147 / 237
人と異形とが争いを繰り広げる惑星『ボーガー』
6
しおりを挟む
絶望的とまでは言わないまでも厳しい条件を突きつけられたことによって、小屋の片隅で打ちひしがれることになった少女の前に突然現れた中年男性の存在は予想よりも大きかったらしい。箒で散らばった羽を小屋の外へと押し出そうとしていた彼女は悲鳴を上げかけていた。
咄嗟に彼女の口を塞ぎ、弁明の言葉を口に出したのはジョウジだった。
「申し訳ありません。お嬢さん……驚かせるつもりはなかったんです。ただ、あなたの上司? いいえ、ご友人の公主殿下がこちらへ向かう姿を目撃いたしまして、そのことが気になって後をつけたらその、あなたと公主殿下の争いを目撃致しまして」
どうやら彼女は修也とジョウジがここに居た理由を理解してくれたようだ。とりあえず、落ち着いたらしい。ゆっくりと強張っていた肩の力を抜いていく。
リラックスを終えたと思うと、先ほどとは対照的にゆっくりとした口調でジョウジに向かって問い掛けた。
「わかったわ。それよりもどうしてあなた方は私の手伝いをしてくださるの?あなたたちは宇宙から来たお客人、いうなれば来賓の方々よ。それに対して私は単なる鳥小屋の番人……普通なら構わないと思うんだけれども」
相手が異星人であるということもあって、警戒心も働いたのか、どこかつっけどんな態度で言い放った彼女の言葉をジョウジの通訳によって知ることになった修也は困ったような顔を浮かべながらジョウジに向かって耳打ちしていった。
「これから私のいう言葉を一字一句丁寧にとは言うつもりはありませんが、なるべく正確に訳していただければ幸いです」
修也の要請に対してジョウジは黙って首を縦に動かす。それから修也は自分がどういった理由で彼女を助けに訪れたのかを説明していった。
ジョウジの通訳によってその意味を知った少女はくすぐられたような笑みをこぼした。
というのも、彼女のこれまでの人生において責任ある大人というものに助けられたことがなかったからだ。
彼女にとって大人特に『大人の男』という存在は恐怖の象徴でしかなかった。
思い出すのは今よりも幼き頃、彼女にとって最初に遭遇した大人の男というのは兄や自分に対して酷い暴力を振るう『父親』という存在だった。
酒が切れた、仕事がうまくいかない、そんなくだらない理由で父は自分や兄に対して暴力を振るった。吐き出すような暴力と片付けのされていない散らかった部屋に、食事も碌に取ることができない荒みに荒んだ生活。思いを馳せなくてもはっきりと覚えている。あの頃は地獄だった。庇ってくれるべき母親は産まれてすぐに流行病でこの世を去っているので、庇ってくれるのは兄だけだった。
それでも昼間は兄が働きに出ているので、彼女は暴力の雨に振られていた。
そんな恐ろしい父の元から自分を連れて逃してくれたのは肝心の兄だった。常日頃から自分の不在時に殴られていたことに対して日頃から憤りを感じていた兄の奉天はある日酒を飲んで泥のように眠りこけている父親の心臓を貫き、浅い眠りについていた自分を起こして村から逃げ出したのだった。
その後に兄妹を待ち構えていたのは極貧ともいえる放浪生活だった。宿もなければまともな服もない。その日に食べ物を買うだけで精一杯だという極貧の中でまた、大人の男が彼女に牙を剥いた。
ある日、彼女は兄の不在時に大人の男たちから「手っ取り早く儲けることができる仕事がある」と誘い出されて小さな宿屋の中で春を売らされそうになった。
この時彼女は無理やり迫ってきた客に噛み付き、痛がっている間に逃げ出すことに成功したのだった。
近隣にあった小さな飯屋の中へ裏口を伝って逃げ込み、ひたすらに兄が迎えに来るのを震えながら待つだけの日々は地獄であった。
とうとう男たちは彼女が逃げ込んだ飯屋に目を付け、怒鳴り込んで店主を脅迫するのと同時に無理やり少女を引き摺り出し、連れ出そうとした。
