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第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編
第495話 追悼、そして風の国を去る時
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しかし、その後もフレアハルト生存の続報は来ること無く……
女帝蟻撃破から一週間――
傷も癒えたため、外出が認められイルリースさんの空間転移魔法でカゼハナを訪れた。
「あ、あれが溶岩地帯ですか?」
「はい、もう大分冷えて固まっていますが、私では未だにこの辺りが限界の熱さです」
「送ってくれてありがとうございます。帰りは自分で帰れますので」
「では、私はここで失礼します」
イルリースさんは空間転移魔法で帰って行った。
ドロドロの溶岩地帯に変貌したと聞いていたが、この一週間で溶岩のほとんどが冷えて固まってしまい、最早捜索が不可能に等しい状況に……
そのため、一週間を目途に捜索は打ち切られ、赤龍峰から召集されたレッドドラゴンたちは、失意の中エアリアさんの空間転移魔法により赤龍峰へと帰還したそうだ。
残ったのは、私が連れて来た二十二人だけ。
固まってしまった溶岩地帯を見つめ、少し項垂れているフレイムハルトさんを見つけ、話しかける。
「フレイムハルトさん……」
「アルトラ殿……怪我は治ったようですね」
「その……あなたたちを連れて来てしまってごめんなさい……」
もし……フレアハルトが死ぬ未来が見えていたのなら、私は絶対に同行をお願いしたりはしなかっただろう。
アイツなら絶対に死なないという確信を持っていたからこそ協力を仰いだのだが……
その結果がこれか……
「我々は力が全ての戦士の種族です。生きるも死ぬも自身の責任。アルトラ殿が謝る必要はありません。むしろあの赤アリを世に放つことなく倒せたことを、私が兄上のお蔭で無事に生還できたことを褒めてやってください。ヤツが世に放たれていたら一体何千、何万の生物が死んだか分かりません」
心が痛い……しかし遺体すら見えないのでは死んだという実感は湧かない……
もしかしたらどこかで生きてるのではないか? そう考えてしまう。
「明日、カゼハナで追悼式とかいうものが開かれるそうなので、我々はそれに参加後、エアリア殿の空間魔法で赤龍峰まで送ってもらいます」
「分かりました」
少し会話に距離を感じるが、私の依頼による結果なのだからこの距離感も当然のことだろう。
アリサとレイアを見つけた。
フレアハルトと最も関りが深かったアリサとレイアは、既に泣き腫らしている状態だ。今も枯れることなく涙を流している。
話しかけるのも憚れるが……
「二人とも……」
「「………………」」
「ごめん……」
「「………………」」
「アルトラ様……少しの間……私たちに話しかけないでください……今は……顔も見たくありません……」
アリサからは完全無視され、レイアには明確な拒絶の言葉を聞く。二人とも顔を合わせてもくれなかった……
付き合いは一年ほどだが、ここまで明確な拒絶をされたことがなかったので、少なからずショックを受けた。
が、私の判断ミスが原因であるためこういう態度を取られても仕方ないことだろう。
「分かった……ごめんね……」
その言葉しか出てこなかった……
その場を静かに離れ、【ゲート】にてボレアースの病院へ戻った。
今後……レッドドラゴンたちとのお付き合いも難しくなるだろう。もしかしたらもうアルトレリアには寄り付かなくなるかもしれない。
◇
翌日――
回復魔法を受け、ほとんどの者が動けるようになったため、首都ボレアース、カゼハナの町、ヴァントウの町の三ヶ所で三国合同の戦没者追悼式が執り行われることとなった。
私とカイベルはボレアースにて参加。
レッドドラゴンたちは昨日の宣言通りカゼハナの町で、雷の国と樹の国はヴァントウの町での参加となった。
ボレアースでの式はキノコ岩の崖下にて執り行われた。
ジャイアントアントとの戦いの前に、私が吹き飛ばした雨雲も元通りになり、ボレアースは悲しみの小雨に降られる。
追悼が行われた後、場所をキノコ岩上部へと移して、戦没者の記念碑が建てられた場所で祈りを捧げる。
