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第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
第527話 作戦開始!
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私の掛け声と同時にフレアハルトとレイアも、別の潜伏先の家から飛び出していた。
強盗団は消音の魔法障壁の中に居るため、まだ気付いていない。
私たちが攻撃に移る寸前に、見張りが気付いた。
「……な、何だテメェら!」
と言う声が微かに聞こえたが消音魔道具によって音が制限されてるため聞き取りにくかったが、そんなことは構わず風を纏った拳をひと払いして暴風を起こし、見張りの一人を吹き飛ばす。
「くそっ! もう気付きやがったのか!」
見張りだった別の大男に大刀を振り下ろされたが、右腕で防御後、刃を滑らせて懐へ飛び込み、腹に風魔法を乗せた掌底を叩き込む。
風は衝撃と共に大男の身体を抜け――
「ぐぁ……ぁぁ……」
――と言ううめき声を上げながらその場に崩れ落ちる。
「邪魔するんじゃねぇ!!」
次は別の大男からの振り下ろし。
今度は左へ避けつつジャンプ。空中で回転して勢いを付け肩に向かってかかと落とし、そのまま空中で身体を捻って後頭部を蹴りつけた。
「ぐぁ!! ぅぅ……」
二人目の大男も前へ蹴り飛ばされた後、気絶。
私が三人倒す間に、別の方向からフレハルトとレイアがどんどん気絶させていくのが目の端に映った。私のように魔力による小細工をせずとも、自身に備わる腕力により一振りしただけで気絶相当の攻撃を与えられるらしい。二人が進行する度に気絶する人数が増えていく。
後ろに居たウィンダルシアも、いつの間にか私より前に出ていて、二人に負けずと次々に倒していく。
改めて三人の異常な強さを目の当たりにして、私は逆に冷静さを取り戻し勢いを失ってその場に佇む。
「【光源魔法】!」
奇襲が成功したと見て、光魔法で光源を空に浮かべて周囲を明るくした。
これで夜目が利かない私にも周りが良く見える。
敵方に目を向けると、ゴブリンのような小柄なヤツが多い。それと小さい人間のような姿の亜人が居る。多分ハーフリングとかいう種族かな? いずれにせよここに強奪に来ているグループは小型の亜人が多いみたいだ。
樹の国出身が多いからなのか、遠くを狙えるように弓矢を得物として使うようだが、フレアハルト、レイア、ウィンダルシアの三人には硬いウロコがあるため生半可な威力の弓矢では弾かれてしまって刺さりもしない。もちろん特異体質の私にも刺さらない。
小柄な種族以外は犬系、猫系の獣人が多い。それとそれぞれ一人くらいだがエルフ族とアラクネ族っぽいのが居る。黒い肌のエルフまで居る。初めて見た、あれってもしかしてダークエルフ?
