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第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編
第491話 介抱と輸送
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女王二人との密談が終わった後、ほどなくして上空に風の国の空中偵察隊が二人現れた。
それに気付くと、レヴィが二人を手招きする。
が、警戒しているのか全く降りて来ようとしないため、レヴィが大声で呼びかける。
「私は水の国アクアリヴィアの女王レヴィアタンです! すぐにここに来たれかし!」
少し空中に停滞し、二人で何やら話し合っている。本物かどうか分からないから相談しているというところか。
……
…………
………………
一向に降りてこないな……
そう思っているとレヴィが痺れを切らした。
「あ~~! じれったいなぁ!」
二人の手足を水の泡で拘束して強制的に私たちのところへ引き寄せた。
「な、何をする!」
「無礼だぞ!」
「少々手荒になって申し訳ありません。早く治療してもらいたい方がいるので、強制的にこちらに来てもらいました」
と、女王モードの口調。
そして騎士二人の水の泡を解除し、私の方を見るよう促す。
二人は傷だらけの私を見るなりギョッと驚く表情を見せ、すぐに対応が変わった。
「じゅ、重傷じゃないですか!? 大丈夫なんですか!?」
「え、ええ……今は回復魔法が効いているので見た目ほど痛みはありません」
「す、すぐに輸送と病院の手配をします!」
「それで……貴女がレヴィアタン殿というのは本当ですか?」
「はい。あなた方はアスタロト殿の命で偵察に来のですよね? アスタロト殿をすぐにここに呼んでください」
「了解しました! あの……そちらの方々は?」
「……雷の国エレアースモ女王アスモデウスです……」
「ちゅ、中立地帯アルトラルサンズの国主アルトラです」
この二人と名前を並べるのもおこがましい感じはあるが、一応挨拶だけはしておかないと。
「あ、あなたがアスタロト様の言うベルゼビュート様!? それにぜ、全員国家元首の方々ですか!? し、失礼しました! 急ぎアスタロトを呼んで来ますのでもう少々お待ちください!」
急いで飛び去って行った。
◇
そして二十分ほど経って――
アスタロトが到着。
「ベルゼビュート様! ご無事ですか!?」
遅い! もう少し早ければアスタロトに『暴食』を継承させてたのに……
「大怪我をされたと報告を受けましたが………………こ、これは……は、早く! 救護隊! 輸送を! エアリア! 空間魔法の準備を!」
「はい!」
【自己再生魔法】で徐々に回復している最中とは言え、左腕は肘から先が無く、右腕は女帝に付けられた深い切り傷が広がってしまっている。それに加えてさっき火事場のバカ力で動いた時に太ももの切り傷からも出血し、見た目には大量出血しているように見える。
誰が見たって重傷。なんなら文頭に“瀕死の”と付けてもおかしくない負傷度合い。
「は、早くこちらへ!」
「前代女王様が瀕死の重傷だ! 救護隊! 回復班! 少しでも回復しながら運ぶんだ!」
「「「了解!!」」」
担架に乗せられ三人がかりで、左腕に【癒しの水球】をかけてくれた。
「レヴィアタン殿にアスモデウス殿! 私の関知せぬ間に今回の討伐にご参戦いただいていたようで、風の国の国王代理として、謹んでお礼申し上げます」
二人の女王に深々と頭を下げるアスタロト。
「……参戦って言うか……」
「半ば強制的に来なければならない事情がありましたので……」
「お二方を動かせる方とは、一体どこのどなたなのでしょうか?」
と質問され、二人同時に担架に乗せられた私を指さした。
「えっ!? 私っ!?」
「正確に言えばカイベルが呼びに来たんですけど」
「カイベルさんもいらっしゃるのですか? どこにおられるのですか? 彼女にはお礼を言わなければなりません。彼女の助言が無ければ被害はもっと甚大だったでしょう」
との問いに、レヴィが指をさそうとした瞬間に、救助隊がカイベルを発見。
「おい! もう一人女性が倒れているぞ!」
「……そのヒトが、ベルゼの専属メイドのカイベル……」
「この方が?」
「気絶してるので一緒に運んで介抱してあげてください。怪我は少ないと思いますが、私たちの魔力による衝撃波を受けているので検査をした方が良いかもしれません」
疲れと眠気と回復班に作られた水球の気持ち良さで朦朧とする意識の中、レヴィが発した『運んで介抱』という言葉と『検査をした方が良いかもしれません』という言葉で我に返る。
えっ!? カイベルを!? 病院に!?