石碑が戦場であった崖下に建てられずキノコ岩の上に建てられた理由については、崖下に建てた場合、雨が降った時に水没してしまうからだそうだ。
風の国騎士たちの親族・親類も多く参加し、死者を悼んで涙を流す。
通例のジャイアントアント討伐であれば、ここまで大規模な戦死者を出すことは無かったそうだが、今回はあまりにも特殊なことが重なり過ぎていて、被害が甚大であったため追悼式を催す運びとなったようだ。
◇
追悼式が終わって翌日、アルトレリアに帰る日。
国の機能が、間借りした仮庁舎へと移されたため、アスタロトに挨拶をしに仮庁舎に赴く。
「アスタロト!」
「ベルゼビュート様、ごきげんよう」
「まあ、気分的にはごきげんようでもないんだけどね……」
「フレアハルト殿のことですか……」
「………………」
「今回の討伐作戦では様々な国に悲しい思いを強いることになってしまいました……」
「……うん、私からは何も言えないけど……」
「人間の世界は私は存じませんので分かりませんが、この世界では駆除や討伐で命を落とすことは珍しいことではありません。あまりお気になさらずに。心を潰してしまいます」
そうは言っても……魔界に来てから今まで身近なヒトが死ぬことなんて無かったからな……
「そうだ! 大事なことを伝えておかねばなりません。今回の報奨金についてです」
「やっぱりお金出るんだ」
「命を賭けて討伐に当たるわけですから、当然のことでしょう。報奨金はそれぞれの方々に支払われます。一応フレイムハルト殿にはお話しましたが、金銭の授受について要領を得ないところがあったので、きちんと伝えていただけるとありがたいです」
ああ……彼はアルトレリアで暮らしていたフレアハルトと違って、まだ銀行や貯金の概念が無いだろうからな……
「それからレッドドラゴンの方々にもお伝えください。フレアハルト殿には賞恤金 (※)として多額の報酬を支払う予定です」
(※賞恤金:本作二度目の登場。公務員に危険任務で死亡したり傷害を負ったりした時に、弔意やお見舞いの意味で支払われるお金だそうです)
このタイミングで伝えなきゃいけないってのも気が重いわ……
「そのレッドドラゴンたちは、カゼハナからどうしたかしら?」
「昨日の追悼式後、エアリアの空間転移魔法によってすぐに赤龍峰の方へ帰られたようです」
「そう……ありがとう。エアリアさんにもお礼を言っておいて。それじゃあ私もアルトレリアに帰るから。今後修復やら補償やらなんやらで忙しいと思うけど、頑張ってね」
「はい、ベルゼビュート様もお元気で。それから私から一つ、『思いつめないで』ください」
「……分かったよ、じゃあまたね」
【ゲート】にてカイベルと共に我が家へ帰還した。
◇
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
「いや、あなたも『ただいま』でしょ」
カイベルにツッコめるだけの余裕はまだあるらしい。
家の中が閑散としている。
リディアとネッココが居ないが……
「リディアとネッココは?」
「リナ様に預かっていただきました」
「そっか、じゃあ迎えとお礼をよろしくお願い。私は今日一日自室で寝るから、誰も入れないようにして」
「かしこまりました」
『思いつめるな』とは言われたが、それは無理という話だ。
今日一日だけでも、何も考えずに寝て過ごそう……
◇
アルトレリアに戻って翌日――
気が重いがアスタロトから言われたことをなるべく早く伝えるべく、赤龍峰へ赴いた。
「お帰りなさいアルトラ殿。父上は憔悴してしまっているので、私が話を聞きます」
出てきてくれたのはフレイムハルトさん。
どうやら族長さんは身体を壊してしまったようだ……
「アリサとレイアは?」
「現在は塞ぎ込んで出て来ません」
「そう……ですか……」
「とりあえず座りましょう、こちらへどうぞ」
王宮内の応接室のような場所へ通された。
そこは石造りの四角い部屋で、テーブルと椅子が並べられていた。
この火山内部の町って、一応こういった部屋もあるのね……誰がこんな熱いところへ訪問するか分からないけど……
あ、このテーブルと椅子も石造りだわ。
何気なくテーブルに設えられた椅子を引こうとしたところ――
!?
