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第二部
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何かがベッドの下に落ちた感覚がして、少しだけ意識が浮上する。
「…………」
寝ぼけた頭のまま、ベッドの下を見れば、服が散らばっていた。なんで? と思考が一瞬止まったものの、そう言えば昨日、寝るときに掛けるものが何もなくて服を布団代わりにしたんだっけ、ということを思い出した。
まだ眠たくて、二度寝をしようと思ったものの、少し肌寒くて徐々に意識が覚醒してきてしまう。服を拾い上げるころには完全に目が覚めてしまって、心地よく二度寝をすることが出来そうにもない。
仕方なく起きることにした。軽く伸びをすれば、バキバキと関節がなる。
その音にびっくりするが、頭に響くことはない。寝たりない気分ではあるが、二日酔いにはなっていないようだ。
あくびを一つして、そっと部屋を出る。フィジャのベッドからは、ヴィルフさんの寝息が聞こえてくる。まだ寝ているようだ。
起こさないように気を使いながらリビングに出ると、フィジャとイナリさんが既に起きていて、後片付けをしていた。イエリオさんはソファの上に移動しているが、まだ寝ているようだ。
「……おはよ、ございます」
自分が思った以上にガサガサの声をしていて、笑いそうになった。
酷い声ではあったが、二人には届いたらしい。こちらに顔を向けた。
「……おはよ」
イナリさんの顔が青白い。目が死んでいて、いかにも元気がない。完全に二日酔いになっている人間の表情である。
一方、フィジャの方はイナリさんよりも元気があるように見えるものの、なんとなく、体調が悪そうに見えた。
「顔色悪いけど大丈夫ですか? 片付け、代りましょうか?」
わたしはちょっと眠いくらいで元気なものだ。昨日の飲み散らかし、食べ散らかしに言いたいことがないわけではないが、体調を崩している人間にまでぎゃんぎゃん言いたくはない。
お説教は体調が回復してからである。
しかし、イナリさんはわたしの提案を拒否した。
「……別に、いい……」
本当に、今にも死にそうな声である。ぼそぼそと、喋るのも辛そうだった。
「なんか、昨日、いつも以上に絡んだ記憶が、ある……ような気がする……。迷惑掛けたし、一番に起きたし、僕がやる……」
「どこまで覚えてるんですか?」
「君に、無理やり酒を注いだのは、覚えてる……。その、悪かったね……」
完全に覇気がない。いつものちょっとツンツンした様子は全くなく、完全にしおれている。
でも、初対面のときにここまで死にそうになっていなかった辺り、もしかしたら昨晩は飲みすぎていたのかもしれない。……失恋慰め会より飲みすぎる夜、とは一体……? って感じではあるけど。
「じゃあ、フィジャの口に直接酒瓶の注ぎ口を突っ込んだのは覚えてます?」
「そんなこと、したの……?」
信じられない、というような表情をしたイナリさんだったが、だんだんと表情が曇り、最終的には「した……した? したような気も、する……。うん、した、かも?」と、あやふやだが、なんとなく思い出したようだった。
「じゃあ、そのあと……」
わたしのクッキーを食べて、遠回しに美味しくない、って言ったのは覚えてますか? と聞こうとして、迷ってしまった。
わざわざ掘り返さないでこのまま記憶を抹消させて、リベンジしてやろうか、と一瞬思ってしまったのである。それに、折角焼いたクッキーが不評だったのを、わたし自身があんまり思い出したくない、というのもある。
これだけ記憶があやふやな中、今、味のことに追及したって覚えていないだろう。
そもそも、フィジャと比べて美味しくないのは事実なわけだし……。
どうしてやろうか、と迷っていると、「え、僕何した? ねえ、何したの?」と焦った声が聞こえてくる。
「思い出したら謝ってください」
「謝らないといけないようなことしたんだ……!?」
何をやらかしたんだと頭を抱えるイナリさんを横目に、ふと、フィジャが黙り込んでいることに気が付いた。
「……フィジャ? 大丈夫?」
「――え? うん、大丈夫だよ」
うっすらと笑うフィジャ。元気がない。無理やり笑っているように見えた。
フィジャも二日酔いだろうか。でも、それにしては、イナリさんとは対照的に顔が赤い。目もちょっと、とろん、としているような……。