「ままま、待って! カイベルは多分すぐ目を覚ますから運ばなくても――」
『運ばなくても良い!』と言いかけて慌てて口をつぐんだ。
自分の専属メイドが気絶して倒れてるのに、病院に運ばなくて良いって……これ言い切ったら、私はカイベルを虐げている鬼畜主人以外の何者でもないわ……
で、でもどうしたら? カイベルが病院に運ばれて検査でもされようものなら、生物じゃないことがバレてしまう!
運んでるうちに目を覚ましてくれれば良いけど、もし覚まさなかったら……
そんなことを考えていたが、それよりも先にバレる危機に……
「いえ! 待ってください! この女性脈がありませんよ!? 体温もかなり下がっているみたいです!!」
手首に触れた救護隊の発言に肝が冷える。
ま、まずい……こんな事態で脈採られるなんて考えてもみなかった。あ、そうだ! 心臓は動いてるはず! そっちを確認してもらえれば……
「呼吸も無い! 心臓も動いてません! 瞳孔も開き切っています!!」
えっ!? まさか機能停止してるから全部動いてないのか!?
「「心臓が動いてない!?」」
ただ『強力な魔力に当てられて気絶しているだけだ』そう思っていた様子のレヴィとアスモが同時に驚きの声を上げた。
介抱よりも『暴食』の対処を優先していたため、私含めて三人ともがカイベルを後回しにしていた。
「いつからここに倒れてたんですか!?」
「……偵察隊が来る少し前から……」
「とすると……大きい魔力が消えたくらいからですか?」
「……多分、そう……」
「もう一時間近く経ってるじゃないですか!」
「この方は何の種族なんですか!?」
「私たちは『人間』と聞いていますが……」
私に代わってアスモとレヴィが受け答えしてくれる。
「人間族!? 魔界では希少種じゃないですか!」
「だとすると危ういぞ! 早く蘇生しないと人間族は蘇生できるまでの時間がかなり短いと亡者から聞いたことがある! 十分を過ぎたら蘇生確率が劇的に下がると……!」
「も、もう一時間ですよ!?」
救護隊に焦りと緊迫感が広がる。
「既に絶望的な状況だが……蘇生を試みてみよう。すぐに電気ショックだ! 雷魔術師!」
「はい!」
救護隊の雷魔術師らしき女性が、カイベルの胸に手を当て電気ショックで蘇生を促す。
一発目を喰らい、そのショックで機能が回復したらしくすぐに動き出した。
「おお! 蘇生した!」
「奇跡的に間に合ったようですね!」
「大丈夫ですか?」
と聞く救護隊の面々に、
「これは……皆様どうされたのですか?」
目が覚めたカイベルは上半身を起こし、この場に居る全員を見渡した。珍しく困惑気味だ。
「意識障害はありませんか?」
「……申し訳ありません、少々お待ちください」
一点を見つめて数秒動かなくなった。どうやら自身が蘇生されるまでのデータを取得しているらしい。
「……私は命拾いしたようですね。皆様、ご迷惑をおかけしました。命を救っていただきありがとうございます」
すぐに置かれた状況を理解し、座ったまま深々と頭を下げるカイベル。
「も、もう大丈夫ですか?」
「ええ、もう問題ありません。それよりもアルトラ様の怪我が酷いのでよろしくお願いします」
無事と分かり、アスタロトが話しかける。
「死んでしまわなくて安心しました。あなたの助言が無ければ、我が国は更に大きな被害を受けていたでしょう。ありがとうございました」
アスタロトがカイベルにも深々と頭を下げた。
「いえ、お役に立てたようで幸いです」
カイベルにひとしきりお礼を言った後、レヴィたちの方を向いた。
「それで女帝蟻はどうなったのでしょうか? 巨大な魔力反応を女帝蟻のものと推定してここへ偵察に来たのですが……」
「はい、そこで黒焦げになって転がっているのが女帝蟻の死骸です」
「あれが!? ではこちらで回収させていただきます」
「詳細をお話しする前に、まずベル……アルトラ殿を病院に運んでからにしましょう」
レヴィの先導により、まずは病院へ場所を移されることになった。
◇
エアリアさんの空間魔法と救護隊員による迅速な輸送ですぐに風の国首都ボレアースの国立総合病院に到着。
病室も用意してくれてるらしく、そこへ運び込まれた。
五人ほどで左腕だけでなく、右腕と両太ももの傷に【癒しの水球】を施される。
「少しチリチリと違和感があるかもしれませんが、本日中には右腕と太ももの傷は完治すると思います。左腕の方は三日から一週間くらいはかかるかもしれません」
「はい、ありがとうございます」
回復魔術師さんたちは、術を施して退出していった。