重たっ! 何キロあるのコレ!?
――百キロ二百キロは十分ありそうだ。筋力強化魔法を使ってようやく引き出せるほどに重い。
ようやく引けた……
「どうしましたか?」
「い、いえ……ちょ、ちょっと椅子が重かったもので……手間取ってしまいました」
座った状態で今度はテーブルに近付けようとしたが、びくともしないから諦めた。
「それで今日はどういった話ですか?」
「今回の報奨金の話です。風の国のアスタロトから要点を説明しておいてくれと言われたので来ました」
「ああ、それですか。銀行口座がどうのこうのと言われて、私では何のことか分からなかったので要りませんと断って来たのですが……」
「口座ならアルトレリアで作れますよ?」
「そうなのですか? まあ二十二人にそれを理解させるのも面倒ですので、我々の代わりにアルトラ殿が貰っておいてください」
「いやいやいや! 結構な金額ですよ!? 功労者への報奨金ですし!」
前回デスキラービーの時ですら一般兵に対して一千万程度の報酬があったから、今回功績が大きいフレイムハルトさんへの報酬額はかなり多いはず。フレアハルトは多分それに輪をかけて多いだろう。
「しかし赤龍峰に住んでいると使い道もありませんので……金銀財宝でなら頂きますが……」
ドラゴンと言えば宝を集めることで有名だ。
「じゃあそうしてもらいましょうか?」
「可能なのですか?」
「恐らくは可能だと思います……ところで、この火山内部でどうやって保管してるんですか? 金銀財宝だとここの熱では溶けてしまいそうですけど……」
「大事な物は我々のウロコから作った特殊な石箱に入れてあるんですよ。竜燐は抜いた後も強く魔力が残るのである程度の熱を遮断してくれます。まあ……紙のようなものは遮断しても燃えてしまうでしょうが」
「なるほど。そういうことですか」
以前族長さんから頂いた時から、この場所だと保管するのに溶けるんじゃないかと疑問に思っていた。
竜燐と言えば、色んなゲームでも強い力を持つことで有名だ。『竜燐で守ってるから』って言うだけである程度納得できてしまうくらいには強力なアイテム。
ってことは、以前族長さんから貰ったあの石箱も竜燐が混ぜてあるってことなのか。
「じゃあ金銀財宝で貰えるように打診してみます」
「お願いします。それと、アルトラ殿に一つ相談なのですが……兄上はアルトレリアに骨を埋めたいと話していたそうなので、アルトレリアに弔いたいと思うのですが……」
「もちろん、構いませんが……通常、レッドドラゴンはどうやって弔っているんですか?」
「この町のとある場所に火口に繋がる穴があり、そこへ骨を投げ入れ、赤龍峰の御山の溶岩と同化させることで弔いとします」
「じゃあ墓や石碑のような慣習は無いんですか?」
「ありますよ。その穴の近くに特別な魔石が鎮座しています。亜人社会のように個々人に墓を残すような風習はありませんが。今回は兄上の最後のお願いですから、アルトレリアの方式に則って弔ってやりたいと思います」
「あなた方がそれで良いと言うのなら……」
「遺体すら戻って来てはいないので形だけの墓になってしまいますが……余程住み心地が良かったのでしょうね。山に住んでいた頃とは随分と性格が変わりましたよ」
「へぇ~、そんなに変わったんですか?」
確かに最初の彼はかなり排他的だったからな…… (第42話参照)
「以前は眼光鋭く、誰に対しても厳しい態度を取っていた兄上でしたが、アルトレリアから帰って来た時には随分と柔和になり、他人への心配りもされるようになりました。レッドドラゴンの中には『腑抜けたんじゃないか?』と警戒感を持つ者もいましたが、私から見れば断然今の兄上の方が魅力的に見えました」
『腑抜けた』と思わせたところが、幽閉に繋がったわけね…… (第100話から第104話参照)
「でも、フレイムハルトさんは最初から随分と温和ですよね」
「私は気が小さいので兄上のように自信のある言動ができないだけですよ。では近々アルトレリアの墓地へ足を運びます」
「墓石とかどうしますか?」
