建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第18章 発展のアルトラルサンズとその影編

第517話 アルトレリアに出来た小学校の内検 その2

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 次に入った部屋もこじんまりとした部屋。

「ここは何になるのですか?」
「校長室の予定だね」
「『校長』と言うと、一番偉い方ですか?」
「そうだね」
「校長にはどなたがなるのですか? どなたかアテがあるのですか?」
「えっ!?」

 あ、そうか! 校長って、当然だけど誰かがやらなきゃならないんだ。
 でも、この町で校長ができそうなほど学がある者なんて居ないし……

「アルトラ様がやるのはどうですか?」
「いやいやいや、私そんなに頭良くないし無理だよ。それに国の代表と校長兼任だなんて、それこそ名前ばかりの校長になってしまうよ」

 負担が増えてしまうが、新しく来る先生に校長も兼任してもらうか?
 でも、この町以外から来たヒトに、いきなり校長になってくれってのはどうなんだ?
 カイベルに助言をお願いするか。

「私にちょっと考えがあるから任せてもらえる?」
「分かりました。それで、この部屋は主にどんなことに使うのですか?」
「さあ? 私も詳しくは知らないのよ……」

 だって、小学校時代も、中学校時代も、高校時代も、校長室なんて片手で数えるくらいしか入ったことないしね……
 高校に至ってはどこに校長室があったかすら知らないし……

「ひ、必要な部屋なのですか?」
「さあ? 『校長室』って言うくらいだから校長先生が居るであろうことは間違い無いんだけど……大事なお客様の対応は多分ここでするんだろうから、一応あった方が良いんじゃない?」
「大事なお客様? わたくしども役所でも大事なお客様の対応はすると思うのですが……」
「いや、『国単位』じゃなくて、『学校単位』のお客様かな。学校関係者の相談事とかをするんだと思う」

 ただ……まだアルトラルサンズこの国にはここ以外に学校が無いから、学校関係者で集まって会合が開かれるのも遠い未来になりそうだが……

「ああ、あとここで児童たちの表彰とかされるのを (テレビで)見たことがあるよ」
「『表彰』とは?」
「え~と……特別な功績を上げた子に対して、褒めそやすことかな」
「何か貰えるのですか?」

 まあ功績上げたって聞けば、何か褒賞があると思うのが普通だよね……

「多くは賞状を貰える」
「『賞状』とは?」
「簡単なものなら――」

 と言いながら創成魔法で賞状を作って見せた。

「こんな感じで紙に書かれたお褒めの言葉を貰うんだけど」
「紙ですか? それを貰って児童はどうするのですか?」
「誇らしく思う」
「ほ、他には?」
「え? 無いけど……」
「感情論ですか!?」
「ま、まあ、今はまだ何も無い校長室この場だからそう思うかもしれないけど、実際に功績上げて賞状貰ってみると意外と嬉しいものだからね。私の場合は額縁に入れて仏間の天井付近に飾ったりしてたよ」
「ほぉ~、なるほど」

 沢山貰い過ぎてる優秀な子は、もうそれ以上要らないものとして、半分に折ってぞんざいに扱う子も居たけど……
 私の場合はそれほど表彰される機会があったわけじゃないから、丁寧に筒状に丸めて持ち帰って、きちんと飾っていた。

「あと大きい大会になるとトロフィー貰えることがあるね。団体戦で優勝とかする強豪チームになると校長室にトロフィーがどんどん増えていく」
「『大会』って何でしょう?」
「え~と……チーム同士で戦うイベント……かな? 沢山のチームが集まって勝敗を決するスポーツを行うって感じかしらね」
「確か……最近子供たちの間で流行りつつあるサッカーとか野球がスポーツに当たるのですよね?」
「そうそう、そんな感じのやつ。広い意味で言えば運動すること全般がスポーツになるけど」

 スポーツに関しては先住してきたトーマスやリナさんら水の国アクアリヴィア組から匂わせる程度には伝わっていたが、諸外国からの流入が増えたためか、行商人からサッカーやら野球やらのスポーツ文化がきちんとした形で伝わってきた。
 ボールすら存在してないアルトレリアだったが、行商人が持ち込んで入手が容易だったのもあるだろう。
 運動神経の良い子たちの間ではサッカーが流行り始めている。いずれはチームが作られるかもしれない。

