敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

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1.身代わりのお見合い

身代わりのお見合い⑤

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はしばみ色……」
「なんですって?」
 香澄を見ていたのは黄味がかった茶色の瞳だった。髪も柔らかそうな焦げ茶色でとても端正な顔立ちの持ち主だったのだ。

 首を傾げて香澄を覗き込むようすも印象は柔らかく怖くない。
「少しだけ、二人で話しませんか?」

 そう言われて庭を指さされ、いつもなら男性と二人きりになるような状況には絶対に首を縦に振らない香澄なのだが、彼の雰囲気に逆らうことができず、こくりとまた頷く。

 何か言わなくてはいけないことは分かるのだが、言葉を返せないくらいに綺麗な人だったのだ。
「少しだけ、お借りします」
 叔父にそう言いおいて、彼は香澄ににこりと笑った。

「足元、気をつけて」
 歩く時もゆっくりと着物の香澄に気遣ってくれた。
「こちらの庭は有名なんですよ」

 庭の中にはプールのような大きな噴水があって、水が流れる音は心を落ち着かせてくれる。噴水は時々大きく水を跳ねさせたり小さく水を飛ばしたり、リズミカルな水の動きは見ていて飽きなかった。

「あと五分したら音楽に合わせて噴水のパフォーマンスがあるんです。それを見たくて」
 いたずらを企む子どものような表情だった。
「パフォーマンスが見たかったことは内緒ですよ」
「あ……私も見たいです」
「じゃあ、二人で見ましょう。こっちです」

 彼は大きなパラソルの下に香澄を連れていく。
 とてもいい人だ。早く言わなくてはと思うのに、香澄を菜々美だと思っているから、これほどまでに親切なのかもしれないと思うと、香澄にはなかなか勇気が出なかった。

「写真と雰囲気が違いますね」
 それはそうだろう。別人なのだから。
「けど、今日の方が好きだな」
 さらりと好きと告げられてしまって、もう香澄はどうしたらいいのか分からなくなる。

 口を開きかけるとそこへ音楽が流れてきた。映画の主題歌としても有名な曲だ。
「この映画、見ました?」
「いえ……見たかったんですけど」
 特に行く機会もなく逃してしまった。
「見逃した?」

 くすくすと楽しそうに神代は笑っている。だから安心して香澄も話すことができた。
「ええ。でも音楽は知ってます」
「俺も一緒。見逃してDVDを買って、それすら観なくて積んでるってのがたくさんある」

 香澄も一緒だ。DVDのリリースのニュースを見て、もう発売されてるといつも驚いている。
「私も映画館で観たいものはあるんですけど」
「今度、一緒に行きますか? ほら、約束したら絶対観るでしょう?」

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