建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編

第482話 女帝蟻への対抗策

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 そして場面は再びアルトラサイドへと移る。時間はアスタロトがデュプリケートを倒す少し前までさかのぼる――

 三人だけを残し、デュプリケートのところに残っていた兵士たちを引き連れて、【ゲート】で駐屯していた場所へ移動してきた。
 駐屯していた場所へ戻ると、もうかなりの数の精鋭がイルリースさんたちの空間魔法によって召喚されていた。

「あ、アルトラ様! 緊急連絡はどうなったんですか!? アリの襲撃は!?」

 召喚しながらもイルリースさんがこちらに気付く。
 多少無理をしているのか、顔に疲れが出ている。同じくエアリアさんも。

「アスタロトとティナリスとロックスさんが現場で交戦してる。あっちは彼らが何とかしてくれると言っていたから、私たちはボレアース市街の防衛に行こうと思います」

 イルリースさんらと共に残っていたウィンダルシアが、現在の状況を精鋭たちに伝えている。
 早い者はもうボレーアス市街へ向かって飛び立ったらしい。

「ウィンダルシア、ご苦労様」
「アルトラ部隊長、今召喚できた精鋭は三分の二ほどです」
「そう、私は一足早くボレーアス城の方へ行くこうと思う。どういう作戦で行くか聞かせてもらえる?」
「有翼族をボレーアス市街へと先に送り、非有翼族はキノコ岩を登りつつ、上と下で挟み撃ちする作戦で行こうと思います。精鋭部隊以外は住民の退避を優先と」
「わかった。じゃあこの場の指揮と市街の防衛についてはお任せして良いかしら? 戦場の素人の私よりあなたの方が適任だと思うし。この通信魔道具もあなたに渡しておくのでお願いしますね」

 左手から通信魔道具シールを剥がして渡した。

「お任せください。残りの精鋭たちを召喚し次第、私も市街への防衛に参戦します」
「じゃあ、お願いね。私は女帝蟻のところへ向かいます」

 そう言いつつ【ゲート】をボレーアス城へ繋げた。
 直後、各区域に散らばった感知隊員から通信。

『こちらマップA-1班、人型の敵と交戦中! 既にほとんどの兵士がやられてしまいました! いかがすれば良いでしょうか!?』

 ほとんどやられた!?

『一旦退避して、近くに居る部隊と合流、立て直せ! すぐにこちらからも援軍を送る!』

 ウィンダルシアが通信に応える。
 一つの部隊から通信が入ったかと思えば――

『こちらマップC-2班、人型の敵と交戦中です。こいつらどんどん増殖します! 指示をお願いします!』
『こちらマップB-3班、人型の敵と交戦中。今のところ問題無いが、増殖が面倒だ。何かしらの指示を頼みます!』

 ――立て続けに通信が入る。

 どんだけ広範囲に分体をばら撒いてるんだデュプリケートアイツ……

『こちらマップA-1班、人型の敵がなぜか集団でどこかへ移動して行きます! た……助かった……のか?』

 どこかへ移動? どういうことだ?

『こちらアルトラ部隊長に代わりウィンダルシア、マップA-1班、敵がどこかへ移動とはどういうことだ?』
『わ、分かりません。方向はボレアース崖下があるマップD-3の方向のようですが……』

 マップD-3って、アスタロトたちが残って戦ってる場所じゃないのか!?
 一体何が起こってる? 戻って彼らを援護した方が良いか?

 ……
 …………
 ………………

 …………いや、三人で十分だと彼らは言ったのだ。私は彼らの言葉を信じて女帝蟻の方を優先しよう。アスタロトは何か考えがあると言っていたし。

「ここはあなたたちに任せても大丈夫?」
「はい、我々で何とかしましょう」
「では私はボレーアス城へ向かったと思われる女帝蟻のところに向かいます」
「ご武運を」

 出現させていた【ゲート】をくぐり、ボレーアス城へ。

   ◇

 ボレーアス城に着くと、既に何かがおかしい。
 恐怖に満ちた顔で、数人のヒトが城の外に逃げて来た。
 よく見れば周囲には亜人の遺体が転がっている。

「くそっ! 遅かったか!?」

 入城すると、既に城内も惨劇の場と化していた。
 標本以外の実物を初めて見るから、私には働きアリか兵隊アリか見分けが付かないが、そこかしこにジャイアントアントが居る。
 既に交戦している兵士もおらず、城に残っていた兵士の多くが惨殺され、一部食い散らかしたような跡がある者も……

