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瑾曦
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雪花とのお茶会も無事終わり。
……いや、無事かしら? なんだかずいぶんやらかしたというか、やらかされたというか。なんで将来皇后になる可能性がある人を妹分扱いして、呼び捨てにして、タメ口をきかなきゃならないのか。
どうしてこうなったと首をかしげながら借りている部屋へと戻ると……中から人の気配が。
私って昔から誘拐されそうになったり事件に巻き込まれることが多かったから、人の気配には敏感になっちゃったのよね。神仙術を習ってからは強化もされたし。
「――誰ですか?」
万が一に備え、入り口から少し離れて詰問すると、「いや、まいったまいった!」と軽い感じの声が帰ってきた。
悪びれる様子もなく部屋から出てきたのは……孫武さんの妹さん。北狄の王女様。翠妃・瑾曦様だった。
「やれやれ、うまく気配を消したつもりだったんだけどねぇ。凜風、見た目に反してやるじゃないか」
「あ、はぁ……。瑾曦様、どうかしましたか?」
「……隠れていたあたしが言うのも何だけど、自分の部屋から人が出てきたんだからもっと驚いたらどうだい?」
「いえ、慣れてますし。物陰に人が隠れているのとか、部屋に不審者が忍び込んでいるのとか」
「……なんだか壮絶な人生送っているんだねぇ。まぁそれだけの美少女で、陛下のお気に入りなら当然か」
くくっと笑ってから瑾曦様は訪問目的を教えてくれた。
「張の爺さんから伝言だ。折り入って頼みたいことがあるから外廷に来てくれってさ」
外廷というと……皇宮のうち、皇帝が仕事をする宮だっけ? ちなみに『内廷』は皇帝が私生活をする宮だそうだ。
「伝言って。それを伝えるために来てくださったのですか? 上級妃で、陛下の御子を産んだ瑾曦様が?」
「後宮じゃ狩りもできないからね、こういうときに動いておかないと身体が鈍っちまうのさ」
「はぁ」
あなた北狄の王女なんでしょう? 狩りをしていたんですか? というツッコミは飲み込んでおいた。なんか普通にしてそうだし。
「あと、凜風にも興味があったからね。きっかけを作って、これから仲良くしましょうって感じだ」
「はぁ、そんな感じですか」
やっぱり北狄の人は文化というか考え方が違うのかしら。なんて感想を抱いているうちに瑾曦様はさっさと歩き出してしまった。これは付いていかないと駄目な展開よね?
相手は上級妃なので三歩遅れて進む。と、不満そうな顔で瑾曦様が振り返った。
「喋りづらい。変な礼儀とか気にしなくていいから並んで歩きなよ」
「いえ、そういうわけにも……」
「こっちの礼儀ってのは偉い人を不愉快にしてでも貫き通さなきゃ駄目なものなのかい?」
「まぁ、それが礼儀であり身分制度ですよね」
「ゴチャゴチャ言ってないで、さっさと来る!」
私の右手首を掴んで引っ張り、無理やり自分の横に並ばせる瑾曦様だった。
「えー、何この人強い。欧羅風に言うとゴーイングマイウェイ……」
私が呆れていると、瑾曦様は私の手首だけじゃなく二の腕や肩やらを握々し始めた。按摩、って訳でもなさそうな。
「……へぇ? 凜風、かなり鍛えているじゃないか。この感じは……弓使いかい?」
「え、なんで触っただけで分かるんですか? ちょっと引くんですけど」
「そりゃああたしも弓を使うからね。それくらいは分かるさ。しかし、女の弓使いはこっちに来てから初めて会うね。どうだい? あたしと弓対決でもしてみないかい?」
「えー? いやですよ面倒くさい。どうせ私が勝ちますし」
当然すぎる私の返答を聞き、瑾曦様は目を丸くして、
「――あっはっはっ! 凄い自信じゃないか! 気に入った! やっぱりあんたは面白い女だね!」
バンバンと背中を叩いてくる瑾曦様だった。なんというか、兄である孫武さんそっくりの反応だ。兄妹揃って私の背骨の耐久力を試すのはやめていただきたい。
