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第三部
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「あれは他の街の冒険者が、一匹の魔物を保護したことがきっかけの事件でした」
そう、イエリオは話始めた。
この街では魔物を生きたまま城壁内に持ち込むことは禁止されているそうなのだが、別の街ではまた違うらしい。
わたしはこの街以外の街には行ったことがないが、こっちに来たばかりのとき、探索〈サーチ〉でこの街を囲む城壁と繋がる、橋のような壁の先に繋がる別の城壁に囲まれた街のどれかのことだろう。
その問題の冒険者の出身の街では、その街の近くに出る弱い魔物を家畜として扱うこともあるようで。この街の人間とは違い、『魔物を保護する』という考えがあるらしい。
――そして、それが問題だった、というのだ。
「当然、門番は中に魔物を入れることを良しとはしなかったので、車を引く魔物を住まわせる宿舎に置くことになったんです。ただ、その魔物は――子供だったんです」
怪我をして弱った魔物を助けようと保護した。
一見、美談にも聞こえる話だ。魔物を討伐する傍らで、家畜としたり、荷車を引かせたり、そういう風に使うこともあれば、弱って死にそうな魔物を見つけたら助けたくなることもあるのだろう。
でも、子供の魔物ということは――親がいる、ということで。
「魔物の母親が、必死になって我が子を見つけた先に――怪我をした我が子を持つ、普段自分たちを討伐している獣人がいたら、どうなるか、想像に難くないでしょう?」
子供を傷つけられた、これから殺されてしまう。そう思ってもおかしくない――いや、一見したら、そうとしか見えない状況だろう。
話が通じる相手ですら、きっとそんな状況になったらパニックになって、獣人側を攻撃するだろう。言葉すら通じない魔物なら?
「不幸にも、冒険者は魔物を見誤ったんです。怪我をした子供は、ぺロディアではなくローヴォルの子で……ああ、ええと、ぺロディアは比較的おとなしい四つ足の魔物なんです。対してローヴァルは気性の荒い二足歩行の魔物でして……ただ、子供の頃は、ローヴォルも四足歩行で体が小さい個体だとぺロディアに似ているんです」
軽く説明してくれたが、全然ピンとこない。紙に軽く描いて説明してくれたが……イエリオは別に絵が上手くなかった。下手、というわけではないものの……うーん、これは猫か犬がベースの魔物……なんだろうか?
ただ、後者の魔物は強く、ぺロディアが下級の魔物に対して、ローヴォルは中級寄りの上級か、上級寄りの中級か、という区分になるらしい。
幼少期の見た目はそっくりでも、強さは全然違うそうで。
「……母親は、辺りの獣人を皆殺しにする勢いで冒険者に襲いかかり、子供を奪って逃げていきました。ただ、その跡が酷く、門番も宿舎にいた冒険者もほとんどが死に、街を守る城壁にも穴が空いてしまい……」
そして、魔物が自由に入れる状況が出来上がってしまった、という訳らしかった。
その門の周辺には下級から弱い中級程度くらいしか生息していないが、それはあくまで戦える冒険者から見ての分類。一般の獣人からしたら、初心者の冒険者が狩るような弱い魔物でも命の危険を感じるという。
後は魔物が入り込み、街を襲い……という状況になってしまったようだ。
その結果、市民を守ろうとした警察――民間警護団の過半数が犠牲になった、というわけか。
そう、イエリオは話始めた。
この街では魔物を生きたまま城壁内に持ち込むことは禁止されているそうなのだが、別の街ではまた違うらしい。
わたしはこの街以外の街には行ったことがないが、こっちに来たばかりのとき、探索〈サーチ〉でこの街を囲む城壁と繋がる、橋のような壁の先に繋がる別の城壁に囲まれた街のどれかのことだろう。
その問題の冒険者の出身の街では、その街の近くに出る弱い魔物を家畜として扱うこともあるようで。この街の人間とは違い、『魔物を保護する』という考えがあるらしい。
――そして、それが問題だった、というのだ。
「当然、門番は中に魔物を入れることを良しとはしなかったので、車を引く魔物を住まわせる宿舎に置くことになったんです。ただ、その魔物は――子供だったんです」
怪我をして弱った魔物を助けようと保護した。
一見、美談にも聞こえる話だ。魔物を討伐する傍らで、家畜としたり、荷車を引かせたり、そういう風に使うこともあれば、弱って死にそうな魔物を見つけたら助けたくなることもあるのだろう。
でも、子供の魔物ということは――親がいる、ということで。
「魔物の母親が、必死になって我が子を見つけた先に――怪我をした我が子を持つ、普段自分たちを討伐している獣人がいたら、どうなるか、想像に難くないでしょう?」
子供を傷つけられた、これから殺されてしまう。そう思ってもおかしくない――いや、一見したら、そうとしか見えない状況だろう。
話が通じる相手ですら、きっとそんな状況になったらパニックになって、獣人側を攻撃するだろう。言葉すら通じない魔物なら?
「不幸にも、冒険者は魔物を見誤ったんです。怪我をした子供は、ぺロディアではなくローヴォルの子で……ああ、ええと、ぺロディアは比較的おとなしい四つ足の魔物なんです。対してローヴァルは気性の荒い二足歩行の魔物でして……ただ、子供の頃は、ローヴォルも四足歩行で体が小さい個体だとぺロディアに似ているんです」
軽く説明してくれたが、全然ピンとこない。紙に軽く描いて説明してくれたが……イエリオは別に絵が上手くなかった。下手、というわけではないものの……うーん、これは猫か犬がベースの魔物……なんだろうか?
ただ、後者の魔物は強く、ぺロディアが下級の魔物に対して、ローヴォルは中級寄りの上級か、上級寄りの中級か、という区分になるらしい。
幼少期の見た目はそっくりでも、強さは全然違うそうで。
「……母親は、辺りの獣人を皆殺しにする勢いで冒険者に襲いかかり、子供を奪って逃げていきました。ただ、その跡が酷く、門番も宿舎にいた冒険者もほとんどが死に、街を守る城壁にも穴が空いてしまい……」
そして、魔物が自由に入れる状況が出来上がってしまった、という訳らしかった。
その門の周辺には下級から弱い中級程度くらいしか生息していないが、それはあくまで戦える冒険者から見ての分類。一般の獣人からしたら、初心者の冒険者が狩るような弱い魔物でも命の危険を感じるという。
後は魔物が入り込み、街を襲い……という状況になってしまったようだ。
その結果、市民を守ろうとした警察――民間警護団の過半数が犠牲になった、というわけか。
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