中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

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魔王の譚

ユリア

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「で、さっき魔王には少し話したけど、天啓を受けた後、俺はウルサンに戻って精力的に働き始めたんや。一番やる気に満ち溢れた時期やったんやないかなぁ」
 傍観を決め込んでいたことも忘れ、俺はつい突っ込んでしまう。
「天啓の話は……」
 すると、カルロスは俺の言葉を遮るようにまくし立てる。
「まあ、待ち!それは後でちゃんと話したるがな。
 でや。王都から帰ってしばらくは寝る間も惜しんで働いたよ。昼間は子供たちの世話。夜は周辺の集落に出向いて飢えてる子供たちを救いにな。
 統領の俺自らやで。いやぁ~。働いた。そりゃ働いたなんてもんやないよ。
 ……
 『どっちやねん』って顔しとるな。まあ、聞き。
 でな。相変わらず周辺の貴族どもは俺んトコの子供たちを歪んだ欲望のはけ口に使いよるわけよ。手塩にかけて育てた子供らがそんなことに利用され消費されんねんで。
 堪らんやろ?魔王は気にせんか?俺は気にするんや。いやぁ。いたく腹が立ったねぇ。せやからお仕置きしたってん。その貴族やらヤクザもん達に」
「お仕置きですか」
 サトシが静かに尋ねると、カルロスは嬉しそうに話を続ける。
「せや。お仕置きや。君知ってるやろ?俺、人の能力を弄れんねん。ちょちょいっとな。で、おイタをしようとしてた奴んとこに改造人間送り込んだってん。
 んなら、まあ、いろいろあってやな……」
「色々ってなんですか」
 サトシが冷静に突っ込む。まあ、気持ちはわかるな。が、カルロスは動じない。
「せやから黙って聞きって。色々言うたら色々や。まあ、結構いい感じで弄ってたからな。そこの大将は俺が送り込んだ改造人間の虜や。もうその子なしでは生きて行けんほどになってしもてなぁ。まあ、そいつら一族郎党、俺の配下みたいになってもうたっちゅう訳や」
「何をどうやったらそうなるんですか」
「なんや?君もそんなのを作って自分で味わいたいんか?それともアイにそんなオプションを付けたかったか?」
「……」
 その物言いを静かに聞きながら、サトシはじっとカルロスを見つめる。サトシの気持ちに一片の揺らぎも無い。
「気色悪いやっちゃな」
 カルロスの気持ちもわからいではない。数百年生きている俺達でも、サトシの立場であの物言いをされたら心中穏やかではいられないだろう。だが、今のサトシの心は水を打ったように静かに研ぎ澄まされている。
「まあ、ええわ。そう言う事なんやろうな。
 でや。そんなこと繰り返してたらウルサン近隣で俺に楯突くもんは誰もおらんようになった。あの辺のみーんな、俺の可愛いお得意さんや。
 で、君らも経験ないか?どんなおもろいゲームでも、レベル上げすぎてステータスカンストしてしもたら、なんかオモロ無くなんねん。最初は『ラスボスをワンパンで倒せるくらいまでレベル上げたらどんだけ楽しいやろ』と思てレベル上げるんやけどな。でも、いざホンマにそんなレベルになってしもたらやることなくなってまうねん」

 確かに奴の言い分には一理ある。努力をしている最中は面白いが、いざその努力が報われてしまうと次にやる事が見つからなくなる。
 俗に言う「燃え尽き症候群」という奴だろう。
 
「なんや。俺の気持ちわかってくれるんか?意外に人間味あるやないか。魔王っちゅう割に」
「俺は魔王とは名乗ってねぇけどな」
「異名は自分で名乗るもんやない。周りが言うもんや。
 まあ、俺のその感覚は2回目やったけどな。一回目は俺の孤児院を軌道に乗せたときに感じた気持ちや。その後王都であいつらに会(お)うて自分の矮小さに気づいたけどな。
 で、今度はウルサン周辺を掌中に収めて虚無感を感じることになったわけやな」
「別にルドルフやカールを越えたわけじゃねぇだろ?増長したのか?」
「あ?煽ってるつもりか?魔王様にしちゃ安(やっす)い喧嘩の売り方やな。そんなんだれも買わへんで」
 いくつもの死線を乗り越えた男の風格というべきか。それともただの世間知らずなのか。気持ちが揺らいでいる雰囲気は無い。明らかな自信が見て取れる。
「さて、君らに付きうてたらいつまでたっても話が進まん。で、本題や。ユリアのこと話そか」
「ユリア?それがアイの母親ですか?」
「せや。アイに似て……逆か。アイはユリアによう似てる。別嬪さんの子は別嬪さんちゅう事やな。ユリアも可愛らしい子やった。最初に出会でおたんはウルサンの北にある小さい集落やった。
 あそこは昔、王族が家臣を引き連れて逃げ延びてきて出来た集落っちゅうもっぱらの噂やったな」
 
