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第三部
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「マレーゼさんは主にこの部屋を使ってください。クローゼットの中は使っているので、使えませんが……」
「いや、十分です」
通された部屋は十畳は確実にありそうな部屋だった。この世界の部屋の広さを表すのに『畳』でいいのか分からないけど、体感的に。
ベッドとサイドテーブルだけが用意されていて、非常に物悲しいものを感じる。荷物が少ないのでたとえクローゼットがつかえなくてもこれで十分どころか、持て余すような広さだ。
「何か欲しい家具があれば言ってください。揃えますから」
「いや、特にはないけど……イエリオさんって、お金持ちなんですか?」
つい聞いてしまう。いや、こんな家に住んでいて、お金持ちじゃないなんてちょっと考えられないけど。
「私自身はそれほどでも。実家がそれなりに裕福なのでこのような家に住めているだけです」
聞くところによると、この家も譲り受けたものだとか。叔父にあたる人から貰ったらしい。
家を貰うって言葉の圧がもう凄い。そんなもの、ぽいと貰える物じゃない。
家を譲り受ける場合って、遺産くらいなものかと思っていたけれど、独り身を覚悟して買ったらその後結婚して手狭だからと新しく家を買うために貰ったのだとか。二度も家を建てられる財力よ……。
「もう少し広ければ、このまま皆で住んでもよかったんですけどねえ……」
「十分広くないですか……?」
「一部屋は広いですが、一人で住むことを想定している家なので、部屋数がないんですよ。それに、もし子供ができたらもっと部屋が必要になるでしょう?」
子供。まさかそんなワードを今聞くとは思わず、びしりと固まってしまう。脳裏にフィジャがよぎった。
「子供……イエリオさんも、子供、欲しいですか?」
わたしは意を決して、イエリオさんに聞く。全員と向き合って『家族』になるなら、皆がわたしと、どう関係を築きたいのかを聞くことから逃げてはいられない。
イエリオさんは、よっぽどヴィルフさんやイナリさんよりも聞きやすい……と、思う。
「フィジャあたりは欲しがるんじゃないですか?」
どこか他人事のような口ぶりで、イエリオさんは言う。フィジャの名前を出したのは、わたしが「イエリオさん『も』」と言ったからか、それとも、元よりフィジャの想いを知っているからか。
でも、わたしが聞きたいのは、そうじゃない。
「……イエリオさん、は?」
「どうでしょう……?」
イエリオさん自身のことなのに、何故か自信なさげに答えられた。
「獣人と人間の合いの子がどんなふうになるのか興味はありますが、そんな興味だけで作られた子は可哀そうでしょう?」
常識的なのかそうじゃないのか、よくわからないぶっ飛んだ言葉が返ってきた。至極まっとうなようで、可哀そうじゃなければ好奇心のままに子供をつくりそうな発言である。
普通に考えて、わたしに惚れてしまったフィジャは別としても、出会って間もない女と子供の話なんて確かに出来ないだろう。だから、別にこの返事も、おかしくはないけど。
こんなことを笑顔で言うイエリオさんが、ちょっとだけ怖かった。
「いや、十分です」
通された部屋は十畳は確実にありそうな部屋だった。この世界の部屋の広さを表すのに『畳』でいいのか分からないけど、体感的に。
ベッドとサイドテーブルだけが用意されていて、非常に物悲しいものを感じる。荷物が少ないのでたとえクローゼットがつかえなくてもこれで十分どころか、持て余すような広さだ。
「何か欲しい家具があれば言ってください。揃えますから」
「いや、特にはないけど……イエリオさんって、お金持ちなんですか?」
つい聞いてしまう。いや、こんな家に住んでいて、お金持ちじゃないなんてちょっと考えられないけど。
「私自身はそれほどでも。実家がそれなりに裕福なのでこのような家に住めているだけです」
聞くところによると、この家も譲り受けたものだとか。叔父にあたる人から貰ったらしい。
家を貰うって言葉の圧がもう凄い。そんなもの、ぽいと貰える物じゃない。
家を譲り受ける場合って、遺産くらいなものかと思っていたけれど、独り身を覚悟して買ったらその後結婚して手狭だからと新しく家を買うために貰ったのだとか。二度も家を建てられる財力よ……。
「もう少し広ければ、このまま皆で住んでもよかったんですけどねえ……」
「十分広くないですか……?」
「一部屋は広いですが、一人で住むことを想定している家なので、部屋数がないんですよ。それに、もし子供ができたらもっと部屋が必要になるでしょう?」
子供。まさかそんなワードを今聞くとは思わず、びしりと固まってしまう。脳裏にフィジャがよぎった。
「子供……イエリオさんも、子供、欲しいですか?」
わたしは意を決して、イエリオさんに聞く。全員と向き合って『家族』になるなら、皆がわたしと、どう関係を築きたいのかを聞くことから逃げてはいられない。
イエリオさんは、よっぽどヴィルフさんやイナリさんよりも聞きやすい……と、思う。
「フィジャあたりは欲しがるんじゃないですか?」
どこか他人事のような口ぶりで、イエリオさんは言う。フィジャの名前を出したのは、わたしが「イエリオさん『も』」と言ったからか、それとも、元よりフィジャの想いを知っているからか。
でも、わたしが聞きたいのは、そうじゃない。
「……イエリオさん、は?」
「どうでしょう……?」
イエリオさん自身のことなのに、何故か自信なさげに答えられた。
「獣人と人間の合いの子がどんなふうになるのか興味はありますが、そんな興味だけで作られた子は可哀そうでしょう?」
常識的なのかそうじゃないのか、よくわからないぶっ飛んだ言葉が返ってきた。至極まっとうなようで、可哀そうじゃなければ好奇心のままに子供をつくりそうな発言である。
普通に考えて、わたしに惚れてしまったフィジャは別としても、出会って間もない女と子供の話なんて確かに出来ないだろう。だから、別にこの返事も、おかしくはないけど。
こんなことを笑顔で言うイエリオさんが、ちょっとだけ怖かった。
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