リーダーはゴリラみたいだが……人語を介してるのを考えると、多分ゴリラ型の獣人なんだろう。
中には魔法を放ってくる者も居るが、三人とも手を振り払っただけでかき消している。
ここに居る者たちでは全く歯が立たない。
強盗団の中に精霊らしき人物は……聞いていた通り一人も居ない。やっぱり精霊は盗賊にはならないらしい。
じゃあ、火の国の砂賊を率いてた砂の精霊は何だ?って話になるんだけど…… (第400話参照)
彼は何で砂賊なんかやってたんだろう……
一頻り敵方の種族特徴を観察、そして私はこう呟いていた。
「これ……完全に過剰戦力だったな。もう突っ立てても三人が倒してくれちゃうわ。後は任せてしまおう」
もう私にはやることが無く、余裕が生まれたため周囲の平隊員たちの方を見回したところ、三人があまりに早く次々と倒していくため、私同様に若干引き気味の表情をしていた。
そして抵抗した後に続くのは強盗団の悲鳴の混ざった退却宣言。
「ひいぃ!!」
「この三人、強過ぎる!」
「退散! 退散だ! 逃げるぞ!」
とは言え、順調に思っても抜けはあるようで、三人が撃ち漏らした団員が一人二人と包囲網から逃げようと囲んでいる平隊員の方へ走る。
「どけぇ!!」
「大人しく捕まれ!!」
二人一組で撃ち漏らしを捕縛してもらうつもりだったが、三人がほとんどを倒してしまったため余裕が生まれ、一人に対して三から五人で対応することができるようになっていた。
「一斉にかかれ!」
「「「うおおおぉぉぉ!!」」」
強盗団一人に対して、平隊員数人で動きを止めた後、後ろ手に縛り上げる。
「く……くそっ!」
「やった! 初の逮捕だ!」
初めて自分たちで逮捕をして喜び勇んでいる平隊員たちを横目に、私はこの中のリーダーを追い詰める。
「さあ、神妙にお縄に着きなさい!」
「くそっ! 何でこんなに早く発覚したんだ!? 消音魔道具まで使っているのに! それに事前調べではこの辺り、この時間は真っ暗で誰も歩いてないって……」
「ああ、それね、少ししか消音されてなかったよ。多少消音されてたところで、深夜で甲高い音だから丸聞こえ」
「何だと!?」
「あんなにカンカンカンカン音漏れしてたら、いくら寝てても気付くよ」
もっとも、近隣住民は全員避難済みだから今この付近で寝てる者は皆無だが。
「それとね、この時間に犯行があるって情報を得ていたから、ご覧の通りバッチリ包囲してるし」
「見張られてるなんてそんな情報は貰ってないぞ!?」
「囮にするために頭目に騙されたんじゃない?」
「くそっ! 持って帰ったら一つあたり数百億……一生遊んで暮らせるって言うから参加したのに……事前調査で岩から剥がすのも簡単だって言ってたのに、全然取れねぇじゃねぇか!!」
そんな嘘吐いたのか……どう見たって簡単には取り外せないだろ……岩に埋めてあるんだから。いくらゴリラが握力強くたってそこまで容易な造りにはしていない。
きっとこの岩にガッチリ埋まってるドアを見て、絶望的な心境になったんじゃないかしら?
「ま、ご愁傷様。国に帰ったら頑張ってお勤めを果たしてください」
この場の強盗団員のほとんどが気絶しているのを確認し、平隊員たちの方へ向き直る。
「じゃあ、隊員のみんな、捜査官が引き取りに来るまで逃げられないようにするから伸びてる強盗団を全員一ヶ所に集めて。あ、リーダーのあなたも逃げようと思わないでね。私の部下がちゃんと見張ってるから」
と、ウィンダルシアを見張りに付ける。
リーダーに対して睨みを利かせるウィンダルシア。
逃げたいが、さっきその強さを目の当たりにしてしまったため、蛇に睨まれた蛙のごとく動けずにいる。
「うぅ……くそが……田舎のくせに、こんな戦力を持ってるなんて……」
そして、平隊員が気絶してる団員の運搬を開始する。
それと同時にゼロ距離ドアが開き、アルトラ邸の方からカイベルが出て来た。
「あ、そっちも終わった?」
「はい。隊員の皆様、申し訳ありませんが、アルトラ邸の庭で気絶なさっている強盗団員の運び出しもお願いします。拘束魔法で拘束してありますので目を覚ましても問題無いかと思います」
「「「了解!!」」」
ドアからアルトラ邸の方を覗いてみると二十人くらい無造作に倒れている……アルトラ邸前ドアは包囲網も張ってなかったのに、どうやって全員倒したんだろう?
