エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら

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10.楽しい休暇に乾杯!

楽しい休暇に乾杯!④

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 機内では美味しい料理をいただいたあと、ベッドルームを五十里と一緒に使う。

 ベッドサイドの間接照明の中、微笑む五十里に「おいで」と呼ばれて、莉桜はその腕の中に入ったのだった。

 ベッドでもジェット機特有のゴーっという音がする。その音が飛行機の中にいるのだと莉桜に感じさせた。
 エンジン音と温かく安心できる五十里の腕の中で莉桜は五十里に話しかける。

「ジェット機のエンジン音がしますね」
「気になるか? 俺は意外と好きなんだが」
 返事をしながら五十里は莉桜をきゅっと抱きしめた。エンジン音が好きと言われて莉桜も納得する。

「分かります。普段乗務しているときも夜便でお客様がお休みの時、機内はとても静かなのにエンジン音だけが聞こえて、それが妙に落ち着くんですよね」

「なんだか、とてもいいな」
「はい……」

 ベッドルームにいると切り取られた二人だけの世界のように感じさせるのに、エンジン音は人の気配を伝えてきて妙に安らかな気持ちにさせる。

 莉桜は昨日の乗務のあと帰って来てからも五十里にほとんど寝かせてもらえなかったのだ。
 気づいたら、波にさらわれるように眠気に襲われていた。

 気づいたのは客室乗務員に「朝食はどうされますか?」とノックされたときだ。

 莉桜の隣で大きく伸びをした五十里が柔らかく莉桜に微笑んだ。
「せっかくだから食べようか?」
「はい!」

 ベッドルームに備え付けてある洗面台で準備をして客室の方に出る。
「おはようございます」
 客室乗務員はとてもさわやかな笑顔だった。

「おはようございます」
「よく眠れましたか?」
「はい。とっても快適でした」

「そう言っていただけて何よりです。あと一時間程度で着陸となりますので朝食をご用意いたしました」

 シートに座るとテーブルには白いクロスがかけられて、カットされたフルーツやエッグベネディクト、クロワッサンやバターロールなどが置かれる。

「お飲み物はどうされますか?」
「カフェ・ラテでお願いいたします」
 カフェ・ラテの入ったカップをテーブルに置きながら、客室乗務員は莉桜に話しかける。

「現地はお天気も良いみたいですから、楽しみですね」
「嬉しいです」

「莉桜はモルディブは行ったことあるのか?」
 隣で並んでコーヒーを飲みながら、五十里が莉桜に尋ねる。
「初めてです。直行便がないのでなかなか行けなくて」

 モルディブは正式名称をモルディブ共和国といい、約千二百の島から成っている。

 国の政策で一島一リゾート計画が進められており、現在は約百五十の島がリゾート島となっている。観光業は主産業の一つだ。

「俺も初めてだ。今回はチャーター機なので直行できたが、通常はアジアか中東でのトランジットだからな」

 直行便でいくらでも行けるリゾートがあることを考えると、わざわざトランジットの手間をかけてまで行くのは面倒に思われる。

 そのせいか、日本からモルディブに行くのは時間をたっぷり使える新婚旅行やリタイア後のセカンドライフ記念の旅行として選択する人も多いようだ。

 初めてのモルディブを莉桜も楽しみにしており、一島一リゾートがどんなものであるのか体験してみたかった。



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