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2 影
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突然頭上に現れた大きな生き物。
太陽と重なって、巨大な影が生まれた。
畑仕事をしていた俺は空を見上げてそのまま腰を抜かし、爺ちゃんはそんな俺を見て盛大に笑っていた。
「この辺りを飛ぶなんざ、珍しいこともあったもんだなあ。」
「なっ、な、何をそんな呑気にっ、」
「レヴィは初めて見たのか。そりゃあ、よかったなあ。そら、肩車してやろう。」
「爺ちゃんさすがに無理だから!子ども扱いすんのやめろ!」
「はっはっはっは、」
地上からでもわかるその巨躯を浮かせるだけの力を秘めた翼。
唯一無二、神秘の生物である竜は数も少なく、特定の場所にしか生息していない。
なのになぜ、こんな遠方の平和が取り柄で魔物も出ない長閑な村に・・・?
「飛び方が変だな。」
「・・・だよ、な。なんか・・・ふらふらしてる・・・」
「片足に鎖が見えたぞ。」
「・・・え?じゃあ騎士が乗ってんの?!あっ、あれに!?」
「落ちたら死ぬなあ。」
「呑気に恐ろしいこと言ってんじゃねえよ!!」
足に鎖、それも国章プレートが付いた鎖をつけた竜。
その鎖にどんな意味を持つのか、さすがに俺でも知ってる。
竜騎士団の竜である証。
竜騎士ってのは、騎士団の中でも選ばれた者が特別な方法で竜と契約を結び、成立する騎士のこと。
両手で数える程度しかいないと聞くけど、その度を越した強さで幾多の魔物を倒し、戦では勝利を収めてきたらしい。
とにかく、凄い奴らなわけ。
えーっと。
その無敵の竜騎士様と竜が・・・・・・・・・蛇行してます・・・が・・・?
そもそも、ほ、本当に、あんなところに、ひ、人が乗ってんの・・・?
「ど、ど、どうしよう爺ちゃん!?」
「なーんもできんなあ。」
「で、でも、この高さから落ちたら、さすがに竜騎士でも死ぬって!」
「魔法で何とかするんでねえか?」
「いやいやいや、それにしたって、高すぎて・・・・・・えええっ?!」
「落ちてきたな。まずい、逃げるぞ。」
「ぎゃーーーーーーー!」
巨大な岩が降ってくるみたいだ。
何かできないかと地上で騒いでたけど、それどころじゃなくなった。
爺ちゃん抱えて逃げよう!!
無我夢中で爺ちゃんおんぶしようとして、逆に俺が担がれた。
色々と呆然とする出来事に言葉をなくしていた俺を抱えたまま、爺ちゃんは、走って、走って、走った。
直後、背後からとてつもない風圧が押し寄せてきて、俺と爺ちゃんは畑にそのまま突っ込む羽目になる。
・・・芋掘り返した直後の畑でよかったぁ。
ふかふかな土のおかげでちょっと体が痛いぐらいで済んだ。
爺ちゃん、しばらく動かないからビビったけど、口の中に土が入って喋れなかったのと、少し足を捻って唸ってたらしい。
目の前は土埃で視界不良。
だけど、たぶん・・・
「・・・・・・本当に、魔法で何とかした・・・!?すげえ・・・!」
「竜騎士ならそれくらいできねえとな。」
「なっ、何を分かった風に言っ・・・、でもなんか竜の様子・・・おかしくないか・・・?」
「・・・・・・逃げるぞ、レヴィ。」
「へ?」
竜は俺と爺ちゃんが住む家と同じくらいの大きさ。
今まで見てきたどんなに大きな鳥だって、敵いやしない。
深緑色の巨躯が左右によろけるだけで、風が吹き、地面が揺れる。
でも何故か、不思議と怖くない。
竜を見てから俺の心臓はずっと高鳴ったままだ。
渦巻く"知らない"感情が今にも俺の中から飛び出して、暴れ出しそう。
それを俺は必死に押さえ込む。
会いたかったのは、君じゃない。
僕は────────、に会────、
「レヴィ!それ以上近づくな!!」
「・・・・・・うあ、」
爺ちゃんの声が耳に飛び込んできて、グッと踏ん張り止まる。
ボヤけた視界がクリアになると、あと数メートルの距離に竜がいて、翼や尻尾をばたばたと動かしているのが見えた。
自分の無謀な行動に、血の気が引く。
背に乗った竜騎士が何か大声で叫んでいるけど、竜にはまるで届いていない。
爺ちゃんの言うとおり、俺にできることは何もなさそうだ。
ごくりと生唾を飲み、一歩ずつ後ずさる。
その時だった。
