敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

文字の大きさ
51 / 86
10.幸せなすれ違い

幸せなすれ違い⑤

しおりを挟む
 案内してくれる神代について香澄はバスルームに向かう。向かう途中でくるっと神代が振り返った。
「部屋の下見に来たのだからルームツアーしますか?」
 首を傾げられて、香澄は「します!」と大きく頷いた。くすりと笑った神代が部屋を案内してくれる。

 先ほどは入っていない部屋だ。
「ここは書斎、書斎っていうか仕事が持ち帰りになった時に仕事をする部屋ですね。リモートワークの時もここですることが多いです。作業内容によってはカフェに行ったりすることもありますが」

 書斎はシンプルで大きなデスクがありその上にはモニターがたくさん置いてあった。
 いかにも仕事をする部屋らしい。書斎と言うよりコンピュータールームのようだ。

 そして続けてベッドがある部屋を案内してくれた。ここは客間らしい。
「お客さんが来ると泊める部屋です。友人とか家族とか」
 そう言われて香澄はまだ神代の家族に直接挨拶していないことに思い至る。

「ご家族にもご挨拶行かなくてはいけませんね」
「あ、そうか。うちの家族は菜々美さんの写真を見てお見合いが進んでいると思っているかもしれません。訂正しておきます。見合いの時はいい年をした大人が親と一緒に同席するというのも恥ずかしくて断ったんですよ」
「そうだったんですね」

「母には怒られました。お見合いの常識から外れていると言って。けど、今にして思えば、親がいなくてよかったかもしれませんね」
 常識という点で言えば、柚木の家も常識とは合わないことをしていたので香澄は返す言葉がない。

「そうでしょうか……そうしてみると叔父がやったことも常識からは外れていましたわね」
「けど、香澄さんと会えた。俺にはそれだけで十分です」
 ふと香澄が横にいた神代を見ると、神代は機嫌良よさそうに微笑んでいた。廊下の先にはもう一つ部屋がある。

「あそこはもう知っていますね? 寝室です」
 それはあれこれされたので覚えている。
「もうっ!」
 香澄は赤くなることしかできなかった。
「一緒に住んだら、寝室は一緒ですからね」
 からかっているのか本気なのか分からない。香澄は返事に困ってしまった。

「実はもう一部屋あるんですが、今はそこは使っていないんです」
 空いているという部屋は今は神代のトレーニングルームになっているようで、マシンが少し置いてあるだけの部屋だった。

「ものすごくたくさん部屋があるんですね」
 香澄に引っ越してきていいというはずだと納得する。
「もしも家族が増えたら、柚木トラストコーポレーションさんで不動産を購入しましょう」
「え? そんなのはいいですよ! お気にされなくて」
「義理の実家がせっかく不動産業をしているのですからそこで購入すればいいでしょう」

 もしも家族が増えたら……。
 そこにはまだ見ぬ子どもの姿もあるのだろうか?
 結婚の先にあるものを意識させられたような気がして、香澄はどう反応すればいいのか分からなくなってしまった。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

処理中です...