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鑑定
しおりを挟む何も書いてないノートがあったので、使えそうな魔法と呪文を書き写していく。回復魔法に、浄化に、空間収納に、鑑定眼に……。
「ふんふんふ~ん♪」
思わず鼻歌なんて歌っちゃう私だった。いつもの無表情・無感情な私を知っているセバスチャンたちが知ったら驚くんじゃないのかな?
でもまぁ、しょうがないよね? 父親に嫌われてご機嫌伺いしなきゃいけなかった本邸での生活から解放され、(軟禁状態とはいえ)誰からも怒鳴られることなく、自由に魔法を勉強できるようになった現状、そりゃあ鼻歌くらい歌っちゃうというものだ。
お腹が空きっぱなしなのは困ったものだけどね。魔法が使えるようになればそれも解決するはずだ。
「さてさてー、まず習得するべき魔法はこんなものかな?」
回復魔法はもちろん必須。大きなケガをして何ヶ月も動けなくなったり破傷風になったりしたら大変だものね。これは真っ先に習得しないと。
浄化というのは元々儀式の前にその場を清める呪文というか聖なる儀式らしいけど、出力弱めで使うと身体や衣服の汚れも落ちるのだとか。
もちろんこの屋敷にいるときはお風呂に入るけど、そうじゃないときはこれを使えばいつでも清潔を保てるのだ。衛生環境は大事。習得しないという選択肢はないよね。
空間収納も必須。なにせ幼女の身体じゃリュックに必要なものを詰め込んで移動するのも難しいし。ただ、持ち主の魔力総量によって収納容積は変わってくるみたいなのでこれもあとで試してみないと。
そして、鑑定眼。
異世界転生ものでは定番だよね。
これは魔法じゃなくて、生まれ持った『スキル』というものらしい。
貴族の子供は七歳になったら神殿に行って所有するスキルを確かめるのだ。と、かつて副メイド長のフィナさんが教えてくれた。そうして貴族学園に行き、生まれ持ったスキルを効率的に伸ばす修行をするのが一般的らしい。
(もしかしたら、昨日いきなり父親と食事をすることになったのは、それ関連の話があったからなのかな?)
もしもそうならあの男も親としてやるべきことをやろうとしていたのかもしれない。まぁ結果は軟禁だけど。
もう神殿には行けないだろうし、自分の持っているスキルを確かめる方法はない。さらに言えば都合良く鑑定眼のスキルを持っている可能性は限りなく低いだろう。
しかし、やる前から諦める理由にはならない。
スキルの発動方法なんて知らないけど、こういうときは叫べばいいんじゃないのかな?
「鑑定眼!」
右手の人差し指と中指を伸ばし、右目に添える。きらーんっと。
…………。
………………。
……………………。
無反応。
視界にある物のステータスが表示されたり、レベルが読み取れることもない。
「……あっはっはっ! そんな都合よく行かないか! いや~ちょっと汗掻いちゃったなぁ~恥ずかしいな~!」
と、私が笑って誤魔化していると、
≪――スキル・鑑定眼を獲得しました≫
「え?」
なんか、頭の中に無感情な声が?
この声、さっきも聞いたような?
「……え~っと、鑑定眼?」
先ほどの恥ずかしさを教訓として、今度は小声な私だった。
途端、世界に情報が満ちあふれた。
魔法の教本には作者名と適正レベルが表示され。
魔法陣には『魔力吸収』を意味する文字が浮かび上がり。
そして、例の卵の殻には、『ドラゴンの卵(孵化済み)』という説明文が追加された。
……その最後に全部『※食べられません』と表示されるのは何なのかな? 私は空腹なだけで、食いしん坊キャラじゃないんですけど?
いやまぁ、スキルにツッコミを入れてもしょうがないからそれは置いておくとして。
注目すべきはやはり『ドラゴンの卵』でしょう。
「あの子、やっぱりドラゴンなんだ?」
種類は何なのかなーっと思ったけど、さすがにそこまでは表示されないみたいだった。レベルが上がれば読み取れるようになるのかな?
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