建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第18章 発展のアルトラルサンズとその影編

第501話 魔王回帰の能力を検証 その2

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「じゃあ、こっちから魔法は使えないから、カイベルから使ってみてもらえる? 魔王回帰レグレシオン前とどの程度感覚が違うか確認しておきたい」
「では行きます」

 その言葉の直後に放たれたのは、水のレーザー。
 ダイエット作戦で、私に最初のアウトを与えたあの忌まわしい能力だ。 (第436話参照)
 忌まわしい能力……そのはずだったが、何だか随分遅く感じる。

 難無く水を回避した。
 その後も四、五発の水のレーザーを撃たれたが、全て当たることなく回避。

「カイベル、それってダイエットの時と同じ魔法?」
「はい。寸分違わぬ水のレーザーです」
「ホントに? じゃあ別の魔法でももう何発か攻撃してみて」

 炎の球の連射、影から飛び出るトゲ、風の刃の二重重ね、落雷攻撃など、全てあの時に経験した魔法だが、あの時とは比べ物にならないくらい回避が容易だった。
 あの時にこの動きができてれば……一週間も自炊する必要無かったのに……
 でも――

「この魔王回帰レグレシオンって凄いわ。変身前と比べると比較にならない。じゃあ【悪食たちの晩餐会バッド・ディナー】の能力も一応確認しておくから、何か巨大な魔法を放ってもらえる?」
「了解しました」

 カイベルの右手に炎が集まり巨大な火球になる。
 かに思えたが、放つ前にカイベルの右手ごと狼の幻影が喰いちぎってしまった!

「カイベル!! な、何で!?」

 な……何てことだ……右手が……
 私は何をしたんだ……? 自動発動の能力なのか? いや、自動発動ではなかったはずだ。私の中の“理解”からすると半自動発動だったはず。

「問題ありません。私は痛みを感じませんので、創成魔法で直していただければ」
「あ、ああ、そうね……い、痛みが無くて良かったわ」

 もし生物だったら、ジャイアントアントの女帝蟻の時に私が味わった激痛を与えてしまっていたところだ……

 創成魔法で右手を修復。

「この【悪食たちの晩餐会バッド・ディナー】って、半自動発動に近い性能みたいだから、余程意識して使わないと魔力濃度が高いところを喰らいに行っちゃうらしい。無差別に周囲を食べないように気を付けないと」
「隔離結界をかじられなくて良かったですね」
「た、確かに……」

 隔離結界の方を喰われてたら、魔王回帰レグレシオンした魔王の強烈な魔力が流れ出るところだった……

「じゃあ、次、クリュー、手合わせお願いできる?」
「良いけど、お手柔らかにね」

 【悪食たちの晩餐会バッド・ディナー】は使わないようにしないとな……クリューには痛覚があるから万が一腕とか食べてしまったら大惨事だ。

「じゃあこっちから行くね」
「いつでもどうぞ」

 瞬足でクリューの目の前まで移動。

「えっ!?」

 というクリューの声もよそに続けざまに蹴りを繰り出す。
 が、一瞬驚きはしたものの、すぐにいつもの穏やかな表情に戻り、それを簡単に避けられてしまった。
 そのお返しにとばかりに、鎌による一振り。以前は全く余裕無く冷や汗をかきながら必死に避けていたが、あの当時と比べれば随分遅く見える。
 そしてばら撒かれる闇のつぶて。
 これも以前は為す術無く身体中にぶち当たり随分痛い目を見たが、今回は強化された風能力で飛んでくる闇のつぶての方向を変えて受け流す。 (第435話参照)
 そして二人とも一旦距離を離した。

「アルトラ、移動速度が物凄く上がってるね! 一瞬視界に捉えきれなくて驚いたよ」
「そうでしょうそうでしょう! 私も自分の動きに驚いてるわ!」

 まあ、魔王回帰レグレシオンの効果だから私の地力というわけではないが。
 それでも限定的な能力とは言え、強力な防衛手段を得たのは大きい。

 再び二人同時の接近し、体術と斬撃の応酬。
 こちらから二度三度と、蹴り、手刀を繰り出すも、どれもクリーンヒットにはならず。
 一般の亜人には到底見えないであろう速度での二人の攻防は続く。

 鎌を仕掛けられ、それを素手で受け流し、こちらから手刀を入れれば避けれら、蹴りを入れれば掴んでぶん投げられて着地。
 そんなことが数分続いて、カイベルから声がかけられる。

「アルトラ様、魔法もお試しになってはいかがでしょうか? 軽いものであれば私が隔離結界のサポートをして壊れないようにします」
「OK! じゃあ軽いやつを使う! 【風の刃・交差刃ウインドカッター・クロス】」

 二つの風の刃を重ねた風魔法。
 それを大量に発動させる。

「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃりゃりゃーーー!!」

 しかし、クリューは涼しげな表情で、全て闇で薙ぎ払ってかき消した。

「凄い! クリューってこんなに強かったんだ! じゃあこれならどう? 【風の刃・騒嵐刃ウインドカッター・ギガクロス!】」

 風の魔力を溜め風の刃を幾重にも重ねて撃ち出す。非常に重い風の刃。速度は多少落ちるが着弾した瞬間に刃の嵐となる。
 しかし、それを放った瞬間、カイベルから大声が発せられる。

「アルトラ様! それはダメです! 私のサポートでは耐え切れません! 隔離結界が破壊されてしまいます!」
「えっ!?」

 うっそ……やっちまったか……
 私の考えで“軽め”の魔法と考えていたものが、カイベルの想定する“軽め”と乖離していたようだ……
 これで私が魔王であることが全世界にバレてしまう……とそう思った矢先。

