転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
20 / 493
第一部

20

しおりを挟む
 店員さんから四人分の簡易包装されたチョーカーの入った紙袋を受け取り、わたしは待合用のソファに腰かけた。

 がさり、と紙袋の中を覗くと、箱が四つ。この中に、夫婦であることを証明するチョーカーが入っているのだと思うと、急に緊張してきた。
 魔法付与、やってしまおうか、とナチュラルに手を伸ばし、慌ててひっこめた。
 シーバイズとは違って絶対に目立ってしまう。シーバイズでも、町中でやっていたら、あれもこれもと頼まれるので、ある意味控えた方がいいのだが、フィンネルでは悪目立ち……というか、あからさまに異物扱いされるだろう。千年後のここではロストテクノロジーらしいし。

 いや、でも、ウィルフさんを連れ戻す時に、人前で使ってしまったな……。面倒くさくなって使ってしまったが、今後、簡単に使うのはやめた方が得策だろう。次から気を付けよう、と心に深く刻み込む。

 それにしても、待っている間に魔法付与をしてしまおうと思っていたので、すっかり手持無沙汰になってしまった。前世だったらスマホをいじったし、シーバイズなら魔法の練習でもしたんだけど。
 仕方がないので、わたしは窓の外を眺める。
 全体的におとぎ話に出てくるような建築模様と、行きかう獣人たちが「ここは異世界である」と主張してくるけれど、それさえなければただ外国へ旅行にきた気分になる。

 ぼけ、と外を眺めていると、ばちり、と通行人と目があった。どこかで見たことがあるような――うわ、やば、ウィルフさんを探しに行ったとき、冒険者ギルドで絡まれた猿獣人だ。
 わたしはスッと立ち上がり、いかにも「気が付いていませんが?」という風を装って、そそくさとイエリオさんたちのところへ戻った。いや、もう絡まれたくねえし。

「決まりました?」

 後ろから話しかけると、ウィルフさん以外の三人がびくりと大げさに肩を揺らした。ウィルフさんはその見た目通り、聴力も獣に近いのか、わたしの接近に気が付いていたようだ。三人がアクセサリー選びに夢中になる中、ウィルフさんだけは積極的ではなかった、というわけではないと思う。多分、多分ね。

「も、もー、驚かせないでよ」

 若干挙動不審めに言うのはフィジャだ。うーん、思ったより驚かせてしまったらしい。びっくりさせるつもりはなかったんだけど、悪いことしたかな……。

「やっぱり首輪以外となるとデザインの種類が……」

 イエリオさんの言葉に、ショーケースを覗いてみる。……ネックレス、二種類しかない! 銀のチェーンのみのものと、パールっぽいものが連なったネックレス。後者は前世で母が葬式に出席する際に使っていたものを彷彿とさせる。
 ネックレスも人気っていうの、嘘だったんだろうな……。まあ、わたしがドン引いてれば嘘をついて誤魔化す他なかったんだろう。

「もうこっちでいいんじゃない」

 ト、とショーケースを叩くイナリさんの指の先には、銀チェーンのネックレス。うーん、まあ確かにその二択なら、わたしはそっちのが好きかな。
 しかし、それに反対の声をあげたのはフィジャだ。

「え~、折角送るならちゃんとした奴がいい!」

 フィジャの不満そうな声に、彼らのやりとりを見ていた店員が声をかける。

「よろしければ、オーダーメイドも承っておりますよ。数日お時間をいただくことになりますが……」

「それ、それにしよ!」

 フィジャがぱっと表情を明るくして、店員の提案に食いついた。オーダーメイドとか、絶対高いやつなのでは……?
 しかし、残りの三人も、特に反対する様子もなく、あれこれ店員に要望を出して、あっさりとオーダーメイドの注文を済ませてしまった。

「いいんですか?」

 わたしが思わず聞いてしまうと、「気にしなくて大丈夫です」とイエリオさんに笑われてしまった。うーん、男のプライドとか、そういうのもあるんだろうか。贈り物の値段とか、見栄を張りたくなってしまうのか?
 ともあれ、わたしのネックレスは後日受け取りとなり、このまま帰路に着くのかと思ったが――店に出たとたん、「では、次に行きましょう」とイエリオさんが言った。

「次、ですか……?」

 装飾品を送りあうだけじゃないの? と不思議に思ったのだが、イエリオさんの次の言葉にそんな疑問は吹っ飛んだ。

「新しい家、探しに行きましょうか。あそこはウィルフの単身用の貸し部屋ですから。五人で住むには狭いでしょう?」

 ああ、なるほど、確かにそうだ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

異世界から来た華と守護する者

恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。 魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。 ps:異世界の穴シリーズです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

処理中です...