「『トロフィー』というのは?」

 創成魔法で片手に収まるくらいのトロフィーを作り出す。

「多くはこういう感じの金色の杯だよ。これは小ぶりだけど、大きいものは両手で持たないといけないくらい大きい」
「おお、これは貰えると嬉しいですね!」
「でしょ? じゃあこれをリーヴァントにあげるよ。町の運営をがんばってくれてるんで表彰します」
「ありがとうございます! 一生大事にします!」

 そんな大仰に喜ばれるほどの意味合いは無いのだけど……

「まあ、こんな具合にトロフィー貰ったら嬉しいでしょ?」
「そうですね。確かに誇らしく感じるところがあります」
「そういう『表彰をする部屋として』必要なんじゃないかなと思うのよ」
「なるほど、納得いきました」
「じゃあ、納得したところで次へ行きましょうか」

   ◇

 次に訪れたのは保健室。

「ここもそれほど大きくはないですね。ここはどんな部屋なのですか?」
「簡単に言ってしまえば、アスク先生の居る病院みたいな部屋かな。病院ほど専門的なことは扱えないけど、児童が怪我したり、気分が悪くなってしまった場合に利用される部屋だね。今はまだ無いけど、後々ベッドを四床ほど置く予定」
「怪我人が休む部屋ということですね」
「体調が悪い子が休んだりもするね」
「なるほど、熱がある子だったりとか?」
「そうそう」

 トロル族でも数少ない『熱を出したことがあるトロルヒト』だから、理解が早い。 (第376話参照)

「でも、ただ単にサボるためにベッドで寝てる子も居たけどね」
「そういうのは叱らないのですか?」
「だって先生側から見たら見た目からじゃ体調悪いのかサボりなのか分からないしね。そういう子は友達にはサボりって言うけど、先生には体調悪いって言うから」
「な、なるほど。体調悪いことに関連して一つ聞きたいのですが、例えば指を切断してしまったりした時もこの部屋に来れば良いのですか?」
「いやいやいや! そういうのはもう病院に直行だよ! すぐ行けばくっ付けられるかもしれないし!」

 指の切断を保健室で済まそうとするって、正気か!?

「そんなに大ごとですか? 三日ほどもすれば生えてきますが……?」
「…………まあ、トロル族あなたたちは再生力バカ高いから大した怪我じゃないと思ってるかもしれないけど、それ、他の亜人からしたら結構深刻な怪我だからね? 大抵の生物は自然治癒で指が生えてくるなんてことはないから」
「そ、そうなのですか……?」
保健室ここは小さい切り傷くらいの治療しかできない、ってのが基本なんだけど……保険の先生次第ではもっと大きい傷も治療できるかもね。例えば回復魔法が使える先生が来てくれたりする場合は、それこそ指の切断でも治してもらえるかもしれない」

 地球とは環境が違うから、回復魔法が使えるヒトが赴任してくれれば、致命傷でもなければ保健室で対応可能かもしれない。
 まあ、これはかなり望み薄だから計画としては組み込まない方が良い。ただでさえ光魔法が使える者が少ない魔界なのに、自国の回復魔術師をわざわざ他国に常駐させる形で派遣してくれるとは思えないからだ。
 光魔法を使えるアスク先生が来てくれたことだって、風の国のアスタロトが私を贔屓ひいきしてくれなければ実現できなかったくらいの幸運だし。

「あとは、身体測定とかやる部屋でもあるね」
「身体測定……以前アスク先生のところで実施されたやつですね」 (第426話から第428話参照)
「そうそう、あんな感じのこと。年に二、三回くらい行われるんだけど、実施される度に身長が伸びてたり、体重が増えてたりしてね、自分の成長を実感できるよ。健康手帳にその日測った身長や体重を記入していくんだけど、徐々に徐々に数字が大きくなっていくのが嬉しかった覚えがあるわ」

 生前は身長百六十センチくらいあったはずなのに、現在は随分縮んでしまったけど……

「わざわざ身長や体重を記入して残すのですか?」
「そうだね。子供は成長が早いから、それによってきちんと成長できてるか、きちんと栄養が取れてるかってことを確認する側面もあるみたい。これは余談なんだけど、そういう子供の物って親は結構後々まで残しておくことがあってね、私がまだ地球で生活してた時は学校で得たもの作ったものを沢山残してあったよ。身体記録も残ってたし、テストとかもわざわざファイルに挟んで取ってあったしね、通信簿とかも」

