転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
128 / 493
第三部

126

しおりを挟む
「マレーゼさん……」

 長々と前文明の話をするのが苦じゃない、というのがそんなに嬉しかったのだろうか。目がきらきらと輝いている。……嫌な予感がするぞ。

「で、でしたら是非、シーバイズ語を教えていただきたく! 流石にそこまでは迷惑かと思っていたのですが、嫌でないのならお願いします!」

「え、ええ、まあ、分かる範囲でなら……」

 知識欲に輝いた目で迫ってくるイエリオさんが近い。多分興奮して気が付いていないんだろう。圧が凄い、圧が。

「知ってる範囲、ですか? でも、貴方先日まで――」

「うわ、わ―――うわっ!? ぃでっ!」

 先日まで、の先は何を言い出すつもりだ。折角わたしが濁したのに。
 駄目だ、やっぱり駄目だ、わたしとイエリオさんは第三者(フィジャたちを除く)の目があるところで前文明の話をするべきじゃないな、これ。

 わたしは現代でどれだけの文化・文明が継承されているかのラインが曖昧になるし、イエリオさんは興奮して、わたしが過去の人間であることを隠しているのを忘れる。
 最悪の組み合わせだ、と思いながらとりあえず叫んで誤魔化そうとして――普通に悲鳴を上げた。そしてそのまま舌を噛んだ。

 思いっきり荷車が揺れたのである。

 ぼすん、とそのままイエリオさんに倒れ込んでしまうが、照れている場合ではない。一瞬にして、辺りに緊張感が走ったからである。
 周りを見渡せば、ヴィルフさんがいないし、御者のジグターさんも御者台から下りている。車を急停止させた上に、ヴィルフさんが飛び出たものだから、荷車がこんなにも揺れたのかもしれない。

 何があったのか、わたしには分からないが、周りの人は全員何かに気が付いている。……偽物の獣人の耳より、本物の獣人の耳の方が、聴力がずっと優れているからだろうか。わたしのこれは、あくまでも見かけだけなので。構造をもっと理解していればそう作ることも出来るには出来るのだが、今のわたしには無理な話で。

 とはいえ、場所が場所なので魔物が出たのかもしれない。
 でも、前回行ったときは、出会う魔物は中型犬サイズの魔物ばかりで、大きくても大型犬。そのどれもを、ヴィルフさんはさらっと切り倒していて。

 この辺りは弱い魔物しか出ない、とヴィルフさん自身が言っていたはずなのに、そんなに慌てて飛び出る程だろうか――と思っていると、わたしにの耳にもようやく届いた。

 ドシン、ドシン、と、明らかに大型犬サイズレベルのものではない、足音が。

 荷車には、布で屋根が作られているのだが、側面部は窓の様に開くようになっている。今は紐で結ばれて閉じられているが。
 その窓にあたる部分から、わたしは紐を解いて中から外を伺ってみる。

「な、なんですか、あれ」

 外には、ヴィルフさんが剣を抜いて構えていて。
 そのヴィルフさん越しに、馬鹿みたいにでかい、どことなくゾウに似た――でも、ゾウなんかとは比べ物にならないくらい大きな生物がいた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

異世界から来た華と守護する者

恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。 魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。 ps:異世界の穴シリーズです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

処理中です...