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第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
第530話 vs悪巨人強盗団幹部 その3(強盗団・副頭目デスポーテス その1)
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「お?」
今転倒した拍子にゼロ距離ドアを落としたらしい。
岩がくっ付いたままのドアが転がっている。
「良かった、壊れてもいない。ドアも戻って来たし、後は逆側のドアがどうなってるかだけど……あちらを担当しているエトラックさんが防衛に成功してれば潤いの木の前に出るはずだけど……」
転がっているドアをそっと開けてみると………………飛び込んで来た光景は、空中に浮いて動いてる景色だった。
と言うことは……
「ゲッ……こっち側も今まさに持ち去られてる最中だ……」
つまり……エトラックさんは防衛に失敗しちゃったみたいだ……彼は無事だろうか?
タイランテスとは別に巨人が居るってフリアマギアさんが言ってたけど、ドアから首だけ出して下を見ると走ってる脚が見えるから、多分さっきと同じように脇に抱えて持って行かれているのだと思われる。
ドアが盗られたということはエトラックさんは戦いに負けたということになるが、どの程度の怪我を負っているのか気になったため、一度ドアを閉めエトラックさんに通信を試み……ようとしたところ、先に向こうから通信が来た。
「はい、アルトラです」
『アルトラ殿? エトラックの部下です。申し訳ありません……ドアを奪われてしまいました……』
あれ? エトラックさんの部下? 本人は通信できないくらい重傷だってことか?
「部下の方? みなさん無事なんですか?」
『部隊はほぼ全滅の状態、重傷者が多く出ています。我々の担当するところに来たのは巨人のみで構成された部隊で、我々も全力でドア強奪を阻止しようとしましたが、巨人複数相手では分が悪く……任務続行不可能となってしまったためアルトラ殿に連絡しました』
巨人だけの部隊!?
巨人族は目立つから、デミタイタン族みたいな拡縮自在の種族でなけれは見つけ次第、私やフレアハルトらが対処してくれれば済むと思ってたけど……
そうか! 潤いの木近辺は山や自然が多い場所だ! だから巨人が複数人居ても、ヒトの目に触れにくいのか!
「死者も出てるんですか?」
『現在のところはまだ出ていませんが……危ない者が何人かいます』
くっ……私の担当のところより、潤いの木のドアにフレアハルトやウィンダルシアらを配するべきだったか。私担当のドア以外は樹の国で受け持つって言ってたけど、無理を言ってでも分散して配置しておくんだった。私のところはこれでもかってくらい過剰戦力だったし。
カイベルに巨人族が何人居るか、事前に聞いておくだけでも対処は容易だった……!
よりによって、戦力的な面で弱いヒトと巨人ではないヒトのところに、向こう側の最大戦力をぶつけられるとは……
「エトラックさんはどうしました?」
『骨が何ヶ所か折れているはずですが……回復魔術師の応急処置を受けた後、巨人たちを追って行きました。私はエトラックに連絡役を任されたため、まずは上官のエールデに。次いでアルトラ殿に連絡致しました』
そんな状態で追跡したのか? 大丈夫だろうか?
「逃げたのは何人ですか?」
『三人です! 比較的弱かった二人は何とか捕らえましたが、残りの三人は手に負えずドアを持って行かれてしまいました! そのうちの一人は『デスポーテス』と言う頭目の弟と思われる男です!」
弟? それが頭目とは別に居る拡縮自在の巨人か。
「ただ、全員多少なりとも手傷を負わせていますのでヤツらの流した血を辿れば追跡は可能です。その辺りはエールデに話してこちらへの応援に来てもらうよう要請しました」
応援要請って言ってもな……町から潤いの木まで五十キロくらいあるし、潤いの木に通じてるドアは今現在私の手元にある。エールデさんに要請したところで今からの追跡は実質不可能に近い……
ただ……潤いの木は町から北の方角にあり、樹の国は中立地帯から見て南にあるからどうしても町に近付かなければ樹の国へは逃げられない。
私たちが作った川をバカ正直に南下して来てくれれば、こちらからも北上すれば鉢合わせるが……相手も流石にそこまでバカではないだろうから、きちんと整備してあって見通しやすい川沿いを南下してくることなんかあり得ないだろう。山岳部や森林地帯、荒野なんかの別のルートを辿って町に近寄るのを避けつつ、樹の国へ逃げると考えた方が良い。
このドアをエールデさんのところに持って行けば、ドアを開けてすぐさま接敵できるが……残念なことにこのドア、まだ岩がくっ付いてて私じゃ持ち上がらない。かと言って岩を取り除こうにも、これを設置する時に取り外せないようにガチガチに固めたから外すのも多少時間がかかる。
もしくは……私が片側のドアを取り返した今となっては、対となるドアを持って逃げてるってことは、=『ドアを手放さなければ、どうやったって私たちの追撃から逃がれようがない』状態なのだから、戦力揃うまで待つって手もあるにはある。アジトに着いた時点で上手いこと使えば、大量の人員を送り込んで強盗団自体を殲滅することも可能かもしれない。
…………が、エトラックさんが追跡して行ったことを考えると悠長にしているわけにはいかないからこの作戦は使えない。下手したら私たちがまごまごしているうちに殺されてしまう可能性だってある。
それなら……私自身が行って対処してしまうのが一番早いか。
「分かりました。あとは任せてください! 私が追いかけてエトラックさんと合流します!」
『申し訳ありません……よろしくお願いします』
と、言ったは良いが、これ『追いかける』って言えるのかな?