 城内に進入した私に気付いたジャイアントアントのうちの一匹が襲い掛かって来た、
 上空へジャンプでかわし、そのままジャイアントアントに乗って小規模な爆発で首付近を攻撃、頭を吹き飛ばした。頭を失った巨体がゆっくりと倒れ込む。
 爆発の音に気付いた周囲のジャイアントアントが集まって来た。
 この後に女帝蟻を相手にしなければならない可能性が高い。MPは温存しておきたい。

 そこで、創成魔法で二つ目の刀を作り出す。
 以前作った『斬治癒きりちゆ丸』のような“殺さない”刀ではなく、確実に殺す刀。 (『斬治癒きりちゆ丸』については第322話参照)
 魔力を流すと超振動を発生させて切れ味が各段に増す、そういう刀を作った。
 名前を……『真剣斬まじきり丸』にでもしておこう。ちょっとダサいか? まあマジで斬り裂く刀だからこれ以上分かり易い名前も無いだろ。

 襲い掛かって来たジャイアントアントの攻撃を防ごうとしたところ、防御姿勢を取っていただけなのに私の刀に触れた相手の前脚が切断されて飛んで行った。

「いぃっっっ!?」

 す、すっげぇ切れ味! こんなの絶対誰かに使わせられない!
 私がイメージしたナマクラ刀でこの切れ味って……超振動の効果凄い!
 しかしこれでジャイアントアントの硬い外骨格も容易に斬れる。時間を取られることなく進めるだろう。

 道行くジャイアントアントを切り伏せながら、城内に居る強い魔力を持つ者が待つ場所へ向かう。
 着いたのは謁見の間。
 部屋へと続く扉は既に壊され、血の跡が付いていた。

 そこに居たのは金色の髪の少女。
 周囲にはボレアース城に残っていた警備兵数人の亡骸。

 金髪の少女の耳は尖っている。エルフ……なのか?
 いや、見た目はエルフだが、魔力の量で感じ取れる。
 間違い無い! コイツが女帝蟻だ!

「あなたがジャイアン――」

 『――トアントの女王?』と質問しようとした時には、『ゴゴオオォォォン!!』という巨大な激突音が鳴り響き、どことも知れない暗いところに居た。

「え? え?」

 何だ? どうなった? どこだここは?

 周囲でボロボロと何か崩れ落ちる音がする。
 手を動かしてみたところ、どうやらブロックのようなものがある。私は今どこに居るんだ?

 そんなことを考えたところ、女帝蟻から声をかけられた。

「おいそなた、いつまで死んだふりを続けるつもりじゃ? まだ生きておるのだろう?」

 声をかけられ、起き上がってみて初めて自分が瓦礫の下に居たと気付いた。
 疾風の速さで攻撃され、謁見の間の壁に激突したってところか。
 女帝に声をかける前と後で、私が居る位置が全く違うことがその証拠。

 ガラッと瓦礫をどかして起き上がる。

「いきなり攻撃するのは酷いんじゃない?」
「ほう、わらわの攻撃を受けてピンピンしておるのか。そなたのような亜人は初めてだぞ!」

 随分雅な話し方をするな……
 Lv11の攻撃ではなく普通の物理攻撃だったようで、痛みが無いからまだ余裕があるが……攻撃されたのが全く分からなかったのはまずい……
 この速度でLv11の攻撃を喰らえばあっという間に戦闘不能だ。

 コイツの対抗策は、風の国に出発する前にカイベルから聞いている。
 確か……こんなこと言ってたはず。

   ◆

 我が家を出る前、カイベルに呼び出されて、

『アルトラ様、女帝蟻への対抗策をお教えします』
『対抗策? 相手は魔王相当なのよね? 私で相手になるの?』
『運もありますが、戦い方によっては十分にダメージを与えられます』

 何だか発言が弱いな……『一人で十分勝てます』とはお世辞でも言えないのね……

『あなたが予想するに、女帝蟻は私と比べてどの程度強いの?』
『女帝蟻は、アルトラ様の三倍ほどの魔力があります』
『えっ!? それって普通に無理ゲーじゃね?』
『何も一人で戦う必要はありません。戦力を揃えてさえいれば十分に勝機はあります。元々の生物があまり魔力と縁が無かったというところが幸いしていて、それほどの差にはならなかったようです』
『それほどの差にって……三倍はもう勝てないでしょ』

