足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

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19.

新しいクラスメイト達と……

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 翌朝、今迄と違う学校生活になるという期待に胸膨らませながら、母の車から降り、ゆっくり歩き出した詩奈しいな
 緊張しながら見回すと、下駄箱の所で、瑞輝みずき凌空りくが待っていた。
 そして、もう1人、下駄箱の陰に隠れていた若葉が現れた。

「じゃ~ん! 私もいるよ~!」

「有川さん……?」

「初めまして、私の事は、若葉でいいよ! 私も、今日から瑞輝みずきと同じく1組に移動したから! これから、よろしくね~!」

 初対面でも、全く物怖ものおじする様子の見られない若葉。

(え~っ、有川さんも一緒なの~!! そんなの聞いてない!! 有川さんの前で、矢本君にお世話になるのは、すごく気が引けるんだけど!!)

 人懐っこい笑顔を向けられているが、若葉の出現には戸惑わずにいられない詩奈しいな

「あっ、はい、よろしくお願いします!」

「牧田さんって、下の名前は何?」

詩奈しいなです」

 有川が相手だと、つい「ですます調」になってしまう詩奈しいな

「じゃあ、詩奈しいなって呼ぶね~! 私の事は、さっきも言った通り、若葉だからね!」

「あっ、はい……」

 詩奈しいなと若葉のやり取りに、思わず吹き出さずにいられなかった瑞輝みずき凌空りく

「何だか牧田、先輩とか先生と話すような口調だな~。若葉とは、ほぼ初対面だから緊張しているんだよ」

「そうなの? 私に対して、そんな緊張する事無いのに、同い年なんだから!」

(そうは言われても……)

 いきなり若葉から、これほど気さくに話しかけられるとは予想もしなかった詩奈しいな

「ごめんなさい、私、なんか不器用で……」

 ペコペコ頭を下げた詩奈しいな
 階段を上がる時は、松葉杖でゆっくり上がる詩奈しいなに、若葉も合わせて登っていた。

「大変そうだね~、松葉杖って。私だったら、松葉杖使わないで、ずっと瑞輝みずきにお姫様抱っこしてもらって教室まで行きたいな~!」

「お前を、お姫様抱っこって……? 重そうだし、無理だよ~!」

「女性に対して重そうとか、デリカシーの無い言い方して、瑞輝みずきって、ヒドイよね~!! 詩奈しいなは、瑞輝みずきに、そういうヒドイ事を言われたりしてない?」

 若葉に尋ねられて、一瞬、瑞輝みずきから胸が無いと言われた事を思い出した詩奈しいな
 それを若葉に説明するのは、有らぬ誤解を招きそうな気がして止めた。

「特に……今のところは、無いかな」

「ふ~ん、意外! 分かった、瑞輝みずきって、私と詩奈しいなの前とで態度違うんでしょ?」 

 少し口をとがらせねた顔をして見せた若葉。
 それを見て、どんな表情をしても魅力の有る人というのは、若葉のような人物の事を言うのかも知れないと、羨ましく思った詩奈しいな

「人によって、そんな態度変えないよ、俺は!」

「ならばよろしい! だからって、デリカシーに欠ける事を言うのは頂けないからね! 詩奈しいなも、なんかカチンと来る事を言われた時には、私に言って!」

「うん、ありがとう、あ、若葉」

(有川さんを名前で呼び捨てって、すごく言いにくい~!)

「あっ、呼ばれちゃった~! そう、そう呼んでね~! 最初は慣れなくても、周りも皆、若葉って呼んでるし、すぐ慣れると思うから!」

 親しみやすい笑顔を向けられ、つい、詩奈しいなもつられて笑った。

(スゴイな~、若葉って。人を笑顔にさせる素質がたっぷりで!)

 1組の教室のドアを開ける前から、廊下や階段ですれ違いざま、注目を浴びていたのは、嫌でも感じられていたが、ドアを開けると、一気にクラス中の視線が集中してきた。

「おっはよ~! 今日から、私と瑞輝みずきも1組になったからね~! 皆の者、よろしく~!」

 若葉の言葉に愕然がくぜんとなったクラスメイト達。

「えっ、若葉と矢本君が!」

「1組に、三貴神が勢揃いとな!」

「体育祭、鬼に金棒じゃん!」

「役立たずの牧田がしてくれた、唯一のメリットだな!」

 詩奈しいなへの暴言に、瑞輝みずきが教壇に来て、バンと机を叩いた。

「俺達が来た以上、牧田に嫌がらせしようものなら許さね~からな!」

 瑞輝みずきが、怒鳴ると、クラスはシーンと静まり返った。

「俺達の机と椅子は、4組に置いたままか。誰か、俺達と入れ替わって4組に行きたい奴いるか?」

 クラスメイト達は無反応のままだった。

凌空りく、俺と若葉の机運ぶの手伝ってくれ。女子には、力仕事させたくないからな」

「ありがと、瑞輝みずき凌空りく! 私、詩奈しいなの隣の席がいいな~!」

 若葉が、既に詩奈しいなを呼び捨てにしている事で、余計にクラスメイト達の注目を集めた。

「矢本君が牧田さんを庇うんだから、ライバルじゃん! それなら、若葉は、私達に付いていくれると思ったんだけど、どういうこと?」

 詩奈しいなを敵視しているクラスメイトの1人が、不可解そうに若葉に尋ねた。

「確かにね~、うんうん。私と立場上は似てるかも知れないけど。瑞輝みずきは責任を取って、詩奈しいなを庇っているだけで、そんな事くらいで、私と瑞輝みずきの仲が揺らいでしまうようなモロイものではないから、心配ご無用!!」