頭目から取り返したドアを開けたらすぐそこに敵が居る状態なんだけど……
エトラックさんが追って行ったって話だから、彼も持って行かれてるドア近くに居ると予想されるけど。
「さて、じゃあ改めてドアを開けましょうか」
◇
片手に空気爆弾を作り、ドアを開けて空へ飛び出す。そして、すぐさま空気爆弾を炸裂させた。
再び『パアアァァァァンッ!!』という衝撃音が鳴り響く。
「うっ……! 何だ今の音は!?」
飛んで周囲の様子を窺うと、どうやら森林地帯。灼熱の大地を冷やした後に自然に増殖していった森林に私や樹魔術師が少し手を入れた場所だ。
そしてこの場には巨人が二人しか居なかった。
あれ? エトラックさんの部下は三人逃げたって言ってたのに。
「もう一人はどこへ行ったの!?」
「はぁ? 誰だテメェ!? どこから出て来やがった!!」
「デスポーテス様! 脇に抱えてるドアが開いてますぜ!」
デスポーテスの二分の一 (十メートルほど)くらいの大きさしかない副官らしき巨人が開いているドアに気付いた。
やはりデミタイタンは、他の巨人族と比べて突出して大きいようだ。
しかし、弟と言う割には随分小さく見える。タイランテスの二分の一 (二十メートルほど)くらいの大きさしかない。
「なぁにぃ? 何でドアが開いてるんだ!? テメェが開けたのか!? どうやって開けやがった!!」
「どうやっても何も、今そこから出て来たんだけど……」
「あん? ってことは兄貴の協力者か?」
何でそうなるんだ……?
まだドアをタイランテスが占有していると考えて疑ってないのか?
それほどまでにドアが取り返される心配をしてないってわけか、凄い信頼感だ。
「そんなことよりもう一人の巨人はどこへ行ったの!?」
「後ろからうるさいヤツが付いて来てたから叩き潰してくるって言ってどっか行ったよ」
ってことは、エトラックさんはここに居ないもう一人の巨人の対応をしてるわけか。
エトラックさんの部下は怪我をしたまま追跡してるって言ってたし、彼は大丈夫だろうか? 手早くこっちの二人を倒して救援に向かうか。
「それよりも、あんた兄貴の協力者なんだろ? 兄貴はどうなった?」
「残念だけど、私はあなたたちを捕まえに来たのよ」
「な…………なんだとぉぉぉ!! 騙しやがったのか!?」
騙してなんかいない。勝手に勘違いしただけだ。
「ちょ、ちょっと待ってくだせぇ……敵がそのドアから出て来たってことは……」
「何だってんだ?」
「あっち側のドアはもう取り返されちゃったってことじゃねぇですか?」
「なっ!? じゃ、じゃあ兄貴がやられたってことか!?」
「た、多分……」
「そんなバカな!」
コイツも兄貴同様に思慮が浅いな……
副官っぽいヤツの方が頭が回るようだ。巨人て総じて脳筋なんだろうか?
