転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第四部

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 ふわふわと浮かれた頭では、あー今キスしちゃったなーとか、狼の口ってどこにキスしたら人間同士のキスと同じ判定になるんだろーとか、そんな場違いなことしか考えられない。
 閉じていた目を開くと、ウィルフさんの方は律義に目をぎゅっとつぶっていた。口ではぎゃんぎゃん言ってたくせに、こういうところは可愛いと思う。

 唇を離すと、ウィルフさんが食べていたステーキのソースが唇について、べたついていた。それをぺろっと舐める。おいしい。次来たときはわたしもそのステーキ頼もうかな。

 わたしが唇を離すと、ウィルフさんはごしごしと、わたしがキスをしたところをぬぐった。多分、人間だったら顔が真っ赤になっているかもしれない。ウィルフさんはふわふわの毛に包まれているから分からないけど。
 ちょっと目の色がいつもと違うように見えた。

「ふはっ、へんなかおー!」

 怒鳴るに怒鳴れない、といった表情を見せるウィルフさんを、けらけらとわたしは笑った。

「ほらあ、全然大丈夫でしょお? だからあ、次はちゃんとわたしも仲間にいれてねえ」

「っ、分かった、分かったから! いい加減手を離せ!」

 分かってもらえたようでなによりだ。当初の目的が果たせたので、わたしはパッと手を離す。うーん、掴んだところ、服がしわくちゃになっちゃった。
 直さなきゃ、とウィルフさんの首元に手をやるも、もう好きにしてくれ、ということなのか、呆れたような表情をしながらも、無抵抗だった。

「えへへー。あーでも、舌を入れるちゅーはあ、ちゃんと好きになってからでえ」

「き、聞いてねえ! そんなもんしなくていい!」

「えー、なん、っ、ふ、ぐ――……きもちわるい」

 ふわふわとした心地が、サーっと覚めるように、一気に胃がぐるぐるしてくる。そうか、わたし、酔っ払いなんだっけ。お酒、強いやつ飲んじゃったんだっけ。

 じゃあ、こんなに派手に動き回ったら駄目じゃない?

 そう考えても、もう遅くて。さっきまでの夢心地なふわふわ感はすっかり消え去って、吐きそう、という言葉が頭を埋め尽くす。
 わたしは口元を両手で押さえて、そのまましゃがみ込んだ。

「おい、待て待て、おい」

「ウィルフさんは、気持ち悪くないけど、わたしは、きもち、わる……」

 今ここで気持ち悪いなんて言ったら勘違いされるかなって、ウィルフさんはちゃんと気持ち悪くない、かっこいいよって、言おうと思ったのに、胃のむかつきが限界に近付いてきて、たいした言葉をかけることができない。

「――っ、わか、分かったから! おい、まて、ここで吐くな、せめてトイレに……!」

 目の前が、ちかちかして、もう、だめ、かも――。
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