 私が十七万くらいだから、その三倍って言うと五十一万くらいの魔力があるってことかな。
 魔力の総量が増えれば自動展開している魔法障壁も厚いだろうし、魔力差が大きすぎてどうにもならない気がする。
 あとは私の防御能力がどの程度通じるかだが。

『所有魔力は高いものの、魔法の使い方はあまり上手くないようです。火属性魔法を主に使ってくると思いますので、それに対する対抗策として、【火属性:無効レジスト・ファイア】を兵士全員にかけることを推奨します。Lv11ではありませんので、これでかなりのダメージを軽減できると思います。使ってくる属性が増えた場合それに対応する無効効果を付与すれば、属性魔法についてはほぼ無力化できると思います』
『なるほど。それらは全部私にも効果が無いってことで合ってるよね?』
『はい。ただし、風は絶対に避けてください』
『……風がLv11ってわけね』
『はい。相手は七つの大罪『暴食』に宿主として選ばれた風の魔王ですので。アルトラ様にも致命傷を与え得る能力です。ただ、相手はまだ風魔法の重要性に気付いていないので、派手さで優る火魔法を主に使ってくると思います。風魔法の特質性に気付く前に総力戦で勝負を決する必要があります』
『なるほど、私みたいに魔法を無効化できる生物はほぼいないから、これまで派手さで優る炎を主に使って来たってわけね』

 魔法を無力化してしまえば、かなり勝率は上がりそうだ。

『魔法の話の後ですが、近接戦闘は絶対厳禁です。アルトラ様はどれほど重い攻撃でもダメージを受けることはありませんが、その他の亜人の方々は一撃喰らっただけで戦闘不能になる可能性が濃厚です。下手をすれば肉塊に……』

 こ、怖わぁぁ……

『防御力の高い前衛を囮にし、遠距離から足止めしつつ魔法攻撃するのが良いでしょう』
『人数はどれくらい居れば勝てそう?』
『短期決戦で精鋭百から二百名。長引けば四百から六百名ほどは欲しいところです』

 それって物凄い数の死者が出るって言ってるのと同じことじゃ……?
 魔王ってそこまで戦力に違いがあるのか?

『出来ることであれば、大戦力で戦っていただきたいところですが、もし仮に一人で対峙することになってしまった場合、同じく風魔法は絶対に避けてください。ダメージを受けないからと言って、風魔法だけを避けようとすれば、女帝蟻に自身の風魔法の特性に気付かれてしまう可能性が高くなるので、なるべくなら全て避けているように見せるのがベターでしょう。しばらくは『避けた』と見せて誤魔化すことができる思いますが、徐々に『火が効いていない』へと思考が変化するでしょう。そこからは使ってくる属性魔法が増えると予想されます。何とかここに至るまでに致命的なダメージを与えないと倒すのは難しいと思います』

 魔王相手に一人で短時間勝負しろってのがそもそも無理があるんじゃないか?
 何とか別の戦力と共同で戦うか、もし私一人で対峙した場合にもそれなりのダメージを与えておきたい。

『こちらの魔法は風以外は全て効き目がありますが……戦法としては、アルトラ様は物理的な攻撃が通じませんので、近距離でも遠距離でも可能です。相手は巨大蟻だけあって外骨格が頑丈なので、まずはその防御力を剥がします。外骨格を破壊するには溶かして脆くしてしまうのが効果的でしょう』
『わ、分かった。何とかやってみるよ……』

   ◇

 何てアドバイスを貰ったけど……
 この女帝の腕はとても外骨格に見えない……
 どう見てもエルフの柔肌。
 それにこんなに素早いって聞いてないわ。
 変身能力があるって話だし、このエルフの姿が素早いってことなのかしら?

 しかも、『大戦力で戦え』ってアドバイスされたのに、回りには騎士たちの遺体だけ。私以外の戦力いねぇし……
 結局一人で対峙することになってしまった……
 アスタロト、ロックス、ティナリスたちが早くデュプリケートを倒して駆け付けてくれることを期待したいが……
 もしくは、雷の国のラッセルさんとか、樹の国のマルクさんとか、風の国の精鋭陣とかとにかく一大戦力が早く来てほしい。

 何にせよ私以外誰もいないからには、女帝蟻が自身の風の能力に気付く前に、早く大ダメージを、欲を言うなら決着を付けてしまいたい。
 『真剣斬まじきり丸』を構える。
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