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12 山
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降り続いていた雨も出発直前に止み、よく晴れた空を見て準備した雨合羽をカバンにしまう。
聳え立つ山の間を悠々と飛ぶ竜の姿は、子どもの頃爺ちゃんに読んでもらった絵本の挿絵のようだった。
イーライは風魔法が得意ではないらしく、ジェイスさんが俺の体も入るように風を纏わせてくれた。(最初のあの日もそうだったらしい)
おかげで息もしやすいし、こんな標高の高いところを飛んでいるのにそこまで寒さを感じない。
そっと下を覗くと木が物凄く小さく見えて、あまりの高さに腹の奥がキュッとなった。
興味本位で下を指差し、地上経由じゃダメなのかとジェイスさんに尋ねてみた。
背後から腕を回しガッチリと俺の体を固定するジェイスさんは、ゴーグル越しにチラッと一瞬俺を見てから無表情で首を横に振る。
「この辺りの竜は、この国章を付けた竜を認識している。」
「・・・?へー、そうなんですね。」
「その竜に乗った人間は襲ってこない。」
「・・・なるほど。道が険しいから危ない、とかじゃないんだ・・・」
「勿論それもあるが、竜の方が何倍も危険だ。」
俺たち今、その本拠地とも言える場所飛んでるんだけどな。
襲ってこないって言っても、心配になる。
だって、国章プレートつけてない竜も一緒に飛んでるし。
体を後ろにそらしたままそんなことを考えていると、頭頂部を顎で突かれ、前を向くように促される。
俺の視線はイーライの前方、やや右斜へ。
白い翼についていた血はすっかり取れ、その美しい体が際立って見えた。
「何でコルヴィまで・・・」
「本人がそれを望んでいたんだろう?」
「まあ、そうですけど・・・、一緒に行く!の一点張りで・・・」
「いざとなったら戦うさ。カルマとグリムもいる。それに・・・ディランもな。あいつはなかなか強いぞ。」
「・・・また思い出しちゃいました・・・出発前のカルマとディランさんの攻防・・・・・・ふっ、ぐふっ、」
「#$%*☆€~~!!!」
「後ろで敗者が何か言ってるぞ。相手してやれ。」
「嫌です、面倒なんで。」
実はディランさん、王都研究所のとても偉い人らしい。
ユシュフに行くことが急遽決まり準備を済ませ、誰の竜に同乗するか考えながら騎士団の竜舎まで歩いていたところ、偶然カルマが通りかかったらしく・・・見事捕まえた。
さすがにカルマも管轄が違う目上の人には強く出れず────いや、ディラン相手に強く出られる人なんて想像できないけど────やんわり断ろうとするカルマvs何としてでも乗ろうとするディランさんの構図があまりにも面白くて、俺は悶えるくらい笑った。
というわけで、俺の同行者は三名と三頭。
何とも愉快な面々である。
「思い出し笑いしているところ悪いが、忠告しておく。」
「んぐっ、ケホッ、は、はい!何ですか?」
「彼らが何に興味を持つか予測不能だ。一人で迂闊に行動するなよ。」
「・・・全く意味がわからないんですけど。」
「説明するより会った方が早い。とにかく、一人で行動するな。私と一緒に居ろ。」
「は、はい・・・」
竜が俺に話しかけてくるように、実は竜騎士も頭で会話してんのかな。
説明が足りないというか・・・分かんないことだけが増えていく。
振り返ってジェイスさんを見る。
俺の視線に気がついたジェイスさんはまたゴーグル越しに俺を一瞥したあと、ふっと息を溢すように笑った。
「私が守る。心配するな。」
「・・・へい。」
イーライの手綱を握る手に力が入る。
周りを見渡すと、岩場が増えてきた。
後ろから聞こえたピィーっという笛の音。
その音に合わせ、体がふわっと浮く感覚と共にイーライが降下していった。
聳え立つ山の間を悠々と飛ぶ竜の姿は、子どもの頃爺ちゃんに読んでもらった絵本の挿絵のようだった。
イーライは風魔法が得意ではないらしく、ジェイスさんが俺の体も入るように風を纏わせてくれた。(最初のあの日もそうだったらしい)
おかげで息もしやすいし、こんな標高の高いところを飛んでいるのにそこまで寒さを感じない。
そっと下を覗くと木が物凄く小さく見えて、あまりの高さに腹の奥がキュッとなった。
興味本位で下を指差し、地上経由じゃダメなのかとジェイスさんに尋ねてみた。
背後から腕を回しガッチリと俺の体を固定するジェイスさんは、ゴーグル越しにチラッと一瞬俺を見てから無表情で首を横に振る。
「この辺りの竜は、この国章を付けた竜を認識している。」
「・・・?へー、そうなんですね。」
「その竜に乗った人間は襲ってこない。」
「・・・なるほど。道が険しいから危ない、とかじゃないんだ・・・」
「勿論それもあるが、竜の方が何倍も危険だ。」
俺たち今、その本拠地とも言える場所飛んでるんだけどな。
襲ってこないって言っても、心配になる。
だって、国章プレートつけてない竜も一緒に飛んでるし。
体を後ろにそらしたままそんなことを考えていると、頭頂部を顎で突かれ、前を向くように促される。
俺の視線はイーライの前方、やや右斜へ。
白い翼についていた血はすっかり取れ、その美しい体が際立って見えた。
「何でコルヴィまで・・・」
「本人がそれを望んでいたんだろう?」
「まあ、そうですけど・・・、一緒に行く!の一点張りで・・・」
「いざとなったら戦うさ。カルマとグリムもいる。それに・・・ディランもな。あいつはなかなか強いぞ。」
「・・・また思い出しちゃいました・・・出発前のカルマとディランさんの攻防・・・・・・ふっ、ぐふっ、」
「#$%*☆€~~!!!」
「後ろで敗者が何か言ってるぞ。相手してやれ。」
「嫌です、面倒なんで。」
実はディランさん、王都研究所のとても偉い人らしい。
ユシュフに行くことが急遽決まり準備を済ませ、誰の竜に同乗するか考えながら騎士団の竜舎まで歩いていたところ、偶然カルマが通りかかったらしく・・・見事捕まえた。
さすがにカルマも管轄が違う目上の人には強く出れず────いや、ディラン相手に強く出られる人なんて想像できないけど────やんわり断ろうとするカルマvs何としてでも乗ろうとするディランさんの構図があまりにも面白くて、俺は悶えるくらい笑った。
というわけで、俺の同行者は三名と三頭。
何とも愉快な面々である。
「思い出し笑いしているところ悪いが、忠告しておく。」
「んぐっ、ケホッ、は、はい!何ですか?」
「彼らが何に興味を持つか予測不能だ。一人で迂闊に行動するなよ。」
「・・・全く意味がわからないんですけど。」
「説明するより会った方が早い。とにかく、一人で行動するな。私と一緒に居ろ。」
「は、はい・・・」
竜が俺に話しかけてくるように、実は竜騎士も頭で会話してんのかな。
説明が足りないというか・・・分かんないことだけが増えていく。
振り返ってジェイスさんを見る。
俺の視線に気がついたジェイスさんはまたゴーグル越しに俺を一瞥したあと、ふっと息を溢すように笑った。
「私が守る。心配するな。」
「・・・へい。」
イーライの手綱を握る手に力が入る。
周りを見渡すと、岩場が増えてきた。
後ろから聞こえたピィーっという笛の音。
その音に合わせ、体がふわっと浮く感覚と共にイーライが降下していった。
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