……いや、無事かしら? なんだかずいぶんやらかしたというか、やらかされたというか。なんで将来皇后になる可能性がある人を妹分扱いして、呼び捨てにして、タメ口をきかなきゃならないのか。
どうしてこうなったと首をかしげながら借りている部屋へと戻ると……中から人の気配が。
私って昔から誘拐されそうになったり事件に巻き込まれることが多かったから、人の気配には敏感になっちゃったのよね。神仙術を習ってからは強化もされたし。
「――誰ですか?」
万が一に備え、入り口から少し離れて詰問すると、「いや、まいったまいった!」と軽い感じの声が帰ってきた。
悪びれる様子もなく部屋から出てきたのは……孫武さんの妹さん。北狄の王女様。翠妃・瑾曦様だった。
「やれやれ、うまく気配を消したつもりだったんだけどねぇ。凜風、見た目に反してやるじゃないか」
「あ、はぁ……。瑾曦様、どうかしましたか?」
「……隠れていたあたしが言うのも何だけど、自分の部屋から人が出てきたんだからもっと驚いたらどうだい?」
「いえ、慣れてますし。物陰に人が隠れているのとか、部屋に不審者が忍び込んでいるのとか」
「……なんだか壮絶な人生送っているんだねぇ。まぁそれだけの美少女で、陛下のお気に入りなら当然か」
くくっと笑ってから瑾曦様は訪問目的を教えてくれた。
「張の爺さんから伝言だ。折り入って頼みたいことがあるから外廷に来てくれってさ」
外廷というと……皇宮のうち、皇帝が仕事をする宮だっけ? ちなみに『内廷』は皇帝が私生活をする宮だそうだ。
「伝言って。それを伝えるために来てくださったのですか? 上級妃で、陛下の御子を産んだ瑾曦様が?」
「後宮じゃ狩りもできないからね、こういうときに動いておかないと身体が鈍っちまうのさ」
「はぁ」
あなた北狄の王女なんでしょう? 狩りをしていたんですか? というツッコミは飲み込んでおいた。なんか普通にしてそうだし。
「あと、凜風にも興味があったからね。きっかけを作って、これから仲良くしましょうって感じだ」
「はぁ、そんな感じですか」
やっぱり北狄の人は文化というか考え方が違うのかしら。なんて感想を抱いているうちに瑾曦様はさっさと歩き出してしまった。これは付いていかないと駄目な展開よね?
相手は上級妃なので三歩遅れて進む。と、不満そうな顔で瑾曦様が振り返った。
「喋りづらい。変な礼儀とか気にしなくていいから並んで歩きなよ」
「いえ、そういうわけにも……」
「こっちの礼儀ってのは偉い人を不愉快にしてでも貫き通さなきゃ駄目なものなのかい?」
「まぁ、それが礼儀であり身分制度ですよね」
「ゴチャゴチャ言ってないで、さっさと来る!」
私の右手首を掴んで引っ張り、無理やり自分の横に並ばせる瑾曦様だった。
「えー、何この人強い。欧羅風に言うとゴーイングマイウェイ……」
私が呆れていると、瑾曦様は私の手首だけじゃなく二の腕や肩やらを握々し始めた。按摩、って訳でもなさそうな。
「……へぇ? 凜風、かなり鍛えているじゃないか。この感じは……弓使いかい?」
「え、なんで触っただけで分かるんですか? ちょっと引くんですけど」
「そりゃああたしも弓を使うからね。それくらいは分かるさ。しかし、女の弓使いはこっちに来てから初めて会うね。どうだい? あたしと弓対決でもしてみないかい?」
「えー? いやですよ面倒くさい。どうせ私が勝ちますし」
当然すぎる私の返答を聞き、瑾曦様は目を丸くして、
「――あっはっはっ! 凄い自信じゃないか! 気に入った! やっぱりあんたは面白い女だね!」
バンバンと背中を叩いてくる瑾曦様だった。なんというか、兄である孫武さんそっくりの反応だ。兄妹揃って私の背骨の耐久力を試すのはやめていただきたい。
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