 幸いにも成績は良い方だったから、散々な点数のテストは残っていない。

「『通信簿』というのは初めて耳にします」
「年に三回、学校での生活を評価される機会があってね。その記録がされてるのが通信簿って言うの。その日にどんな成績だったかによって、各家庭の運命が変わることもあるという、恐ろしい書物よ……」

 見開き一ページの薄っい書物だが。

「運命が変わる……まさか生き死にに関わるんですか?」
「いや……流石にそこまで重いことにはならないけど…………成績が悪かった子は塾へ行かされたりして自由時間が減ったりするね」
「『塾』?」
「ああ、それはまだこの町に無いから覚えなくて良いよ。この町で塾が出来た時には自然と覚えると思うから」
「はぁ……」
「さて、次の部屋へ行きましょうか」

   ◇

「ここは何でしょう? ここもそれほど大きくはないですが」
「給食室だね。ここで作られたものが、子供たちのお昼ご飯になる」
「おお、ここがお昼ご飯を作る部屋ですか! コンロが複数あるのは分かるのですが、何かを置く台が沢山あるのはなぜですか?」
「ああ、ここは調理器具を置こうかと思ってね。電子レンジとかオーブンレンジとか」
「電子レンジとかオーブンレンジ?」
「そういう便利な道具が外国にはあるのよ。この際だから新しいものも導入しようと思ってね。後々国の機関にも置くようにする」
「それは良いですね!」
「ところで、給食というのは子供たちが食べるのですよね? なぜ給食室を一階に作ったのですか?」
「二階だと食材の搬入が大変になるからね」

 教室のある二階にする案もあったが、二階まで食材の搬入をするのは面倒だろうということで一階になった経緯がある。
 馬車から下ろして、大量の食材を搬入するのはかなり大変だろう。

「とすると、子供たちはわざわざ一階まで取りに来る必要があるということですか?」
「いや、給食が入った箱って結構重いからそれを持ちながら階段を上るのは子供の足では結構大変。それに、それをすると階段で引っかかったりして大惨事が引き起こされる可能性が高くなるからね」
「大惨事とは?」
「極たまにしか起こらないことだけど、給食の中身をぶちまけちゃう子が居るのよ。そうするとそれはもう食べられなくなってしまうから」
「食べられない? 床にこぼれるだけですよね? どこに問題が?」

 …………ん?
 ……あ、ああ、衛生観念の違いかな? このヒトたちはちょっと前まで地面に落ちたものでも食べてたから……

「まあ、固形物なら払って食べれば良いんだけど、例えばスープが砂や土に落ちた場合はわざわざすすったりしないでしょ?」
「そ、それは確かに……別の味も混ざってしまいますし……綺麗とは言い難いですからね」

 この返答からすると、リーヴァントは土に落ちたスープをすすったことがあるのかな……?

「同じような理由で、床にだって埃とか沢山あるから、ぶちまけてしまったものは綺麗とは言い難いのよ。埃の主成分は砂だしね」
「な、なるほど……では階段を使わないのならどうやって一階にある物を二階に運ぶのですか?」
「それをするのがこの扉の中身。中がエレベーターになってる」
「『エレベーター』? それも初めて聞く言葉ですね」
「一階から二階へ直接移動できる乗り物みたいなものかな。これは給食運搬用だからヒトは乗れないけど」
「直接移動できる? どこで使われてるのですか?」
「水の国や雷の国の首都とか、発展した町では常識的な機械だったよ。少し高い建物ならどこにでもあるんじゃないかな」
「そ、そうなのですか!?」
「以前旅行に行った時に現地で見かけなかった?」 (第137話参照)
「さあ? なにぶん初めての外国でしたので、これに乗ったかどうかすら定かではないです。リナさんに付いて行くので精一杯でしたので」

 初めての旅行が外国ではあちこち見る余裕は無かったか。

「アルトレリアでここ以外に作る予定は無いのですか?」
「この町にはまだ高い建物が無いから導入する必要性が無いからね。学校には必要だと思ったから導入したわけで」
「今動かせますか? どういったものなのか見てみたいのですが」
「う~ん……これも電気で動くから、ダムが稼働してからだね」
「そうですか……それは残念……」
「まあ、この町も発展目覚ましいし、すぐに他のところでも目にすることになるかもね。さあ次の部屋の内検に行きましょう」
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