メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

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水の惑星『カメーネ』

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 現在、ジョウジは深い後悔の念に苛まれていた。というのも、目の前に迫り来るコルテカ王国の軍隊を前にしてクレタリア王国の王女シーレを守り切れる自信がなかったからだ。

 もし、シーレを死なせるようなことがあれば今回どころか今後のクレタリア王国もとい惑星カメーネとの交易は不可能になってしまうことは明白だ。

 それでもシーレを今回の旅に連れて来ることになったのは悠介がしつこく頼み込んでこと、何よりも国王であるアリソスが命じたのだ。国王に命じられては逆らえるはずがない。

 アリソスによれば「若いうちに性質の異なる者と交わり、旅に出て見聞を深めよ」とのことであるが、その見聞を深める旅の中で死なれては困る。

 乗ってきた武装付きの七人乗りヘリコプターを破壊される前に仕舞い、見張りの兵士たちを倒したまでは順調であった。

 だが、それを近隣の住民に見られて噂を広められるという事態に陥り、それがたった一日でコルテカ王国の宮殿にまで伝わってしまうという確率的にいってあまり怒らないはずの出来事が起きてしまったことも大きかった。

 この不測の事態によってコルテカ王国から軍隊を差し向けられる羽目になってしまったのだ。

 正確なルートを辿って旧式の装備を纏った軍隊ではなぬ、地球の軍隊のような最新式の武器を持った兵士たちが来たのだ。

 しかもその先頭には前回の貿易で出会ったかつてのクレタリア王国の王子、ペトアがいたのだ。その横にはニヤニヤと意地の悪い顔を浮かべた地球人の顔が見えた。

 顔付きは西洋系。いわゆるアングロ・サクソンである。古代のギリシャを思わせるような星にアングロ・サクソンは珍しかった。ジョウジがその理由を考えながら先端を見つめていると、ペトアと共に軍隊の先端にいたそのアングロ・サクソンの男がカプセルを取り出し、パワードスーツを纏った。

 特製のパワードスーツを装着したことによって、なんてことはない男が樹木の幹を思わせるような深い茶色の装甲を纏った戦士へと変わっていった。
 頭部は同じくアルマジロの頭をモチーフにして作られたと思われる兜で覆われていた。かろうじて目だけが見えている点が不気味に思えた。

 そして、その隣でペトアが同じようにカプセルを取り出して異形の戦士へと姿を変えていった。地球上に実際に存在するアルマジロを身に纏ったアングロ・サクソンの男とは対照的にペトアが姿を変えたのは架空の生き物であるドラゴンを彷彿とさせるような見た目をしていた。

 全身を覆うパワードスーツの上には狼を思わせるような哺乳類を思わせる体毛が生えていたし、背中部分には蝙蝠の翼に見立てたジェットエンジン付きの翼が搭載されていた。

 ご丁寧なことに臀部には尻尾まで生えていた。もっとも人工的な尻尾であり、生き物の尻尾とは程遠い無機質で味のない短い尻尾であった。これで腰にはビームソードが下げられているのだからそのアンバランスなデザインには苦笑を隠せない。

 だが、一番恐ろしさを感じたのはペトアの頭部を守る兜である。哺乳類を思わせるような独特のデザインをしている上、口を守る部分は嘴のようになっている。

 その独特なデザインを見て思わず引き気味となったジョウジであったが、足を後ろに下げたのを好機と捉えたのだろう。
 ペトアは背中についた翼を使って地面から空中へと飛び上がり、上空からジョウジの命を狙ってきた。

 ペトアは怪物のような不気味なパワードスーツのままジョウジを叩きのめそうとしたのだ。
 ジョウジは慌てて地面の上を転がり、難を逃れた。だが、すぐにペトアは第二撃を与えようともう一度空中へと飛び上がろうとした。

 それに対して攻撃を与えたのは敵の待ち伏せに気付き、慌ててパワードスーツを身に纏った修也であった。

 修也は腰に下げていたレーザーガンで空中にいたペトアに向かって引き金を引いていった。寸前のところでペトアは体を逸らし、レーザー光線を回避したものの、王子である自分に対して攻撃を与えようとした修也に対し、心の内で怒りの炎を燃やすことになった。
 この時ペトアの標的は明確に「ジョウジ」から「修也」へと変わった。

 空中から真下に向かって勢いよく降下し、その勢いで修也を葬ろうとせんとしていた。
 しかし修也はあくまでも冷静に降下してくるペトアの突進を見極め、その脇腹に向かって強烈な回し蹴りを喰らわせた。

 ペトアは悲鳴を上げて地面の上を転がっていく。それから兜の下から微かに覗かせる視線で修也を睨んだ後にビームソードを抜いて修也に向かって斬りかかっていった。

 修也は目の前から迫り来るペトアを同じようにビームソードで迎え撃った。
 ビームソードでの斬り合いは苛烈を極めている。あの二人の間に割って入れば巻き込まれて悲惨な目に遭うことは分かっている。