しかしこの時幸いであったのは兄である奉天が戻ってきたことだった。両頬に泥を付けた状態で奉天は壁の上に飾れられていた直槍を握り締めると、屈強で、それでいて中には青龍刀を握り締めた者さえいたというのに、傷一つ負うことなく自身を害そうとした男たちを一気に討ち取ったのだった。
その事件がきっかけとなって奉天は軍人として召し出され、反乱者や隣国、そして蛮族と人々が忌み嫌う知性のない猿たちとの戦闘において武勇を発揮していき、将軍としての地位を手に入れたのだった。
兄の出世の裏で彼女も鳥の世話能力を買われて幼いながらも鳥小屋の番人に任じられたのだった。
しかし兄の蛮勇を妬む大人たちから嫌がらせも受けた。
それも大人の男たちからだ。こうした理由で彼女は大人特に男の存在を苦手としていたが、目の前にいる二人は『大人の男』でありながら自分を助けてくれようとしている。
にわかには信じ難いような出来事であったが、今も自分の隣で鳥の羽を箒で払っている様子から察するに本当に下心も何もなしで手伝ってくれているに違いなかった。
二人の大人が手伝ってくれたということもあって自分一人で行うよりも早い時間で終わらせることができた。
まだ月は高く登っている。今夜は寝台の上で眠れそうだ。満足そうに笑っている二人の大人に向かって彼女は丁寧に頭を下げて言った。
「あの、手伝っていただいて本当にありがとうございました。あなた様のおかげで私は今日、ベッドの上で寝ることができます」
「礼には及ばないよ。私たちはやりたくてやっただけだからね」
修也は優しい口調で安心させるように言った。そして修也の言葉を聞いて安心した顔を浮かべた少女を放って、そのまま二人で鳥小屋を後にしていった。
鳥小屋を抜け、宿舎の方に戻ると、ジョウジは一気に緊張が襲ってきたのか、全身に疲労感のようなものが生じていき、そのまま腰を地面の上に落としていった。
「ジョウジさん、無事に終わったとはいえ、この一件が皇帝にバレたら大変なことになりますよ。私たちは大目玉です」
「そうぼやかないでくださいよ。お陰で善行を積むことができたんですから」
修也は苦笑しながら言った。その清々しいまでの顔からは後悔など見えない。やるべきことをやり遂げた男の顔が見えた。
ボランティアをやり遂げた中年の男性を見たジョウジは苦笑しつつ、そのまま静かに両目を閉じていく。どうやら疲労が一気に襲い掛かってきたらしい。
仕方がないので修也はジョウジを両手に抱えて寝台の上へと運び、責任をとって自身は寝台に背中を預けて眠ることに決めた。
翌日鼻腔へ漂ってきた美味しそうな匂いで修也は目を覚ました。
ゆっくりと目を開いていくと、目の前には朝に相応しい豪勢な中華料理がお膳の上に並べられていた。
中国式の揚げパンや豆乳、そして小籠包やワンタンといった点心が所狭しとばかりに並んでいた。夕食よりは簡素なメニューであったが、簡素であっても食べやすいメニューは胃が完全に目覚めきっていない朝にはちょうどよかった。
修也はゆっくりと朝食を食し、ジョウジとと共に重い腰を上げて他の面々がいる部屋へと向かっていく。
宮殿の外で実演販売を行うためだ。地球から持ってきた風船やら何やらを試していた時のことだ。
修也たちの元に一羽の鷹が迷い込んできた。迷い込んできた鷹はせっかく悠介が
膨らませた風船を破壊し、麗俐の髪のセットを乱し、修也の頭上を旋回してけたたましく鳴いていた。
「くそッ、なんなんだよ。あの鷹はッ!」
「本当ッ! あいつのせいであたしの髪が台無しじゃあない!」
子どもたちは憤りを隠し切れなかったらしい。今にもカプセルを使ってパワードスーツを身に付けて鷹を叩き落とそうとしていた。
だが、修也はこの鷹が何者であるのかを知っていた。鋭い両目に立派な羽毛を生やした翼、そして引き絞った素晴らしい肉体。どれをとっても昨日に遭遇した劉尊そのものだ。
劉尊はしばらく頭上で鳴いていたかと思うと、そのままゆっくりと地面の上へと降りていった。
そしてあろうことか修也が咄嗟に差し出した掌の上で体を休めていったのである。
「劉尊、お前どうしてこんなところに?」