《 ・・・い、痛ぇ!早くこれ取れよ、ジェイス! 》
「・・・取る?何を?」
《 ・・・え? 》
「え?」
頭の中に響いてきた声に思わず反応したら、竜の動きがぴたりと止まった。
俺も何が何だかわからず呆然と立ち尽くす。
そんな俺を爺ちゃんは呼び戻そうと必死に呼んでいたし、騎士は騎士で、竜に声をかけ続けていた。
砂埃が落ち着き、竜は何かを探し始める。
左の翼のやや後方、数メートル離れた場所に立っている俺に気がつくと、まるで敵を前にしたような鋭い目つきで俺を見た。
《 お前、俺の言葉わかんのか 》
竜の口は動かない。
だけどこの俺の頭に直接響く野太い声が目の前の竜から発されているものだと、感覚的に分かる。
何故分かるのかは、分からないけど。
「・・・っ、・・・取れば、お、落ち着く、んだろ・・・っ?ど、どこ、だよ?」
《 ・・・尾の右に、何か刺さってる 》
「・・・絶対に、う、動くなよ・・・!?」
《 わかった 》
「よ、よし。」
竜は暴れることをやめ、俺がいる方へ進み始めた。
向かい合って改めて分かる、生き物としての圧倒的な力の差。
燃えるような赤い瞳は俺の拳くらいありそうだし、一噛みで頭を噛み砕かれそうな牙。
頭上近くの二本の角は最早鋭い槍のように見えて、今更ながら俺はとんでもないことを引き受けてしまったと少し後悔した。
「レヴィ!死ぬぞっ、下がれ!!竜は契約した騎士の命令以外聞かなっ、」
「爺ちゃん、大丈夫だから。たぶん。」
「・・・・・・レヴィ・・・?」
「足の怪我、酷くなるだろ。もういい歳なんだからそこ動くなよ。」
「お、まえ・・・、こんな状況で、な、何を・・・」
「まあ・・・見てろって。」
一際大きな振動が足に伝わる頃、大きな影が俺の影をすっぽり包んで消していた。
ゆっくり振り向くと、痛みを堪えるように喉を鳴らす竜が至近距離にいた。
一見大人しそうに見えるが、俺の一挙一動を見張っているようにも感じる。
怯んでどうする。
俺が助ける側なんだ。
「取ったら、大人しく王都に帰れよ。」
《 ・・・早くしろ。痛えんだよ 》
「・・・我儘な奴だな。」
俺の言葉にムッとした竜に、んぎっ、とむき出しの牙を見せられて、俺は黙って尾の方へ向かった。(逃げたとも言う)
太陽と重なって、巨大な影が生まれた。
畑仕事をしていた俺は空を見上げてそのまま腰を抜かし、爺ちゃんはそんな俺を見て盛大に笑っていた。
「この辺りを飛ぶなんざ、珍しいこともあったもんだなあ。」
「なっ、な、何をそんな呑気にっ、」
「レヴィは初めて見たのか。そりゃあ、よかったなあ。そら、肩車してやろう。」
「爺ちゃんさすがに無理だから!子ども扱いすんのやめろ!」
「はっはっはっは、」
地上からでもわかるその巨躯を浮かせるだけの力を秘めた翼。
唯一無二、神秘の生物である竜は数も少なく、特定の場所にしか生息していない。
なのになぜ、こんな遠方の平和が取り柄で魔物も出ない長閑な村に・・・?
「飛び方が変だな。」
「・・・だよ、な。なんか・・・ふらふらしてる・・・」
「片足に鎖が見えたぞ。」
「・・・え?じゃあ騎士が乗ってんの?!あっ、あれに!?」
「落ちたら死ぬなあ。」
「呑気に恐ろしいこと言ってんじゃねえよ!!」
足に鎖、それも国章プレートが付いた鎖をつけた竜。
その鎖にどんな意味を持つのか、さすがに俺でも知ってる。
竜騎士団の竜である証。
竜騎士ってのは、騎士団の中でも選ばれた者が特別な方法で竜と契約を結び、成立する騎士のこと。
両手で数える程度しかいないと聞くけど、その度を越した強さで幾多の魔物を倒し、戦では勝利を収めてきたらしい。
とにかく、凄い奴らなわけ。
えーっと。
その無敵の竜騎士様と竜が・・・・・・・・・蛇行してます・・・が・・・?
そもそも、ほ、本当に、あんなところに、ひ、人が乗ってんの・・・?
「ど、ど、どうしよう爺ちゃん!?」
「なーんもできんなあ。」
「で、でも、この高さから落ちたら、さすがに竜騎士でも死ぬって!」
「魔法で何とかするんでねえか?」
「いやいやいや、それにしたって、高すぎて・・・・・・えええっ?!」
「落ちてきたな。まずい、逃げるぞ。」
「ぎゃーーーーーーー!」
巨大な岩が降ってくるみたいだ。
何かできないかと地上で騒いでたけど、それどころじゃなくなった。
爺ちゃん抱えて逃げよう!!
