【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O

文字の大きさ
4 / 37

3 疑

しおりを挟む

「・・・・・・これ・・・だよな・・・?」

恐る恐る近づいた深緑色の尾に刺さっていたのは、一本の矢。
矢柄の部分に何か模様?文字?が掘られてる。
俺が狩猟で使う矢と同じくらいの長さだけど、こんなもんで竜が痛がる・・・?
いや、どんな動物でも体に刺さったら痛いか。
そもそもこの鎧みたいな竜の鱗に刺さるって一体どれだけ鋭利な作りなんだろう・・・

そーっと、そーっと、矢に手を伸ばした。
トントンと指先で突いても、何も起こらない。
「よしっ」と気合を入れて、矢を握った瞬間。


ピリッとした痛みと共に矢が爆発的な光を放ち、瞬く間に矢は塵となって消えていった。


え?消えた?


状況が飲み込めず、硬直する俺。
《 やっと取れた 》と安堵する竜。
そして・・・・・・


「説明してもらおう。」

「・・・えーっと・・・ですね・・・」


俺のすぐ後ろでぴたりと止んだブーツの音。
それに合わせて俺はスッと両手を上げる。
もちろん、無抵抗を伝えるため。

矢が消えたってことは、騎士に事情を説明するための証拠品、消滅。
俺、騎士に許可なく竜に接近。
無許可での竜への接近・接触はこの国では大罪にあたるんだと、爺ちゃんから聞いたことがある。

身の潔白を証明するため、仕方なく地を這うような低い声がした方を向く。これはあくまで緊急事態。
立っていたのは俺よりも頭一つ分は背の高い騎士。
ピンとハリのある生地の薄灰色の外套、肩や腕に部分的な甲冑。
着けていたゴーグルを額まで上げると、竜と同じ赤い瞳が俺のことを訝しげに見ていた。


「・・・こいつに言われた通り動いただけ・・・です。」

「竜に、言われた?」

「・・・?尾になんか刺さってるから取ってくれって言ってたじゃないですか。」

「・・・何が刺さっていたんだ?」

「えーっと、矢が刺さってて・・・このくらいの、小さいやつ・・・」

「その矢は今どこに?」

「・・・・・・消え・・・ました・・・ね・・・」

「なるほど。」


そうですよね。
そうなりますよね。
わかりますよ。
あんたからしたら俺とても怪しい奴ですよね。


仁王立ちで呆れたようにオレを見下ろす騎士と、額に汗を浮かべ両手を上げた俺。
でも矢が消えたんだから、他に説明のしようがない。

こ、こうなったら、どうにかこうにか話を逸らしてさっさとお帰りいただこう・・・!



「お、俺、竜初めて見たんですけど、こっんなに大きいんですね~~!」

「・・・・・・」

「竜が落ち着いてよかった~~、本当!」

「・・・・・・君は・・・」

「えっと、この辺り日が暮れ始めると結構寒いんで、早めにお帰りいただいた方が・・・って、ぎええええっ?!!」

「イーライ?!どうした?!」



大人しく伏せっていた竜が突然動き出し、俺は反射的に奇声をあげてしまった。
騎士も慌てた様子で、首から下げていた小さな笛を何度も吹いたけど、全くの無意味。
そんなことで大丈夫か?と要らぬ心配をしていた俺をよそに、俺の体を囲うように体の向きを変えた竜。

俺の目の前、竜の顔。
鼻息がかかる。
生暖かい、でかい、牙鋭い。

・・・って、なんかこいつ・・・めちゃくちゃ話しかけてくるんだけど・・・!