「カイベル、一人でどうやって二十人も倒したの? 逃げるヤツだって居たでしょ?」
「はい。風魔法で強盗団たちの周囲の空間の空気から酸素だけ分離させて集め、一瞬で酸欠状態にしました。私はそもそも呼吸をしていないので酸素があろうと無かろうと活動できますので。その後に【影縛り】で拘束を」
あ~、なるほど。酸素不足で一斉に失神したわけか。全く傷付けずに捕縛できる良い方法だ。
良い方法なんだけども……残念ながらこれは私ではできそうにないな……空気の成分なんて見分け付かないし。
◇
セントラ家自宅前のドアとアルトラ邸前のドアに居た強盗団員全員を一ヶ所に集めた。
「何人居た?」
「え~と……両側のドア合わせて六十三人ですかね」
「六十!?」
多過ぎだろ! 私三人しか倒してないけど……
岩削るのだってそんなに数居ても余ってしまうのに。余分だったヤツらは見つかった時用に警察官たちを妨害するために居たってところかしら?
「ちょっと待てよ? ここに六十人って……三ヶ所あるから、単純計算で百八十人!? あれからまだ増えたってこと!?」
「……いえ、狙っているドアのところは元々の強盗団員くらいしかいないのでもっと少ないです。現地で増やすのは中々無理があるようで団員の増加もごく少数ですね」
とカイベルが小声で即座に否定。
「そ、そっか。まあとりあえずこの場は終わったってことで強盗団には捕まっててもらいましょうか。【鋼鉄の鉄柵牢】!」
物質魔法を使い、一ヶ所に集めた強盗団員を鉄で出来た檻で囲んだ。
「じゃあ、後で樹の国の方々に引き渡すから、少しの間大人しくしててね」
その時、通信魔道具にフリアマギアさんから通信。
『アルトラ殿! 私の担当する『川近くのドア』に頭目が現れました!』
「分かりました、すぐに向かいます」
『……しかし……すみません、ちょっと油断しちゃいました……想定しない方法で一瞬のうちにドアを持ち去られてしまいました!』
「えっ!? 岩から剥がして!?」
『いえ、埋まってる地面ごと掘り出して持って行かれました!』
「掘り出して!? 土魔法ですか!?」
『いえ、巨人化して両手で掘り出して持って行かれました』
マジか……その手があったか……
巨人なら地面ごと掘り出して持って行っちゃえば、わざわざキンコンカンコン岩を剥がす必要が無いんだ……持って行った先で剥がせば良いわけだし。
「フリアマギアさんは怪我無いですか?」
『私は問題ありません! 強盗団も頭目と数人以外は大半を捕まえましたが……何人か逃がしてしまいました』
「頭目はどこへ?」
『町周りの第一壁を跨いで川沿いを南に向かいました。南下して樹の国へ逃げ帰るつもりでしょう。――』
よ、良かった……川より更に西にはレッドトロルたちが多く住む第二地区がある。そっちに行かずに南下してくれたってことか……ドアに近くない住人は避難してない者も居るし、第二地区の方に行かれてたら大混乱必至だった。
樹の国のある場所は、アルトレリアから南西の方角だから、ドアを持ったまま逃げ帰ろうとしてるわけだね。
『――現在追跡してますが、相手の走行速度が速く、私の風魔法ブーストではどんどん突き放されています! 早めにこちらに来てください!――』
風魔法ブーストで追いつけないって、どれくらいの大きさの巨人なんだ?
岩も両手で掘り出して持って行ったって話だし、聞いてる限り五メートルや十メートルなんて大きさじゃなさそう。
『――ユグドの大森林に入られてしまえば、もうそこは彼らの領域です! 追跡は困難になってしまいます!』
確かに……
『魔力マーキング』は空間魔法系に属するもので、私が勝手にとそう名付けているだけに過ぎないが、この能力は追跡に関しては万能なんじゃないかと考えていた。
しかし先日カイベルに指摘され、魔力でマーキングしても短い距離しか捕捉できないという話を聞いた。数十キロも数百キロも離れられるともう捕まえられない可能性が高い。
大森林内だと私が行ったことある場所は限られてるし、カイベルに居場所を特定してもらっても捜すのに骨が折れそうだ。ここで絶対に捕まえておかないと!
