7 / 37
6 洞
しおりを挟む
大抵、どの国でも竜への接近は禁じられている。
当たり前だけど、野生の竜は気性が荒い個体が多いからってのが理由。
特例として竜と契約を結んだ竜騎士、そして竜の生態を研究する研究者は接近・接触を認められているが、命の保証があるわけではない。
竜との契約を結ぶため縄張りに入り、そのまま帰ってこなかった騎士も多くいるんだとか。
そもそも基本的に竜は縄張りである山地から、理由もなく出てこない。
竜騎士のパートナーである竜たちは、異例中の異例。
人懐っこいのか、それとも竜騎士の能力が高いからなのかはわかんないけどさ。
そして縄張りを離れ、騎士団の敷地内で隔離されている竜なんかもっと異例だ。
「な・・・んですか、ここ・・・っ」
案内された場所は、森の中にある洞窟。
この森も騎士団所有らしく、入ってからは誰ともすれ違わなかった。
また竜に乗って移動するのかと思っていたけど、馬での移動。
竜に比べたら馬なんて楽勝だ。
でもジェイスさんと同乗ってのが、なんか子どもっぽくて嫌だったけど、一人で乗りこなす自信もないから黙っておいた。
「入るんですか?!この中に?」
「風魔法なら得意だ。」
「竜にあんま効果ねえけどな。」
「でしょうね?!!」
少し離れたところに馬は置いてきた。
空を隠すぐらい伸びていただろう大木がこの洞窟の周りだけバキバキに折れ、そこら中に倒れている。
何か、あったことは一目瞭然。
そして、それが只事ではなかったことも。
薄暗い洞窟の中から聞こえるのは、低く響く唸り声と何かと何かがぶつかる鈍い音。
肌にまとわりつく重くて、暗い空気が、その異様さを物語っていた。
もしこの辺りに子どもが住んでいようものなら、「あそこにはお化けが出る!」と噂になって、絶対近づかないだろう。
かく言う俺もこのまま見なかったことにして、ちょっと帰りたい。
「この中に・・・その・・・」
「数日前、突然ダートに現れた個体だ。」
「や、山に返せば、よかったんじゃ・・・」
「俺たちだってそう仕向けたぜ?でも結局途中で落ちたんだ。」
「お、落ちた・・・だからこんな・・・」
「それから出てこようともしない。迂闊に中へ入ろうとすると威嚇される。」
「・・・・・・」
で、俺に何をしろと・・・?と考え込む俺の方を振り返る二名の竜騎士。
あとは頼んだと言わんばかりに静かに頷くジェイスさんと、親指を立て、ほら行けよ、と洞窟を指すカルマ。
「えーっと・・・馬鹿なんですか?」
溢れた本音、でも俺は悪くない。
ギャーギャー言い返してくるカルマを無視して、ふと、洞窟の奥に視線を向けた時だった。
《 ──── 》
頭に響いた小さな声に俺は一つため息をついて頭をぐしゃぐしゃに掻きむしってから、赤い瞳を睨みつけた。
「・・・話をしろってことですね。」
「その通りだ。頼む。」
「は?!お前何言ってんだ?!竜と話ができる人間なんか聞いたこ、#€°☆$!?」
「死んだら呪いますから。」
「・・・死なせない。カルマもこう見えて強い。」
「#€°☆$%×」
「・・・嘘っぽい。」
俺に飛びかかろうとするカルマの頭にジェイスさんのゲンコツが綺麗に入ってのを見届けて、俺は一人洞窟の入り口へと足を進めた。
当たり前だけど、野生の竜は気性が荒い個体が多いからってのが理由。
特例として竜と契約を結んだ竜騎士、そして竜の生態を研究する研究者は接近・接触を認められているが、命の保証があるわけではない。
竜との契約を結ぶため縄張りに入り、そのまま帰ってこなかった騎士も多くいるんだとか。
そもそも基本的に竜は縄張りである山地から、理由もなく出てこない。
竜騎士のパートナーである竜たちは、異例中の異例。
人懐っこいのか、それとも竜騎士の能力が高いからなのかはわかんないけどさ。
そして縄張りを離れ、騎士団の敷地内で隔離されている竜なんかもっと異例だ。
「な・・・んですか、ここ・・・っ」
案内された場所は、森の中にある洞窟。
この森も騎士団所有らしく、入ってからは誰ともすれ違わなかった。
また竜に乗って移動するのかと思っていたけど、馬での移動。
竜に比べたら馬なんて楽勝だ。
でもジェイスさんと同乗ってのが、なんか子どもっぽくて嫌だったけど、一人で乗りこなす自信もないから黙っておいた。
