほどの数ではないと見込まれています。……が、地元住民が被害に遭っていますので早々に対処しなければなりません」
「すぐに守護志士を送って、駆除に当たらせてください」
「しかし、森の中ゆえに、既に分散してしまったアリもいるようで……」
「木の下位精霊と樹人たちに探させましょう」
その時、魔王お付きの空間魔術師・ジョアンニャがトライアの下を訪れた。
「国を揺るがしかねない緊急事態と判断され、守護志士をすぐに現場に送るようにとの王のお達しです」
「マモン様の容体は良いのですか?」
病で碌に身体が動かない樹の国魔王を心配するトライア。
「依然として体調に変化はありません。悪いながらも安定していると。今日は病院に滞在すると仰ったので、私が守護志士のみなさんを現場まで連れて行きます!」
「そうですか、ではお願いしますね」
◇
■樹の国とは逆側にある風の国の隣国、雷の国・首都トールズ王城――
「アスモデウス様! 風の国に派兵されているラッセルらの連絡通り、風の国との国境の町・フゥライ付近でジャイアントアントが発生しました!」
「……数は……?」
「現時点では少ないものと見られます!」
「……そう……じゃあ、近隣住民を避難させてアリの侵攻を食い止めておいて。雷の国はジャイアントアントにとってあまり好ましくない環境だから、多分そんなに侵入してくることはないと思う……私が行って一掃する……アルフを呼んで……」
「ハッ!」
雷の国の空間魔術師・アルフを呼び寄せる。 (アルフについては第117話参照)
「……アルフ、国境の町フゥライへ行くから、空間転移をお願い……」
「了解しました」
◆
■風の国と離れた国、樹の国と海を隔てた土の国の海岸近くの漁村ジェムコースト――
少し時は遡り、風の国からアルトラにジャイアントアントの件が伝えられる一日前、そこには土の国の兵士たちの大軍が集まって来ていた。
「なぁ……さっきから国の兵士がどんどん増えているが、何でこんな物々しいんだ? 海岸の方を見張っているようだが……しかもこんな大軍で」
「さあなぁ……まさか戦争でも始まるのか?」
「戦争ぉ? じゃあ俺たちはどうしたら良いんだよ」
兵士がどんどん集まてくる村の様子を見て、不安を口にする村民たち。
次の瞬間、漁村の住民に対し一人の兵士が拡声魔法を用いて大声を上げる。
「ジェムコーストの皆様方! 我々は土の国正規軍です! 突然のことですがここは二日後戦場になります! 本日中に避難場所へお連れ致しますので、すぐに移動できるよう準備をしてください!」
突然の“戦場”宣言に驚く村民たち。
「せ、戦場!? ど、どういうことですか!?」
「“上”から二日後『ナニカ巨大生物が海岸より上陸する』とのお達しがあり、ここを防衛せよとの命令が下りました。巨大生物については我々にも詳しくは分かりませんが、すぐにでも避難準備を」
土の国では“上”から兵士たちにお達しが来ることがそれなりに存在する。
この“お達し”を元に兵士たちが行動を起こすこともままある。
「で、でもそんな簡単に避難なんて……」
「あなた方一般の亜人がここに残れば命を落とす可能性が濃厚ですが、それでも残りますか? それがご意志であれば尊重致しますが……その場合はご自身で身を守ってもらう他ありません」
「わ、分かりました。早々に準備します……」
ジェムコーストの村民たちは、何が何やら分からない状態で広場に集められ、土の国の空間魔術師の転移魔法で避難した。
◇
そして二日後の現在。漁村ジェムコースト――
海岸を見張っていた兵士たちが海から飛んでくるナニカに気付いた。
「おい……海の向こうから何か飛んでくるぞ?」
「巨大生物ってのはアレのことか……」
多数の羽アリが海を渡って土の国に上陸。
「こ、これってまさか、ジャイアントアントなのか……?」
「待て! 羽があるぞ!? 羽があるジャイアントアントなんて見たことがない」
この時点で風の国に援軍を送っていなかった土の国は、雷・樹の国の二ヵ国とは少し情報が遅れていたため、羽アリと潜水アリがいることがまだ知られていなかった。
海岸に居た兵士たちの上空を羽アリの団体が飛んで行く。
「アイツらどこまで飛ぶつもりなんだ?」
「おい! 空にだけ気を取られるな! もう海からも上陸している! 後ろだ!!」
「なに!?」
その一言により、咄嗟に盾を構えて振り返る。
羽アリの一撃により薙ぎ払われる兵士。
「ぐあっ!!」
盾で防御し、瞬時の判断で半歩退いたことにより致命傷は免れたものの、大きく弾き飛ばされてしまった。
「“上”から知らされた通り謎の巨大生物だな。羽があるジャイアントアントに見えるが……よし、今から掃討作戦を開始するぞ!」
◇
■同じく風の国から離れた国、水の国・首都リトリナの海岸――
「おい……何かでかいのが網に引っ掛かったぞ?」
「ゲッ何だこりゃ! 海の中に巨大な虫か? 海に虫なんかいるの初めて見たぞ?」
網に引っ掛かった潜水アリを見て驚く漁師たち。
直後、潜水アリが網を引き裂いて漁師の一人を殴り飛ばした!
「ガッ! グァァッッ!!」
殴り飛ばされた漁師は、海岸の岩肌まで吹っ飛ばされ、『ドオォォン!』という派手な音を出して激突、岩肌へと身体がめり込む。
鉤爪状の前脚で殴られた腹は、上半身と下半身が辛うじて繋がっていると形容されるほどの巨大な裂傷だった。
「ゴフッッ!!」
そのまま口から大量に吐血し、ガクリと項垂れて事切れる。
「あ、あ……うわぁぁぁ!!」
「逃げろ! すぐ逃げろぉぉ!!」
「騎士団! 騎士団に連絡しろ!!」
その後もゾロゾロと海岸を上って来る潜水アリの集団。
◇
この惨事はすぐに女王レヴィアタンの耳にも入る。
「レヴィアタン様! トリトナの港へと繋がる海岸にて正体不明のアリのような巨大生物が侵攻してきたようです!」
「巨大なアリ? まさか風の国で発生しているって言うジャイアントアント?」
「ジャイアントアントが海の中を潜って来るという話は聞いたことがありませんが……」
土の国と同じく、風の国に援軍を送っていなかったため少し情報が遅れている。
「巨大なアリなのにジャイアントアントではない? でもアリの姿をしてて海に潜る? ますます謎だね。それで現在の状況は?」
「トリトナ騎士団が出て討伐に当たっているので、一般人の被害は少ないようです」
「そう、じゃあ今回は私が出るまでもないか」
そう思った矢先、騎士の一人が慌てて駆け込んできた。
「ご報告致します!! トリトナ港より三十キロ北にあるリップル海岸でもアリのような巨大生物が多数上陸したとの報告が!!」
「一体何ヶ所で上陸するの? そちらに現れた数は?」
「現在は四十から五十ほどの数が確認されています! 既に近隣の町にも迫っており、急ぎ騎士団の要請をと」
「ちょっと多いね……騎士団員は西側の港に出張ってるし。じゃあそっちは私が行くよ。サリー」
水の国・筆頭空間魔術師であるサリーを呼び寄せる。 (サリーについては第303話参照)
「ハッ! ここに!」
「私に帯同しなさい」
「はい」
「じゃあリップル海岸までよろしく」
◇
■またところ変わって、火の国・属国フラメラ国内東にある港町――
港町は海から上陸した潜水アリに破壊され、町民たちは叩き出されていた。
その惨事の最中、港町に到着したのは、反政府組織『宵の明星』のメンバーだった。 (宵の明星については第406話で少し触れています)
「こ、これは一体……どこから湧いて来たんだ?」
「港町に潜伏している反政府組織メンバーによると海から上陸してきたようだ。緊急事態を知らせる報告だったが、既にこんなことになっているとは……」
破壊されている港町を見て驚愕するレジスタンスメンバーたち。
「全く、牢屋から出されて早々、こんなところに行けと言われるとはな……」
「人使いが荒い!」
「民を助けて味方に付けるのが我々末端の役目ですから仕方ないのですよ」
そう言ってメンバーを諭すのは、アルトラ一行が砂漠で遭遇した砂賊の砂の精霊にソックリな男だった。 (第400話から第402話参照)
「だって、サンドニオさんは私たちを送り出すだけで自分ではあまり動かないじゃないですか~」
「あのヒトはあのヒトにしかできない役目があるから仕方ないんだよ。奴隷のフリもしなきゃいかんしな」
「ぐ、愚痴ってないで、とりあえずあれを何とかしましょうよ! 町民がでっかい虫に追われてますよ!?」
「巨大なアリのような生物に見えますが……これが噂に聞くジャイアントアントでしょうか?」
「一般人からレジスタンスに入った俺たちじゃ分からんな」
「レオラエル、軍経験のある君なら分かるんじゃないか?」
レオラエルと呼ばれた者も、アルトラが砂漠で戦った砂賊にソックリなライオン型の獣人だった。 (第398話参照)
「確かに……ジャイアントアントなら見たことがあるが、俺が見たことあるのはあんな形状ではなかった」
「亜種ってことか?」
「さあな。だが形状が違うとは言え、アリにしか見えん。見たところ魔法に類する攻撃方法は持っていないようだし、ジャイアントアントと同じ対応で戦おう!」
「で、具体的にはどう戦えば良いんだ?」
「まずあれらに対して近接戦闘は厳禁だ、あの腕で攻撃されれば亜人などひとたまりもない。遠距離から魔法で――――俺たちでは一人で倒すのは不可能に近いから三人一組で――――火を使えるヤツはアリに有利に戦える。働きアリ程度なら雷も通じるだろう――」
火の国で軍経験のあるレオラエルがこの場にいるレジスタンスメンバーに戦い方を教える。
「ああ、それとサンドレッド、もしあいつらがジャイアントアントだった場合、アレらの攻撃は砂の精霊のあんたでもダメージを受けるから注意してくれ。至近距離で喰らえば致命傷にもなりかねない」
サンドレッドと呼ばれた砂の精霊が返事をする。
「なるほど、肝に銘じます。レオラエルの言う通り、三人一組で行動し、一部隊一匹倒すのを目標に行動しましょう。政府軍に見つかるのは厄介ですので、政府軍が来たらそれ以降は彼らに任せて我々はすぐさま撤退。命が一番大事です、無理だと思ったら倒せなくても退いてください。みんな死んだり捕まったりしないように!」
「「「了解!」」」
◇
■そして最後にアルトレリアの状況。アルトラ邸にて――
「リディア様、ネッココ様、所用で少し外に出てきます」
「ん? どこか行くのカ? ご飯ハ?」
「お昼ご飯はお弁当を用意してきました。夕ご飯までには帰宅しますので」
「わかっタ!」
『いってらっしゃい』
ジャイアントアントの中立地帯への侵入を感じ取ったカイベルは、まずダム建設現場で働くレッドドラゴン・リースヴュールとルルヤフラムのところへ急ぐ。 (リースヴュール、ルルヤフラムについては第364話参照)
「リース様、ルルヤ様」
建設作業中だったリースヴュールとルルヤフラムに声をかける。
「あ、カイベルさん! こんな埃っぽいところへどうしたんですか?」
「間もなくアルトラルサンズ国内へジャイアントアントが来ます。赤龍峰からの連絡役を仰せつかっておりますよね?」
「はぁ? 連絡役ぅ~? 何だっけソレ?」
すっかり忘れているルルヤ。
「ほら、昨日族長から超音波で来たヤツだよ」 (第447話参照)
しっかり者のリースが説明。
「………………ああ、アレか、すっかり忘れてたわ。それで私たちはどうしたら良いの?」
持参した中立地帯・アルトラルサンズ国内の地図を広げる。
「赤龍峰のレッドドラゴンたちと合流し、このマップの南西と南の海岸へ行ってください」
「ここにジャイアントアントとかいうのが来るの?」
「はい。私の見立てでは六時間ほど後に上陸すると思われます」
「ど、どんな見た目してるの? 間違ったヤツを焼き払っちゃったらソイツに悪いし!」
「描写しましょう」
紙を用意し、潜水アリの全身像を描画するカイベル。
「上手っ!」
「これって虫ですよね? 海岸ってことは水の中を泳いで来るんですか?」
「はい。これが沢山上陸して来ますので、南西と南の二手に分かれて、全部残らず焼き払ってください。一体でも残れば一般人にとっては脅威となりますので」
「カイベルさんはどうするんですか?」
「三ヶ所から上陸すると想定していますので、私はもう一つの南東の海岸へ向かいます」
「お、お一人で大丈夫なんですか?」
「問題ありません。ではすぐにここを発ちますので、南西と南の海岸をお願いします」
「「りょ、了解」」
それぞれの国、それぞれの地域、世界を巻き込んで多くの人員がジャイアントアントに割かれる事態に。
■風の国隣国、樹の国・第一首都ユグドグラン王城、魔王代理トライアのところ――
「トライア様! 風の国に派兵されたマルクからの事前連絡の通り、国内にジャイアントアントが発生しました!」
「そうですか。それで数はどれほどですか?」
「それほどの数ではないと見込まれています。……が、地元住民が被害に遭っていますので早々に対処しなければなりません」
「すぐに守護志士を送って、駆除に当たらせてください」
「しかし、森の中ゆえに、既に分散してしまったアリもいるようで……」
「木の下位精霊と樹人たちに探させましょう」
その時、魔王お付きの空間魔術師・ジョアンニャがトライアの下を訪れた。
「国を揺るがしかねない緊急事態と判断され、守護志士をすぐに現場に送るようにとの王のお達しです」
「マモン様の容体は良いのですか?」
病で碌に身体が動かない樹の国魔王を心配するトライア。
「依然として体調に変化はありません。悪いながらも安定していると。今日は病院に滞在すると仰ったので、私が守護志士のみなさんを現場まで連れて行きます!」
