メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

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第一植民惑星『火星』

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 その後も人通りの絶えた往来を舞台にして修也とカリグラによる激しい打ち合いは続いていった。

 修也の握っていたビームソードが真上から振り下ろされていったかと思うと、それをカリグラの武器が上手く盾の代わりを果たし、逆にカリグラの腕に付いたノコギリが修也を襲うようなことがあれば修也のビームソードがそれを防いでいくというギリギリともいえる戦いが続いていた。

 修也のビームソードもカリグラの腕に付いたノコギリ(ここよりカリグラの武器を便宜上「腕ノコギリ」と呼称させてもらうことにしよう)とは接戦を繰り広げていった。

 武器を熱心に打ち合っていたこともあり、互いに疲労の度合いが増してきた時だ。ここぞとばかりに子供たちが助け舟を出した。

 悠介と麗俐はそれぞれ後方から支援目的でレーザーガンを使って遠距離からカリグラの頭と心臓を狙っていたのである。

 例えどんなに強い力を持つ生物であったとしても頭部と心臓を同時に狙われたとすれば生きていられる望みは薄いだろう。

 映画にしろドラマにしろ頭か心臓のどちらかは守りが薄いはずだった。

 だが、二人が見たのは目を疑うような光景であった。
 なんとカリグラの体全体を覆っていたスライム状の生物が二人のレーザー光線を吸収していったのである。

 ミキュミキュという音を立てて見事なまでにレーザー光線を吸収していく姿は驚くことしかできなかった。

「そ、そんなバカな!?」

 悠介が声を張り上げた時だ。報復目的のためカリグラが修也に対して執拗なまでに腕ノコギリを修也に向かって振り下ろしていく姿が見えた。

 カリグラの猛攻を前にして修也は思わず両足の膝を地面につける羽目になってしまった。
 ギリギリの状態にまで追い込まれてしまうことになった父親の姿を見て、限界を迎えたのか、麗俐たちが駆け付けようとしていた。

 それを見たカリグラはニヤリと笑うと、牽制のためか、迫ろうとする二人の前にスライムを飛ばしていった。

 二人の前に飛んでいったスライムはそのまま地面の上へと染み込んでいくはずだった。だが、事態は予想外の方向へと進んでいく羽目になった。

 地面の上に染み込む予定だったはずのスライムはなぜか溶けることなく、ギギュッと妙な音を立てたかと思うと、形を作り上げていった。やがてそれは二本足となり、両腕を作り上げたかと思うと、最終的には人間の顔を作り上げていった。

 そして作り上げられた顔は宿主であるカリグラの顔と瓜二つであった。
 飛び散ったはずのスライムは文字通りカリグラの分身体としてこの世に再誕することになったのだった。

「こ、この化け物めッ!」

 恐怖に駆られた悠介はビームソードを振り回しながらカリグラの分身体を真横から斬り伏せた。

 だが、斬り伏せたはずのカリグラの分身体は地面の上で虫のように動き回っていったかと思うと、そのまま地面の上で斬られる前のスライムと同化してまた同じ個体へと戻っていったのだった。

「ば、バカな!」

 悠介がその姿を見てたじろいでいた時のことだ。背後からジョウジのビームポインターから放たれた熱線が放射されてスライムを焼き尽くしていった。

「恐らく奴の弱点は熱です! レーザーガンよりもビームポインターやビームソードなどで対処してください!」

「で、でも、さっきオレはビームソードであいつを斬ったけど分身しちまったぞ!」

 悠介の突っ込みはもっともだった。
 それに対してジョウジは声を張り上げながら答えた。

「ビームソードを突き刺してください! 私の計算が正しければ突き刺した箇所から一気に温度が上がっていき、そのまま蒸発してしまうはずです!」

 ジョウジのアドバイスを受け、麗俐は自身の武器を組み換え、ビームソードへと変えていくと、そのまま目の前から腕ノコギリを振り回しながら向かってくる分身体へと突き刺していった。

 するとジョウジの計算通り、ビームソードの刃に込められた熱がスライムたちの体内で上がっていき、青だったはずの体が赤く染め上がっていく様子が見えた。
 それから小さな泡を立ててスライムの体が消えていった。

 こうして麗俐の目の前でスライムが蒸発して消えていったのだった。

「あぁ、やったのね」

 麗俐はヘナヘナと地面の上へと倒れ込みそになった。それを弟の悠介が優しく支えていった。

「大丈夫か? お姉ちゃん?」

「う、うん。ありがとう」

 麗俐は兜の下で困ったような笑みを浮かべていた。

「よしッ! このままこの調子であいつらを倒していこうぜ!」

「う、うん!」

 麗俐は覚悟を決めた。決意を決めたと言わんばかりにビームソードを持って互いに寄せ合いながら父親と熾烈な戦いを繰り広げていたカリグラの元へと駆けていった。

 カリグラはそれまで視線にも入れなかった二人が迫ってくるとは予想だにしなかったようだ。
 困惑した顔を浮かべていた。だが、すぐに自身の体からスライムを飛ばし、二人の目の前へと飛ばしていった。

