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閑話 妹・アリス 4
しおりを挟むリーナの異母妹・アリスは意気揚々と別邸を目指していた。
手にしているのはバスケット。その中には厨房から分けてもらったパンやチーズが入っている。
リーナは悪い子だし、アリスのことを見てくれない。意地悪をしなければアリスに目も向けてくれないし、意地悪をしなければ交流することすらできない。
でも、だからといって食事を減らされたり餓死したら可哀想なのだ。
フィナからは余計なことをするなと警告されたが、このくらいなら許されるはず。
(それに……)
別邸を初めて訪れたとき。リーナは、アリスを見てくれていた。アリスに微笑みかけてくれたし、アリスに喋りかけてくれた。
あれこそ、最初、アリスが求めた『お姉ちゃん』なのではないだろうか……?
そんなことを考えているうちにアリスは別邸に到着し、中に入り、リーナが寝泊まりしている部屋の前へと到着した。
「お姉様! 食事を持ってきてあげましたわよ!」
大きな声を上げながら、勢いよく扉を開け放つアリス。なぜならそうした方がリーナは自分を見てくれるから。大人しくしているより騒いだ方がこっちに意識を割いてくれるから。――強い感情を込めた目で、アリスを見てくれるから。
部屋の中の、ベッド。
その上でリーナはスヤスヤと寝息を立てていた。
「あら! まだ眠っていますの!? お寝坊さんですわね!」
以前のように水魔法を発動して、起こしてあげようとするアリス。
今までのリーナなら、そうすればアリスを見てくれた。睨んでいる間だけ、リーナの瞳はアリスを映してくれていた。
そして。今のリーナであるならば……。
そうして。アリスが遅すぎる水魔法の発動をしようとしたところで――
「――んっ」
リーナが小さく声を上げた。
「!?」
思わず魔法を霧散させてしまうアリス。しばらく様子をうかがうが……寝言だったのかリーナが起きる気配はない。
「まったく……」
途中で霧散させたとはいえ、魔力は大きく浪費してしまった。二度目の発動は無理だなと考えるアリス。
仕方ないのでベッドに近づき、普通に起こすことにする。
そうして。アリスはベッドの脇にまで移動して。
「――綺麗」
思わず、リーナの寝顔に魅入ってしまうアリスだった。
長く伸びた睫毛。キラキラと輝くような銀髪。すべすべでモチモチとしたお肌に、以前より血色が良くなったような気がする唇。
圧倒的な美少女。
今の時点でこれなのだから、成長したらどれだけ美しくなることか……。
アリスも可愛いという自覚はあるが、やはりリーナには敵わないなと素直に認める。そもそも、これだけ美しいからこそ皆から愛されないリーナをアリスは惜しく思っているし、自分を見て欲しいと願っているのだ。
「…………」
5分か、10分か……。そのまま何をするでもなくリーナを見つめ続けるアリス。
リーナはアリスを見てくれなかった。
声を掛けても、喋ってはくれなかった。
姉妹らしいやり取りをしたいのに、妹として扱ってくれなかった。
でも、この前のリーナであれば……。もしかしたら……。
「……起こすのは今度にしましょうか」
アリスはそう言い残し、そのまま別邸を出て行くのだった。
そんなアリスの背中を、窓の外からそっと見つめながら。
『……みゃー』
心底呆れ果てた様子で。『この姉妹は、ほんとにどうしようもないな……』みたいな声を上げるミャーであった。
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