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第二部
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その後、翻訳が滞りなく進んだ、かというと微妙な線である。わたしとしては、どちらかといえば進みが悪い、と思っているのだが。
喋るだけ、というもの結構疲れるし、イエリオさんが書き留めていくので、さくさく進めることは出来ない。イエリオさんが特別書くのが遅い、ということはないのだが、やっぱりどうしても喋るよりも書く方が遅くなってしまうものなので。
あと、シーバイズの文化を理解している前提で書かれているような文章は、そのたびに説明を入れなければならなくて、書く手が止まる。
いくらわたしが怪我人でも、気を使いながら作業したとしても、翻訳して読み上げるだけならそんなに大変じゃないだろう、なんて思っていたのだが、朝から昼前までで六枚分の書類しか翻訳出来ていなかった。わたし的には十枚二十枚は行けるとおもっていたのだが。
それでも、イエリオさんの目の輝き具合を見ると、彼からしたら十分なんだろう。……このペースだと、二週間で全部終わらないような気もするが……。とはいえ、二週間後にはわたしも自身の勉強を出来るくらいには回復していると思うので、そのあとは追々、という感じである。手伝うのはやぶさかではないのだが、ずっと缶詰というのもそれはそれで疲れるので。
「時間もいいですし、次で最後にして、休憩にしましょうか」
そう言ってイエリオさんが次のコピーを渡してくる。時間を見れば、昼食にしてもおかしくないような時間だ。
ソファに座ってコピーの内容を読み上げるだけしかしていないので、お腹はさして減っていなかったが、疲れているのは事実なので、休憩は休憩でちゃんと欲しい。
「ええと次は……『この声が枯れてしまったら、私にどれだけの価値が残るというのでしょう?』……なんでこんな中途半端なところだけ残ってるんですか?」
「中途半端、ですか?」
これはシーバイズで一時期流行った恋愛小説だ。わたしも読んだことがある。
しかも中盤。最初の方のページか、最後の方のページだけが残るならまだ分かるのだが、真ん中のページが残るなんて……。本が丁度二つに割れて、その一ページ目、もしくは最後のページになってしまった、とかだろうか。割れた本は確かにもろそうではあるけれど……。
まあ、千年前に何があったのかは知らないし、魔法とかいうチート技術がある文明が一つ滅ぶような大災害の中、どう文献が残るかは運なんだろうけども。
元は小説で、このページは中盤くらいのものだ、というとイエリオさんは興味部下そうな顔を見せた。いや、さっきからそんな表情ばかりだけれど。
「どんな内容なんでしょう?」
「えーっと、確か、生みの親に捨てられた娘が、特技の歌を活かして、歌姫として活躍し、育ての親に恩返しをしている中、病にかかってだんだんと声が出なくなっていく、みたいな話……だったと思います」
このページは丁度、声が出なくなってきて、高音がきつくなって歌えなくなる未来に不安を抱くシーンだったはず。
主人公の娘が声を出せなくなっても愛しているよ、という男は多々いるのだが、病のせいでみすぼらしくなっていくと、その男たちも離れていき、誰もいなくなったと思ったら、一人だけ男が残り、その男と恋をする、みたいな感じの展開だったと記憶している。
歌うだけじゃなくて、話すこともままならない終盤で、最後に声を振りしぼって愛を伝えるシーンはかなり有名になったものだ。
ざっくりとあらすじを伝えると、先ほどまで輝いた目でペンを握っていたイエリオさんが、そのペンを置いた。
「マレーゼさんは……一つの能力で認められた人間が、その能力を失ってしまったら、どう思いますか?」
イエリオさんは、妙に真剣な目で、そう、聞いてきた。
喋るだけ、というもの結構疲れるし、イエリオさんが書き留めていくので、さくさく進めることは出来ない。イエリオさんが特別書くのが遅い、ということはないのだが、やっぱりどうしても喋るよりも書く方が遅くなってしまうものなので。
あと、シーバイズの文化を理解している前提で書かれているような文章は、そのたびに説明を入れなければならなくて、書く手が止まる。
いくらわたしが怪我人でも、気を使いながら作業したとしても、翻訳して読み上げるだけならそんなに大変じゃないだろう、なんて思っていたのだが、朝から昼前までで六枚分の書類しか翻訳出来ていなかった。わたし的には十枚二十枚は行けるとおもっていたのだが。
それでも、イエリオさんの目の輝き具合を見ると、彼からしたら十分なんだろう。……このペースだと、二週間で全部終わらないような気もするが……。とはいえ、二週間後にはわたしも自身の勉強を出来るくらいには回復していると思うので、そのあとは追々、という感じである。手伝うのはやぶさかではないのだが、ずっと缶詰というのもそれはそれで疲れるので。
「時間もいいですし、次で最後にして、休憩にしましょうか」
そう言ってイエリオさんが次のコピーを渡してくる。時間を見れば、昼食にしてもおかしくないような時間だ。
ソファに座ってコピーの内容を読み上げるだけしかしていないので、お腹はさして減っていなかったが、疲れているのは事実なので、休憩は休憩でちゃんと欲しい。
「ええと次は……『この声が枯れてしまったら、私にどれだけの価値が残るというのでしょう?』……なんでこんな中途半端なところだけ残ってるんですか?」
「中途半端、ですか?」
これはシーバイズで一時期流行った恋愛小説だ。わたしも読んだことがある。
しかも中盤。最初の方のページか、最後の方のページだけが残るならまだ分かるのだが、真ん中のページが残るなんて……。本が丁度二つに割れて、その一ページ目、もしくは最後のページになってしまった、とかだろうか。割れた本は確かにもろそうではあるけれど……。
まあ、千年前に何があったのかは知らないし、魔法とかいうチート技術がある文明が一つ滅ぶような大災害の中、どう文献が残るかは運なんだろうけども。
元は小説で、このページは中盤くらいのものだ、というとイエリオさんは興味部下そうな顔を見せた。いや、さっきからそんな表情ばかりだけれど。
「どんな内容なんでしょう?」
「えーっと、確か、生みの親に捨てられた娘が、特技の歌を活かして、歌姫として活躍し、育ての親に恩返しをしている中、病にかかってだんだんと声が出なくなっていく、みたいな話……だったと思います」
このページは丁度、声が出なくなってきて、高音がきつくなって歌えなくなる未来に不安を抱くシーンだったはず。
主人公の娘が声を出せなくなっても愛しているよ、という男は多々いるのだが、病のせいでみすぼらしくなっていくと、その男たちも離れていき、誰もいなくなったと思ったら、一人だけ男が残り、その男と恋をする、みたいな感じの展開だったと記憶している。
歌うだけじゃなくて、話すこともままならない終盤で、最後に声を振りしぼって愛を伝えるシーンはかなり有名になったものだ。
ざっくりとあらすじを伝えると、先ほどまで輝いた目でペンを握っていたイエリオさんが、そのペンを置いた。
「マレーゼさんは……一つの能力で認められた人間が、その能力を失ってしまったら、どう思いますか?」
イエリオさんは、妙に真剣な目で、そう、聞いてきた。
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