メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

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第二章『共存と滅亡の狭間で』

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 フレッドセンの命を狙っていた男は強力なパワードスーツを纏った二人からレーザーガンを突き付けられている状態にあったというのに動じる様子も見せなかった。それどころか反抗の意思を示すため無言で自らのカプセルを押してみせた。

 同時に白色の装甲を纏った悍ましい兜を被り、禍々しい鎧を纏った魔人へとその姿を変えていったのである。

 敢えて「騎士」ではなく「魔人」と評したのはあまりにもその外見が禍々しいものであったからである。

 男が身に纏っていた白色の装甲の胸板には虫の羽のように真っ白な毛で胸部を司るライン上に沿って縫われているのが見られた。背中には虫の羽を思わせる真っ白な宝石を思わせるようなツルツルとした空中移動用の羽根を生やしていた。

 スカラベと呼ばれる虫を意識して作られた『ロトワング』である。
 そのため他の人間やアンドロイドたちが身に纏う鎧とは異なり、どこかおどろおどろとした様子を彷彿とさせていた。

 同時にスカラベのように背中に生やした羽根を模した空中移動用の装置で狭いファミリーレストランの空間の中を飛び回ったかと思うと、そのまま修也の元へと急降下していった。

「させるものかッ!」

 修也は腰に下げていたレーザーガンを抜いて目の前から迫ってきたスカラベの型をした『ロトワング』を撃ち抜こうとしていた。

 だが、修也の放ったレーザー光線はスカラベの形をした兜の上を反り返っていき、天井を破壊するだけに留めたのだった。

 スカラベの型をした『ロトワング』の装着者はそのまま修也へと向かって勢いよくぶつかっていったのであった。
 修也は巻き込まれる形で転がされ、地面の上に倒されてしまう羽目になった。

 麗俐はすぐに父親を助けるために引き離しに向かったものの、そのまま回し蹴りを喰らってしまった。勢いのある蹴りを喰らった麗俐はファミリーレストランの机の上へと激突してしまう形になった。

 と、同時にその机の近くにいた男が立ち上がり、またしても懐からカプセルトイを取り出していった。
 どうやらこの男も自身と父親を狙う『賞金稼ぎバゥンディ・ハンター』の一員であるらしい。

 麗俐は慌てて拳を振り上げてカプセルトイで装甲を身に付けるのを阻止しようとしたが、麗俐が駆け付けるよりも先に男が例の真っ白な鎧を装着させてしまった。

 スカラベ型の『ロトワング』を装着した男とは対照的に男の鎧は鳥類を思わせるような羽毛でデザインされていた。

 だが、男が被っていた兜は明らかにフクロウをモチーフとしていた。巨大な目に鋭い短剣のような鋭利な嘴などから見て分かった。
 おまけに先ほどのスカラベの型をした『ロトワング』と同様に背中から翼まで生やしていた。用途としては同じく上空移動用、滑空用として用いるに違いなかった。

 だが、最大の特徴は他の『ロトワング』と異なり腰に他のアーマードスーツと異なり腰部分にはベルトが巻かれておらず、武器なども用意されていなかった。

 代わりに両手にはモチーフとなったフクロウに似せて作られた細かいビームソードもといビームナイフがフクロウの鉤爪のように五本並べて装備していた。

 フクロウ型の『ロトワング』を身に付けた男はそのまま目の前から飛び掛かってきたのだが、麗俐はそれを自らのビームソードで防いでいく。小型のビームソードもといビームナイフというのは細か過ぎて一本では対処するのが難しいのかもしれない。

 麗俐は兜の下でギリギリと歯を噛み締めていた。フェンシングで鍛えられているとはいえ、このまま攻撃を防ぎ続けるのはどうも難しそうだった。
 というのも自身の刃の上を細かなビームナイフが滑り、少しでも気を抜けばそれがビームソードの刃の上を滑り、自身の頭や体に向かって飛んできそうだったからだ。

 麗俐は兜の下でフクロウ型の『ロトワング』を装着した男を睨み付けていた。
 兜の下で睨んだとしても意味がないことなど知っていた。だが、自らの身を奮い立たせるためにもやらずにはいられなかったのだ。

 すると麗俐のそんな意思が伝わったのか、男がそれまで麗俐のビームソードとかち合わせていた自身のビームナイフを急に引っ込めてしまった。

(な、何が起こったの?)