「ちょうど良いので御山の外で働いてるリースヴュールとルルヤフラムに頼んで、手頃な石を用意してもらいます。葬儀の日にちについては追って報せを遣わせます」
「分かりました」
女帝蟻撃破から一週間――
傷も癒えたため、外出が認められイルリースさんの空間転移魔法でカゼハナを訪れた。
「あ、あれが溶岩地帯ですか?」
「はい、もう大分冷えて固まっていますが、私では未だにこの辺りが限界の熱さです」
「送ってくれてありがとうございます。帰りは自分で帰れますので」
「では、私はここで失礼します」
イルリースさんは空間転移魔法で帰って行った。
ドロドロの溶岩地帯に変貌したと聞いていたが、この一週間で溶岩のほとんどが冷えて固まってしまい、最早捜索が不可能に等しい状況に……
そのため、一週間を目途に捜索は打ち切られ、赤龍峰から召集されたレッドドラゴンたちは、失意の中エアリアさんの空間転移魔法により赤龍峰へと帰還したそうだ。
残ったのは、私が連れて来た二十二人だけ。
固まってしまった溶岩地帯を見つめ、少し項垂れているフレイムハルトさんを見つけ、話しかける。
「フレイムハルトさん……」
「アルトラ殿……怪我は治ったようですね」
「その……あなたたちを連れて来てしまってごめんなさい……」
もし……フレアハルトが死ぬ未来が見えていたのなら、私は絶対に同行をお願いしたりはしなかっただろう。
アイツなら絶対に死なないという確信を持っていたからこそ協力を仰いだのだが……
その結果がこれか……
「我々は力が全ての戦士の種族です。生きるも死ぬも自身の責任。アルトラ殿が謝る必要はありません。むしろあの赤アリを世に放つことなく倒せたことを、私が兄上のお蔭で無事に生還できたことを褒めてやってください。ヤツが世に放たれていたら一体何千、何万の生物が死んだか分かりません」
心が痛い……しかし遺体すら見えないのでは死んだという実感は湧かない……
もしかしたらどこかで生きてるのではないか? そう考えてしまう。
「明日、カゼハナで追悼式とかいうものが開かれるそうなので、我々はそれに参加後、エアリア殿の空間魔法で赤龍峰まで送ってもらいます」
「分かりました」
少し会話に距離を感じるが、私の依頼による結果なのだからこの距離感も当然のことだろう。
アリサとレイアを見つけた。
フレアハルトと最も関りが深かったアリサとレイアは、既に泣き腫らしている状態だ。今も枯れることなく涙を流している。
話しかけるのも憚れるが……
「二人とも……」
「「………………」」
「ごめん……」
「「………………」」
「アルトラ様……少しの間……私たちに話しかけないでください……今は……顔も見たくありません……」
アリサからは完全無視され、レイアには明確な拒絶の言葉を聞く。二人とも顔を合わせてもくれなかった……
付き合いは一年ほどだが、ここまで明確な拒絶をされたことがなかったので、少なからずショックを受けた。
が、私の判断ミスが原因であるためこういう態度を取られても仕方ないことだろう。
「分かった……ごめんね……」
その言葉しか出てこなかった……
その場を静かに離れ、【ゲート】にてボレアースの病院へ戻った。
今後……レッドドラゴンたちとのお付き合いも難しくなるだろう。もしかしたらもうアルトレリアには寄り付かなくなるかもしれない。
◇
翌日――
回復魔法を受け、ほとんどの者が動けるようになったため、首都ボレアース、カゼハナの町、ヴァントウの町の三ヶ所で三国合同の戦没者追悼式が執り行われることとなった。
私とカイベルはボレアースにて参加。
レッドドラゴンたちは昨日の宣言通りカゼハナの町で、雷の国と樹の国はヴァントウの町での参加となった。
ボレアースでの式はキノコ岩の崖下にて執り行われた。
ジャイアントアントとの戦いの前に、私が吹き飛ばした雨雲も元通りになり、ボレアースは悲しみの小雨に降られる。
追悼が行われた後、場所をキノコ岩上部へと移して、戦没者の記念碑が建てられた場所で祈りを捧げる。
石碑が戦場であった崖下に建てられずキノコ岩の上に建てられた理由については、崖下に建てた場合、雨が降った時に水没してしまうからだそうだ。