「入るんですか?!この中に?」
「風魔法なら得意だ。」
「竜にあんま効果ねえけどな。」
「でしょうね?!!」
少し離れたところに馬は置いてきた。
空を隠すぐらい伸びていただろう大木がこの洞窟の周りだけバキバキに折れ、そこら中に倒れている。
何か、あったことは一目瞭然。
そして、それが只事ではなかったことも。
薄暗い洞窟の中から聞こえるのは、低く響く唸り声と何かと何かがぶつかる鈍い音。
肌にまとわりつく重くて、暗い空気が、その異様さを物語っていた。
もしこの辺りに子どもが住んでいようものなら、「あそこにはお化けが出る!」と噂になって、絶対近づかないだろう。
かく言う俺もこのまま見なかったことにして、ちょっと帰りたい。
「この中に・・・その・・・」
「数日前、突然ダートに現れた個体だ。」
「や、山に返せば、よかったんじゃ・・・」
「俺たちだってそう仕向けたぜ?でも結局途中で落ちたんだ。」
「お、落ちた・・・だからこんな・・・」
「それから出てこようともしない。迂闊に中へ入ろうとすると威嚇される。」
「・・・・・・」
で、俺に何をしろと・・・?と考え込む俺の方を振り返る二名の竜騎士。
あとは頼んだと言わんばかりに静かに頷くジェイスさんと、親指を立て、ほら行けよ、と洞窟を指すカルマ。
「えーっと・・・馬鹿なんですか?」
溢れた本音、でも俺は悪くない。
ギャーギャー言い返してくるカルマを無視して、ふと、洞窟の奥に視線を向けた時だった。
《 ──── 》
頭に響いた小さな声に俺は一つため息をついて頭をぐしゃぐしゃに掻きむしってから、赤い瞳を睨みつけた。
「・・・話をしろってことですね。」
「その通りだ。頼む。」
「は?!お前何言ってんだ?!竜と話ができる人間なんか聞いたこ、#€°☆$!?」
「死んだら呪いますから。」
「・・・死なせない。カルマもこう見えて強い。」
「#€°☆$%×」
「・・・嘘っぽい。」
俺に飛びかかろうとするカルマの頭にジェイスさんのゲンコツが綺麗に入ってのを見届けて、俺は一人洞窟の入り口へと足を進めた。
526
あなたにおすすめの小説
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~
水凪しおん
BL
「君は、俺の宝だ」
無実の罪を着せられ、婚約破棄の末に極寒の辺境へ追放された公爵令息ジュリアン。
彼を待ち受けていたのは、「北の食人狼」と恐れられる将軍グリーグとの政略結婚だった。
死を覚悟したジュリアンだったが、出会った将軍は、噂とは真逆の不器用で心優しいアルファで……?
前世の記憶を持つジュリアンは、現代知識と魔法でボロボロの要塞を快適リフォーム!
手作りスープで将軍の胃袋を掴み、特産品開発で街を救い、気づけば冷徹将軍から規格外の溺愛を受けることに。
一方、ジュリアンを捨てた王都では、破滅の足音が近づいていて――。
冤罪追放から始まる、銀狼将軍との幸せいっぱいな溺愛スローライフ、ここに開幕!
【オメガバース/ハッピーエンド/ざまぁあり/子育て/スパダリ】
悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます
水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。
しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。
このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。
そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。
俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。
順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。
家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。
だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる