【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O

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何の許可もなくベロン、ベロン、と顔中を舐められる気持ちを誰かにわかってほしい。
普通に生臭いし、ネトネトするし、マジでやめてくれ。

そんなこと言っても全く言うことを聞く気がないのは、深緑、黒、赤の三頭。
昨日竜舎に寄らずに出掛けて、帰って顔出したらめちゃくちゃ機嫌悪くて面倒臭かった。
だから今日は朝イチ顔を出したわけだけど、結局こうなって、また顔を洗い直しに宿舎に戻んないといけない。



「地味に遠くて面倒くせえ・・・」

《 俺も連れてけ 》

《 今日もあっちに行くのお?ミシャと飛んで遊ぼうよ~ 》

《 腹減った 》

「・・・本当毎日自由だな・・・お前ら・・・」



一昨日、爺ちゃんから手紙が届いた。
字を書くのは得意じゃない爺ちゃんの辿々しい字で「ちゃんと飯を食え」とだけ書かれていた。
帰ってこい、とか、大丈夫か、とか、他にも色々書くことあるだろ。
爺ちゃんから初めて貰った手紙が、これかよ。
・・・でも、そのぶっきらぼうな感じが爺ちゃんらしくて、なんか思わず笑ってしまった。



「おい、レヴィ行くぞ。」

「えー・・・今日カルマかー・・・」

「ああ゛?!その言い草は何だっ、コラっ!」

「じゃあ、いってくるな。」

《 俺が引き摺り出してやろうか 》

「・・・今日こそ連れて帰るけど、絶対苛めんなよ?」



カルマの扱いもだいぶ慣れた。
こいつは大体無視しといていい。
でも一昨日、洞窟に行く途中で獣が出た時、一瞬で倒したんだよな~。

ちょっと見直した。


《 ミシャは新しい赤ちゃん楽しみ~! 》

「カルマよりは赤ちゃんではないと思うけど。」

「だあれがっ!赤ちゃんだ!!!」

「・・・本当、カルマうるさい。」


本当に、ちょっっっと、だけ。


----------------⭐︎


咥えて雑に投げられたであろう籠が洞窟の入り口あたりに転がっている。
昨日より倍近く量を増やしたから、籠は三個。
それを拾い集めてから最初にここに入った時とはまた違った気持ちで、中に入る。



「お前さ、行儀が悪い。」

《 遅い!お腹すいた! 》

「・・・ミシャの言う通り、赤ちゃんだな。」

「誰が赤ちゃんだ!!!」

《 そっちのニンゲンは入ってくんな! 》

「・・・カルマ、下がんないと怒ってる。」

「クッソ!!なんかあったら呼べよ!!わかったか!!」

「了解でえす。」

「#€°☆$%×~!!」



文句を垂れるカルマを見送って、雪の塊・・・改め、白竜のコルヴィと向き合う。
こいつの警戒心はもうほとんどない(・・・と思ってる。)
根気よく話しかけて、誤解を解いて、果物で釣った。そして釣れた。

今日こそはここからこいつを出して、翼の状態を研究者さんたちに診てもらわないと。
日に日に靄が濃くなってる気がしてならない。
天井に穴があるとは言え、ここが薄暗いことには変わりなくて、目を凝らしてよく見るけど、翼まではまだ近寄れないし、処置は早いに越したことはない。


さあ!俺のとっておきの秘策を食らえ────・・・!



「なあ、コルヴィ。」

《 気安く呼ぶな!ニンゲン! 》

「俺さ、今日良い匂いするだろ?」

《 ・・・そ、それが、どうしたんだよ!?お前いつも良い匂いだろ! 》

「・・・そうか?」

《 あっ、まっ、も、勿体ぶって何だよ!? 》

「・・・今日、竜舎の奴らはサーダの肉を食いまーす。」

《 ・・・・・・っ!さっ、に、に・・・っ! 》


サーダ、というのは高山帯に生息する超でかい鳥。
あの三馬鹿竜たちによると、この鳥が嫌いな竜はいない、とのことだった。

だからフェイさんに頼んでサーダを仕留めてもらった(仕留めたのはミシャ)。
丁寧に羽根をむしって、軽く下味をつけて、準備は万端。
イーライに味見させたら、興奮しすぎて俺は風圧で数メートル吹っ飛んだ。


その甲斐あって・・・見ろ。
ご覧の通り、コルヴィちゃんの口元からはだらっだらに涎が垂れて、滝みたいになってる。

そうだよなあ?ここ数日、好物とは言え果物ばっかりだもんなあ?
だってここまであんなデカい肉の塊運んだら、途中で獣に襲われそうだしさあ?
・・・そういや、この辺り魔物は出なかったな。
ジェイスさん曰く、中型クラスの魔物もそれなりに出るから、必ず護衛(今日はカルマ)をつけないとって話だったけど────



《 ────い、おい!ニンゲン! 》

「っ、ああ、ごめんごめん。どうした?」

《 ぼ、僕の・・・ぶ、分・・・・・・モニョモニョ 》

「ん?なにかなー?」

《 ~っ、僕のっ、分も、あ、あるのかって聞いたんだ! 》

「(キタ!)」



地団駄を踏む竜。背に腹はかえられぬってか?
緩む口元を必死に誤魔化して、俺は平然を装う。



「それが今日はイーライが見回りで、一羽分余って困っててさ~」

《 (ゴクリ) 》

「人間には大きすぎるんだよなあ、あの鳥。勿体無いよなあ。」

《 (ゴックリ) 》

「誰か綺麗に食べてくれる奴いないっかな~?」

《 ・・・・・・ああああ!もう!わ、わかったよ!行くよ!行けばいいんだろ! 》

「・・・ふ~ん。まあ、いいけどお~?」


ギィっと牙を剥き出したコルヴィ相手に勝利を確信。
でもすぐに、ハッとしたような顔をして大人しくなった。



《 だけど、あ、あいつ。あいつが・・・もし、来たら・・・ 》

「・・・大丈夫だって。な?」

《 ・・・お前は、魔力多いだけ、じゃんか・・・ 》

「?だから俺魔力ないって。だけどほら、さっきまでそこに・・・あ、ほらほら!あそこに居るだろ?あいつああ見えて強いしさ。竜舎には他の竜も騎士もいる。」

《 ・・・あいつうるさいからキライ 》

「・・・ヒソヒソ(うるさいけど、割と良い奴だぜ?)」

「悪口!!言ってたら!!ぶっ飛ばすぞ!!レヴィ!!」

《 ・・・どうだか。 》



こいつは、怖かったんだと思う。
だって、俺だったら死ぬほど怖いもん。
初めてイーライ見た時みたいにさ、圧倒的な力の差感じて動けなくなるくらい。
大きな体だけど、まだまだ子竜にあたる歳で・・・って、それでも俺より長く生きてるらしいけどさ、誰かが守ってやんないと。


「ほら、行くぞ。早くしないとグリムがぜーんぶ食べ、」

《 無かったらお前食うからいい 》

「・・・そ、それはー・・・そのー・・・」

《 ・・・ふ、ふふ、 》

「わ、笑うなよ。」

《 お前、本当変な奴だな 》

「お前も変だかんな?」

「俺のことか!!!!!?」

《 こいつ本当うるさい 》

「・・・だな。」



陽光の下で見る雪のような体は、ところどころ血で汚れていて、洞窟を出てからしばらくコルヴィは静かに、どこか懐かしむような目つきで青空を見つめていた。
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