そこまで観察して、そう言えば、昨日、フィジャは酒をぶちまけて寝てしまったんだったか、ということを思い出した。
「…………」
寝ぼけた頭のまま、ベッドの下を見れば、服が散らばっていた。なんで? と思考が一瞬止まったものの、そう言えば昨日、寝るときに掛けるものが何もなくて服を布団代わりにしたんだっけ、ということを思い出した。
まだ眠たくて、二度寝をしようと思ったものの、少し肌寒くて徐々に意識が覚醒してきてしまう。服を拾い上げるころには完全に目が覚めてしまって、心地よく二度寝をすることが出来そうにもない。
仕方なく起きることにした。軽く伸びをすれば、バキバキと関節がなる。
その音にびっくりするが、頭に響くことはない。寝たりない気分ではあるが、二日酔いにはなっていないようだ。
あくびを一つして、そっと部屋を出る。フィジャのベッドからは、ヴィルフさんの寝息が聞こえてくる。まだ寝ているようだ。
起こさないように気を使いながらリビングに出ると、フィジャとイナリさんが既に起きていて、後片付けをしていた。イエリオさんはソファの上に移動しているが、まだ寝ているようだ。
「……おはよ、ございます」
自分が思った以上にガサガサの声をしていて、笑いそうになった。
酷い声ではあったが、二人には届いたらしい。こちらに顔を向けた。
「……おはよ」
イナリさんの顔が青白い。目が死んでいて、いかにも元気がない。完全に二日酔いになっている人間の表情である。
一方、フィジャの方はイナリさんよりも元気があるように見えるものの、なんとなく、体調が悪そうに見えた。
「顔色悪いけど大丈夫ですか? 片付け、代りましょうか?」
わたしはちょっと眠いくらいで元気なものだ。昨日の飲み散らかし、食べ散らかしに言いたいことがないわけではないが、体調を崩している人間にまでぎゃんぎゃん言いたくはない。
お説教は体調が回復してからである。
しかし、イナリさんはわたしの提案を拒否した。
「……別に、いい……」
本当に、今にも死にそうな声である。ぼそぼそと、喋るのも辛そうだった。
「なんか、昨日、いつも以上に絡んだ記憶が、ある……ような気がする……。迷惑掛けたし、一番に起きたし、僕がやる……」
「どこまで覚えてるんですか?」
「君に、無理やり酒を注いだのは、覚えてる……。その、悪かったね……」
完全に覇気がない。いつものちょっとツンツンした様子は全くなく、完全にしおれている。
でも、初対面のときにここまで死にそうになっていなかった辺り、もしかしたら昨晩は飲みすぎていたのかもしれない。……失恋慰め会より飲みすぎる夜、とは一体……? って感じではあるけど。
「じゃあ、フィジャの口に直接酒瓶の注ぎ口を突っ込んだのは覚えてます?」
「そんなこと、したの……?」
信じられない、というような表情をしたイナリさんだったが、だんだんと表情が曇り、最終的には「した……した? したような気も、する……。うん、した、かも?」と、あやふやだが、なんとなく思い出したようだった。
「じゃあ、そのあと……」
わたしのクッキーを食べて、遠回しに美味しくない、って言ったのは覚えてますか? と聞こうとして、迷ってしまった。
わざわざ掘り返さないでこのまま記憶を抹消させて、リベンジしてやろうか、と一瞬思ってしまったのである。それに、折角焼いたクッキーが不評だったのを、わたし自身があんまり思い出したくない、というのもある。
これだけ記憶があやふやな中、今、味のことに追及したって覚えていないだろう。
そもそも、フィジャと比べて美味しくないのは事実なわけだし……。
どうしてやろうか、と迷っていると、「え、僕何した? ねえ、何したの?」と焦った声が聞こえてくる。
「思い出したら謝ってください」
「謝らないといけないようなことしたんだ……!?」
何をやらかしたんだと頭を抱えるイナリさんを横目に、ふと、フィジャが黙り込んでいることに気が付いた。
「……フィジャ? 大丈夫?」
「――え? うん、大丈夫だよ」
うっすらと笑うフィジャ。元気がない。無理やり笑っているように見えた。
フィジャも二日酔いだろうか。でも、それにしては、イナリさんとは対照的に顔が赤い。目もちょっと、とろん、としているような……。
そこまで観察して、そう言えば、昨日、フィジャは酒をぶちまけて寝てしまったんだったか、ということを思い出した。
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