「逆側のドアはどうなってます?」
『エールデさん部下のエトラックさんが対応していますが、そっちにも巨人が居るようで苦戦しているみたいです』
岩ごと持って行けるように、巨人複数で犯行に及んだってわけか。
なるほど、これなら時間なんてかける必要無いわ。しかも空間魔法で追跡できる私が魔力封印状態になったとなれば、成功率は各段に上がる。
やっぱり道中でスカウトしたヤツらは最初から捨て駒のつもりで、分け前あげるつもりなんて毛頭無かったわけね。
と言うか、もしかしてデミタイタン族みたいな、拡縮自在な巨人族が二人以上居ないか? そうじゃないと一般の背の高さしかない亜人に紛れて潜むなんて難しいと思うんだけど……
エールデさんとカーデュアルが担当している『正門前ドア ⇔ 麦畑前ドア』間の様子も聞いておくか。
エールデさんへ通信。
「エールデさん、そちらの様子はどうですか?」
『正門前ドアと麦畑前ドアの強盗団員は全員捕縛しました。アリサ殿の奮戦により大した被害もありません』
「銀石の粉は?」
『浴びました。ですので、カーデュアルから強盗団側に報せが行っていれば、アルトラ殿は現在空間魔法が使えなくなってると誤認されているはずです。そちらはどうでしょうか?』
「フリアマギアさんからの通信で、ドアが一対盗られてしまったみたいです」
『何ですと!? フリアマギアは失敗したんですか!?』
「詳しいことは分かりませんが、相手が一枚上手だったようで……これから私も追跡を始めます」
『了解しました』
「カーデュアルは近くに居ますか?」
『強盗団の捕縛処理を行なっています。俺がアルトラ殿と通信していることに気付いてはいないようです』
「分かりました。一旦通信を切ります。次は頭目を強制転移させた時に繋げますので準備しておいてください」
『了解』
次はカーデュアルに通信する。
強盗団は消音の魔法障壁の中に居るため、まだ気付いていない。
私たちが攻撃に移る寸前に、見張りが気付いた。
「……な、何だテメェら!」
と言う声が微かに聞こえたが消音魔道具によって音が制限されてるため聞き取りにくかったが、そんなことは構わず風を纏った拳をひと払いして暴風を起こし、見張りの一人を吹き飛ばす。
「くそっ! もう気付きやがったのか!」
見張りだった別の大男に大刀を振り下ろされたが、右腕で防御後、刃を滑らせて懐へ飛び込み、腹に風魔法を乗せた掌底を叩き込む。
風は衝撃と共に大男の身体を抜け――
「ぐぁ……ぁぁ……」
――と言ううめき声を上げながらその場に崩れ落ちる。
「邪魔するんじゃねぇ!!」
次は別の大男からの振り下ろし。
今度は左へ避けつつジャンプ。空中で回転して勢いを付け肩に向かってかかと落とし、そのまま空中で身体を捻って後頭部を蹴りつけた。
「ぐぁ!! ぅぅ……」
二人目の大男も前へ蹴り飛ばされた後、気絶。
私が三人倒す間に、別の方向からフレハルトとレイアがどんどん気絶させていくのが目の端に映った。私のように魔力による小細工をせずとも、自身に備わる腕力により一振りしただけで気絶相当の攻撃を与えられるらしい。二人が進行する度に気絶する人数が増えていく。
後ろに居たウィンダルシアも、いつの間にか私より前に出ていて、二人に負けずと次々に倒していく。
改めて三人の異常な強さを目の当たりにして、私は逆に冷静さを取り戻し勢いを失ってその場に佇む。
「【光源魔法】!」
奇襲が成功したと見て、光魔法で光源を空に浮かべて周囲を明るくした。
これで夜目が利かない私にも周りが良く見える。
敵方に目を向けると、ゴブリンのような小柄なヤツが多い。それと小さい人間のような姿の亜人が居る。多分ハーフリングとかいう種族かな? いずれにせよここに強奪に来ているグループは小型の亜人が多いみたいだ。
樹の国出身が多いからなのか、遠くを狙えるように弓矢を得物として使うようだが、フレアハルト、レイア、ウィンダルシアの三人には硬いウロコがあるため生半可な威力の弓矢では弾かれてしまって刺さりもしない。もちろん特異体質の私にも刺さらない。
小柄な種族以外は犬系、猫系の獣人が多い。それとそれぞれ一人くらいだがエルフ族とアラクネ族っぽいのが居る。黒い肌のエルフまで居る。初めて見た、あれってもしかしてダークエルフ?
