転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
194 / 493
第三部

192

しおりを挟む
 というか、きっと半年なんてあっという間だ。確かに、一緒に住んでいる今に比べたら、会っている時間は減るだろうが、たまには遊びに来るので、まったく会えなくなるわけじゃないし。
 イエリオの家に来てからも、結構フィジャのところへ遊びに行っているし。イナリさんとヴィルフさんに会いに行くのはハードルが高いので、一人では行ってないけど。

 働いているわけでもないし、新しく魔法を研究するだけの知識と資料があるわけでもないし、日々家事を済ませてしまうと暇なのだ。

「またイエリオが休みの日にでも遊びに来るよ」

「いや、むしろ仕事の日に、一緒に研究所へと来てほしいですね。また見てほしい資料がありまして……」

 ぽつぽつと、あれこれどんな資料か、さわりだけ教えてくれる。わたしは基本的に暇なので、知識を貸すのは構わないが、研究所の人間じゃない部外者なのに、気軽に行っても大丈夫なんだろうか。こう、機密情報とか、そういう。

 とはいえ、イエリオだって、流石にその辺の情報の選別くらいはしているだろう。……してる、よね? 真実知りたさにぽろっと言っちゃいけないこと言ってないよね?
 イエリオが非常識な人だと思ったことはないが、同時に前文明への好奇心と熱意がすごいことも知っているので、大丈夫と安心出来ないのがちょっと怖い。

「という感じで、今度研究所に来ていただきたく、都合のつく日を――」

 ――キンコーン……。

 イエリオの言葉をさえぎるように、チャイムの音が、家中に響いた。わたしとイエリオは、思わず顔を見合わせてしまった。
 基本的に在宅していることが珍しい(気が付くと研究所に寝泊まりするようになっているらしい。わたしがいるときは頻繁に帰って来てくれていたが、今後わたしがいなくなってもちゃんと帰宅して休んでほしいものだ)イエリオの家のチャイムがなることが珍しいのだ。

 わたしが一人で留守番をしている間は一度もなかったし、あまりにも家から出ることが多いため、イエリオを尋ねる際には一言声をかけるように、周りの人間はなったらしい。
 イエリオもきょとん、としているということは、彼もまた、誰かが来ると聞いていないのだろう。

「誰ですかねえ」

 イエリオが「少し出てきます」と部屋を出ていく。
 あんまり聞き耳を立てるのも悪いか、とわたしは荷物の整頓に戻ったのだが――どうも玄関が騒がしい。

 大丈夫かな、と思っていると、イエリオが戻ってくる。その後ろには、ヴィルフさんもいた。
 なんだ、ヴィルフさんが遊びに来たのか、と一応挨拶をしようとしたが。

「――お前、少し付き合え」

 ヴィルフさんが、わたしに有無を言わさず、決定事項を言うような声音だった。
 イエリオの手には、ヴィルフさんから渡されたのか、ひしゃげた眼鏡があった。多分、イエリオを担いで避難所である支部に向かっていたとき、落としてしまったあのときの眼鏡だろう。

「え、どこにです?」

 急な言葉に、わたしは思わず聞き返す。答えてくれるか不安だったが、彼はただ一言、「隣街へ」とだけ答えた。

 と、隣街……?
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

異世界から来た華と守護する者

恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。 魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。 ps:異世界の穴シリーズです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...