「相手が私ですから、問題無いですよ」

 鎌に溜めた闇の刃で着弾する前に風の球を一閃。その瞬間に闇が風の球を包み込み、徐々に小さくなり圧し潰れるように消滅した。

「た、助かった……でも、クリュー強すぎない? 魔王回帰レグレシオンした私と同等って……」
「いやいや、キミまだ全然本気じゃないでしょ? “軽めの魔法”だから対処できただけだよ」

 そう謙遜しているが、魔王回帰レグレシオンしてない、通常の魔王より強いのは明らかだ……
 今使った魔法だって、大罪継承前の私では放つのに相当な魔力充填時間が必要なものだった。

 少年のような顔して、まさかホントに魔王より強かったとは……私は一時いっときとは言えこんなヒトと戦おうとしてたわけか…… (第256話参照)
 そりゃ何やってもノーダメージで向かってくるはずだよ……あの時だって相当手加減されてたわけだね……
 下級の神を自称してはいたけど、これが死神って種族か……じゃあ上級の神様はどれほどの強いのよ……そりゃあ神様だから当然か。

「じゃ、じゃあある程度の確認も済んだし、元に戻るわ」

 魔王回帰レグレシオンを解除し、通常状態に戻った。
 そのまま隔離結界を出て、隔離結界を異空間に消滅させる。よし、これで魔王回帰レグレシオンで垂れ流された強烈な魔力も次元の彼方だ。

「あ~……何か凄くダルいわ……」

 まるで長距離走った後のような疲れ方。
 この能力は相当魔力を使うみたいだ。

「変身時に物凄い量の魔力を消費した気がするんだけど、私のMPって今どうなってる?」
「MPって何ですか?」

 クリューが横から聞いて来た。

「地球のTVゲームで魔法使うために使う『マジックポイント』を頭文字を取ってMPって略すの。マジックポイントは『マジックパワー』と呼ばれることもある。魔界で呼ぶには『マジックパワー』が適切かもね」
「アルトラ様と私はこのゲームからの設定にちなんで、この世界の消費魔力を便宜的に『MP』と呼んでいるのです」
「なるほど。ゲームの経験の無い私には分からない単語なわけだね」

 と言うか、残り魔力を明確に理解できてるヒトは多分魔界中に居ないだろう。私の場合はカイベルが数値化してくれてるため、あとどの程度残ってるか知ることができているというだけ。
 もちろん、この世界で他人に対して『MPの残りは大丈夫?』なんて言ったところで理解されることは無い。

「で、今の私の残りMPは?」
「はい、MAX時の四割程度まで減っています」
「この島に来た時はどれくらいあったの?」
「ほぼMAXの状態です」
「一時間かかってないのに、もう四割しかないの!?」

 燃費悪っ!!

「へ、変身するのにどれくらい魔力を消費したの?」
「MAX時のちょうど半分です」

 半分!? 変身するだけで半分も使うのか……そりゃ疲れるわけだ……

「それに加えて変身中は徐々に魔力を消費していきます」
「なるほど、MPが空になった時に強制的に変身解除されるわけね」
「はい」
「私のMPって確か健康診断の時に十七万くらいだったよね? それの半分だから魔王回帰レグレシオン使うには八万五千くらいのMPが必要になるってこと?」
「いえ、先日の風の国での魔王決戦時に他の魔王の方々を観察していましたが、その宿主の持つMPのうちMAX時の丁度半分を消費して変身する仕組みになっているようです」
「人それぞれ消費量が違うってこと? 不思議な能力ね」
「ですので、魔王回帰レグレシオンした後に僅かでも魔法を使えば、二回目の魔王回帰レグレシオンはできないことになりますね。魔王回帰レグレシオンしたからには当然その状態で戦うでしょうから、実質一度の戦闘で一回こっきりの手段ということになります」
「以前MP不足でもSTMスタミナ使って無理矢理魔法発動できるって言ってたよね? STMスタミナを使って変身することはできるの?」 (第7話参照)
「変身しようとすれば、身体が悲鳴を上げるので普通は不可能です。しかし、それでも過去の魔王の中には無理矢理二回目の変身をされた方が何人かいるようですが、その後三分ほど戦った後に死亡しています。死にたいのでなければお勧めしません」
「な、なるほど……やっぱり強力な手段である分、二回目の変身には耐えられないわけか。じゃあ、本当の意味で切り札ってわけね。使いどころは慎重に考えないといけない」

 これ、もし聞いておかなかったら、ピンチが訪れた時に二回目の変身をしていた可能性があるな……聞いておいて良かった……

「私のMP回復速度ってどれくらいだっけ?」
「睡眠時間一時間につき五千ほどです。今の状態からの完全回復には二十時間ほどを要します」

 私の睡眠時間は六、七時間だから、三日分以上寝ないと完全に回復しないわけか。
 魔王の能力だけあって消費量が凄い……
 万全じゃない状態でもう一度変身するには、『ひと眠り』というインターバルが必要なんだな……しかもそれは“一回目の変身で全く魔法を使わずに戦った”ということが前提のため、実際には『ひと眠り』で済むはずがない。

「じゃあ能力の検証も済んだし、家に帰りましょうか。クリューも付き合ってくれてありがとう」
「お役に立てて何よりです。じゃあ夕飯時にまたお邪魔しますね」

 そういえばそういう約束だっけ……

 こうして、各国に秘密裏に行われた魔王回帰レグレシオンの検証は終わり、【ゲート】にて忌まわしの地を去った。
 カイベルの右手を食われた時にはヒヤリとしたが、なんとも無くて良かった。
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