…………いや、エールデさんはもっと考えて行動してたし、コイツらの性質か。
参謀に碌なのが居ないんだから、カーデュアルが上手く立ち回れたわけだわ。
タイランテスがもう倒されたこととして勘違いしてるけど、特に教えてやる義理も義務も無いし黙ってるか。
「だったら敵じゃねぇか! 全員ぶっ殺して兄貴も救い出すぞ!」
そう言い終わると、デスポーテスの身体に異変。徐々に身体が大きくなっていく!
「巨大化した!?」
タイランテスと同等程度 (四十メートルほど)まで大きくなった。
デミタイタンは拡縮自在と言う話だから、ドアを岩ごと運べて、副官とある程度歩幅を合わせられる大きさに合わせていたらしい。
そして、またも不意打ちで腕を振られたが、今度はきちんと警戒していたため難無く躱す。
「くそっ! この小虫野郎が!!」
また小虫って言われた! しかも私、『野郎』じゃないし!
考えも無しにブンブン両手を振り回す。
が、目をつぶってても躱せるくらい動きが遅い。
「当たらねぇ……お、お前も手伝え!!」
「へ、へい!!」
今度は二人で私を捕まえようと両手を振り回すが、やっぱり遅すぎて当たるはずもなく。
二人の間をくぐり抜けたところ――
ガゴォォンッ!!
――と、デスポーテスの攻撃が副官の顔面を直撃。
デスポーテスと副官では二倍ほどあった身長差が、先ほどデスポーテスが更に巨大化したため三倍以上にまで広がっている。
かなりの強さで殴られたのか、副官は木々をなぎ倒しながら、大量の砂煙を上げて後方へ吹っ飛んで行き、
「い……痛い……です……」
と言ったきり、そのまま動かなくなった。どうやら気絶してしまったらしい。
「ああ……悪りぃな……コイツがちょこまか逃げるから当たっちまった」
あれは『当たっちまった』なんてレベルじゃない……木々がなぎ倒されるほどの強さで吹き飛ばされたのだから普通の亜人が喰らったら多分即死するレベル。
まあお蔭で一人片付いた。三倍もの背丈のある者に攻撃されたんだ、タフな巨人族とは言え多分すぐには起き上がれないだろう。
人間同士で例えるなら、二メートルの大男が六十から七十センチの幼児を間違って本気でぶん殴った状態。身長差三倍なんて死を意識するレベルだ。
「ちょこまかと逃げやがって!! タイタンの力を見せてやらぁ!!」
その発言後、しゃがみ込んで地面に両手を置き魔力が流し込まれる。
すると、地面が盛り上がり、土が荒ぶる竜のごとく私に襲い掛かって来た。
「おぉっ!?」
この規模の土魔法は見たことが無い。少ないながらもやっと育ってきた森林地帯の木々が根こそぎ隆起させられ、どんどん引き抜かれていく!
「何やってんだぁ!! 一年かけてやっと森林っぽくなってきたのに!! また荒野になるだろうが!!」
と怒りに震えたが、冷静になってまずは目の前の対処をしないといけない。
襲ってくる土の竜は風魔法のバリアを身体の周りに纏わせて弾く。土は風で分散され、私には届かないがこれで終わりではなかった。
次は大岩が多数飛んで来たのだ!
「いぃっっ!!? 岩まで!?」
流石に風バリアだけで対処はできない。岩をぶつけられたところでダメージは受けないが、重みで土中に埋まってしまえば窒息死する可能性はある。
更にひと際大きい風バリアへと広げ、岩の飛んでくる推進力を減殺、地面へと落下させた。
「アイツ……人んちだと思って好き勝手やりやがって……」
少々口汚くなってしまったが、ここまで広範囲にアルトラルサンズの土地を荒らされたのは初めてだ!
灼熱の荒野からせっかく育った森林地帯を荒らされたら腹も立つ。まだまだごく小規模でたった一年しか経ってない若い木々が多いけど、これだけ青々とさせるのにどれだけの魔力使ったと思ってるんだ!!
うちの木工品だってこの森林地帯の木を切って作ってるんだぞ!!
もう頭来た!! 今まで相手の能力を奪ってしまうのではないかと、ヒト種族に対してだけは頑なに使おうとしなかったけど、迷惑かけるヤツの能力なんて無くなったって良いよね?