 二人の目の前からは同じくカリグラの分身体が姿を見せていった。
 カリグラの分身体は本体と同様に腕からノコギリを生やしていき、そのまま二人に向かって斬りかかっていった。

 二人は迫ってきたノコギリの腕を自らのビームソードを盾にして防いでいった。
 二人はビームソードを振り下ろしながら背後にいる二人に向かって叫んでいった。

「頼む! 背後からビームポインターで援護してくれ!」

「分かりました」

 と、二人は首を縦に動かし、了承はしたものの、混戦状態になっているので敵を狙いにくいというのが本音だった。

 当初こそ二人が困惑した顔を浮かべていたものの、悠介と麗俐の両名が押されていっている姿を見て馬乗りになっていたスライムに向かって熱線を放射すればいいだけの話だった。

 スライムはあっという間に溶けていき、それによって二人の危機は脱することになった。
 スライムが消えていったのを見て、また二人はカリグラに向かって飛び掛かっていった。

 カリグラは眉間に深く皺を寄せながら襲い掛かる二人に向かってスライムを打ち放そうとしていた。

 だが、その前に修也がカリグラへと飛び掛かっていきスライムを飛ばすことを防いでのだった。
 そのまま修也が拳を振り下ろそうとした時だ。

「ま、待って! お願いッ! 顔だけは辞めて! 殴らないで!」

 と、媚びるような笑みを浮かべながら懇願を始めていったのだ。相手は怪物だ。性別など関係ないはずだ。

 だが、両目を潤ませながら懇願する姿を見て修也は躊躇いを覚えてしまった。
 振り下ろそうとした拳が顔の少し前で静止していった。あと数センチの距離でプルプルと拳を震わせている姿を見せた。

 それを見たカリグラはニヤリと笑う。そのまま修也の腹部を両足で蹴り飛ばし、地面の上へと転がしていった。

「フッ、あんな程度の命乞いで心を動かすなんてあんたも相当甘いねぇ。けど、あたしは容赦しない。ミダスでの仕事を邪魔された恨みはここで晴らさせてもらうよ」

 カリグラが発した言葉は英語だった。そのため修也には理解できなかったが、カリグラが地面の上に落ちていたビームライフルを拾い上げて再び構えていった。

 ビームライフルという強力な武器を持ったまま向かってくる姿を見ると思わず肝を冷やすことになった。心臓から爪の先までの全ての神経が寒気が訪れたかのように冷えていくのを感じた。

 自身の身に危機を感じたことは間違いではなかった。
 修也は自らの頭にビームライフルの銃口が突き付けられるのを頭で感じていった。ビームライフルを突き付けられている感触はどうしても慣れないものだ。

 修也が心の中で苦笑していると、カリグラの口元が「U」の字へと変わっていくのが見えた。

 笑う顔は本当に恐ろしかった。例えるのならば手にナイフを握り、化粧の代わりに返り血を浴びているようなピエロが笑っているかのような不気味な笑みであった。修也は半ば呆然した様子で自身の死を受け入れようとしていた。

 その時だ。背後からビームポインターによる熱線が打ち出されてカリグラから悲鳴を上げさせた。修也はここぞとばかりにカリグラの足元を薙ぎ払って転倒させていった。

 地面の上へと倒れ込んだカリグラの元から脱出し、修也はそのまま倒れているカリグラへと自身のビームソードを突き刺そうとしていた。

 だが、その前に麗俐がカリグラの元へと走っていき、その顔を殴るって強制的に父親の元から引き離すことによってその危機を救った。

「麗俐ッ!」

 背後から援軍らしきものが現れたのを見て修也は咄嗟に声を上げた。

「お父さんは逃げて! あたしがあいつを倒すからッ!」

 麗俐はカリグラを指差しながら言った。

「無茶だ。やめなさい。あいつの相手はお父さんに任せるんだ」

「嫌ッ! こいつはあたしが倒すんだからッ!」

「麗俐ッ!」

 修也がいつになく聞き分けの悪い娘を説教しようとしていた時だ。
 背後からそのカリグラがビームライフルを構えて二人を狙おうとしていた。

(二人揃って地獄に行きな……)

 カリグラがビームライフルの引き金を引こうとした時だ。麗俐が咄嗟に父親を真横の方向へと突き飛ばし、カリグラの両腕に向かってレーザーガンの引き金を引いた。

 カリグラ本人にはダメージが生じないものの、レーザー光線を直撃した際に受ける振動や衝撃は体にも伝わるものであるらしい。

 カリグラは悲鳴を上げながら尻餅をつき、ビームライフルを地面の上へと投げ飛ばしていった。

「お父さんッ! 早く戻ってッ!」

 麗俐の気迫に押されてか、修也は慌てて背後へと下がっていった。
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