 麗俐が目を丸くしていると、男は翼を使って狭い店の天井に上がっていった。
 そしてもう一度ビームナイフが生え揃った両手を前面に構えていき、麗俐の元へと勢いよく降下していった。

 弾丸のような速さで麗俐の元へと降りていったのである。

 恐ろしい勢いで迫られてくれば麗俐としても防ぎようがなかった。降下した際の勢いのある直撃に巻き込まれてしまい麗俐は防ぎ切れずにビームソードを抱えたまま地面の上を転がることになってしまった。

「キャア!」

 麗俐は耐え切れなくなって悲鳴を上げた。そのことは自身の弱さの象徴であることは間違いあるまい。

 だが、相手はか弱き乙女を思わせるような悲鳴を聞いても容赦することなく麗俐の元へと降りていき、その腹を勢いよく蹴り飛ばしていった。

 パワードスーツの装甲がある程度は衝撃を緩和してくれるとはいってもそれでもダメージを完全に防ぐことはできなかった。修也はスカラベの姿をした『ロトワング』の装着者を相手にしており自身を救援に来る余裕はなかった。

 他の客たちは論外だ。無力な一般大衆に何ができるというのだろうか。
 そのため今の麗俐にできることはひたすらに攻撃を耐え忍ぶより他に手段はなかった。

 そのためひたすら苛立ち紛れを兼ねた攻撃を受け、蹴られ続けていたものの、その最中に相手が蹴るための攻撃に夢中になり過ぎて転倒してしまったのを麗俐は見逃さなかった。

 慌てて麗俐は地面の上から起き上がり、武器をビームソードからレーザーガンへと作り変え、起き上がろうとする男に向かって容赦なく引き金を引き続けていった。

 装甲が熱線もしくはビーム光線と呼ばれる強い衝撃を受けたことによってけたたましい音が上がり、辺り一帯にビーム光線が直撃する際の鈍い音が鳴り響いていった。

 容赦のない銃撃は先ほどまで蹴られ続けていたことに対する報復も兼ねていたかもしれない。

 何はともあれ、これでこの装着車も終わりだろう。麗俐が勝ち誇ったような顔を浮かべていた時だ。
 突然男が自身の手にあったビームナイフを麗俐へと向かって放っていった。
 どうやら取り外しが可能な装備であったらしい。

 ビームナイフは右肩を微かに掠めた。麗俐は遊びはやめ、レーザーガンからビームソードへと武器を変化させていった。
 これで確実にトドメを刺すつもりだった。麗俐が右手でビームソードを構えた時だ。

 それまで一方的な攻撃を受け続けて劣勢を強いられていた男が五本のビームナイフが付いた両手を構えながら麗俐の元へと向かってきたのである。

 今度は武器を使って攻撃を防ぐという手段ではなく、敢えて攻撃を避けるという手段に出た。

 攻撃を直前で避けるのと同時にカウンターで男の右脇に向かって回し蹴りを喰らわせた。これであのスカラベ型の『ロトワング』を装着した男から受けた借りを返せたような気がした。

 麗俐は兜の下で愉悦に浸りながら回し蹴りを喰らった男が勢いのままに地面の上を滑っていく様子を見つめていた。その上で地面から起き上がるのに苦戦している様子が見受けられた。トドメを刺すのは今しかあるまい。

 麗俐はビームソードを構えて飛び上がると、地面の上で起き上がるのに苦戦している男に向かってビームソードを逆手に握り締めて降下していった。

 床が思った以上に滑ってしまうのか、男は未だに立ち上がるのに苦戦していた。このままの計算ならば確実に麗俐のビームソードが男の体を貫いたはずだった。

 だが、男は一歩のところで背中に生えていた滑空の機能を使って空の上へと飛び上がっていった。
 勢いよく翼を広げて飛んでいく姿は本物のフクロウのように見えた。

 男はそのまま麗俐に向かって急降下していった。いつでも命を狙えるのだという明確な意図のようなものが感じさせられた。
 呆然とした表情でフクロウを眺めている麗俐に向かって急降下していった。

 麗俐は首を横に振って意識を戻し、ビームソードを構えてフクロウの相手をしていくことになった。
 ここからが勝負である。麗俐は気を引き締めていった。
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