ってわけで、
「【スキルドレイン】!」
デスポーテスの周囲が円状に光輝く。
「なんだぁ? この光は?」
光が収束して私のところへ戻って来た。光を取り込むと同時に【巨人化】の能力を得た実感が頭に流れ込む。
そして、その直後にデスポーテスの身長が元の状態の半分ほどの大きさにまで縮んだ。
今転倒した拍子にゼロ距離ドアを落としたらしい。
岩がくっ付いたままのドアが転がっている。
「良かった、壊れてもいない。ドアも戻って来たし、後は逆側のドアがどうなってるかだけど……あちらを担当しているエトラックさんが防衛に成功してれば潤いの木の前に出るはずだけど……」
転がっているドアをそっと開けてみると………………飛び込んで来た光景は、空中に浮いて動いてる景色だった。
と言うことは……
「ゲッ……こっち側も今まさに持ち去られてる最中だ……」
つまり……エトラックさんは防衛に失敗しちゃったみたいだ……彼は無事だろうか?
タイランテスとは別に巨人が居るってフリアマギアさんが言ってたけど、ドアから首だけ出して下を見ると走ってる脚が見えるから、多分さっきと同じように脇に抱えて持って行かれているのだと思われる。
ドアが盗られたということはエトラックさんは戦いに負けたということになるが、どの程度の怪我を負っているのか気になったため、一度ドアを閉めエトラックさんに通信を試み……ようとしたところ、先に向こうから通信が来た。
「はい、アルトラです」
『アルトラ殿? エトラックの部下です。申し訳ありません……ドアを奪われてしまいました……』
あれ? エトラックさんの部下? 本人は通信できないくらい重傷だってことか?
「部下の方? みなさん無事なんですか?」
『部隊はほぼ全滅の状態、重傷者が多く出ています。我々の担当するところに来たのは巨人のみで構成された部隊で、我々も全力でドア強奪を阻止しようとしましたが、巨人複数相手では分が悪く……任務続行不可能となってしまったためアルトラ殿に連絡しました』
巨人だけの部隊!?
巨人族は目立つから、デミタイタン族みたいな拡縮自在の種族でなけれは見つけ次第、私やフレアハルトらが対処してくれれば済むと思ってたけど……
そうか! 潤いの木近辺は山や自然が多い場所だ! だから巨人が複数人居ても、ヒトの目に触れにくいのか!
「死者も出てるんですか?」
『現在のところはまだ出ていませんが……危ない者が何人かいます』
くっ……私の担当のところより、潤いの木のドアにフレアハルトやウィンダルシアらを配するべきだったか。私担当のドア以外は樹の国で受け持つって言ってたけど、無理を言ってでも分散して配置しておくんだった。私のところはこれでもかってくらい過剰戦力だったし。
カイベルに巨人族が何人居るか、事前に聞いておくだけでも対処は容易だった……!
よりによって、戦力的な面で弱いヒトと巨人ではないヒトのところに、向こう側の最大戦力をぶつけられるとは……
「エトラックさんはどうしました?」
『骨が何ヶ所か折れているはずですが……回復魔術師の応急処置を受けた後、巨人たちを追って行きました。私はエトラックに連絡役を任されたため、まずは上官のエールデに。次いでアルトラ殿に連絡致しました』
そんな状態で追跡したのか? 大丈夫だろうか?
「逃げたのは何人ですか?」
『三人です! 比較的弱かった二人は何とか捕らえましたが、残りの三人は手に負えずドアを持って行かれてしまいました! そのうちの一人は『デスポーテス』と言う頭目の弟と思われる男です!」
弟? それが頭目とは別に居る拡縮自在の巨人か。
「ただ、全員多少なりとも手傷を負わせていますのでヤツらの流した血を辿れば追跡は可能です。その辺りはエールデに話してこちらへの応援に来てもらうよう要請しました」
応援要請って言ってもな……町から潤いの木まで五十キロくらいあるし、潤いの木に通じてるドアは今現在私の手元にある。エールデさんに要請したところで今からの追跡は実質不可能に近い……
ただ……潤いの木は町から北の方角にあり、樹の国は中立地帯から見て南にあるからどうしても町に近付かなければ樹の国へは逃げられない。
私たちが作った川をバカ正直に南下して来てくれれば、こちらからも北上すれば鉢合わせるが……相手も流石にそこまでバカではないだろうから、きちんと整備してあって見通しやすい川沿いを南下してくることなんかあり得ないだろう。山岳部や森林地帯、荒野なんかの別のルートを辿って町に近寄るのを避けつつ、樹の国へ逃げると考えた方が良い。
このドアをエールデさんのところに持って行けば、ドアを開けてすぐさま接敵できるが……残念なことにこのドア、まだ岩がくっ付いてて私じゃ持ち上がらない。かと言って岩を取り除こうにも、これを設置する時に取り外せないようにガチガチに固めたから外すのも多少時間がかかる。
もしくは……私が片側のドアを取り返した今となっては、対となるドアを持って逃げてるってことは、=『ドアを手放さなければ、どうやったって私たちの追撃から逃がれようがない』状態なのだから、戦力揃うまで待つって手もあるにはある。アジトに着いた時点で上手いこと使えば、大量の人員を送り込んで強盗団自体を殲滅することも可能かもしれない。
…………が、エトラックさんが追跡して行ったことを考えると悠長にしているわけにはいかないからこの作戦は使えない。下手したら私たちがまごまごしているうちに殺されてしまう可能性だってある。
それなら……私自身が行って対処してしまうのが一番早いか。
「分かりました。あとは任せてください! 私が追いかけてエトラックさんと合流します!」
『申し訳ありません……よろしくお願いします』
と、言ったは良いが、これ『追いかける』って言えるのかな?