対処が簡単なように見えるが、多分意識も鮮明で、命に別条は無いと判断されたからだろう。
入れ替わりにカイベル、レヴィ、アスモ、そしてアスタロトが入って来た。
一息ついたため、報告と言う名の私にとっての尋問が始まる。
それに気付くと、レヴィが二人を手招きする。
が、警戒しているのか全く降りて来ようとしないため、レヴィが大声で呼びかける。
「私は水の国アクアリヴィアの女王レヴィアタンです! すぐにここに来たれかし!」
少し空中に停滞し、二人で何やら話し合っている。本物かどうか分からないから相談しているというところか。
……
…………
………………
一向に降りてこないな……
そう思っているとレヴィが痺れを切らした。
「あ~~! じれったいなぁ!」
二人の手足を水の泡で拘束して強制的に私たちのところへ引き寄せた。
「な、何をする!」
「無礼だぞ!」
「少々手荒になって申し訳ありません。早く治療してもらいたい方がいるので、強制的にこちらに来てもらいました」
と、女王モードの口調。
そして騎士二人の水の泡を解除し、私の方を見るよう促す。
二人は傷だらけの私を見るなりギョッと驚く表情を見せ、すぐに対応が変わった。
「じゅ、重傷じゃないですか!? 大丈夫なんですか!?」
「え、ええ……今は回復魔法が効いているので見た目ほど痛みはありません」
「す、すぐに輸送と病院の手配をします!」
「それで……貴女がレヴィアタン殿というのは本当ですか?」
「はい。あなた方はアスタロト殿の命で偵察に来のですよね? アスタロト殿をすぐにここに呼んでください」
「了解しました! あの……そちらの方々は?」
「……雷の国エレアースモ女王アスモデウスです……」
「ちゅ、中立地帯アルトラルサンズの国主アルトラです」
この二人と名前を並べるのもおこがましい感じはあるが、一応挨拶だけはしておかないと。
「あ、あなたがアスタロト様の言うベルゼビュート様!? それにぜ、全員国家元首の方々ですか!? し、失礼しました! 急ぎアスタロトを呼んで来ますのでもう少々お待ちください!」
急いで飛び去って行った。
◇
そして二十分ほど経って――
アスタロトが到着。
「ベルゼビュート様! ご無事ですか!?」
遅い! もう少し早ければアスタロトに『暴食』を継承させてたのに……
「大怪我をされたと報告を受けましたが………………こ、これは……は、早く! 救護隊! 輸送を! エアリア! 空間魔法の準備を!」
「はい!」
【自己再生魔法】で徐々に回復している最中とは言え、左腕は肘から先が無く、右腕は女帝に付けられた深い切り傷が広がってしまっている。それに加えてさっき火事場のバカ力で動いた時に太ももの切り傷からも出血し、見た目には大量出血しているように見える。
誰が見たって重傷。なんなら文頭に“瀕死の”と付けてもおかしくない負傷度合い。
「は、早くこちらへ!」
「前代女王様が瀕死の重傷だ! 救護隊! 回復班! 少しでも回復しながら運ぶんだ!」
「「「了解!!」」」
担架に乗せられ三人がかりで、左腕に【癒しの水球】をかけてくれた。
「レヴィアタン殿にアスモデウス殿! 私の関知せぬ間に今回の討伐にご参戦いただいていたようで、風の国の国王代理として、謹んでお礼申し上げます」
二人の女王に深々と頭を下げるアスタロト。
「……参戦って言うか……」
「半ば強制的に来なければならない事情がありましたので……」
「お二方を動かせる方とは、一体どこのどなたなのでしょうか?」
と質問され、二人同時に担架に乗せられた私を指さした。
「えっ!? 私っ!?」
「正確に言えばカイベルが呼びに来たんですけど」
「カイベルさんもいらっしゃるのですか? どこにおられるのですか? 彼女にはお礼を言わなければなりません。彼女の助言が無ければ被害はもっと甚大だったでしょう」
との問いに、レヴィが指をさそうとした瞬間に、救助隊がカイベルを発見。
「おい! もう一人女性が倒れているぞ!」
「……そのヒトが、ベルゼの専属メイドのカイベル……」
「この方が?」
「気絶してるので一緒に運んで介抱してあげてください。怪我は少ないと思いますが、私たちの魔力による衝撃波を受けているので検査をした方が良いかもしれません」
疲れと眠気と回復班に作られた水球の気持ち良さで朦朧とする意識の中、レヴィが発した『運んで介抱』という言葉と『検査をした方が良いかもしれません』という言葉で我に返る。
えっ!? カイベルを!? 病院に!?
