ヒノキの棒と布の服

とめきち

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サラリーマンは生き残れるか?その四

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 冒険者ギルドの前はカフェになっているようで、ちらほらと冒険者らしい連中がたむろしている。
 太い木で組んだテーブルやイスが、歩道にはみ出しているが、これがマゼランのスタイルらしい。
 ギルドの建物には、バーカウンターがあって、飲み物や軽食を買って食べているようだ。

 座っているモノたちは、いずれもわりと若い。
 トシ食っていても四〇歳前くらいだろうか?酒やお茶を前にして、なんかダベってる。

 俺とチコが前を通っても、あまり気にした風もない。
 こっちもあまり気にしないことにした。
 ドアは開けっ放しになっているので、さっさと中に入る。
 正面にカウンターがあって、中と外を切り離している。
 カウンターまでは七~八メートル離れている。
 その間にもかんたんなイスとテーブルが並んでいて、二~三人がたむろしている状態だ。

 俺は地味なおっさんのいるカウンターに近寄った。
 テンプレの絡むようなやつもいなくて、正直ほっとしている。

「依頼かい?」
「いえ、登録したいんですけど。」
「登録にゃ銀貨一枚必要だよ、持ってるかい?」
「いや、持ってない。」
「そいじゃだめだ、出直してきな。」
「おじさん!このウサギを売りたいの。」
 横合いからチコが声をかける。
「なんだ、チグリスんとこのチコじゃねえか、知り合いか?」
「うん、この人ウサギとってきたんだけど、売れるかなあ?」

「あん?ウサギ?」
 おっさんは俺の下げているウサギを見た。
「ほう、でかいじゃないか、これなら銀貨二枚くらいかな?」
 俺は、勢いを付けて聞いた。
 売れるなら、早く売りたいぞ。
「買い取ってくれるのか?」
「ああいいよ、あっちの買い取りカウンターに持ってきてくれ。」
 俺はきっとうれしそうな顔をしたんだろうな、おっさんはにこりと笑った。
 俺とチコは、カウンターの右のはずれに向かった。
 そっちは、簡単な衝立で受付と分けてある。
 と言っても、本当に見分けはつかんのだけどな。アバウトだな。
「コステロ、こいつの目方を測ってくれ。」

 おっさんが、中のおっさんに声をかける、おっさん率高!

「あいよー、今日は暇だからなんでもやるぜ。」

 俺は黙ってカウンターにウサギを乗せた。」
「へ~、なかなかでかいなあ~、どれどれ?十一貫5百目かー、銀貨二枚と銅版二枚だな、売るかい?」
 俺は、チコを見た。チコは、大きくうなずいた。
「売るよ。」
「よっしゃ、ほれじゃこんだけな。」
 カウンターには、銀貨と銅版が置かれた。それを確認して受け取る。すぐに銅版一枚をチコに渡した。
「なに?」
「案内賃。」
「お駄賃くれるの?でも銅版一枚は多いよ。」
「それしか持ってない。」
 後で聞くと、銅貨一〇枚で銅版一枚になる。
 銅貨一枚で焼肉の串が買える。
 三〇〇円くらいか?
 肉串はけっこう大きいぞ。
 三本で腹が膨れる。
 銅版一枚は三〇〇〇円、それが一〇枚で銀貨一枚。
 つまり、銀貨一枚で三〇〇〇〇円か。

「本当にいいの?」
「いいさ、お近づきのしるしだ。」
 チコははにかんで笑った。
「ありがとう!大事に使うよ。」
「ああ、気にするなよ、これで登録もできそうだし。」
「おっとそうだった、登録しよう。名前は?」
「ユフラテ。」
「そうか、住処は決まってるのか?」
「いや…」
「そうか、まあ、チコンとこにしとくか。」
「おいおい、アバウトだな。」

「ああ、こんなの真面目に書いてくる奴のほうが珍しいんだよ。流れ者や食い詰めもいるからな、まあ、ギルドのキマリを守るならオーケーだ。」
「キマリ?」
「ギルドの中でもめ事を起こさない、人の獲物を横取りしない、人間を殺さない…ってとこか?」
「とこか?って聞かれても、おれは知らん。」
「わはは、まあ喧嘩スンナってことだ、ほれなくすなよ。これ魔法技術が使ってあるから一枚が高いんだぞ。銅版八枚するんだから。」
「へ~、そうなんだー。」
 チコも驚いている。
「銅版八枚の銅板か…」