頭目から取り返したドアを開けたらすぐそこに敵が居る状態なんだけど……
エトラックさんが追って行ったって話だから、彼も持って行かれてるドア近くに居ると予想されるけど。
「さて、じゃあ改めてドアを開けましょうか」
◇
片手に空気爆弾を作り、ドアを開けて空へ飛び出す。そして、すぐさま空気爆弾を炸裂させた。
再び『パアアァァァァンッ!!』という衝撃音が鳴り響く。
「うっ……! 何だ今の音は!?」
飛んで周囲の様子を窺うと、どうやら森林地帯。灼熱の大地を冷やした後に自然に増殖していった森林に私や樹魔術師が少し手を入れた場所だ。
そしてこの場には巨人が二人しか居なかった。
あれ? エトラックさんの部下は三人逃げたって言ってたのに。
「もう一人はどこへ行ったの!?」
「はぁ? 誰だテメェ!? どこから出て来やがった!!」
「デスポーテス様! 脇に抱えてるドアが開いてますぜ!」
デスポーテスの二分の一 (十メートルほど)くらいの大きさしかない副官らしき巨人が開いているドアに気付いた。
やはりデミタイタンは、他の巨人族と比べて突出して大きいようだ。
しかし、弟と言う割には随分小さく見える。タイランテスの二分の一 (二十メートルほど)くらいの大きさしかない。
「なぁにぃ? 何でドアが開いてるんだ!? テメェが開けたのか!? どうやって開けやがった!!」
「どうやっても何も、今そこから出て来たんだけど……」
「あん? ってことは兄貴の協力者か?」
何でそうなるんだ……?
まだドアをタイランテスが占有していると考えて疑ってないのか?
それほどまでにドアが取り返される心配をしてないってわけか、凄い信頼感だ。
「そんなことよりもう一人の巨人はどこへ行ったの!?」
「後ろからうるさいヤツが付いて来てたから叩き潰してくるって言ってどっか行ったよ」
ってことは、エトラックさんはここに居ないもう一人の巨人の対応をしてるわけか。
エトラックさんの部下は怪我をしたまま追跡してるって言ってたし、彼は大丈夫だろうか? 手早くこっちの二人を倒して救援に向かうか。
「それよりも、あんた兄貴の協力者なんだろ? 兄貴はどうなった?」
「残念だけど、私はあなたたちを捕まえに来たのよ」
「な…………なんだとぉぉぉ!! 騙しやがったのか!?」
騙してなんかいない。勝手に勘違いしただけだ。
「ちょ、ちょっと待ってくだせぇ……敵がそのドアから出て来たってことは……」
「何だってんだ?」
「あっち側のドアはもう取り返されちゃったってことじゃねぇですか?」
「なっ!? じゃ、じゃあ兄貴がやられたってことか!?」
「た、多分……」
「そんなバカな!」
コイツも兄貴同様に思慮が浅いな……
副官っぽいヤツの方が頭が回るようだ。巨人て総じて脳筋なんだろうか?