「そうですか、ではお願いしますね」
◇
■樹の国とは逆側にある風の国の隣国、雷の国・首都トールズ王城――
「アスモデウス様! 風の国に派兵されているラッセルらの連絡通り、風の国との国境の町・フゥライ付近でジャイアントアントが発生しました!」
「……数は……?」
「現時点では少ないものと見られます!」
「……そう……じゃあ、近隣住民を避難させてアリの侵攻を食い止めておいて。雷の国はジャイアントアントにとってあまり好ましくない環境だから、多分そんなに侵入してくることはないと思う……私が行って一掃する……アルフを呼んで……」
「ハッ!」
雷の国の空間魔術師・アルフを呼び寄せる。 (アルフについては第117話参照)
「……アルフ、国境の町フゥライへ行くから、空間転移をお願い……」
「了解しました」
◆
■風の国と離れた国、樹の国と海を隔てた土の国の海岸近くの漁村ジェムコースト――
少し時は遡り、風の国からアルトラにジャイアントアントの件が伝えられる一日前、そこには土の国の兵士たちの大軍が集まって来ていた。
「なぁ……さっきから国の兵士がどんどん増えているが、何でこんな物々しいんだ? 海岸の方を見張っているようだが……しかもこんな大軍で」
「さあなぁ……まさか戦争でも始まるのか?」
「戦争ぉ? じゃあ俺たちはどうしたら良いんだよ」
兵士がどんどん集まてくる村の様子を見て、不安を口にする村民たち。
次の瞬間、漁村の住民に対し一人の兵士が拡声魔法を用いて大声を上げる。
「ジェムコーストの皆様方! 我々は土の国正規軍です! 突然のことですがここは二日後戦場になります! 本日中に避難場所へお連れ致しますので、すぐに移動できるよう準備をしてください!」
突然の“戦場”宣言に驚く村民たち。
「せ、戦場!? ど、どういうことですか!?」
「“上”から二日後『ナニカ巨大生物が海岸より上陸する』とのお達しがあり、ここを防衛せよとの命令が下りました。巨大生物については我々にも詳しくは分かりませんが、すぐにでも避難準備を」
土の国では“上”から兵士たちにお達しが来ることがそれなりに存在する。
この“お達し”を元に兵士たちが行動を起こすこともままある。
「で、でもそんな簡単に避難なんて……」
「あなた方一般の亜人がここに残れば命を落とす可能性が濃厚ですが、それでも残りますか? それがご意志であれば尊重致しますが……その場合はご自身で身を守ってもらう他ありません」
「わ、分かりました。早々に準備します……」
ジェムコーストの村民たちは、何が何やら分からない状態で広場に集められ、土の国の空間魔術師の転移魔法で避難した。
◇
そして二日後の現在。漁村ジェムコースト――
海岸を見張っていた兵士たちが海から飛んでくるナニカに気付いた。
「おい……海の向こうから何か飛んでくるぞ?」
「巨大生物ってのはアレのことか……」
多数の羽アリが海を渡って土の国に上陸。
「こ、これってまさか、ジャイアントアントなのか……?」
「待て! 羽があるぞ!? 羽があるジャイアントアントなんて見たことがない」
この時点で風の国に援軍を送っていなかった土の国は、雷・樹の国の二ヵ国とは少し情報が遅れていたため、羽アリと潜水アリがいることがまだ知られていなかった。
海岸に居た兵士たちの上空を羽アリの団体が飛んで行く。
「アイツらどこまで飛ぶつもりなんだ?」
「おい! 空にだけ気を取られるな! もう海からも上陸している! 後ろだ!!」
「なに!?」
その一言により、咄嗟に盾を構えて振り返る。
羽アリの一撃により薙ぎ払われる兵士。
「ぐあっ!!」
盾で防御し、瞬時の判断で半歩退いたことにより致命傷は免れたものの、大きく弾き飛ばされてしまった。
「“上”から知らされた通り謎の巨大生物だな。羽があるジャイアントアントに見えるが……よし、今から掃討作戦を開始するぞ!」
◇
■同じく風の国から離れた国、水の国・首都リトリナの海岸――
「おい……何かでかいのが網に引っ掛かったぞ?」
「ゲッ何だこりゃ! 海の中に巨大な虫か? 海に虫なんかいるの初めて見たぞ?」
網に引っ掛かった潜水アリを見て驚く漁師たち。
直後、潜水アリが網を引き裂いて漁師の一人を殴り飛ばした!