リーダーはゴリラみたいだが……人語を介してるのを考えると、多分ゴリラ型の獣人なんだろう。
中には魔法を放ってくる者も居るが、三人とも手を振り払っただけでかき消している。
ここに居る者たちでは全く歯が立たない。
強盗団の中に精霊らしき人物は……聞いていた通り一人も居ない。やっぱり精霊は盗賊にはならないらしい。
じゃあ、火の国の砂賊を率いてた砂の精霊は何だ?って話になるんだけど…… (第400話参照)
彼は何で砂賊なんかやってたんだろう……
一頻り敵方の種族特徴を観察、そして私はこう呟いていた。
「これ……完全に過剰戦力だったな。もう突っ立てても三人が倒してくれちゃうわ。後は任せてしまおう」
もう私にはやることが無く、余裕が生まれたため周囲の平隊員たちの方を見回したところ、三人があまりに早く次々と倒していくため、私同様に若干引き気味の表情をしていた。
そして抵抗した後に続くのは強盗団の悲鳴の混ざった退却宣言。
「ひいぃ!!」
「この三人、強過ぎる!」
「退散! 退散だ! 逃げるぞ!」
とは言え、順調に思っても抜けはあるようで、三人が撃ち漏らした団員が一人二人と包囲網から逃げようと囲んでいる平隊員の方へ走る。
「どけぇ!!」
「大人しく捕まれ!!」
二人一組で撃ち漏らしを捕縛してもらうつもりだったが、三人がほとんどを倒してしまったため余裕が生まれ、一人に対して三から五人で対応することができるようになっていた。
「一斉にかかれ!」
「「「うおおおぉぉぉ!!」」」
強盗団一人に対して、平隊員数人で動きを止めた後、後ろ手に縛り上げる。
「く……くそっ!」
「やった! 初の逮捕だ!」
初めて自分たちで逮捕をして喜び勇んでいる平隊員たちを横目に、私はこの中のリーダーを追い詰める。
「さあ、神妙にお縄に着きなさい!」
「くそっ! 何でこんなに早く発覚したんだ!? 消音魔道具まで使っているのに! それに事前調べではこの辺り、この時間は真っ暗で誰も歩いてないって……」
「ああ、それね、少ししか消音されてなかったよ。多少消音されてたところで、深夜で甲高い音だから丸聞こえ」
「何だと!?」
「あんなにカンカンカンカン音漏れしてたら、いくら寝てても気付くよ」
もっとも、近隣住民は全員避難済みだから今この付近で寝てる者は皆無だが。
「それとね、この時間に犯行があるって情報を得ていたから、ご覧の通りバッチリ包囲してるし」
「見張られてるなんてそんな情報は貰ってないぞ!?」
「囮にするために頭目に騙されたんじゃない?」
「くそっ! 持って帰ったら一つあたり数百億……一生遊んで暮らせるって言うから参加したのに……事前調査で岩から剥がすのも簡単だって言ってたのに、全然取れねぇじゃねぇか!!」
そんな嘘吐いたのか……どう見たって簡単には取り外せないだろ……岩に埋めてあるんだから。いくらゴリラが握力強くたってそこまで容易な造りにはしていない。
きっとこの岩にガッチリ埋まってるドアを見て、絶望的な心境になったんじゃないかしら?
「ま、ご愁傷様。国に帰ったら頑張ってお勤めを果たしてください」
この場の強盗団員のほとんどが気絶しているのを確認し、平隊員たちの方へ向き直る。
「じゃあ、隊員のみんな、捜査官が引き取りに来るまで逃げられないようにするから伸びてる強盗団を全員一ヶ所に集めて。あ、リーダーのあなたも逃げようと思わないでね。私の部下がちゃんと見張ってるから」
と、ウィンダルシアを見張りに付ける。
リーダーに対して睨みを利かせるウィンダルシア。
逃げたいが、さっきその強さを目の当たりにしてしまったため、蛇に睨まれた蛙のごとく動けずにいる。
「うぅ……くそが……田舎のくせに、こんな戦力を持ってるなんて……」
そして、平隊員が気絶してる団員の運搬を開始する。
それと同時にゼロ距離ドアが開き、アルトラ邸の方からカイベルが出て来た。
「あ、そっちも終わった?」
「はい。隊員の皆様、申し訳ありませんが、アルトラ邸の庭で気絶なさっている強盗団員の運び出しもお願いします。拘束魔法で拘束してありますので目を覚ましても問題無いかと思います」
「「「了解!!」」」
ドアからアルトラ邸の方を覗いてみると二十人くらい無造作に倒れている……アルトラ邸前ドアは包囲網も張ってなかったのに、どうやって全員倒したんだろう?
「カイベル、一人でどうやって二十人も倒したの? 逃げるヤツだって居たでしょ?」
「はい。風魔法で強盗団たちの周囲の空間の空気から酸素だけ分離させて集め、一瞬で酸欠状態にしました。私はそもそも呼吸をしていないので酸素があろうと無かろうと活動できますので。その後に【影縛り】で拘束を」
あ~、なるほど。酸素不足で一斉に失神したわけか。全く傷付けずに捕縛できる良い方法だ。
良い方法なんだけども……残念ながらこれは私ではできそうにないな……空気の成分なんて見分け付かないし。
◇
セントラ家自宅前のドアとアルトラ邸前のドアに居た強盗団員全員を一ヶ所に集めた。
「何人居た?」
「え~と……両側のドア合わせて六十三人ですかね」
「六十!?」
多過ぎだろ! 私三人しか倒してないけど……
岩削るのだってそんなに数居ても余ってしまうのに。余分だったヤツらは見つかった時用に警察官たちを妨害するために居たってところかしら?
「ちょっと待てよ? ここに六十人って……三ヶ所あるから、単純計算で百八十人!? あれからまだ増えたってこと!?」
「……いえ、狙っているドアのところは元々の強盗団員くらいしかいないのでもっと少ないです。現地で増やすのは中々無理があるようで団員の増加もごく少数ですね」
とカイベルが小声で即座に否定。
「そ、そっか。まあとりあえずこの場は終わったってことで強盗団には捕まっててもらいましょうか。【鋼鉄の鉄柵牢】!」
物質魔法を使い、一ヶ所に集めた強盗団員を鉄で出来た檻で囲んだ。
「じゃあ、後で樹の国の方々に引き渡すから、少しの間大人しくしててね」
その時、通信魔道具にフリアマギアさんから通信。
『アルトラ殿! 私の担当する『川近くのドア』に頭目が現れました!』
「分かりました、すぐに向かいます」
『……しかし……すみません、ちょっと油断しちゃいました……想定しない方法で一瞬のうちにドアを持ち去られてしまいました!』
「えっ!? 岩から剥がして!?」
『いえ、埋まってる地面ごと掘り出して持って行かれました!』
「掘り出して!? 土魔法ですか!?」
『いえ、巨人化して両手で掘り出して持って行かれました』
マジか……その手があったか……
巨人なら地面ごと掘り出して持って行っちゃえば、わざわざキンコンカンコン岩を剥がす必要が無いんだ……持って行った先で剥がせば良いわけだし。
「フリアマギアさんは怪我無いですか?」
『私は問題ありません! 強盗団も頭目と数人以外は大半を捕まえましたが……何人か逃がしてしまいました』
「頭目はどこへ?」
『町周りの第一壁を跨いで川沿いを南に向かいました。南下して樹の国へ逃げ帰るつもりでしょう。――』
よ、良かった……川より更に西にはレッドトロルたちが多く住む第二地区がある。そっちに行かずに南下してくれたってことか……ドアに近くない住人は避難してない者も居るし、第二地区の方に行かれてたら大混乱必至だった。
樹の国のある場所は、アルトレリアから南西の方角だから、ドアを持ったまま逃げ帰ろうとしてるわけだね。
『――現在追跡してますが、相手の走行速度が速く、私の風魔法ブーストではどんどん突き放されています! 早めにこちらに来てください!――』
風魔法ブーストで追いつけないって、どれくらいの大きさの巨人なんだ?