 王都周辺にはそう言う集落が数多く点在する。特に初代ルドルフ王の子、孫の代は暗殺続きだったことから王都を逃げ出した者達が多かったと聞いている。まあ、初代王本人談ってんだから笑えない。
 特に初代王ルドルフは長命だったからな。王子王女は掃いて捨てるほど居たらしい。これまた本人談だ。
「せやから魔力持ちが多(おお)て、「雨女」が人攫いしまくってたらしいけどなぁ」
 カルロスはにやけた顔で俺に視線を向ける。
 別に人さらいしてたわけじゃねぇ。NPCの親に生まれた「ユーザー」を保護してただけだ。ちゃんと対価も払ってるし平和的な話し合いの結果だ。
「後ろ暗い事は何も無い……って顔か。やっぱり傲慢やな。君もやってる事一緒やで」
 まあ、否定はせん。
「で、話す気があるんですか?」
 ちょいちょい逸れる話にサトシは呆れている様だった。
「まあ、そう焦りなや。で、ユリアもそのあたりで生まれた子や。魔力は持ってなかったから「雨女」の魔の手からも逃れられたわっき
 汚いバラックに親子8人ほどで暮らしてたな。6人兄弟の末っ子で当時俺が行った時には瘦せこけてな。腕も足もマッチ棒みたいになってんねん。でも、腹だけポッコリ膨れててな。妖怪でおるやろ「餓鬼」って。あんな感じや。栄養失調の末期症状ってとこやろな。もう息も絶え絶えって感じやった」
 
 確かにあのあたりの落人おちうど集落はどこもかしこも似たような様子だった。
 王子や王女とその取り巻き。要は王都の貴族連中だ。そいつらが荒れ果てた土地に放り出されて生きてゆく術など持っている訳がない。
 荒野で暮らす遊牧民や棄民の集落に紛れ込み、王都から持ち出した財産を切り売りしては糊口を凌いでいたんだろう。
 むしろそれで生計を建てられたのなら運が良い方だと言える。多くの貴族は商売や農作業などには疎い者達ばかりだ。結局周囲の者達に騙されて身ぐるみはがされ殺されたものも多かったはずだ。

「なんや?義賊気取りか?君がやってんのは人買いやからな。俺とは違うで」
 カルロスは眉をひそめながら俺に向かって吐き捨てる。
 サトシはその様子をさめざめと見ながら、顎をしゃくってカルロスに話を続けるよう促す。
 
「まあええ。ユリアの話に戻そか。他の5人の子供らはそれなりに働いてたみたいでな。親子7人で虚弱なユリアの面倒を見るのはもう限界っちゅう状態やった。で、そこへやさしい俺が手を差し伸べたっちゅう訳や。ユリアからしたらヒーローの登場、いや。白馬の王子かな。そんな印象やったと思うで。
 知らんけど」

 聞くのやめようかな。
「あ!魔王。その顔やめぇてうとるやろ!地味に傷つくんやぞ!」
「何でもかんでも「知らんけど」を付けたら許されると思ってません?関西人の悪い癖ですよ」
「あ~!希少な関西人バカにしよったな!ヘイトスピーチや!」
「知らんよ。黙れ」
「うるさいですね。もういいです」
「あ!いや。まあ。まて。話を聞け。落ち着こうやないか」
「落ち着くのはお前だ」
「ですよ」
「そう言いなや。わかったよ。話し続けるから。ええやないか。俺自由奪われてんねんで、話くらい自由にさしてくれや」
「まあ、そう言われればそうですね」
「せやろ?第一、君が聞きたい言うたんちゃうんか!?根本的な事忘れてもろたら困るわ」
「いえ。覚えてますよ。だからこそじゃないですか。俺の聞く気が失せたらそこで終了ですよね?」
「あ!いや」
 カルロスがオロオロするとは意外だな。
「わかった。ほんなら話すから。な?」
 サトシは呆れたようにカルロスを一瞥するとまた顎で話すように催促する。
「なんや態度悪いやっちゃな」
 カルロスは不満そうに頬を膨らます。エリザの整った顔立ちでこの表情をされるとカールなら悶えているところだろう。が、俺もサトシもピクリとも反応しない。
 その様子にカルロスは一段と不満顔になる。
「まあええ。でや。ユリアを俺んトコで預かることになったわけやが、これがまあ結構拾いもんでな。「磨けば光る」っていう奴?かなりの上玉やったわけよ。
 あ、顔だけやと思た?ちゃうねんなぁ。そりゃ当然顔も可愛いで。でもな。それはオマケみたいなもんや。磨いて光ったんは能力の方やった」
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