足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

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蚊帳の外感と……

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 哀しい思いをした分、翌日は午前も午後も、リハビリに精を出した詩奈しいな

「2日目と思えないほど、松葉杖の扱いが上手になったね! 足の腫れも随分引いている!」

「良かった~! また、明日もよろしくお願いします!」

 理学療法士に褒められ、病室までの道程を母にゆっくり歩いてもらいながら、松葉杖で一緒に歩き続けた詩奈しいな

詩奈しいな、売店に寄って、何か買いたい物とか無い?」

 途中、母に尋ねられたが、午前と午後のリハビリでかなり疲れた詩奈しいなは、真っ直ぐに病室に戻りたかった。

 ちょうどその頃、下校途中だった瑞輝みずき凌空りくは、昨日の面会時の詩奈しいなが気になり話していた。

「昨日の牧田、何だか泣きそうな感じだった気がしないか?」

 病室では恵麻えまとの会話に気を取られていたが、去り際、詩奈しいなに声をかけた時、愁いを帯びていたように見え、気がかりだった瑞輝みずき

「リハビリとかで疲れて大変そうだから、僕達お見舞いに行くの、牧田さんの迷惑かな?」

「怪我で入院して、落ち込んでいる気持ちの時に4人もいて、俺と中沢は会話していたし、騒がしかったのかも知れないな」

 凌空りく達は静かに勉強していたが、その間、恵麻えまと盛り上がっていた事を思い出した瑞輝みずき

「中沢さんや小畑さんと時間が重ならないように、僕ら、今日は少し遅めに行った方がいいかも知れない」

 凌空りくが提案し、瑞輝みずき詩奈しいなの負担を軽くさせようと賛成した。

 そんな事とも知らず、病室のドアを開けて、明らかにガッカリしている様子の恵麻えま芽里めり

「あれっ、今日は、矢本君と北岡君来てないの?」

「あっ、うん、私が昨日、あんな事を言ったせいで、気分悪くしたのかな……?」

 4人揃うと、またあの辛い時間になりそうだったが、瑞輝みずき達が来ないのは、昨日の自分の発言のせいなのではと、責任を感じた詩奈しいな

「そうそう、詩奈しいなったら、私達を邪険に扱って、追い払うような感じだったもんね~!」

 恵麻えまに指摘され、ビクッとなった詩奈しいな

「えっ、私は、そんなつもりで言ったわけじゃなくて……」

「本人はそのつもりなくても、相手には違うように受け止められるって事、よく有るんだから、ねっ、恵麻えま?」

 自分なりに、皆の試験勉強の事を考慮して言ったつもりも有ったが、友人達からは、そう受け止められていた事に驚いた詩奈しいな

「そうそう! 詩奈しいなに、あんな言われてまで、もうお見舞いに行くの止めようかな? ……って、矢本君達も思ったかも知れないよ~! あ~、もう! どうして詩奈しいなは、そういう風に私達の恋路の邪魔するかな~! せっかく、芽里めりも北岡君といい感じに勉強教わっていたのにね!」

「うん、これからずっと、北岡君に勉強教えてもらって、成績アップする気満々だったのに、詩奈しいなが、あんな風に言ったりして、北岡君ももう来なくなったら、マジでショックなんだけど~!」

 恵麻えま芽里めりは口々に、昨日の詩奈しいなの発言を責めて来た。

(私が、そういう言い方したくらいで、矢本君も北岡君も、もうお見舞い来るの嫌になってしまったの? 私、そういう意味で言ってないのに。言葉って、本当に刃みたいで、使い方が難し過ぎる……)

「なんかさ~、矢本君達、来ないなら、つまんないよね~!」

「分かる~! 試験前だし、しばらくお見舞いは来ないでおくね~」

 詩奈しいなのお見舞いは二の次で、目的は瑞輝みずき達だという、魂胆が見え見えの文句を言うだけ言って、すぐに退散した2人。
 そんな友人達の言動に対し、今まで彼女達に感じた事の無い失望感を抱かずにいられなかった詩奈しいな

(お見舞いにかこつけて、いつの間にか、恵麻えま芽里めりも、矢本君達に会う事だけが目的になっていたんだ……2人は、ずっと仲良しでいられる友達と思っていたのに。私には、矢本君達と違って、お見舞いに来てくれた友達をここに引き留めるメリットも無いんだ……)

 最初は純粋にお見舞いのつもりで来てくれていた恵麻えま芽里めりが、瑞輝みずき凌空りくを目にした途端、詩奈しいななどそっちのけで、自分達の恋愛成就にまっしぐらになっていたショックが、詩奈しいなに重くのしかかっていた。

(私が、こんな怪我をしなかったら、こんな思いする事無く、2人との友情は、これからも当たり前に続いていたはずだったのに……)

 友情が決裂しかけ、一人打ちひしがれている時に、ドアがノックされた。

「あっ、はい……」

(やっぱり、恵麻えま達、考え直してくれたとか……?)

