32 / 80
千里眼
しおりを挟む「……んー?」
目覚めるとベッドの上だった。
毒でダウンしたあと。まだ痺れる身体に鞭を打って部屋まで戻ってきて。ベッドの上にダイブしたのは覚えているのだけど……。そのままかなりの長時間眠ってしまったみたい。眠りすぎたとき特有のだるさがある。
「時計くらい欲しいなぁ。でも、そもそもこの世界ってもう機械式時計はあるのかな? ……ん?」
ベッドの脇に置いてあるバスケットに気づく私。なんだこれ?
まさか爆発物でもあるまいとバスケットを開けてみると――中に入っていたのはいくつかのパンとチーズだった。
「アリスかな?」
『みゃ?』
ベッドの側でうとうとしていたミャーが『どうした?』とばかりに首を持ち上げた。
「ん? ほら、アリスがご飯を持ってきてくれたみたい。やっぱり今はアレだけど心根は優しい子なんだろうね」
『……みゃー…………』
チョロい女だぜ、みたいな顔をされてしまう私だった。なぜだ……。
◇
久しぶりのパンとチーズでご機嫌な私である。
『ミャー……』
チョロい女だぜ、みたいな以下略。
ミャーの反応には納得できないけれど、毒状態も回復したので今日も元気に地下ダンジョンだ。
階層間を移動できる水晶に触れ、種を飛ばしてくる植物がいた階層へ。しばらく歩いているとやはり種が飛んできた。
「ん~?」
自動防御で防げるとはいえ、結界に当たるとそこそこの音がしてうるさいので手近な岩に身を隠す。しばらくすると射撃が止んだので岩陰から顔を出して確認――
「わぁ!?」
顔を出した瞬間を狙い撃たれた。いやいや早すぎない? もう私が顔を出す直前から撃っているのでは? いわゆる偏差射撃。相手の未来位置を予想した射撃だ。
『みゃ!』
ミャーが私の服を引っ張りながら、真横を指差した。……ん~? 何にもない草原だけど……? ミャーには何かが見えているのかな?
こういうときは鑑定眼だね。
というわけで、スキルを発動してミャーの指差した辺りを見る。もちろん何も見えないけど、それでも見る。見る。見る……。
≪――スキル・鑑定眼のレベルが上昇しました≫
「お?」
なんか、空間が揺らめいたような? 蜃気楼というか、一枚ベールが掛かっているというか……。
その揺らめきに意識を集中して、さらに見る。見る。見る……。
「おお?」
なんか、視えた。
何もないはずの草原。しかしそこに、臥せるような態勢でこちらを伺う……犬のような存在が。
「――雷よ、轟け!」
雷魔法をぶち当てると、その魔物は叫び声すら上げずに感電して、倒れた。
もしかして、あの魔物が植物に位置を教えていたとか?
『みゃ』
ミャーが頷いたので、そうみたい。なんという連係プレイか。
私が感心していると、天の上から声が振ってきた。
≪――索敵のレベルが上昇しました≫
≪――特定条件・『索敵のレベル上昇』『見えないはずのものを視る』を達成しました。スキル鑑定眼は千里眼に進化します≫
千里眼? なんか便利そうなスキルが。
どれどれとステータス画面を起動して、スキルの詳細を確認。……へぇ。ここから離れた場所を視ることができるスキルかぁ。レベルが上がると音も聞こえるようになるっぽい。
つまり、たとえば別邸にいながらも本邸の中の様子を確認できるようになると? う~ん便利だね。
さっそく何か試してみるかなと思っていると、私が隠れている岩に種が着弾した。丁度いいからあの植物(?)で試してみるかな。
目を閉じて、スキル千里眼を発動。瞼を閉じているのに別の場所の光景がハッキリと見える。そんな不思議な感覚。
こちらに花弁を向けて射撃態勢を取っている植物たちが見える。まるで空から俯瞰しているような不思議な感覚…。
その状態から植物たちに狙いを定め、炎魔法を撃ち込む。
「――焔よ、燃えよ!」
途端に燃え上がる植物たち。狙い撃ったおかげで周辺の草への延焼も最小限だし、それでも燃え移った分は水魔法を使って消火することができた。
「おぉー! これ、すっごく便利!」
そのまま私は千里眼で植物の排除を進めて……そうしていうるうちに身を隠していた別の魔物たちも発見し……この階層にいる魔物すべてを排除することに成功したのだった。
≪――千里眼のレベルが上昇しました≫
≪――千里眼と索敵のレベルが一定値を超えました≫
≪――スキルの複合進化を開始します≫
≪――スキル・千里の果てを知る者よを獲得しました≫
332
あなたにおすすめの小説
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
気弱令嬢の悪役令嬢化計画
みおな
ファンタジー
事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?
しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?
いやいやいや。
そんなことだから、冤罪で処刑されるんでしょ!
せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。
屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる