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桜舞い散る入学式と……
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例年より早く開花した染井吉野の花びらが、春のそよ風に乗ってひらひらと舞う中、南高の新入生達が、中学時代の顔見知りの生徒と待ち合わせ、入学式の催される体育館へと向かおうとしていた。
「ねぇねぇ、あの桜の木の下の3人、次元が違うようなフォトジェニックな感じなんだけど……」
「私、知ってる! 第一中で有名だった文武両道で眉目秀麗な『三貴神』じゃん! 3人揃って南高なんて、超ラッキー!!」
「美女1人にイケメン2人って事は、私の入る余地も有り?」
「無理でしょ! 鏡見なよ!」
その時、タクシーから降りて来た、頭髪検査に引っかかりそうな茶褐色のしやなかな髪と 榛色の瞳をした色白の華奢な美少女に、その辺りにいた生徒達の視線が集中した。
「誰、あの外国人か、ハーフのような人?」
「妖精っぽくない? 透けそうで、存在してるの信じられない感じ」
「この辺で見かけない感じなのに、三貴神の方へ行くけど、知り合いって事?」
「あ~あ、2対2、しかも美少女なら勝ち目無しじゃん!」
周囲の声には耳を傾ける事も無く美しい姿勢で歩いていたが、染井吉野の下に集っていた3人を認めるなり、カモシカのような細い足でしなやかに駆け寄った。
弾むような軽やかな足音に気付いた3人が振り返ると、面影の残る懐かしい笑顔に、3人の顔が一気にほころんだ。
「 詩奈、お帰り!」
「一緒に南高生になれて良かった、牧田さん」
再会が嬉しそうな若葉と 凌空に迎え入れられて喜ぶ 詩奈。
「ただいま!」
驚き過ぎて、何も言えない様子の 瑞輝をチラッと見上げて言った 詩奈。
「相変わらず、生っ白いつーか、白さに磨きがかかった感じだな。日光浴して無かったのか?」
やっと言葉を発した 瑞輝は、憎まれ口になっていた。
「してたけど、北海道だから、これが限界」
「そうだよね~、北海道なんだから! ムリ言わない、 瑞輝。 詩奈、足はどう?」
約2年半ぶりで再会した 詩奈は、かつての松葉杖姿など連想出来ないほど、ごく普通に美しい姿勢で立っている。
「とっくに完治してるよ! 短距離走や持久走なんて、前より早くなったくらい!」
「スゴイね、牧田さん! 頑張ったんだね~!」
記憶より頭1つくらい大きくなり、 瑞輝と大差無い体格の 凌空に言われて、改めて時間の流れを感じられた 詩奈。
「あっ、でも、手術痕は健在だから、もし夢が変わってなかったら、北岡君にお願いするね! 私が第一号の実験台になってあげる!」
「牧田さんや、困っている人達の為に、なるべく早く、目立たなくなる技法を見付けるよ!」
凌空の夢の実現を心待ちにする 詩奈。
そんな2人のやり取りを見て、 瑞輝は両腕を空に向けて伸ばした。
「俺は、牧田の世話役から晴れて解放されたから、名医目指して頑張るか~!」
その言葉が寂しく感じつつも、やっと 瑞輝を自由な状態に戻せて、救われた思いの 詩奈。
「矢本君、本当にありがとう! そして、これからは、普通に友達としてよろしくね!」
「普通に友達だって、 瑞輝! 私、まだチャンス有るわけだね~!」
冷やかしながら、 詩奈がよく見慣れていたように、 瑞輝の腕を組んで玄関の方へ歩み出した若葉。
「あっ、牧田さんに言ってなかったけど、2年半前、 瑞輝が1人で病室に戻って最後に会った時の事、覚えてる? あの時、 瑞輝は牧田さんに告るつもりだったけど、 玉砕して戻って来た」
凌空に言われて、ハッとなった 詩奈。
2年半前、 瑞輝が1人で戻って来た時、 詩奈は驚きながら、 恵麻の発言を全否定した事を思い出した。
「あの時……?」
凌空からそんな話をふられようとは思わず、当時の気持ちを思い出し、動揺を隠し切れない 詩奈。
「もう時効と思って白状すると、その時、 瑞輝や若葉に、牧田さんが 瑞輝をずっと好きだった事や偽装交際の事も話した、ゴメン。牧田さんが転居しなかったら、多分、 瑞輝は機会見つけて、牧田さんに告ってたと思う」
自分があのタイミングでここを去る決断をしたばかりに、歯車が違う方向へと動いた事を知らされ 、愕然とした 詩奈。
「そうだったんだ……話してくれてありがとう、北岡君。でも、2年前の事だもんね! あの状況で、何を言われても、私が何を言っても、結局、同情や重荷とか色んな想いが引っかかるだけだから。あの時はあのままで終わって良かったって思ってる!」
(やっと今、皆と同じスタートラインに立てた! もう、これからは誰も縛らないし、誰からも同情されない! 皆と対等になれたのだから!)
