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公爵と
しおりを挟むしまった。
大失敗。
思わず、公爵(一応祖父)の手を握り返してしまった。
これじゃあまるで、私がこの人を受け入れたみたいじゃないか。……今の今まで私を放置してきた、この人を。
「…………」
じとー、っとした目で公爵を睨み付ける。
「んん? どうしたのだ~リーナよ?」
まるで初孫を前にしたかのようなだらしない顔をする公爵。……実際、孫ではあるんだよね私。フィナさんに教えられただけだからまるで実感はないけれど。
今まで放置してきたくせに、という文句はこの顔を目にしてしまうと霧散してしまう。我ながらチョロいなぁ。
とにかく。
この人の前に躍り出たからには覚悟を決めた私だ。――私は、なんとしても妹を守らなければならないのだ。
フィナさんは言っていた。このままだと伯爵家は取りつぶされてしまうかもしれないと。
正直、私は伯爵家にも両親にも未練はないし、存分に『ざまぁ』されて欲しいという思いはある。けれど、その煽りを受けてアリスが不幸になるのは見過ごせないのだ。
大切な妹なのに。
やっと仲良くなれたのに。
せっかく命を救ってもらったのに。
そのままアリスが平民に落とされてさようなら、なんて展開は私が許さない。もしもそうなるというのなら、私も公爵家に行かずアリスと共に平民として生きる。……生きられるだけの『力』はある。
――お姉ちゃんは、妹を守らなくちゃいけないのだ。
アリスの手を引き、私の後ろに隠そうとする。
だというのに、アリスは隠れるのを良しとせず、私の隣に留まってしまう。――守られるばかりでは嫌だと言わんばかりに。
「仲の良いことだ」
訳知り顔で頷く公爵だった。なんかムカつく。
「さて。ここはこれから騒がしくなる。別邸とやらに移動するか」
有無を言わさぬ感じで公爵が断言し、私とアリス、そして公爵は別邸に向かうことになった。
◇
「これからうちの騎士団が伯爵家を家捜しし、リーナ虐待に関する証拠集めをするのだ」
別邸へと向かう道中。伯爵邸の階段を降りながら公爵が説明してくれた。あぁだから『騒がしくなる』と。
この世界ではどうか知らないけど、前世の物語だと貴族が私設の騎士団を持っているものだったので、たぶんそんな感じなのだと思う。
しかし、虐待の証拠集めねぇ? そんなの、セバスさんやサラさんたちからの証言で十分なはずだし、わざわざ騎士団まで連れてくる必要はないと思う。……あ、いや、伯爵家の人間が抵抗したときに備えて? でも、それでもいきなり家捜しはやりすぎだと思う。
そこまで考えて、ぴんと来た。
「伯爵家の不正の証拠でも探すんですか?」
そうすれば伯爵家を潰す大義名分が得られるし。……子供を虐待するような男なのだから、不正の一つや二つはしているはずだ。
私の発言を聞き、公爵が興味深そうに目を細めた。『愛玩対象』から『一人の人間』に格上げされた、ような気がする。
「ほう? 家庭教師も付けられていないと聞いていたが……中々どうして聡明ではないか」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
と、貴族っぽい受け答えはこんな感じだと思う。
「……そのあたりはマリアナに似たか」
なんとも微妙な顔をする公爵だった。マリアナとは私の母親で、公爵の娘なんだっけ。フィナさんによると駆け落ち同然で伯爵家に嫁いだのだとか。
正直、公爵家の娘という安定した立場を捨ててあのクズに嫁いじゃう人に『似ている』と言われてもなぁ。
ちなみに。
私が物心つく前に死んでしまったので、母親との思い出はない。まぁこればかりはしょうがないよね。
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