【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O

文字の大きさ
18 / 37

17 織

しおりを挟む
密着した体から心臓の音がする。
人間よりも、もっとのんびりとした穏やかな音。
どうやら俺は座った誰かの膝の上で、抱えられているらしい。

目を開けると、俺の体を覆うたくさんの織物や毛皮が見えた。
赤や青、白に緑、時々金。
鮮やかで、目が覚めるような色ばかり。
おかげで目がしぱしぱする。


横から冷たい風がひゅうっと吹いてきて、くしゃみがでた。鼻のむずむずに耐えていると、視線を感じて顔を上げる。

目が合って何度か瞬きをした琥珀色の鋭い瞳の持ち主は、俺の予期せぬ行動に怪訝そうな顔をした。


「何の真似だ。」

「・・・折るのも、一苦労だったろうなと思って。」


俺の言葉にぴくりと眉が動くのを確認してから、俺は角から手を離す。

少しカサカサした表面に、相当硬そうな感触。
もう一本の折れた方も触ろうとしたら頭を後ろに逸らされて、空振りに終わった。


「ひと月以上経った。」

「・・・・・・本気で、言ってる?」

「俺が冗談を言うと思うか?」

「・・・・・・」


黙っていると大きなため息をつかれた。

こうして近くで見ると、瞳の琥珀色が透き通ってて、キラキラしてる。
でも眼光が・・・・・・鋭すぎて、目だけで魔物とか殺せそう。
この目で冗談は言わないだろうし、本当に一ヶ月・・・経ってるってことか。

体に掛けられた織物の下、体をもぞもぞ動かすとあちらこちらから、パキ、ポキ、と骨と関節が悲鳴をあげた。


「通りで・・・体、痛いし。」

「・・・何?どこだ、どこが痛い?見せろ。ここか?!」

「いぎゃっ!そ、そんなに触んなよ!くすぐった・・・・・・、なっ!何で、俺、裸?!!はっ、恥ずっ、恥ずかっ、し、ゲホッ、ゴホッ、」

「お前の裸なんぞ、何とも思わん。いちいち騒ぐな、餓鬼め。」

「~~~~?!」


待て待て待て!
自分の体を手でぺたぺた触って確認する。
・・・服、着てない。意味わかんない。

もう一度顔を上げると、馬鹿にするような目で俺を見るあの男。
お前が何とも思わなくても、本人が色々思うんだが!?


「魔力を吸収するのに、服が邪魔だっただけだ。他意はない。」

「・・・よくわかんないけど、あんたは服着てんじゃん。」

「脱いでも構わんが?」

「・・・・・・結構です・・・」


今度は鼻で笑われた。
今すぐにでも立ち上がって、ちょっと離れたところから文句言いたい。
でも悲しいことに俺の体は、パキ、ポキいうだけでちっとも言うことを聞いてくれなかった。

目を逸らそうと周りを見る。
見覚えのある空間。
だけどあの時と違うのは、小さなテーブルや椅子はひっくり返って脚が折れ、ベッドに寝具は何もない。
外が見えた窓みたいな穴は歪に広がっていて、雨の降る景色が寂しげに見えた。

やっぱりここは、二人の────・・・


「あいつ、消えたよ。」

「・・・・・・」

「勝手なことすんなって、怒ってた。」

「・・・・・・そんな言い方しない。」

「あんたのことかわいい、だって。」

「・・・どこが?」

「俺に聞くなよ。」



さっき俺が見ていた窓の辺りを真っ直ぐ見る竜人。

琥珀色の瞳の代わりに見えたのは、ぎゅっと固く閉じられた薄い唇だった。


「伝言預かった。」

「・・・・・・言わなくていい。」

「本当、ヘタレ。」

「何とでも言え。」

「・・・・・・・・・イル様、」


濃紺色の髪が大きく揺れるくらい、勢いよくこちらを向いて喉を鳴らす。
呼び方一つで怒るんなら最初から大人しく聞けよ。

それにそんな怖い顔で睨んでも、俺はお前のこと怖くない。


「幸せな毎日と大好きなあなたのことを忘れなかった僕の勝ち。だってさ。」


にやにや笑ってたな、あいつ。
そういうところ、嫌いじゃない。

あいつの魔力が消えたところで、すべて終わるわけじゃない。
俺にとってはむしろこれからが始まりなわけだし、俺は生まれてから今までずっと、俺。

これからもよろしく、この体。

それにさ、お前のことはあの夢とあいつから聞いた話だけでよく知らないけど、唇噛んで血が滲んで、泣くの我慢するくらいあいつが大事だったってことだろ?

それならちょっとくらい、仲良くしてやってもいい。


「また泣かないでって言われるぞ。」

「・・・・・・お前、何を見た?」

「何って・・・死ぬ直前のところ?」

「・・・泣いていない。」

「へえ。そうですか、おヘタレ様。」

「・・・・・・舌を引き抜くぞ。」


目がマジだ。
慌てて口を閉じると、ごちん、と額に頭突きをされた。
音の割にそれほど痛くなかったけど、そんなことされるとは思ってないからめちゃくちゃ吃驚して、口がぽかーんと開いてしまった。


「赤子のクロは、こうするとよく笑った。」

「・・・え、俺、今あやされたの?・・・ん?クロ?黒?」

「俺がつけたあいつの名だ。」

「何とまあ単純な名ま、イデッ!つ、つ、強くすんなっ!頭割れる!!」

「赤子扱いも当然の餓鬼め。」

「誰が赤子だ!俺はもう立派な成じ、ゲホッ、ゴホッ、?!うわ!ち、ち、血!!」

「・・・・・・本当に騒がしい。」


そして、俺はハッとする。
再び血まみれになった手よりも、掛けられていた上等な織物に血がついてしまったのではないか、と。(貧乏性)

そして慌てて織物を退けようとして、裸だったことを思い出し、また叫んでさらに血が出た。
俺の叫び声を聞きつけ、外から飛んできたコルヴィとミシャ、そしてフェイさんにかなりの動揺を与えてしまい、真っ赤な顔で謝罪する羽目になったのだった。




しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

偽りの令嬢を演じるオメガ(♂)を救うため、平民アルファの俺が傲慢な大公爵家に喧嘩を売って、二人で自由を掴み取る物語

水凪しおん
BL
これは、偽りの仮面を被って生きるしかなかった一人の青年と、その仮面の下にある真実の姿を見つけ出し、愛した一人の青年の、魂の恋物語。 生まれながらの身分が全てを決める世界。 平民出身のアルファ、ケイトは、特待生として入学した貴族学園で浮いた存在だった。 そんな彼の前に現れた、完璧な貴族令嬢セシリア。誰もが憧れる彼女の、ふとした瞬間に見せる寂しげな瞳が、ケイトの心を捉えて離さなかった。 「お願い…誰にも言わないで…」 ある夜、ケイトは彼女の衝撃的な秘密を知ってしまう。 セシリアは、女ではない。平民出身の男性オメガ「セシル」だったのだ。 類まれなフェロモンを政治の道具として利用するため、公爵家の養子となり、死んだ娘として生きることを強いられていたセシル。 「俺がお前を守る」 偽りの人生に絶望する彼の魂に触れた時、ケイトの運命は大きく動き出す。 これは、全ての偽りを脱ぎ捨て、たった一つの真実の愛を手に入れるために、世界に抗った二人の物語。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件

水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。 赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。 目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。 「ああ、終わった……食べられるんだ」 絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。 「ようやく会えた、我が魂の半身よ」 それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!? 最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。 この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない! そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。 永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。 敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。

処理中です...