…………いや、エールデさんはもっと考えて行動してたし、コイツらの性質か。
参謀に碌なのが居ないんだから、カーデュアルが上手く立ち回れたわけだわ。
タイランテスがもう倒されたこととして勘違いしてるけど、特に教えてやる義理も義務も無いし黙ってるか。
「だったら敵じゃねぇか! 全員ぶっ殺して兄貴も救い出すぞ!」
そう言い終わると、デスポーテスの身体に異変。徐々に身体が大きくなっていく!
「巨大化した!?」
タイランテスと同等程度 (四十メートルほど)まで大きくなった。
デミタイタンは拡縮自在と言う話だから、ドアを岩ごと運べて、副官とある程度歩幅を合わせられる大きさに合わせていたらしい。
そして、またも不意打ちで腕を振られたが、今度はきちんと警戒していたため難無く躱す。
「くそっ! この小虫野郎が!!」
また小虫って言われた! しかも私、『野郎』じゃないし!
考えも無しにブンブン両手を振り回す。
が、目をつぶってても躱せるくらい動きが遅い。
「当たらねぇ……お、お前も手伝え!!」
「へ、へい!!」
今度は二人で私を捕まえようと両手を振り回すが、やっぱり遅すぎて当たるはずもなく。
二人の間をくぐり抜けたところ――
ガゴォォンッ!!
――と、デスポーテスの攻撃が副官の顔面を直撃。
デスポーテスと副官では二倍ほどあった身長差が、先ほどデスポーテスが更に巨大化したため三倍以上にまで広がっている。
かなりの強さで殴られたのか、副官は木々をなぎ倒しながら、大量の砂煙を上げて後方へ吹っ飛んで行き、
「い……痛い……です……」
と言ったきり、そのまま動かなくなった。どうやら気絶してしまったらしい。
「ああ……悪りぃな……コイツがちょこまか逃げるから当たっちまった」
あれは『当たっちまった』なんてレベルじゃない……木々がなぎ倒されるほどの強さで吹き飛ばされたのだから普通の亜人が喰らったら多分即死するレベル。
まあお蔭で一人片付いた。三倍もの背丈のある者に攻撃されたんだ、タフな巨人族とは言え多分すぐには起き上がれないだろう。
人間同士で例えるなら、二メートルの大男が六十から七十センチの幼児を間違って本気でぶん殴った状態。身長差三倍なんて死を意識するレベルだ。
「ちょこまかと逃げやがって!! タイタンの力を見せてやらぁ!!」
その発言後、しゃがみ込んで地面に両手を置き魔力が流し込まれる。
すると、地面が盛り上がり、土が荒ぶる竜のごとく私に襲い掛かって来た。
「おぉっ!?」
この規模の土魔法は見たことが無い。少ないながらもやっと育ってきた森林地帯の木々が根こそぎ隆起させられ、どんどん引き抜かれていく!
「何やってんだぁ!! 一年かけてやっと森林っぽくなってきたのに!! また荒野になるだろうが!!」
と怒りに震えたが、冷静になってまずは目の前の対処をしないといけない。
襲ってくる土の竜は風魔法のバリアを身体の周りに纏わせて弾く。土は風で分散され、私には届かないがこれで終わりではなかった。
次は大岩が多数飛んで来たのだ!
「いぃっっ!!? 岩まで!?」
流石に風バリアだけで対処はできない。岩をぶつけられたところでダメージは受けないが、重みで土中に埋まってしまえば窒息死する可能性はある。
更にひと際大きい風バリアへと広げ、岩の飛んでくる推進力を減殺、地面へと落下させた。
「アイツ……人んちだと思って好き勝手やりやがって……」
少々口汚くなってしまったが、ここまで広範囲にアルトラルサンズの土地を荒らされたのは初めてだ!
灼熱の荒野からせっかく育った森林地帯を荒らされたら腹も立つ。まだまだごく小規模でたった一年しか経ってない若い木々が多いけど、これだけ青々とさせるのにどれだけの魔力使ったと思ってるんだ!!
うちの木工品だってこの森林地帯の木を切って作ってるんだぞ!!
もう頭来た!! 今まで相手の能力を奪ってしまうのではないかと、ヒト種族に対してだけは頑なに使おうとしなかったけど、迷惑かけるヤツの能力なんて無くなったって良いよね?
ってわけで、
「【スキルドレイン】!」
デスポーテスの周囲が円状に光輝く。
「なんだぁ? この光は?」
光が収束して私のところへ戻って来た。光を取り込むと同時に【巨人化】の能力を得た実感が頭に流れ込む。
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【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
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