「・・・は、はあ?ジェイスって誰だよ?!」

《 ──── 》

「お前失礼なこと言う奴だな。」

《 ──── 》

「ここに?!と、泊まる?!家壊す気か?!」

《 ──── 》

「言われた通り助けてやっただろ?早くダートに帰・・・え?な、な、何ですか?」


売り言葉に買い言葉。
ある意味夢中になって竜と言い争っていたら、竜騎士に二の腕あたりを掴まれて、ハッと我にかえる。
掴んできた手の主の存在を思い出して変な汗が吹き出た。



「あー・・・えっと・・・すみません・・・でした・・・?」

「何故謝る?」

「・・・大事な?竜に、失礼な態度だったかなー・・・って。」

「なるほど。」

「この通り、田舎育ちなもので・・・、今のやりとりは見逃していただけると・・・助かるんですけど、」


ははは、と笑って誤魔化そうとしたけど、目の前の騎士、全く笑わない。
騎士は俺をしばらく見つめたあと、あの笛を吹く。
竜は仕方ねえなと言わんばかりの顔をして(実際言ってたけど)、大人しく伏せた。


「ジェイスは私だ。」

「・・・あ・・・そうでしたか・・・(何でこいつ笑ってんだ・・・?)」

「イーライが私の名を出したのだろう?何と言っていたんだ?」

「・・・?あ、ああ。え、っと・・・ジェイスより随分小さいけど、お前まだ子どもガキか、と・・・これでも成人・・・してる・・・んで・・・す・・・けど・・・」

「・・・・・・それは失礼した。代わりに謝罪する。」

「?!いえ!お、お気に、なさらず!」



微妙な表情で頭をさげた騎士。
俺そんなにガキくさい?それはそれでショック・・・・・・・いや、待て。そんなことはどうでもいい。

もう二度と会わない相手なわけだし、さっさと────・・・



「すまないが、頼みたいことがある。」

「・・・んえ?!」

「成人していると言ったな。ならば保護者に許可を取らずともいいだろう。」

「はっ、はいぃ???」

「イーライ、彼も乗っていいな?」

「はあああ?!けっ、結構で、」

《 おもしれーからいいぜ! 》

「!?てめぇ!いい加減なこと言、うわあああっ、」



凄い力で腹の辺りを抱えられ、そのまま竜の背に乗せられた。
何が何だかわからないけど、「このまま連れて行かれてなるものか!」と、俺は必死に抵抗して竜から降りようとしたわけだが。


「落ちたら死ぬぞ。」


耳元で響く、聞き慣れない声。
背中がぞくぞく震えて振り返ると、ゴーグル越しにあの赤い瞳が弧を描いていた。


「悪いようにはしない。」

「・・・・・・悪い奴が言うセリフですね。」

「君、名前は?」

「・・・・・・」

「私はジェイス。こいつはイーライだ。」

「・・・・・・・・・レヴィ。」

「良い名だ。よろしく、レヴィ。」

「・・・・・・・・・」


何一つ、よろしくないんだが。
口には出さなかったけど、顔には出ていたらしい。
「わかりやすくて助かるよ」と頭をポンポンされたあと、ジェイスという騎士が笛を吹く。

竜は速度をぐんと上げ、俺は声にならない悲鳴をあげる羽目になった。





















しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

偽りの令嬢を演じるオメガ(♂)を救うため、平民アルファの俺が傲慢な大公爵家に喧嘩を売って、二人で自由を掴み取る物語

水凪しおん
BL
これは、偽りの仮面を被って生きるしかなかった一人の青年と、その仮面の下にある真実の姿を見つけ出し、愛した一人の青年の、魂の恋物語。 生まれながらの身分が全てを決める世界。 平民出身のアルファ、ケイトは、特待生として入学した貴族学園で浮いた存在だった。 そんな彼の前に現れた、完璧な貴族令嬢セシリア。誰もが憧れる彼女の、ふとした瞬間に見せる寂しげな瞳が、ケイトの心を捉えて離さなかった。 「お願い…誰にも言わないで…」 ある夜、ケイトは彼女の衝撃的な秘密を知ってしまう。 セシリアは、女ではない。平民出身の男性オメガ「セシル」だったのだ。 類まれなフェロモンを政治の道具として利用するため、公爵家の養子となり、死んだ娘として生きることを強いられていたセシル。 「俺がお前を守る」 偽りの人生に絶望する彼の魂に触れた時、ケイトの運命は大きく動き出す。 これは、全ての偽りを脱ぎ捨て、たった一つの真実の愛を手に入れるために、世界に抗った二人の物語。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

処理中です...