「ガッ! グァァッッ!!」
殴り飛ばされた漁師は、海岸の岩肌まで吹っ飛ばされ、『ドオォォン!』という派手な音を出して激突、岩肌へと身体がめり込む。
鉤爪状の前脚で殴られた腹は、上半身と下半身が辛うじて繋がっていると形容されるほどの巨大な裂傷だった。
「ゴフッッ!!」
そのまま口から大量に吐血し、ガクリと項垂れて事切れる。
「あ、あ……うわぁぁぁ!!」
「逃げろ! すぐ逃げろぉぉ!!」
「騎士団! 騎士団に連絡しろ!!」
その後もゾロゾロと海岸を上って来る潜水アリの集団。
◇
この惨事はすぐに女王レヴィアタンの耳にも入る。
「レヴィアタン様! トリトナの港へと繋がる海岸にて正体不明のアリのような巨大生物が侵攻してきたようです!」
「巨大なアリ? まさか風の国で発生しているって言うジャイアントアント?」
「ジャイアントアントが海の中を潜って来るという話は聞いたことがありませんが……」
土の国と同じく、風の国に援軍を送っていなかったため少し情報が遅れている。
「巨大なアリなのにジャイアントアントではない? でもアリの姿をしてて海に潜る? ますます謎だね。それで現在の状況は?」
「トリトナ騎士団が出て討伐に当たっているので、一般人の被害は少ないようです」
「そう、じゃあ今回は私が出るまでもないか」
そう思った矢先、騎士の一人が慌てて駆け込んできた。
「ご報告致します!! トリトナ港より三十キロ北にあるリップル海岸でもアリのような巨大生物が多数上陸したとの報告が!!」
「一体何ヶ所で上陸するの? そちらに現れた数は?」
「現在は四十から五十ほどの数が確認されています! 既に近隣の町にも迫っており、急ぎ騎士団の要請をと」
「ちょっと多いね……騎士団員は西側の港に出張ってるし。じゃあそっちは私が行くよ。サリー」
水の国・筆頭空間魔術師であるサリーを呼び寄せる。 (サリーについては第303話参照)
「ハッ! ここに!」
「私に帯同しなさい」
「はい」
「じゃあリップル海岸までよろしく」
◇
■またところ変わって、火の国・属国フラメラ国内東にある港町――
港町は海から上陸した潜水アリに破壊され、町民たちは叩き出されていた。
その惨事の最中、港町に到着したのは、反政府組織『宵の明星』のメンバーだった。 (宵の明星については第406話で少し触れています)
「こ、これは一体……どこから湧いて来たんだ?」
「港町に潜伏している反政府組織メンバーによると海から上陸してきたようだ。緊急事態を知らせる報告だったが、既にこんなことになっているとは……」
破壊されている港町を見て驚愕するレジスタンスメンバーたち。
「全く、牢屋から出されて早々、こんなところに行けと言われるとはな……」
「人使いが荒い!」
「民を助けて味方に付けるのが我々末端の役目ですから仕方ないのですよ」
そう言ってメンバーを諭すのは、アルトラ一行が砂漠で遭遇した砂賊の砂の精霊にソックリな男だった。 (第400話から第402話参照)
「だって、サンドニオさんは私たちを送り出すだけで自分ではあまり動かないじゃないですか~」
「あのヒトはあのヒトにしかできない役目があるから仕方ないんだよ。奴隷のフリもしなきゃいかんしな」
「ぐ、愚痴ってないで、とりあえずあれを何とかしましょうよ! 町民がでっかい虫に追われてますよ!?」
「巨大なアリのような生物に見えますが……これが噂に聞くジャイアントアントでしょうか?」
「一般人からレジスタンスに入った俺たちじゃ分からんな」
「レオラエル、軍経験のある君なら分かるんじゃないか?」
レオラエルと呼ばれた者も、アルトラが砂漠で戦った砂賊にソックリなライオン型の獣人だった。 (第398話参照)
「確かに……ジャイアントアントなら見たことがあるが、俺が見たことあるのはあんな形状ではなかった」
「亜種ってことか?」
「さあな。だが形状が違うとは言え、アリにしか見えん。見たところ魔法に類する攻撃方法は持っていないようだし、ジャイアントアントと同じ対応で戦おう!」
「で、具体的にはどう戦えば良いんだ?」
「まずあれらに対して近接戦闘は厳禁だ、あの腕で攻撃されれば亜人などひとたまりもない。遠距離から魔法で――――俺たちでは一人で倒すのは不可能に近いから三人一組で――――火を使えるヤツはアリに有利に戦える。働きアリ程度なら雷も通じるだろう――」
火の国で軍経験のあるレオラエルがこの場にいるレジスタンスメンバーに戦い方を教える。
「ああ、それとサンドレッド、もしあいつらがジャイアントアントだった場合、アレらの攻撃は砂の精霊のあんたでもダメージを受けるから注意してくれ。至近距離で喰らえば致命傷にもなりかねない」
サンドレッドと呼ばれた砂の精霊が返事をする。
「なるほど、肝に銘じます。レオラエルの言う通り、三人一組で行動し、一部隊一匹倒すのを目標に行動しましょう。政府軍に見つかるのは厄介ですので、政府軍が来たらそれ以降は彼らに任せて我々はすぐさま撤退。命が一番大事です、無理だと思ったら倒せなくても退いてください。みんな死んだり捕まったりしないように!」
「「「了解!」」」
◇
■そして最後にアルトレリアの状況。アルトラ邸にて――
「リディア様、ネッココ様、所用で少し外に出てきます」