風の国騎士たちの親族・親類も多く参加し、死者を悼んで涙を流す。
通例のジャイアントアント討伐であれば、ここまで大規模な戦死者を出すことは無かったそうだが、今回はあまりにも特殊なことが重なり過ぎていて、被害が甚大であったため追悼式を催す運びとなったようだ。
◇
追悼式が終わって翌日、アルトレリアに帰る日。
国の機能が、間借りした仮庁舎へと移されたため、アスタロトに挨拶をしに仮庁舎に赴く。
「アスタロト!」
「ベルゼビュート様、ごきげんよう」
「まあ、気分的にはごきげんようでもないんだけどね……」
「フレアハルト殿のことですか……」
「………………」
「今回の討伐作戦では様々な国に悲しい思いを強いることになってしまいました……」
「……うん、私からは何も言えないけど……」
「人間の世界は私は存じませんので分かりませんが、この世界では駆除や討伐で命を落とすことは珍しいことではありません。あまりお気になさらずに。心を潰してしまいます」
そうは言っても……魔界に来てから今まで身近なヒトが死ぬことなんて無かったからな……
「そうだ! 大事なことを伝えておかねばなりません。今回の報奨金についてです」
「やっぱりお金出るんだ」
「命を賭けて討伐に当たるわけですから、当然のことでしょう。報奨金はそれぞれの方々に支払われます。一応フレイムハルト殿にはお話しましたが、金銭の授受について要領を得ないところがあったので、きちんと伝えていただけるとありがたいです」
ああ……彼はアルトレリアで暮らしていたフレアハルトと違って、まだ銀行や貯金の概念が無いだろうからな……
「それからレッドドラゴンの方々にもお伝えください。フレアハルト殿には賞恤金 (※)として多額の報酬を支払う予定です」
(※賞恤金:本作二度目の登場。公務員に危険任務で死亡したり傷害を負ったりした時に、弔意やお見舞いの意味で支払われるお金だそうです)
このタイミングで伝えなきゃいけないってのも気が重いわ……
「そのレッドドラゴンたちは、カゼハナからどうしたかしら?」
「昨日の追悼式後、エアリアの空間転移魔法によってすぐに赤龍峰の方へ帰られたようです」
「そう……ありがとう。エアリアさんにもお礼を言っておいて。それじゃあ私もアルトレリアに帰るから。今後修復やら補償やらなんやらで忙しいと思うけど、頑張ってね」
「はい、ベルゼビュート様もお元気で。それから私から一つ、『思いつめないで』ください」
「……分かったよ、じゃあまたね」
【ゲート】にてカイベルと共に我が家へ帰還した。
◇
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
「いや、あなたも『ただいま』でしょ」
カイベルにツッコめるだけの余裕はまだあるらしい。
家の中が閑散としている。
リディアとネッココが居ないが……
「リディアとネッココは?」
「リナ様に預かっていただきました」
「そっか、じゃあ迎えとお礼をよろしくお願い。私は今日一日自室で寝るから、誰も入れないようにして」
「かしこまりました」
『思いつめるな』とは言われたが、それは無理という話だ。
今日一日だけでも、何も考えずに寝て過ごそう……
◇
アルトレリアに戻って翌日――
気が重いがアスタロトから言われたことをなるべく早く伝えるべく、赤龍峰へ赴いた。
「お帰りなさいアルトラ殿。父上は憔悴してしまっているので、私が話を聞きます」
出てきてくれたのはフレイムハルトさん。
どうやら族長さんは身体を壊してしまったようだ……
「アリサとレイアは?」
「現在は塞ぎ込んで出て来ません」
「そう……ですか……」
「とりあえず座りましょう、こちらへどうぞ」
王宮内の応接室のような場所へ通された。
そこは石造りの四角い部屋で、テーブルと椅子が並べられていた。
この火山内部の町って、一応こういった部屋もあるのね……誰がこんな熱いところへ訪問するか分からないけど……
あ、このテーブルと椅子も石造りだわ。
何気なくテーブルに設えられた椅子を引こうとしたところ――
!?