岩も両手で掘り出して持って行ったって話だし、聞いてる限り五メートルや十メートルなんて大きさじゃなさそう。
『――ユグドの大森林に入られてしまえば、もうそこは彼らの領域です! 追跡は困難になってしまいます!』
確かに……
『魔力マーキング』は空間魔法系に属するもので、私が勝手にとそう名付けているだけに過ぎないが、この能力は追跡に関しては万能なんじゃないかと考えていた。
しかし先日カイベルに指摘され、魔力でマーキングしても短い距離しか捕捉できないという話を聞いた。数十キロも数百キロも離れられるともう捕まえられない可能性が高い。
大森林内だと私が行ったことある場所は限られてるし、カイベルに居場所を特定してもらっても捜すのに骨が折れそうだ。ここで絶対に捕まえておかないと!
「逆側のドアはどうなってます?」
『エールデさん部下のエトラックさんが対応していますが、そっちにも巨人が居るようで苦戦しているみたいです』
岩ごと持って行けるように、巨人複数で犯行に及んだってわけか。
なるほど、これなら時間なんてかける必要無いわ。しかも空間魔法で追跡できる私が魔力封印状態になったとなれば、成功率は各段に上がる。
やっぱり道中でスカウトしたヤツらは最初から捨て駒のつもりで、分け前あげるつもりなんて毛頭無かったわけね。
と言うか、もしかしてデミタイタン族みたいな、拡縮自在な巨人族が二人以上居ないか? そうじゃないと一般の背の高さしかない亜人に紛れて潜むなんて難しいと思うんだけど……
エールデさんとカーデュアルが担当している『正門前ドア ⇔ 麦畑前ドア』間の様子も聞いておくか。
エールデさんへ通信。
「エールデさん、そちらの様子はどうですか?」
『正門前ドアと麦畑前ドアの強盗団員は全員捕縛しました。アリサ殿の奮戦により大した被害もありません』
「銀石の粉は?」
『浴びました。ですので、カーデュアルから強盗団側に報せが行っていれば、アルトラ殿は現在空間魔法が使えなくなってると誤認されているはずです。そちらはどうでしょうか?』
「フリアマギアさんからの通信で、ドアが一対盗られてしまったみたいです」
『何ですと!? フリアマギアは失敗したんですか!?』
「詳しいことは分かりませんが、相手が一枚上手だったようで……これから私も追跡を始めます」
『了解しました』
「カーデュアルは近くに居ますか?」
『強盗団の捕縛処理を行なっています。俺がアルトラ殿と通信していることに気付いてはいないようです』
「分かりました。一旦通信を切ります。次は頭目を強制転移させた時に繋げますので準備しておいてください」
『了解』
次はカーデュアルに通信する。
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因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。
任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。
極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ!
そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。
そんなある日転機が訪れる。
いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。
昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。
そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。
精霊曰く御礼だってさ。
どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。
何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ?
どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。
俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。
そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。
そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。
ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。
そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。
そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ?
何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
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