「ままま、待って! カイベルは多分すぐ目を覚ますから運ばなくても――」
『運ばなくても良い!』と言いかけて慌てて口をつぐんだ。
自分の専属メイドが気絶して倒れてるのに、病院に運ばなくて良いって……これ言い切ったら、私はカイベルを虐げている鬼畜主人以外の何者でもないわ……
で、でもどうしたら? カイベルが病院に運ばれて検査でもされようものなら、生物じゃないことがバレてしまう!
運んでるうちに目を覚ましてくれれば良いけど、もし覚まさなかったら……
そんなことを考えていたが、それよりも先にバレる危機に……
「いえ! 待ってください! この女性脈がありませんよ!? 体温もかなり下がっているみたいです!!」
手首に触れた救護隊の発言に肝が冷える。
ま、まずい……こんな事態で脈採られるなんて考えてもみなかった。あ、そうだ! 心臓は動いてるはず! そっちを確認してもらえれば……
「呼吸も無い! 心臓も動いてません! 瞳孔も開き切っています!!」
えっ!? まさか機能停止してるから全部動いてないのか!?
「「心臓が動いてない!?」」
ただ『強力な魔力に当てられて気絶しているだけだ』そう思っていた様子のレヴィとアスモが同時に驚きの声を上げた。
介抱よりも『暴食』の対処を優先していたため、私含めて三人ともがカイベルを後回しにしていた。
「いつからここに倒れてたんですか!?」
「……偵察隊が来る少し前から……」
「とすると……大きい魔力が消えたくらいからですか?」
「……多分、そう……」
「もう一時間近く経ってるじゃないですか!」
「この方は何の種族なんですか!?」
「私たちは『人間』と聞いていますが……」
私に代わってアスモとレヴィが受け答えしてくれる。
「人間族!? 魔界では希少種じゃないですか!」
「だとすると危ういぞ! 早く蘇生しないと人間族は蘇生できるまでの時間がかなり短いと亡者から聞いたことがある! 十分を過ぎたら蘇生確率が劇的に下がると……!」
「も、もう一時間ですよ!?」
救護隊に焦りと緊迫感が広がる。
「既に絶望的な状況だが……蘇生を試みてみよう。すぐに電気ショックだ! 雷魔術師!」
「はい!」
救護隊の雷魔術師らしき女性が、カイベルの胸に手を当て電気ショックで蘇生を促す。
一発目を喰らい、そのショックで機能が回復したらしくすぐに動き出した。
「おお! 蘇生した!」
「奇跡的に間に合ったようですね!」
「大丈夫ですか?」
と聞く救護隊の面々に、
「これは……皆様どうされたのですか?」
目が覚めたカイベルは上半身を起こし、この場に居る全員を見渡した。珍しく困惑気味だ。
「意識障害はありませんか?」
「……申し訳ありません、少々お待ちください」
一点を見つめて数秒動かなくなった。どうやら自身が蘇生されるまでのデータを取得しているらしい。
「……私は命拾いしたようですね。皆様、ご迷惑をおかけしました。命を救っていただきありがとうございます」
すぐに置かれた状況を理解し、座ったまま深々と頭を下げるカイベル。
「も、もう大丈夫ですか?」
「ええ、もう問題ありません。それよりもアルトラ様の怪我が酷いのでよろしくお願いします」
無事と分かり、アスタロトが話しかける。
「死んでしまわなくて安心しました。あなたの助言が無ければ、我が国は更に大きな被害を受けていたでしょう。ありがとうございました」
アスタロトがカイベルにも深々と頭を下げた。
「いえ、お役に立てたようで幸いです」
カイベルにひとしきりお礼を言った後、レヴィたちの方を向いた。
「それで女帝蟻はどうなったのでしょうか? 巨大な魔力反応を女帝蟻のものと推定してここへ偵察に来たのですが……」
「はい、そこで黒焦げになって転がっているのが女帝蟻の死骸です」
「あれが!? ではこちらで回収させていただきます」
「詳細をお話しする前に、まずベル……アルトラ殿を病院に運んでからにしましょう」
レヴィの先導により、まずは病院へ場所を移されることになった。
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「少しチリチリと違和感があるかもしれませんが、本日中には右腕と太ももの傷は完治すると思います。左腕の方は三日から一週間くらいはかかるかもしれません」
「はい、ありがとうございます」
回復魔術師さんたちは、術を施して退出していった。
対処が簡単なように見えるが、多分意識も鮮明で、命に別条は無いと判断されたからだろう。
入れ替わりにカイベル、レヴィ、アスモ、そしてアスタロトが入って来た。
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