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第二部
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しりもちをつくように床に座り込んだフィジャに、寄りかかる様にして倒れ込んだわたしは、一瞬フィジャの少し冷たい肌の感触に戸惑ったものの、すぐに体を起こす。
「大丈夫!?」
わたしは慌ててフィジャの方を見る。
割れている破片が、床に散らばっているのだ。怪我でもしたら一大事である。
「なんとか……マレーゼは? 怪我してない?」
「わたしは全然平気――フィジャ、これ大丈夫? 怪我?」
フィジャの前側近くの内ももに、赤黒い染みのような、痣のようなものを見つけてしまった。場所が場所だけに指摘するのも凝視するのもどうかと思ったが、怪我なら放置するわけにもいかない。
「いや、怪我は……――あっ!」
「うわ、急に動いたら危ないって」
内ももを隠すように、フィジャがさっと動く。すぐそばに割れた皿の破片があることなんて、忘れてしまったかのような動きだ。
さっき思い切り、叩くように隠したのはこれだったんだろうか。
かたかたと、小刻みに震えている。今にも泣き出しそうだ。あまり触れてほしくない傷? 痣? らしい。
「フィジャ、とりあえず場所を変えよう。下手に動いて破片で切ると危ないし、早く服を着ないとまた熱が出ちゃうよ」
そう言ってみるが、フィジャはうつむいたまま動かない。
仕方ないので、わたしは傍の破片を拾い、軽く片付ける。このままだと、怪我をしてしまいそうだ。割れものを素手で拾うのはあんまりしたくないが……まあ、これだけ破片が大きければ、気を付けていれば手を切ることもないだろう。
ちゃり、ちゃり、と破片がこすれる音が、部屋に響いた。
「――気持ち悪く、ないの」
あらかた破片をテーブルの上に移動させた頃、ぽつりとフィジャが呟いた。
「見られたくなかった」と顔を覆いながらフィジャがうずくまる。泣き声こそ聞こえてこなかったが、泣いているように見えた。
絞り出すようなその声と、震える肩に、わたしは無責任にも、フィジャの隣に座り込んで、その肩を抱き寄せた。
どうしても、放っておけなかったのだ。あまりにも、あまりにもフィジャの姿が小さく見えてしまって。
じんわりと、わたしの手のひらの温度が、フィジャに移っていくような感覚がした。
「……勝手に見て、ごめんね」
フィジャになんと声をかけていいのか、言葉をどう選ぶべきか、迷った末に、とりあえず謝罪を述べることにした。
最初にあんな、変に後ずさりするような歩き方をしていたのだから、とにかくわたしに見られたくなかったのだ。
なら、見ないふりをする方が正解だったのだろう。最初こそ、怪我に見えたけれど、よく見ればそれが痣だったことは分かることだったのに。このおびえようを見るに、わたしの行動は間違っていたのだ。
「大丈夫!?」
わたしは慌ててフィジャの方を見る。
割れている破片が、床に散らばっているのだ。怪我でもしたら一大事である。
「なんとか……マレーゼは? 怪我してない?」
「わたしは全然平気――フィジャ、これ大丈夫? 怪我?」
フィジャの前側近くの内ももに、赤黒い染みのような、痣のようなものを見つけてしまった。場所が場所だけに指摘するのも凝視するのもどうかと思ったが、怪我なら放置するわけにもいかない。
「いや、怪我は……――あっ!」
「うわ、急に動いたら危ないって」
内ももを隠すように、フィジャがさっと動く。すぐそばに割れた皿の破片があることなんて、忘れてしまったかのような動きだ。
さっき思い切り、叩くように隠したのはこれだったんだろうか。
かたかたと、小刻みに震えている。今にも泣き出しそうだ。あまり触れてほしくない傷? 痣? らしい。
「フィジャ、とりあえず場所を変えよう。下手に動いて破片で切ると危ないし、早く服を着ないとまた熱が出ちゃうよ」
そう言ってみるが、フィジャはうつむいたまま動かない。
仕方ないので、わたしは傍の破片を拾い、軽く片付ける。このままだと、怪我をしてしまいそうだ。割れものを素手で拾うのはあんまりしたくないが……まあ、これだけ破片が大きければ、気を付けていれば手を切ることもないだろう。
ちゃり、ちゃり、と破片がこすれる音が、部屋に響いた。
「――気持ち悪く、ないの」
あらかた破片をテーブルの上に移動させた頃、ぽつりとフィジャが呟いた。
「見られたくなかった」と顔を覆いながらフィジャがうずくまる。泣き声こそ聞こえてこなかったが、泣いているように見えた。
絞り出すようなその声と、震える肩に、わたしは無責任にも、フィジャの隣に座り込んで、その肩を抱き寄せた。
どうしても、放っておけなかったのだ。あまりにも、あまりにもフィジャの姿が小さく見えてしまって。
じんわりと、わたしの手のひらの温度が、フィジャに移っていくような感覚がした。
「……勝手に見て、ごめんね」
フィジャになんと声をかけていいのか、言葉をどう選ぶべきか、迷った末に、とりあえず謝罪を述べることにした。
最初にあんな、変に後ずさりするような歩き方をしていたのだから、とにかくわたしに見られたくなかったのだ。
なら、見ないふりをする方が正解だったのだろう。最初こそ、怪我に見えたけれど、よく見ればそれが痣だったことは分かることだったのに。このおびえようを見るに、わたしの行動は間違っていたのだ。
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