この星の言葉が分からない修也の問い掛けは日本語である。それに加えて修也は人間だ。種族が異なることもあって言葉など通じるはずがなかったのだが、劉尊はまるで返答するかのように嘴を大きく開いて声を上げた。
修也がすっかりと困惑した顔を浮かべていると、修也たちを見つめていた見物人たちをかき分けて二人の少女が姿を見せた。
その正体は紅晶公主と鳥小屋の番人である例の少女だった。二人とも身分が分からないように庶民用の服を身に纏っていることもあって、人々は少女たちの状態に気が付いていないようだ。
修也がそんなことを考えていると、紅晶が修也の掌の上に停まっている劉尊に向かって手を伸ばした。
「ほら、劉尊おいで、私は敵ではないのよ。あなたの味方なの。お願い、信じて」
だが、劉尊はそっぽを向いた。それから劉尊はなにも言わずにジッと修也を睨み付けるかのように見つめていたのだった。
そんな状況であったとしても紅晶はなおも劉尊を手なづけようとしていたが、劉尊はそのことを煩わしく感じたのだろう。
必死に手を伸ばしている紅晶を放って青空の上へと吸い込まれっていった。
「あぁ、なんてことなの」
紅晶は両膝を崩して打ちひしがれたような表情を浮かべていた。
「こ……紅晶」
彼女が公主を呼び捨てにしているのはあくまでもお忍び状態であったからだろう。
修也はそんな哀れな姿をした紅晶になんと声をかけたらよいのか分からずにオロオロとしていた時だ。
紅晶が強引に修也の手を掴んで路地裏へと引っ張っていったのだ。
他の面々が止める暇もない、一瞬の出来事であった。
咄嗟に彼女の口を塞ぎ、弁明の言葉を口に出したのはジョウジだった。
「申し訳ありません。お嬢さん……驚かせるつもりはなかったんです。ただ、あなたの上司? いいえ、ご友人の公主殿下がこちらへ向かう姿を目撃いたしまして、そのことが気になって後をつけたらその、あなたと公主殿下の争いを目撃致しまして」
どうやら彼女は修也とジョウジがここに居た理由を理解してくれたようだ。とりあえず、落ち着いたらしい。ゆっくりと強張っていた肩の力を抜いていく。
リラックスを終えたと思うと、先ほどとは対照的にゆっくりとした口調でジョウジに向かって問い掛けた。
「わかったわ。それよりもどうしてあなた方は私の手伝いをしてくださるの?あなたたちは宇宙から来たお客人、いうなれば来賓の方々よ。それに対して私は単なる鳥小屋の番人……普通なら構わないと思うんだけれども」
相手が異星人であるということもあって、警戒心も働いたのか、どこかつっけどんな態度で言い放った彼女の言葉をジョウジの通訳によって知ることになった修也は困ったような顔を浮かべながらジョウジに向かって耳打ちしていった。
「これから私のいう言葉を一字一句丁寧にとは言うつもりはありませんが、なるべく正確に訳していただければ幸いです」
修也の要請に対してジョウジは黙って首を縦に動かす。それから修也は自分がどういった理由で彼女を助けに訪れたのかを説明していった。
ジョウジの通訳によってその意味を知った少女はくすぐられたような笑みをこぼした。
というのも、彼女のこれまでの人生において責任ある大人というものに助けられたことがなかったからだ。
彼女にとって大人特に『大人の男』という存在は恐怖の象徴でしかなかった。
思い出すのは今よりも幼き頃、彼女にとって最初に遭遇した大人の男というのは兄や自分に対して酷い暴力を振るう『父親』という存在だった。
酒が切れた、仕事がうまくいかない、そんなくだらない理由で父は自分や兄に対して暴力を振るった。吐き出すような暴力と片付けのされていない散らかった部屋に、食事も碌に取ることができない荒みに荒んだ生活。思いを馳せなくてもはっきりと覚えている。あの頃は地獄だった。庇ってくれるべき母親は産まれてすぐに流行病でこの世を去っているので、庇ってくれるのは兄だけだった。
それでも昼間は兄が働きに出ているので、彼女は暴力の雨に振られていた。