 ジョウジが辺りを見渡していると、『ゼノン』の装甲を纏った悠介と『エンプレスト』の装甲を纏った麗俐が兵士たちを殴り倒している姿やシーレが弓矢で兵士たちを射殺している姿が見られた。

 その他にも自分と同じアンドロイドであるカエデが護身用のビームポインターを使ってビームライフルやブラスターを構えた兵士たちを焼いている。

 どうやら自分の役割はカエデたちを助けることにあるに違いない。
 ジョウジが慌てて救援に駆け付けようとした時だ。それまで沈黙を保っていたはずの地球人の男が突如、ジョウジの前へと降り立ったのだった。

「おっと、邪魔はさせんぞ。このロボット野郎」

 アルマジロのようなデザインをしたパワードスーツを着た男は流暢なフランス語で言った。どうやら男の正体はフランス人であるらしい。
 もちろんジョウジはこの男の詳細を知らない。ジャック・フネという名があるが、データにはないので知る由もない。
 ジャックは怪訝な顔を浮かべるジョウジを放って話を続けていった。

「我が社はこの計画に一年の時間と莫大なフランを注ぎ込んだ。それを邪魔させるわけにはいかねぇな」

「…… まさか、あなたはフランスのヴィシー財閥の方では?」

「だったらどうだってんだ?」

 フランス人と思われる男は舌を打った後でジョウジを勢いよく蹴り飛ばしたのだった。

 ジョウジは地面の上を転がり、突っ伏してしまう羽目になった。
 フランス人の男は大の字になったジョウジの頭を踏み付けながらニヤニヤと笑いながら言った。

「まぁ、テメェらのことは知らねえが、ここで消すのが正解ってもんよ。異星での死なら警察も調べにくいだろうからな」

 フランス人の男に頭を足で踏まれる中でジョウジはここ最近のニュースを思い起こしていった。そしてフランスのとある財閥で大量の使途不明金が見つかったというニュースを思い出したのだ。

 この使途不明金について会長は惚けてはいるが、もしかすれば惑星カメーネを掌握するための下準備のための資金だったのではないだろうか。
 それで惑星カメーネの一国家の後ろ盾となり、地球よりも文明が劣るカメーネそのものを手に入れるという計画を立てたに違いなかった。

 地球の法に反した行為だ。こんなことが許されていいはずがない。
 ジョウジはフランス人の男を強く睨み付けながら吐き出すように言った。

「……100年以上前、同じくフランスの国家が同じ地球のアフリカにある国を裏から支配しようとした計画がありました。自分たちの息が掛かった人物を大統領の地位に就けてね」

「なんだと思ったらその話か? その話なら知ってるよ。授業で耳にタコが出るほど聞いたからな」

「なら、あなた方も手を引きなさい。このことが地球の管理委員会にバレればあなた方のバックもーー」

 ジョウジは説得を続けようとしたものの、それは先ほどよりも強い力で足を踏まれてしまったことによって失敗に終わってしまうことになった。
 悔しげに地面の上で両手をバタつかせるジョウジとは対照的にジャックは大きな笑い声を上げて返した。

「確かに、100年以上前の例のなんとか財閥は国連の手によって失敗したが、オレたちは違うぞ。ここは他の惑星。国連なんぞは手足も出ねぇんだよ。あとはテメェらの口を封じるだけだ」

 ジャックが爪を模したような凶悪な武器をジョウジに向かって突き刺そうとした時だ。
 男の足元にレーザー光線が照射された。

 照準が外れていたのは不幸中の幸いというべきだろう。ジャックが周囲を見渡すと、そこには『ゼノン』の装甲を纏い、右手にレーザーガンを握り締めた悠介の姿が見えた。
 どうやら異変に気が付いて救援に駆け付けたらしい。

「ジョウジさんから手を離せッ!」

 悠介は威嚇のため声を荒げて言った。だが、その言葉の端が微かに震えていたことをジャックは聞き逃さなかった。

「フン、生意気なクソガキプチコンが……少し痛め付けて分からせてやるか」

 ジャックは兜の下でニヤリと笑いながら悠介の元へと向かっていった。
 男の言葉通り男は自身の圧倒的な力と優れたフランス製のパワードスーツを用いてあっという間に悠介を追い詰めていった。

 この時、ジョウジもカエデも麗俐も他の兵士たちの対処に夢中で悠介を助けられなかった。

 万事休すかというところまで来たところで窮地を救ったのは一本の矢だった。
 そう王女シーレの矢が悠介の命を救ったのだった。

 怒りで我を忘れてシーレの元へと突っ込んでいこうとする男の背後にユウスケもは躊躇うこともなく男の股間部を蹴り上げた。
 不意を突かれた男は悲鳴を上げながら地面の上を悶絶したのだった。

 その隙を逃すことなく悠介はレーザーガンの引き金を引いて、男のパワードスーツにヒビを入れたのだった。

 男はまさかと言わんばかりに兜の下で大きく両目を見開いた。
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