無我夢中で爺ちゃんおんぶしようとして、逆に俺が担がれた。
色々と呆然とする出来事に言葉をなくしていた俺を抱えたまま、爺ちゃんは、走って、走って、走った。
直後、背後からとてつもない風圧が押し寄せてきて、俺と爺ちゃんは畑にそのまま突っ込む羽目になる。
・・・芋掘り返した直後の畑でよかったぁ。
ふかふかな土のおかげでちょっと体が痛いぐらいで済んだ。
爺ちゃん、しばらく動かないからビビったけど、口の中に土が入って喋れなかったのと、少し足を捻って唸ってたらしい。
目の前は土埃で視界不良。
だけど、たぶん・・・
「・・・・・・本当に、魔法で何とかした・・・!?すげえ・・・!」
「竜騎士ならそれくらいできねえとな。」
「なっ、何を分かった風に言っ・・・、でもなんか竜の様子・・・おかしくないか・・・?」
「・・・・・・逃げるぞ、レヴィ。」
「へ?」
竜は俺と爺ちゃんが住む家と同じくらいの大きさ。
今まで見てきたどんなに大きな鳥だって、敵いやしない。
深緑色の巨躯が左右によろけるだけで、風が吹き、地面が揺れる。
でも何故か、不思議と怖くない。
竜を見てから俺の心臓はずっと高鳴ったままだ。
渦巻く"知らない"感情が今にも俺の中から飛び出して、暴れ出しそう。
それを俺は必死に押さえ込む。
会いたかったのは、君じゃない。
僕は────────、に会────、
「レヴィ!それ以上近づくな!!」
「・・・・・・うあ、」
爺ちゃんの声が耳に飛び込んできて、グッと踏ん張り止まる。
ボヤけた視界がクリアになると、あと数メートルの距離に竜がいて、翼や尻尾をばたばたと動かしているのが見えた。
自分の無謀な行動に、血の気が引く。
背に乗った竜騎士が何か大声で叫んでいるけど、竜にはまるで届いていない。
爺ちゃんの言うとおり、俺にできることは何もなさそうだ。
ごくりと生唾を飲み、一歩ずつ後ずさる。
その時だった。
《 ・・・い、痛ぇ!早くこれ取れよ、ジェイス! 》
「・・・取る?何を?」
《 ・・・え? 》
「え?」
頭の中に響いてきた声に思わず反応したら、竜の動きがぴたりと止まった。
俺も何が何だかわからず呆然と立ち尽くす。
そんな俺を爺ちゃんは呼び戻そうと必死に呼んでいたし、騎士は騎士で、竜に声をかけ続けていた。
砂埃が落ち着き、竜は何かを探し始める。
左の翼のやや後方、数メートル離れた場所に立っている俺に気がつくと、まるで敵を前にしたような鋭い目つきで俺を見た。
《 お前、俺の言葉わかんのか 》
竜の口は動かない。
だけどこの俺の頭に直接響く野太い声が目の前の竜から発されているものだと、感覚的に分かる。
何故分かるのかは、分からないけど。
「・・・っ、・・・取れば、お、落ち着く、んだろ・・・っ?ど、どこ、だよ?」
《 ・・・尾の右に、何か刺さってる 》
「・・・絶対に、う、動くなよ・・・!?」
《 わかった 》
「よ、よし。」
竜は暴れることをやめ、俺がいる方へ進み始めた。
向かい合って改めて分かる、生き物としての圧倒的な力の差。
燃えるような赤い瞳は俺の拳くらいありそうだし、一噛みで頭を噛み砕かれそうな牙。
頭上近くの二本の角は最早鋭い槍のように見えて、今更ながら俺はとんでもないことを引き受けてしまったと少し後悔した。
「レヴィ!死ぬぞっ、下がれ!!竜は契約した騎士の命令以外聞かなっ、」
「爺ちゃん、大丈夫だから。たぶん。」
「・・・・・・レヴィ・・・?」
「足の怪我、酷くなるだろ。もういい歳なんだからそこ動くなよ。」
「お、まえ・・・、こんな状況で、な、何を・・・」
「まあ・・・見てろって。」
一際大きな振動が足に伝わる頃、大きな影が俺の影をすっぽり包んで消していた。
ゆっくり振り向くと、痛みを堪えるように喉を鳴らす竜が至近距離にいた。
一見大人しそうに見えるが、俺の一挙一動を見張っているようにも感じる。
怯んでどうする。
俺が助ける側なんだ。
「取ったら、大人しく王都に帰れよ。」
《 ・・・早くしろ。痛えんだよ 》
「・・・我儘な奴だな。」
俺の言葉にムッとした竜に、んぎっ、とむき出しの牙を見せられて、俺は黙って尾の方へ向かった。(逃げたとも言う)
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