足枷を解いた今なら、 瑞輝か 凌空と、もしくは、この高校でこれから出逢う誰かと本気で恋が出来るようになれる。
その時、4人の友情にひびが入ったりする事も無いと、自分の中で認識しながら、 凌空と並んで、 瑞輝と若葉の後に続き、美しい歩みを見せた 詩奈。
念願が叶い、 詩奈の自然な歩行姿を最高の笑顔で喜んでいる3人。
そんな4人の門出を祝うように、染井吉野の桜吹雪がそよ風に舞い降り、足元には桜色の絨毯を形成していった。
【 完 】
「ねぇねぇ、あの桜の木の下の3人、次元が違うようなフォトジェニックな感じなんだけど……」
「私、知ってる! 第一中で有名だった文武両道で眉目秀麗な『三貴神』じゃん! 3人揃って南高なんて、超ラッキー!!」
「美女1人にイケメン2人って事は、私の入る余地も有り?」
「無理でしょ! 鏡見なよ!」
その時、タクシーから降りて来た、頭髪検査に引っかかりそうな茶褐色のしやなかな髪と 榛色の瞳をした色白の華奢な美少女に、その辺りにいた生徒達の視線が集中した。
「誰、あの外国人か、ハーフのような人?」
「妖精っぽくない? 透けそうで、存在してるの信じられない感じ」
「この辺で見かけない感じなのに、三貴神の方へ行くけど、知り合いって事?」
「あ~あ、2対2、しかも美少女なら勝ち目無しじゃん!」
周囲の声には耳を傾ける事も無く美しい姿勢で歩いていたが、染井吉野の下に集っていた3人を認めるなり、カモシカのような細い足でしなやかに駆け寄った。
弾むような軽やかな足音に気付いた3人が振り返ると、面影の残る懐かしい笑顔に、3人の顔が一気にほころんだ。
「 詩奈、お帰り!」
「一緒に南高生になれて良かった、牧田さん」
再会が嬉しそうな若葉と 凌空に迎え入れられて喜ぶ 詩奈。
「ただいま!」
驚き過ぎて、何も言えない様子の 瑞輝をチラッと見上げて言った 詩奈。
「相変わらず、生っ白いつーか、白さに磨きがかかった感じだな。日光浴して無かったのか?」
やっと言葉を発した 瑞輝は、憎まれ口になっていた。
「してたけど、北海道だから、これが限界」
「そうだよね~、北海道なんだから! ムリ言わない、 瑞輝。 詩奈、足はどう?」
約2年半ぶりで再会した 詩奈は、かつての松葉杖姿など連想出来ないほど、ごく普通に美しい姿勢で立っている。
「とっくに完治してるよ! 短距離走や持久走なんて、前より早くなったくらい!」
「スゴイね、牧田さん! 頑張ったんだね~!」
記憶より頭1つくらい大きくなり、 瑞輝と大差無い体格の 凌空に言われて、改めて時間の流れを感じられた 詩奈。
「あっ、でも、手術痕は健在だから、もし夢が変わってなかったら、北岡君にお願いするね! 私が第一号の実験台になってあげる!」
「牧田さんや、困っている人達の為に、なるべく早く、目立たなくなる技法を見付けるよ!」
凌空の夢の実現を心待ちにする 詩奈。
そんな2人のやり取りを見て、 瑞輝は両腕を空に向けて伸ばした。
「俺は、牧田の世話役から晴れて解放されたから、名医目指して頑張るか~!」
その言葉が寂しく感じつつも、やっと 瑞輝を自由な状態に戻せて、救われた思いの 詩奈。
「矢本君、本当にありがとう! そして、これからは、普通に友達としてよろしくね!」
「普通に友達だって、 瑞輝! 私、まだチャンス有るわけだね~!」
冷やかしながら、 詩奈がよく見慣れていたように、 瑞輝の腕を組んで玄関の方へ歩み出した若葉。
「あっ、牧田さんに言ってなかったけど、2年半前、 瑞輝が1人で病室に戻って最後に会った時の事、覚えてる? あの時、 瑞輝は牧田さんに告るつもりだったけど、 玉砕して戻って来た」
凌空に言われて、ハッとなった 詩奈。
2年半前、 瑞輝が1人で戻って来た時、 詩奈は驚きながら、 恵麻の発言を全否定した事を思い出した。
「あの時……?」
凌空からそんな話をふられようとは思わず、当時の気持ちを思い出し、動揺を隠し切れない 詩奈。
「もう時効と思って白状すると、その時、 瑞輝や若葉に、牧田さんが 瑞輝をずっと好きだった事や偽装交際の事も話した、ゴメン。牧田さんが転居しなかったら、多分、 瑞輝は機会見つけて、牧田さんに告ってたと思う」
自分があのタイミングでここを去る決断をしたばかりに、歯車が違う方向へと動いた事を知らされ 、愕然とした 詩奈。
「そうだったんだ……話してくれてありがとう、北岡君。でも、2年前の事だもんね! あの状況で、何を言われても、私が何を言っても、結局、同情や重荷とか色んな想いが引っかかるだけだから。あの時はあのままで終わって良かったって思ってる!」
(やっと今、皆と同じスタートラインに立てた! もう、これからは誰も縛らないし、誰からも同情されない! 皆と対等になれたのだから!)
足枷を解いた今なら、 瑞輝か 凌空と、もしくは、この高校でこれから出逢う誰かと本気で恋が出来るようになれる。
その時、4人の友情にひびが入ったりする事も無いと、自分の中で認識しながら、 凌空と並んで、 瑞輝と若葉の後に続き、美しい歩みを見せた 詩奈。
念願が叶い、 詩奈の自然な歩行姿を最高の笑顔で喜んでいる3人。
そんな4人の門出を祝うように、染井吉野の桜吹雪がそよ風に舞い降り、足元には桜色の絨毯を形成していった。
【 完 】
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