転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
164 / 493
第三部

162

しおりを挟む
「あれは他の街の冒険者が、一匹の魔物を保護したことがきっかけの事件でした」

 そう、イエリオは話始めた。
 この街では魔物を生きたまま城壁内に持ち込むことは禁止されているそうなのだが、別の街ではまた違うらしい。

 わたしはこの街以外の街には行ったことがないが、こっちに来たばかりのとき、探索〈サーチ〉でこの街を囲む城壁と繋がる、橋のような壁の先に繋がる別の城壁に囲まれた街のどれかのことだろう。

 その問題の冒険者の出身の街では、その街の近くに出る弱い魔物を家畜として扱うこともあるようで。この街の人間とは違い、『魔物を保護する』という考えがあるらしい。

 ――そして、それが問題だった、というのだ。

「当然、門番は中に魔物を入れることを良しとはしなかったので、車を引く魔物を住まわせる宿舎に置くことになったんです。ただ、その魔物は――子供だったんです」

 怪我をして弱った魔物を助けようと保護した。
 一見、美談にも聞こえる話だ。魔物を討伐する傍らで、家畜としたり、荷車を引かせたり、そういう風に使うこともあれば、弱って死にそうな魔物を見つけたら助けたくなることもあるのだろう。

 でも、子供の魔物ということは――親がいる、ということで。

「魔物の母親が、必死になって我が子を見つけた先に――怪我をした我が子を持つ、普段自分たちを討伐している獣人がいたら、どうなるか、想像に難くないでしょう?」

 子供を傷つけられた、これから殺されてしまう。そう思ってもおかしくない――いや、一見したら、そうとしか見えない状況だろう。
 話が通じる相手ですら、きっとそんな状況になったらパニックになって、獣人側を攻撃するだろう。言葉すら通じない魔物なら?

「不幸にも、冒険者は魔物を見誤ったんです。怪我をした子供は、ぺロディアではなくローヴォルの子で……ああ、ええと、ぺロディアは比較的おとなしい四つ足の魔物なんです。対してローヴァルは気性の荒い二足歩行の魔物でして……ただ、子供の頃は、ローヴォルも四足歩行で体が小さい個体だとぺロディアに似ているんです」

 軽く説明してくれたが、全然ピンとこない。紙に軽く描いて説明してくれたが……イエリオは別に絵が上手くなかった。下手、というわけではないものの……うーん、これは猫か犬がベースの魔物……なんだろうか?

 ただ、後者の魔物は強く、ぺロディアが下級の魔物に対して、ローヴォルは中級寄りの上級か、上級寄りの中級か、という区分になるらしい。
 幼少期の見た目はそっくりでも、強さは全然違うそうで。

「……母親は、辺りの獣人を皆殺しにする勢いで冒険者に襲いかかり、子供を奪って逃げていきました。ただ、その跡が酷く、門番も宿舎にいた冒険者もほとんどが死に、街を守る城壁にも穴が空いてしまい……」

 そして、魔物が自由に入れる状況が出来上がってしまった、という訳らしかった。
 その門の周辺には下級から弱い中級程度くらいしか生息していないが、それはあくまで戦える冒険者から見ての分類。一般の獣人からしたら、初心者の冒険者が狩るような弱い魔物でも命の危険を感じるという。

 後は魔物が入り込み、街を襲い……という状況になってしまったようだ。
 その結果、市民を守ろうとした警察――民間警護団の過半数が犠牲になった、というわけか。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

異世界から来た華と守護する者

恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。 魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。 ps:異世界の穴シリーズです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...