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生方蒼甫の譚
エンリル
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「別に驚くわけじゃないんだな」
老人は立派な部屋の中央で、玉座と呼ぶにふさわしい豪奢な椅子に悠然と腰かけていた。
「エレミヤは逝ったようじゃな。」
「ああ、で、幾つか聞きたいことがあるんだが」
「まあ、立ち話もなんだ。座れ」
「座れって。床かよ!」
にこやかに笑っていて言葉こそやさしいが、声には威圧感があった。俺たち三人は命じられるまま老人と対峙する形で床に座る。
まるで、王に謁見する平民と言った面持ちだ。
「で、何が聞きたい?」
「まずは、お前は何もんだ?」
「相変わらず口の利き方を知らん奴じゃの。
で、おぬしはどう思っておるんじゃ?」
「ケッ!質問を質問で返すなよ。お前が太古の神、エンリルか?」
「そうだと言ったら?」
「別にどうともしねぇよ。ま、せめて奇跡でも起こして証明してほしいもんだがな」
「何とも恩知らずで罰当たりな奴じゃの。すでに一度助けておろうが?」
「助けた?」
視界の端から、エンリルの方に駆け寄ってくる茶色の毛玉があった。
「ああ、ヌーか。」
「ヌー!!」
アイがはしゃぎだす。
「ヌー」
エンリルに向かっていたヌーが、アイの声を聞き素早く方向転換する。
「無事だったぁ?」
アイがヌーを抱きしめ頬擦りする。おうおう、やっぱこう見ると可愛いねぇ。美少女はこうでなくっちゃなぁな。
ぎろりとアイがこちらを睨む。
なんだよ。俺の思考を読むなよ。
「で、その件に関しては何もなしかの?」
「いや、助かったよ。」
「感謝しているようには聞こえんが、まあいいじゃろう」
「で、もう一回聞くが、お前何者だ?」
「しつこいのぅ。エンリルじゃと言っておろうが。」
「それは判ってる。その上での質問だ。」
「ほほう。それこそおぬしはどう思っておるんじゃ?」
食えねぇな。このやり取りの時点でAI臭さが全くない。むしろ本当に老練な教授連中と話している気分だ。
俺が黙ったことに満足したのか、エンリルは饒舌に語り始める。
「エレミヤではマンティコアを討ち滅ぼす事が出来なんだが、今のおぬしらなら容易かろう。その後のおぬしらの研鑽は賞賛に値する。過去のどの民もあそこまでストイックに自己を高めた者はおらなんだ。」
そりゃそうでしょうね。正気の沙汰とは思えないもの。サトシ以外には無理だろうよ。
「ところで、マンティコアを俺たちが倒したら、何かいいことがあるのかい?」
エンリルは一瞬不機嫌そうな顔を見せるが、すぐに普段の表情に戻す。
「エレミヤとの約束は果たさぬつもりか?」
「約束したわけじゃねぇからな。頼まれただけだ。受けるも受けないも俺たち次第だろうよ。」
「財宝が目当てか?奴を倒せば奥の間から通ずる宝物庫に行ける。そこには金銀財宝が眠っておる。それらを好きにするがよかろう?」
「いや、俺たちは金目の物には興味が無いんだ。」
エンリルは眉間にしわを寄せながら俺たちの様子を見ている。それは下賤の民を見下す神そのものと言った表情だった。
「信仰を失った今のワシには何の力もない。そのようなものに願い請うても詮無きことではないか?」
「いや、いいもん持ってんじゃん?」
傍から見れば、ジジイに金目の物をねだる不良息子か孫と言った風体か?
「なんじゃ、ワシの持ち物なんぞ、何の価値もないぞ。」
「あるじゃねぇか。その天命の書版」
老人は立派な部屋の中央で、玉座と呼ぶにふさわしい豪奢な椅子に悠然と腰かけていた。
「エレミヤは逝ったようじゃな。」
「ああ、で、幾つか聞きたいことがあるんだが」
「まあ、立ち話もなんだ。座れ」
「座れって。床かよ!」
にこやかに笑っていて言葉こそやさしいが、声には威圧感があった。俺たち三人は命じられるまま老人と対峙する形で床に座る。
まるで、王に謁見する平民と言った面持ちだ。
「で、何が聞きたい?」
「まずは、お前は何もんだ?」
「相変わらず口の利き方を知らん奴じゃの。
で、おぬしはどう思っておるんじゃ?」
「ケッ!質問を質問で返すなよ。お前が太古の神、エンリルか?」
「そうだと言ったら?」
「別にどうともしねぇよ。ま、せめて奇跡でも起こして証明してほしいもんだがな」
「何とも恩知らずで罰当たりな奴じゃの。すでに一度助けておろうが?」
「助けた?」
視界の端から、エンリルの方に駆け寄ってくる茶色の毛玉があった。
「ああ、ヌーか。」
「ヌー!!」
アイがはしゃぎだす。
「ヌー」
エンリルに向かっていたヌーが、アイの声を聞き素早く方向転換する。
「無事だったぁ?」
アイがヌーを抱きしめ頬擦りする。おうおう、やっぱこう見ると可愛いねぇ。美少女はこうでなくっちゃなぁな。
ぎろりとアイがこちらを睨む。
なんだよ。俺の思考を読むなよ。
「で、その件に関しては何もなしかの?」
「いや、助かったよ。」
「感謝しているようには聞こえんが、まあいいじゃろう」
「で、もう一回聞くが、お前何者だ?」
「しつこいのぅ。エンリルじゃと言っておろうが。」
「それは判ってる。その上での質問だ。」
「ほほう。それこそおぬしはどう思っておるんじゃ?」
食えねぇな。このやり取りの時点でAI臭さが全くない。むしろ本当に老練な教授連中と話している気分だ。
俺が黙ったことに満足したのか、エンリルは饒舌に語り始める。
「エレミヤではマンティコアを討ち滅ぼす事が出来なんだが、今のおぬしらなら容易かろう。その後のおぬしらの研鑽は賞賛に値する。過去のどの民もあそこまでストイックに自己を高めた者はおらなんだ。」
そりゃそうでしょうね。正気の沙汰とは思えないもの。サトシ以外には無理だろうよ。
「ところで、マンティコアを俺たちが倒したら、何かいいことがあるのかい?」
エンリルは一瞬不機嫌そうな顔を見せるが、すぐに普段の表情に戻す。
「エレミヤとの約束は果たさぬつもりか?」
「約束したわけじゃねぇからな。頼まれただけだ。受けるも受けないも俺たち次第だろうよ。」
「財宝が目当てか?奴を倒せば奥の間から通ずる宝物庫に行ける。そこには金銀財宝が眠っておる。それらを好きにするがよかろう?」
「いや、俺たちは金目の物には興味が無いんだ。」
エンリルは眉間にしわを寄せながら俺たちの様子を見ている。それは下賤の民を見下す神そのものと言った表情だった。
「信仰を失った今のワシには何の力もない。そのようなものに願い請うても詮無きことではないか?」
「いや、いいもん持ってんじゃん?」
傍から見れば、ジジイに金目の物をねだる不良息子か孫と言った風体か?
「なんじゃ、ワシの持ち物なんぞ、何の価値もないぞ。」
「あるじゃねぇか。その天命の書版」
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