 銅版は四角いコインだ。

「まあ、銀も混じってるから高いんだけどな。半分ミスリルみたいになってる。裏にある四角は、討伐カウンターになってるから何を獲ったかすぐわかる。ここで卸すとチェックが入るから。」
 王都のギルドで、『賢者の石』ってのを使って作るらしい。
 詳細は不明。

「へ~、売掛もわかるってか。」
「まあな、こっちの読み取り機を使うと、もっと正確な状態もわかる便利なもんだよ。」
「魔法あなどりがたし。」
「ぶち殺して、放置した奴はカウンター外に選り分けられる、討伐依頼のかかっている奴はその中に含まれない。」
 なんちゅうファジー機能だ。そのへんのパソコンよりかしこいぞ。
 ドライブレコーダーみたいなものか。
「じゃあ、もう二~三匹とって来よう。」
「うん、ウサギの肉はみんな喜ぶから歓迎だ。」
「わかった。」
「スライムに気をつけろ。」
「おう。」

 …いるんだ、スライム…

 俺はチコを連れてギルドを出た。
 六月の日差しはまだ強く、石畳はかなり熱くなっている。
 ギルドの庇は三メートルほど道にせり出していて、日差しも雨も防いでいる。
 カウンターからは、大きなサンシェードが道にせり出して陽をさえぎっている。

「チコ、宿屋はいくらするんだろう?」
「そうだねー、安いところで銅版二枚半ってところかな?ご飯は別だよ。」
「そうかー、ちょっと心もとないな。」
 手持ちは銀貨一枚と銅版一枚。すぐになくなりそうだ。

「やっぱウサギ取りに行く?」
「うん、行ってこよう。チコはどうする?」
「ウサギのいるところを案内してあげるよ。」
「いいのか?危ない奴だぞ。」
「平気でしょ、ユフラテは父ちゃんがいい腕だって言うくらいだから、安全だよ。」
「そういうもんかね?」
 二人はメインストリートを横切って、鍛冶屋外に移動した。
 
 こうして見ると広々としていいところだ。
 家の周りには木が生えていて、日陰を作っている。
 隣との間には植え込みがある。
 広い庭には、マキにする木がごろごろ転がっている。

 チコは家に入って、工房に声をかけた。
「とうちゃん!ギルドに行ってきたよ。」
「おうそうか、どっちのギルドだ?」
「冒険者。」
「よし、ウサギは売れたか?」
「売れた、いい値段だったよ。ユフラテは、これからウサギ取りに行くんだって、案内してくるよ。」
「そうか、気を付けて行けよ、森には入るなよ。」
「平気よ~。」

 チコは、からからと笑って作業場から出てきた。
「ユフラテ、武器は?」
「これ。」
 さっき拾ったヒノキの棒を見せた。

「これ?ただのヒノキの棒じゃん。」
「これで十分だ。」
「ちょっとまちなさいよー、いくらなんでも弱すぎるわよ。ウサギはまだしももっと強力なのがきたらヘチ折れるわよ。ちょっと待ってね。」
 なにやらごそごそとかき回している。
「あったー、これでどうかな?」
 出してきたのは錆びた剣。
「これはきついぞ、しかも短いし。」

「う~ん、困ったな。」
「ユフラテ、これ持って行け。」
 チグリスが工房から出してきたのは、長柄のハンマー。
 一メートルくらいの棒の先に直径五センチくらいの鉄のハンマーが付いている。
 ハンマーは円錐形で、先に向かって細めになって、表面は直径三センチ位の平らになってる。

「うわ~こんなメイスうちにあったんだー。」
「メイス?ハンマーじゃないのか?」
「ハンマーは仕事用、メイスは戦闘用、ちゃんと棲み分けしてるのよ。」
「へ~、そうなんだ、知らないことが多いなあ。」
 俺は軽く振り回してみた、重さも手ごろだ。
「お前は一撃でアタマカチ割ることができるからな、樫の棒でもいいんだが、オークでも出るとヤバい。それはやるよ、使いこなしてみろ。」
「わかった、ありがとう。」
 俺たちは、連れ立って鍛冶屋街を出た。
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