中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

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サトシの譚

奇妙な魔導士

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 サトシとアイが仕事を始めて半年ほどが経ったころ、ウサカにはうまい野菜と質の良い武器防具がそろっていると噂になっているようで、以前にもまして町はにぎわっていた。

 そのためか、サトシたちの集落からウサカへ向かう街道に野党が出没するようになった。野党と言っても組織化されたものではなく、食い詰めた農民などが徒党を組んでいるだけの様で、サトシとアイからしてみれば、なんの障害にもなっていなかった。
 今日も今日とて、サトシたちの馬車|(ロバだが)の行く手を野党が阻もうとしている。手綱を握るアイが、荷車の中で転寝をしているサトシに声をかける。
「サトシ。今日も居るみたいだけど、どうする?」
 なんとも緊張感のないアイの言葉に、サトシがやおら起きだしてくる。
「ああ、退いてもらおうか。少し右に寄せてもらえる?」
「わかった。」
 アイは、馬車の進路を右寄りに取ると、サトシが風魔術で前方にいる野党を吹き飛ばす。野党は宙を舞い数メートル先に落下して動かなくなる。死ぬほどの衝撃ではないが、痛みで当分は動けないだろう。その様子を確認して、アイは進路を戻す。
「なんだか、物騒になってきたね。」
 言葉のわりに、アイの表情に緊張感はない。
「そうだね。まあ、気を付けようか。」
 サトシも気を付ける気はなさそうだった。

 馬車(ロバだが)に揺られること一時間余り、ウサカに到着する。

「よう、サトシ。今日も納品かい?帰りに寄っていきなよ。新しい調味料が入ったぜ」
「ああ、じゃあ帰りに寄るよ」
 サトシたちにも顔見知りが増えてきた。

「おう、サトシ。待ってたよ。」
「ジョイスさんこんにちは。今日は葉物を持ってきました。白菜とほうれん草なんですけど」
「いや、ちょっと待て!なんで白菜とほうれん草が今とれるんだ?あれ冬だろ。お前どんな栽培方法してんだよ!」
「へ、あ。そうですね。まあ、いろいろと。」
 とりあえず、サトシはうやむやにしてごまかそうとした。あくまで収穫する野菜はサトシが食べたいと思ったものを念じて収穫している。最近は葉物でも地中から出てくることが分かったので、一段と自由に収穫している。無茶苦茶である。
「そうか、あんまり詮索しないようにするよ。とりあえず、お前んところの野菜、結構人気だから気をつけろよ!お前が襲われちゃ、こっちも商売あがったりだ。今俺んところの仕入れ先はサトシん所がメインになってるからよ。」
「そうですか、ありがとうございます。気を付けます。じゃあ、ここに卸していいですか?」
 サトシは話を適当に流して仕事を終わらせる。代金を受け取ったら、ルイスの店に納品に向かう。

「こんにちは。ルイスさん。今日も買取お願いします。」
「ああ、サトシ。待ってたよ。最近貴族様からの依頼はないんだが、武器の引き合いが多くてね。手ごろな武器を買いたがる客が多いんだよ。その辺の品ぞろえも扱ってもらえると助かるよ。」
「わかりました、切れ味より頑丈さ重視で作ってみます。」
「頼むよ。助かる。」
 ルイスから代金を受け取り、アイのもとに戻る。
「ねぇ。今日はお昼、「二葉亭」で食べない?」
 二葉亭はウサカで人気の酒場だ。食事も美味いので、アイのレパートリー拡充もかねてたまに食べに行っている。
「ああ、良いね。また何か覚えてくれる?」
「うん。楽しみだね。」
 この世界に来て楽しみと言えば、食事くらいのものだ。意気揚々と酒場へ向かう。

 二葉亭はいつもながら随分にぎわっていた。店主は顔なじみになっていた。
「おう、サトシ!アイちゃんよく来たな!」
「こんにちはマスター」
 アイは店主に気に入られていて、レシピも教えてもらっている。

「で、サトシ。おまえなにしたんだ?」
 店主が小声になってサトシに告げる。
「へ?どう言う事」
「あいつだよ。あのカウンターに座ってるやつ。お前のこと嗅ぎまわってるんだよ。」
 サトシがカウンターを見ると、真紅のローブを纏った男がこちらを見ていた。スキンヘッドのその男は、年のころは30前後だろうか、薄ら笑いを浮かべながらサトシの事を見つめている。サトシはカウンターの方へ向かうと、男に話しかけた。
「あの、俺になんか用っすか?」
「……」
 男は無言のままサトシの方を見つめている。
「えーっと。あったことありましたっけ?」
「……」
「あの。もしもし?」
「……」
 なんだこいつ。という表情でサトシはアイと店主のもとに戻る。
「なんです?あれ。」
「いや、お前に用があるってな。」
「なんもしゃべってくれないですけど……」
「さっきは結構話してたけどな。」
「そうですか。」
 サトシは気にしないことにして、店主に勧められた席で食事をとる事にした。
 食事は絶品だった。アイも終始ご機嫌で、店主からレシピを聞いている。店主もアイにはデレデレだった。サトシはその様子をほほえましく眺めていたが、アイと店主の会話がひと段落ついたところで、代金を払い店を出ようと席を立つ。カウンターの前を通り過ぎようとしたその時、