 自信たっぷりに言い切れる若葉を見入った詩奈しいな
 そんな風に言い切ってもうなづけるほど、若葉は、詩奈しいなから見ても、十分過ぎるほど魅力的だった。

「相変わらず、スゴイ自信だね~、若葉!」

「でも、最近の矢本君ってさ、牧田さんへの思い入れが半端無いよ~! ああ見えて、牧田さんもあざと過ぎで、可哀想な被害者ぶるの上手いし! 男子なんて、何かちょっとしたきっかけ次第で、牧田さんになびいてしまうかもよ~?」

「牧田さんって、こんな大人しそうなふりして、矢本君ばかりか北岡君まで、2人とも手玉に取ってるビッチだから、女子の敵だって!」

 クラスメイトの女子達が若葉も仲間に引き入れようと、必死に詩奈しいなの悪態を吐く。

「まあそうなったら、そうなった時だし~! そういうのって、瑞輝みずきの自由だから! そんな事よか、このクラスの詩奈しいなおとしいれようとしている感、ハンパ無いんだけど! 何なの? 怪我して歩くのが不自由になっているクラスメイト相手に、よってたかって嫌がらせするとかって! 無いわ~!」

 若葉が言うと、それ以上は誰も口を開かなかった。
 教室内が静まり返った時に、瑞輝みずき凌空りくが2人分の机と椅子を抱えて戻って来た。

「やけに静かだな~。なんか有ったのか、若葉?」

「な~んにも無かったけど! ねぇ、詩奈しいな

「うん……」

 三貴神と言われているのを知っていたが、若葉1人の威圧感が、まさかこれほどまでとは思わなかった詩奈しいな

「あっ、だから、凌空りく、私、ここ! 詩奈しいなの隣の席!」

 凌空りくが運んで来た机と椅子を詩奈しいなの隣に配置させた若葉。

(なんか、色んな意味で、スゴイな~、若葉って! 性格的なもの、正義感の強さとかは、矢本君に似ている。近寄りがたいくらいの美人なのに、人懐っこい笑顔と気さくな話し方。私が男子だったら、こういう女子が好きになると思う……矢本君が、若葉と一緒にいるのも分かる気がする。若葉が相手なら、私だって、応援したくなるような気持ちにさせられるし……若葉と話すようになってから、まだ1時間も経ってないのに不思議……)

 同じクラスになった事も無く、瑞輝みずきの幼馴染みという事だけ知っていた遠い存在だった若葉。
 それが、今は、こんなに自分の味方になってくれている事が信じられない気持ちと、こういう女友達がずっと欲しかったという気持ちが入り混じった興奮状態で、授業内容も素通りしてしまう詩奈しいな

 休憩時間になると、女友達らしく、若葉がトイレに誘って来た。

「松葉杖だと時間かかるよね? 私も、遅れても良い許可が下りているから安心して。足が痛くなって立てないとか、困った事とか有ったら、遠慮なく呼んでね」

 既に、先生達の承諾を得ている事を伝えた若葉。
 女子特有の事などを瑞輝みずき凌空りくには言えない分、若葉が気遣ってくれるのは有難く感じられる詩奈しいな

「ありがとう、助かる」

「せっかく1組まで移動したんだから、私タフだし、しっかりこき使ってね~!」

 今まで自分が困った時に、女友達にこんなに親切にされた経験が無かった詩奈しいなは、こき使ってと言われてもピンと来なかったが、ただ嬉しかった。

「もう十分過ぎるくらいだけど……1組には、もう女友達は誰もいないって思っていたから、すごく嬉しい! ありがとう!」

 目が潤み出し、涙が頬を流れるのを止められなかった詩奈しいな

「そんな大げさだよ~! なんか大変だったんだね、詩奈しいな……」

 自分の発した言葉で、泣かれるとは思ってなかった若葉は焦った。
 給食時間や掃除時間も、会話する相手がいる事で、詩奈しいなの笑顔が少しずつ戻って来た。
 これまでと違い、瑞輝みずきや若葉が1組に来た事により、詩奈しいなに嫌がらせするクラスメイトもいなくなった。
 
(何だか、久しぶりに、学校が楽しい! こんな感覚、ずっと忘れていた! 入院して戻った時から、私にとって学校は、つらい生き地獄のような場所に思えていたのに……矢本君や若葉が1組に現れてくれたおかげで、こんなに楽しい場所に塗り替えられた!!)

 放課後、瑞輝みずき達3人に手伝ってもらいながら、校門の外の車の所まで、一緒に来て、見送ってもらった。
 車が走り出してからは、詩奈しいなの口は、学校での出来事を母へ報告する為、ずっと動きっぱなしだった。
 詩奈しいなが楽しそうに学校の様子を報告してくれる日が、また訪れようとは思いもしなかった母は、1つ1つの報告に対し、一緒に喜んでいた。

 夕食時には、父にも生き生きとした表情で、その事を話した詩奈しいな
 昨日の今日で、こんなにも詩奈しいなの様子が好転した事で、父も瑞輝みずきに対する態度を見直す決意をした。
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