重たっ! 何キロあるのコレ!?
――百キロ二百キロは十分ありそうだ。筋力強化魔法を使ってようやく引き出せるほどに重い。
ようやく引けた……
「どうしましたか?」
「い、いえ……ちょ、ちょっと椅子が重かったもので……手間取ってしまいました」
座った状態で今度はテーブルに近付けようとしたが、びくともしないから諦めた。
「それで今日はどういった話ですか?」
「今回の報奨金の話です。風の国のアスタロトから要点を説明しておいてくれと言われたので来ました」
「ああ、それですか。銀行口座がどうのこうのと言われて、私では何のことか分からなかったので要りませんと断って来たのですが……」
「口座ならアルトレリアで作れますよ?」
「そうなのですか? まあ二十二人にそれを理解させるのも面倒ですので、我々の代わりにアルトラ殿が貰っておいてください」
「いやいやいや! 結構な金額ですよ!? 功労者への報奨金ですし!」
前回デスキラービーの時ですら一般兵に対して一千万程度の報酬があったから、今回功績が大きいフレイムハルトさんへの報酬額はかなり多いはず。フレアハルトは多分それに輪をかけて多いだろう。
「しかし赤龍峰に住んでいると使い道もありませんので……金銀財宝でなら頂きますが……」
ドラゴンと言えば宝を集めることで有名だ。
「じゃあそうしてもらいましょうか?」
「可能なのですか?」
「恐らくは可能だと思います……ところで、この火山内部でどうやって保管してるんですか? 金銀財宝だとここの熱では溶けてしまいそうですけど……」
「大事な物は我々のウロコから作った特殊な石箱に入れてあるんですよ。竜燐は抜いた後も強く魔力が残るのである程度の熱を遮断してくれます。まあ……紙のようなものは遮断しても燃えてしまうでしょうが」
「なるほど。そういうことですか」
以前族長さんから頂いた時から、この場所だと保管するのに溶けるんじゃないかと疑問に思っていた。
竜燐と言えば、色んなゲームでも強い力を持つことで有名だ。『竜燐で守ってるから』って言うだけである程度納得できてしまうくらいには強力なアイテム。
ってことは、以前族長さんから貰ったあの石箱も竜燐が混ぜてあるってことなのか。
「じゃあ金銀財宝で貰えるように打診してみます」
「お願いします。それと、アルトラ殿に一つ相談なのですが……兄上はアルトレリアに骨を埋めたいと話していたそうなので、アルトレリアに弔いたいと思うのですが……」
「もちろん、構いませんが……通常、レッドドラゴンはどうやって弔っているんですか?」
「この町のとある場所に火口に繋がる穴があり、そこへ骨を投げ入れ、赤龍峰の御山の溶岩と同化させることで弔いとします」
「じゃあ墓や石碑のような慣習は無いんですか?」
「ありますよ。その穴の近くに特別な魔石が鎮座しています。亜人社会のように個々人に墓を残すような風習はありませんが。今回は兄上の最後のお願いですから、アルトレリアの方式に則って弔ってやりたいと思います」
「あなた方がそれで良いと言うのなら……」
「遺体すら戻って来てはいないので形だけの墓になってしまいますが……余程住み心地が良かったのでしょうね。山に住んでいた頃とは随分と性格が変わりましたよ」
「へぇ~、そんなに変わったんですか?」
確かに最初の彼はかなり排他的だったからな…… (第42話参照)
「以前は眼光鋭く、誰に対しても厳しい態度を取っていた兄上でしたが、アルトレリアから帰って来た時には随分と柔和になり、他人への心配りもされるようになりました。レッドドラゴンの中には『腑抜けたんじゃないか?』と警戒感を持つ者もいましたが、私から見れば断然今の兄上の方が魅力的に見えました」
『腑抜けた』と思わせたところが、幽閉に繋がったわけね…… (第100話から第104話参照)
「でも、フレイムハルトさんは最初から随分と温和ですよね」
「私は気が小さいので兄上のように自信のある言動ができないだけですよ。では近々アルトレリアの墓地へ足を運びます」
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何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
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