【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O

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1 爺

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遥か向こうに広がる壮大な山々を無性に見たくなった。
朝の澄んだ空気を思い切り吸って、ゆっくりと吐く。
寒さで白く濁った吐息が消えていくのを見送って、一言。


「俺も好きだぐらい言ってやれよ、ヘタレ。」


また、あの夢を見た。
不満を口にしたところで何の意味もない。
そんなこと俺だってわかってる。
だけど言わずにはいられない。


「泣くな、ばーか。」


そもそもお前ら一体誰なんだよ、人の夢に許可なく出てくんな。
ガキの頃初めてあの夢をみた日、おねしょしたこと今でも根に持ってるんだからな。


「レヴィ、そろそろ朝飯だ。」

「・・・へーい」


木の上で悪態をついていると、爺ちゃんが呆れ顔で立っていた。
慣れた手つきで枝をつたい、地面に降りる。
爺ちゃんに頭を軽く突かれてから家へと向かう。
隣に並んだ爺ちゃんはもう七十歳手前だけど、いつまでも筋肉隆々で、俺より遥かにデカい。
自分の体にコンプレックスを抱きつつ、遅れてなるものかと少し歩幅を大きくした。



俺はさっきまで眺めていたユシュフ山脈から馬車で・・・一週間・・・くらい?のところで、爺ちゃんと二人暮らしをしている。
一度も行ったことはないけど、ユシュフ山脈を越えるとこの国の王都『ダート』だ。

この辺りは家も数軒、人も少ない。
隣国へは別ルートを通った方が平坦で楽な道だから、行商人もあまり通らない。
畑か山か森・・・・・・要はど田舎、何もない長閑な場所。

結局何を言いたいのかというと、俺の行く場所なんて限られていて、朝起きて俺が家に居ない時、爺ちゃんは大抵この木まで迎えにくる。



「爺ちゃんも歳なんだしさ、」

「喧嘩売ってんのか」

「いやそうじゃなくて、ここまで結構坂道だろ。わざわざ迎えに来なくていいって。」

「迷子になったらお前泣くだろう。」

「・・・俺、もう十八。」

「まだまだケツの青い子ど、ゲホッ、ゴホッ、」

「ほ、ほらっ、言わんこっちゃない!」


爺ちゃんの背中を摩る。
体が咳で揺れるたび、俺まで胸をぎゅっと摘まれたような気分になる。

一見元気に見える爺ちゃんだけど、やっぱり歳には敵わないらしい。


「あとで薬飲めよ。」

「ゲホッ、俺が薬草に詳しくねえからって毒盛るんじゃねーぞ。ゴホッ、」

「そんなことするかっ!冗談言ってねぇで、早く帰るぞ!俺が仕込んだ朝飯が冷める!」

「はいはい」


どんなに弱っていても頑なにおぶらせてはくれない爺ちゃん。(まあ多分、おぶった瞬間膝から潰れる)

爺ちゃんの歩幅に合わせて、家路についた。


「レヴィは本当に背が伸びなかったなあ」

「今それ関係ねえ!」


朝食後、ヒッヒッヒ、と不気味な笑いをこぼす爺ちゃんの横で俺は薬草を煎じる。
ミチナ草に、キシルの実。ジカ草は入れすぎると眠気を誘うから控えめにする。
でも、俺がつくる薬にも流石に限界があるわけで・・・・・・


「・・・なあ、やっぱり、」

「そんな金はねえ。」

「いや、そ、そう・・・だけどさあ」

「医者の面倒になるくらいなら、ぽっくり逝ったほうがいい。」

「まーた、そんな縁起でもねえこと言う。」

「お前の薬が一番効くんだ。俺はそれでいい。」

「・・・・・・うん」


煎じた薬草を細かくすり潰して粉にして、爺ちゃんに手渡す。
しょげた俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる爺ちゃんの手は、雑そのものだけど、ずっとずっと温かい。



「ないものねだりをするな。天国の婆ちゃんにぶん殴られるぞ。」

「・・・怖。」

「そうだ。婆ちゃんは怖い。魔物よりも婆ちゃんの方が恐ろしゅうて、恐ろしゅうて、」

「それ以上言ったら天国でぼこぼこにされるの爺ちゃんだぞ。」

「・・・おっと、口が滑った。」



両手を合わせて上を向き、婆ちゃんに謝罪し始める爺ちゃん。
そんなことしても、多分あの婆ちゃんは許してくれないと思う。

俺の体格が良ければ、頭が良ければ、魔力があれば、爺ちゃんに恩返しすることだって────・・・



「────い、おい!レヴィ!」

「うわっ!な、な、なんだよ!?」

「ボーッとしてねえで、薪割り行くぞ。本格的に寒くなる前に準備しておかねえと。」

「だっ、だから、それも俺がやるって。爺ちゃんは家でゆっくり、」

「その細腕で?俺がやった方が早いな。」

「・・・あ゛?」

「お、やるか。負けた方が夕飯作れよ。」

「そんなこと言ってっけど、俺が毎日飯作ってんだろ!」

「はっはっはっ」



色々訂正する。
このジジイ、まだまだきっと長生きする。
その証拠にジジイの方が早く薪を割り終わり、俺は結局いつものように夕飯を仕込むことになる。





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