「お前がサトシか。」
「うわぁ!びっくりしたぁ!」
 魔導士風の男の横を通った時に、急に男が話し始めた。
「なんですか。急に。そうですけど。なにか?」
「……」
「えっと。もしもし?」
「……」
「だから、なんなんですか?」
「……」
 男はにやけた顔のまま黙っている。

「なんだよ、もう。」
 サトシとアイは男を無視して、店から出て行く。

「なんなんだあの男。」
「?魔導士風の人?」
 アイは意に介さないような口ぶりだった。レシピのことで頭がいっぱいなのだろう。
「ところで、アインさんの店に寄りたいんだけど。」
「ああ、調味料買わないとな。」
 アインは料理用食材の店の店員だ。店主を見かけたことは無いが、アインが切り盛りをしている。

「アインさん。こんにちは」
 おう、アイちゃん。寄ってくれたんだね。昨日新しい調味料がいくつか入荷してるから見ていってよ。
 アイは所狭しと並んでいる調味料を興味深げに見ている。時折アインに質問しながら、いくつか購入を決めたようだ。
 サトシは、今日の料理が再現できることを楽しみにその様子を眺めていた。

「ところで、最近街道沿いに野党が増えてません?仕入れ大丈夫ですか?」
 サトシはアインに尋ねる。
「野党?ほんとに?聞いたことないなぁ。」
「そうですか。」
『あまり調味料は狙われないのか、まあ腹膨れないもんな』
 サトシは勝手に納得していた。

「じゃあ、ありがとうございました。」
「まいどあり!また来てね」

「どう?あの味は再現できそう?」
 サトシはウキウキで尋ねる。
「ん~。どうかなぁ。レシピ難しかったからなぁ。試してみるよ。」
「よろしく。」
 サトシとアイは、アインの店から出ると裏路地に入った。停車場までは裏路地の方が近道だった。

 しばらく裏路地を歩いていると、目の前の石畳に魔方陣が浮かび上がる。

「!?なんだ」
 襲撃か?とサトシが身構える。すると、魔方陣から肌色の円が現れる。

 サトシはじりじりと距離を取りながら後ずさる。
「アイ!馬車の準備を頼む。準備できたら先に町から出ておいてくれ。すぐに追いつく。」
「わかった!」
 アイはうなずくと、すぐに駆け出して停車場の方へ向かう。

 ゆっくりと生えてきた肌色の円は球体の様だった。徐々に大きくなってゆく。ちょうどドッチボールほどの大きさになった時、サトシはそれが頭だと気づく。
 酒場で出会った魔導士だった。
 ゆっくりと姿を現し、やはり薄ら笑いを浮かべながらサトシの方を見ている。
「ち!なんだよ。これ転移魔法か?そんな物もあるのか。」
 サトシは逃げ切れるか自信がなくなっていた。が、相手が攻撃を仕掛けてくる前に無力化しようと念じる。
『行動不能(スタン)』

 すると、目の前に見慣れないメッセージが現れる。

『無効』
「無効!?無効ってなんだよ。どういうことだよ!!」
 悲鳴にも似た声を上げながら、サトシは考える。
「ファイアストーム」
 近すぎてサトシもダメージを受けるが、そんなことは言ってられなかった。魔力を力いっぱい流し、最大火力で燃やし尽くそうとしたが、現れた炎は無情にも魔方陣に吸い取られてゆく。そしてメッセージが現れる。

『無効』
「またか!?そんなのありなのか?どうしろって言うんだよ!」

 すると男が薄ら笑いで口を開く。
「サトシ!まあ、話を聞け。」
「聞いてられるかぁ!!」
 
 出しうる限りの魔術を乱れ打つが、ことごとく
『無効』
 と切って捨てられる。
 サトシは、『行動加速ヘイスト』を精いっぱい自分にかけて、表通りに抜けてアイのもとへと逃げてゆく。

 幸い、魔導士はまだ半分ほどしか現れておらず、特に追ってくる様子もなかった。すでにアイは馬車を走らせ、町の外に出ていた。サトシは最大速度でそれを追い、荷車に飛び乗る。

「サトシ、大丈夫だった?」
「俺は大丈夫だけど、全く魔法が効かなかった。やばいかもしれない。急いで逃げよう。」

 サトシは荷車の後ろから後方を注意深く確認する。追ってくる様子はないようだ。
「あれはいったい何だったんだ。」
 サトシは頭を抱えて、荷車の中で座り込んだ。
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