 友人達が、さっきは言い過ぎたと、謝りながら戻って来たのを期待していた詩奈しいなだったが、入って来たのは、瑞輝みずき凌空りくだった。

(矢本君達、もう来てくれないかと思っていたのに……)

 友人達に去られて落ち込んでいた気持ちが、瑞輝みずき達の姿を見た途端、少しずつ回復していくのを自分でもはっきりと感じられた詩奈しいな

「今日は、ちょっと遅くなったけど……」

「牧田さんも大勢いると、気を遣って疲れると思って、女子達と時間重ならないようにと思ったんだ」

 瑞輝みずきが言葉足らずな分、凌空りくが補い、いつも通り、板書のノートのコピーを詩奈しいなに手渡した。

「いつもコピーありがとう。昨日の事を気にして、時間ずらしてくれて、ありがとう」

 恵麻えま芽里めり達の言動に失望した後だけに、瑞輝みずき達の優しい気遣いが身に染みる詩奈しいな

 「今日は、どうする? 車椅子で散歩する?」

 車椅子で外に出たかったが、既に時間も遅く、2人に迷惑をかけまいと詩奈しいなは断った。

「今日、午前も午後もリハビリ頑張ったから、また今度にする。ありがとう」

 その時、再びドアをノックする音がすると同時に、恵麻えま芽里めりが現れ、先刻の出来事の後なだけに、唖然あぜんとした詩奈しいな

「あっ、やっぱり~! 前の方に見えたから、北岡君達もいると思った~!」

「あれっ、もっと早い時間に来ていたんじゃなかったの?」

 わざと遅らせたつもりだったが、女子達の面会時間と被ってしまった事で、瑞輝みずき凌空りくも驚いていた。

「ううん、今日は先にやる事が有ったから! それしていたら遅くなっちゃったんだよね!」

 そう言いながら、詩奈しいな目配めくばせし、話を合わせるように仕向けさせた恵麻えま

 恵麻えま芽里めりが加わった事で、静かな雰囲気から一気に賑やかになり、瑞輝みずき凌空りくは昨日の事も有り、心配そうに詩奈しいなの様子をチラッと見ていた。

「そうなんだ、恵麻えま芽里めりも遅くなっただけだったの? 今日は、もう来ないのかと思ってた……」

 最後に付け加えた一言だけは、詩奈しいなの正直な気持ちだった。

「まっさか~! 私達、友情を大切にするもんね~!」

「友達が怪我して苦しんでいる時なんだから、お見舞いくらいするし~!」

 白々しいくらいに、友達アピールして来た恵麻えま芽里めり

「ありがとう、恵麻えま芽里めり

 先刻、2人に失望させられたばかりだが、恵麻えまの合図により、彼女達の見え透いた芝居に付き合わされる詩奈しいな

「じゃあ、俺らはそろそろ……」

 昨日の良くない雰囲気を再現しそうな気がした瑞輝みずきは、あまり長引かないうちに病室から出ようとした。

「え~っ!? まだ来たばっかじゃん!」

詩奈しいなだって、来てすぐ帰られたら寂しいよね?」

 恵麻えま芽里めり詩奈しいなを巻き込み、彼らを長居させようとしていた。

「あっ、うん……」

 恵麻えま芽里めりの話に乗る事で、瑞輝みずき凌空りくに迷惑をかけそうで気が引ける詩奈しいな
 女子達に話を振られ、詩奈しいなが困っている様子にも見えた凌空りく

「もう少しくらいいようか、瑞輝みずき

 凌空りくの言葉で、開けかけたドアを戻した瑞輝みずき

「ねえ、映画館で今、『真夜中の見えざる客』やってるよね~、見た?」

 恵麻えまが、今かなり話題になっているホラー映画の話題を急に話し出したが、誰も見てなかった。

「みんな、見てなかったの? じゃあ、今度、見に行かない?」

「そうだね、今度、牧田さんが退院してから」

 凌空りくの提案に対し、芽里めりが急に思い付いたような表情になった。

「それが、来週末までなんだよね~。だから、試験終わった後、4人で行こ~よ~!」

 病室に面会に来ていながら、自分をあたかも部外者のように扱っている芽里めりの言葉に傷付く詩奈しいな

「いいね~、試験を頑張った後に、楽しみが有るって!」

 恵麻えまもナイスアイディアと言わんばかりに大賛成した。
 詩奈しいなが何も言えずにいるうちに、女子2人で盛り上がっているのを冷めた目で見ていた瑞輝みずき凌空りく

「ねっ、北岡君と矢本君も行くよね!」

 当然のように尋ねた芽里めり

「お前らさ、怪我して入院している友達をのけ者にして、自分達だけで楽しむってマジで言ってるのか?」

 憤りを感じずにいられなかった瑞輝みずき

「えっ、だって、詩奈しいなが回復するの待ってたら、映画終わっちゃうじゃん。詩奈しいなだって、逆の立場だったら、そうするでしょ?」

 詩奈しいなを誘導するように尋ねた恵麻えま

「私なら……気にしないで、せっかくだから4人で映画楽しんで来て」

 自分の本心を隠して、恵麻えまが言って欲しそうな言葉を言った詩奈しいな

「ほら、詩奈しいなもそう言ってくれてるから、行こうよ」

「映画見た感想を詩奈しいなだって聞きたそうだし、ねっ」

 詩奈しいなを利用し、ホラー映画に彼らを誘い、怖がって彼らに急接近するのが恵麻えま芽里めりの狙いである事は、詩奈しいなも気付いていた。
 気が進まないが、今は、彼女達に加担するよう仕向けられている。
 ここで、詩奈しいなが反論すると、本当に友達を失いかねない。

「私は、ホラー映画観るのは苦手だけど、話題になっているから、どういう話かくらいは知りたいかな」

 そう自分が言ってしまうと、必然的に4人で行く流れになるかも知れないと、感じながらも耐えて言った詩奈しいな

「だよね~! 私達、詩奈しいながホラー映画苦手だって知ってたから。それだったら、私達だけで行った方が、断然楽しいし!」

 詩奈しいなはホラー映画が苦手どころか、怖いもの見たさでわりと好んで観る方だったが、友人達の前でこれ以上、話をこじらせたくなかった。
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