エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら

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エピローグ

エピローグ①

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「迎えが来ているはずなんだが……」
 到着ゲートを二人でスーツケースを引いて出ると『五十里様』と書いたタブレットを掲げている男性がいた。

 その男性に五十里は片手を挙げて近寄る。
『ミスター五十里! お待ちしておりました』
 とても丁寧な物腰の男性は、五十里と莉桜の二人分の荷物を預かり、空港を出る。

『今日はとても良い天気なので海が綺麗ですよ』
 にこやかに男性から言われて莉桜も笑顔を返す。
『それは嬉しいです』

 空港からそれぞれのリゾート島には一般的には船や離れた島なら水上飛行機などで移動することとなる。

 空港を出ると普通なら道路があるのだろうが、モルディブの場合、出てすぐが港ということに莉桜は驚いてしまった。

 天気の良い海は案内の男性の言う通り、まさに写真ででも見るかような青のグラデーションを見せており、キラキラと輝く水面も美しい。
 莉桜は満面の笑顔で五十里を振り返った。

「武尊さん! 海が本当に綺麗ね」
「砂が白いと海は綺麗に見えるらしいが、この青は本当に見事だな」
 五十里も感心したように海に見とれている。

 その間、男性は莉桜と五十里の荷物をスピードボートに乗せていた。
『お乗り下さい。ではリゾート島までご案内いたします。こちらのボートで十五分ほどです』

 案内されたボートに乗り、海の上を滑るように走りながら風を切るのも気持ちいい。
 色んな島の横を通る時に、海にせり出している水上コテージなどが見えるのもリゾート気分を盛り上げた。

 その時、ボートの横を並走するようにイルカの群れが顔を出したのだ。
 イルカの群れは入れ替わり立ち代り海面からジャンプをして莉桜と五十里を喜ばせる。

 はしゃいだ声を上げて、莉桜は隣にいる五十里に寄り添った。
「見て! 武尊さん、イルカが一緒に!」
「ははっ、本当だな。遊んでもらっているとでも思っているのかもな」

 イルカたちは本当に遊んでもらっているとでも思っていたのか、しばらく並走してボートが減速すると離れていってしまった。
 水面から顔を出しているようすも愛らしかった。

「ばいはーい」
 楽しませてくれたイルカたちに莉桜が手を振って別れを告げるとボートは着岸の準備を始める。

 桟橋に寄り添うように立っているのは白亜の大きな建物だった。
 ガラス張りのリビングが海からでも見える。この島に他の建物は見当たらなかった。

「莉桜、水上コテージだ」
 五十里がにやっと笑って莉桜に告げる。
(水上コテージ!? 別荘じゃなくて?)

「他に建物がないんですけど」
「だろうな。ここは島ごと貸切だからな」
 莉桜は開いた口が塞がらない。

「し、島ごと貸切なんてあるんですか!?」
「モルディブらしいよ。時間になると料理人がボートでやってくるし、アクティビティを楽しみたいならインストラクターを派遣することもできる。アクティビティ専門の島で楽しむこともできるそうだ。どちらにしてもここでは二人きりだ」

 輝くような笑顔を見せられて莉桜は返す言葉がなかった。
(そうだった! この人こういう人だったわ!)

 五十里の言葉通り、荷物を降ろすと案内の男性はまたボートで去っていってしまった。
 しかし近くの島で待機はしているとのことで『いつでも呼んでくださいね』と爽やかな笑顔を見せる。

 建物の中は、先ほど海の上からも見えた開放的なリビングの他、寝室やバスルームもガラス張りになっており、海を臨む景色が楽しめるような設計になっている。

 それぞれの部屋はパーティでもできそうなくらい広い。滞在する部屋のほとんどが海に面して作られているのでとても開放的な印象だ。

 リビングに続くデッキにはジャグジーと小さめのインフィニティプールがそなえられており、デッキチェアやテーブルも置いてあるので、日によってはそこで食事を楽しむこともできるのかもしれなかった。

 莉桜がデッキに向かうとプールの横から海へと続くはしごが設置されていて、はしごから直接海へ入れるようだ。
 しかもデッキから覗いた海にはたくさんのカラフルな魚が泳いでいるのが見えた。

「武尊さん、たくさん魚がいます!」
「本当だ。シュノーケリングの道具も持ってきてよかったな。あとで一緒に海へ入ろう」

 真っ青で綺麗な海に、たくさんのカラフルな魚を海の中で見るのはとても楽しいことだろう。さっそく莉桜はわくわくしてきてしまった。

「入りましょう! すっごく楽しみです!」
 長期休暇と言ってもここで過ごせるのは三泊なのですぐにでもアクティビティを楽しみたい莉桜だ。

「よし、着替えるか」
 荷物を寝室に片付けて、水着に着替えた莉桜は五十里の水着姿を見てどきんと鼓動を大きく跳ねさせてしまった。

(それは肌も見たことはあるけれど……)
 腹筋も引き締まって彫刻のような五十里の身体は明るい太陽の下で見るとまた健全な色香があって、衣緒を落ち着かない気持ちにさせるのだ。

 スーツの時とは違って髪もセットしていない緩く降ろしたヘアスタイルもラフで素敵だった。

「莉桜、水着可愛いな」
 莉桜も白色のセパレートの水着を身にまとっている。新しいものではないし、海外にステイへ行く際にいつも持っていくものではあったけれど、五十里に可愛いと言われて一瞬照れてしまった。

 シュノーケリングはシュノーケリングベストという水に浮くライフジャケットのようなものを装着して、海面を浮かびながら海の中を観察するアクティビティだ。
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