「ん? どこか行くのカ? ご飯ハ?」
「お昼ご飯はお弁当を用意してきました。夕ご飯までには帰宅しますので」
「わかっタ!」
『いってらっしゃい』
ジャイアントアントの中立地帯への侵入を感じ取ったカイベルは、まずダム建設現場で働くレッドドラゴン・リースヴュールとルルヤフラムのところへ急ぐ。 (リースヴュール、ルルヤフラムについては第364話参照)
「リース様、ルルヤ様」
建設作業中だったリースヴュールとルルヤフラムに声をかける。
「あ、カイベルさん! こんな埃っぽいところへどうしたんですか?」
「間もなくアルトラルサンズ国内へジャイアントアントが来ます。赤龍峰からの連絡役を仰せつかっておりますよね?」
「はぁ? 連絡役ぅ~? 何だっけソレ?」
すっかり忘れているルルヤ。
「ほら、昨日族長から超音波で来たヤツだよ」 (第447話参照)
しっかり者のリースが説明。
「………………ああ、アレか、すっかり忘れてたわ。それで私たちはどうしたら良いの?」
持参した中立地帯・アルトラルサンズ国内の地図を広げる。
「赤龍峰のレッドドラゴンたちと合流し、このマップの南西と南の海岸へ行ってください」
「ここにジャイアントアントとかいうのが来るの?」
「はい。私の見立てでは六時間ほど後に上陸すると思われます」
「ど、どんな見た目してるの? 間違ったヤツを焼き払っちゃったらソイツに悪いし!」
「描写しましょう」
紙を用意し、潜水アリの全身像を描画するカイベル。
「上手っ!」
「これって虫ですよね? 海岸ってことは水の中を泳いで来るんですか?」
「はい。これが沢山上陸して来ますので、南西と南の二手に分かれて、全部残らず焼き払ってください。一体でも残れば一般人にとっては脅威となりますので」
「カイベルさんはどうするんですか?」
「三ヶ所から上陸すると想定していますので、私はもう一つの南東の海岸へ向かいます」
「お、お一人で大丈夫なんですか?」
「問題ありません。ではすぐにここを発ちますので、南西と南の海岸をお願いします」
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ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない
よっしぃ
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俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。
魔力があっても普通の魔法が使えない俺。
そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ!
因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。
任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。
極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ!
そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。
そんなある日転機が訪れる。
いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。
昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。
そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。
精霊曰く御礼だってさ。
どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。
何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ?
どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。
俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。
そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。
そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。
ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。
そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。
そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ?
何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
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