そんな恐ろしい父の元から自分を連れて逃してくれたのは肝心の兄だった。常日頃から自分の不在時に殴られていたことに対して日頃から憤りを感じていた兄の奉天はある日酒を飲んで泥のように眠りこけている父親の心臓を貫き、浅い眠りについていた自分を起こして村から逃げ出したのだった。
その後に兄妹を待ち構えていたのは極貧ともいえる放浪生活だった。宿もなければまともな服もない。その日に食べ物を買うだけで精一杯だという極貧の中でまた、大人の男が彼女に牙を剥いた。
ある日、彼女は兄の不在時に大人の男たちから「手っ取り早く儲けることができる仕事がある」と誘い出されて小さな宿屋の中で春を売らされそうになった。
この時彼女は無理やり迫ってきた客に噛み付き、痛がっている間に逃げ出すことに成功したのだった。
近隣にあった小さな飯屋の中へ裏口を伝って逃げ込み、ひたすらに兄が迎えに来るのを震えながら待つだけの日々は地獄であった。
とうとう男たちは彼女が逃げ込んだ飯屋に目を付け、怒鳴り込んで店主を脅迫するのと同時に無理やり少女を引き摺り出し、連れ出そうとした。
しかしこの時幸いであったのは兄である奉天が戻ってきたことだった。両頬に泥を付けた状態で奉天は壁の上に飾れられていた直槍を握り締めると、屈強で、それでいて中には青龍刀を握り締めた者さえいたというのに、傷一つ負うことなく自身を害そうとした男たちを一気に討ち取ったのだった。
その事件がきっかけとなって奉天は軍人として召し出され、反乱者や隣国、そして蛮族と人々が忌み嫌う知性のない猿たちとの戦闘において武勇を発揮していき、将軍としての地位を手に入れたのだった。
兄の出世の裏で彼女も鳥の世話能力を買われて幼いながらも鳥小屋の番人に任じられたのだった。
しかし兄の蛮勇を妬む大人たちから嫌がらせも受けた。
それも大人の男たちからだ。こうした理由で彼女は大人特に男の存在を苦手としていたが、目の前にいる二人は『大人の男』でありながら自分を助けてくれようとしている。
にわかには信じ難いような出来事であったが、今も自分の隣で鳥の羽を箒で払っている様子から察するに本当に下心も何もなしで手伝ってくれているに違いなかった。
二人の大人が手伝ってくれたということもあって自分一人で行うよりも早い時間で終わらせることができた。
まだ月は高く登っている。今夜は寝台の上で眠れそうだ。満足そうに笑っている二人の大人に向かって彼女は丁寧に頭を下げて言った。
「あの、手伝っていただいて本当にありがとうございました。あなた様のおかげで私は今日、ベッドの上で寝ることができます」
「礼には及ばないよ。私たちはやりたくてやっただけだからね」
修也は優しい口調で安心させるように言った。そして修也の言葉を聞いて安心した顔を浮かべた少女を放って、そのまま二人で鳥小屋を後にしていった。
鳥小屋を抜け、宿舎の方に戻ると、ジョウジは一気に緊張が襲ってきたのか、全身に疲労感のようなものが生じていき、そのまま腰を地面の上に落としていった。
「ジョウジさん、無事に終わったとはいえ、この一件が皇帝にバレたら大変なことになりますよ。私たちは大目玉です」
「そうぼやかないでくださいよ。お陰で善行を積むことができたんですから」
修也は苦笑しながら言った。その清々しいまでの顔からは後悔など見えない。やるべきことをやり遂げた男の顔が見えた。
ボランティアをやり遂げた中年の男性を見たジョウジは苦笑しつつ、そのまま静かに両目を閉じていく。どうやら疲労が一気に襲い掛かってきたらしい。
仕方がないので修也はジョウジを両手に抱えて寝台の上へと運び、責任をとって自身は寝台に背中を預けて眠ることに決めた。
翌日鼻腔へ漂ってきた美味しそうな匂いで修也は目を覚ました。
ゆっくりと目を開いていくと、目の前には朝に相応しい豪勢な中華料理がお膳の上に並べられていた。
中国式の揚げパンや豆乳、そして小籠包やワンタンといった点心が所狭しとばかりに並んでいた。夕食よりは簡素なメニューであったが、簡素であっても食べやすいメニューは胃が完全に目覚めきっていない朝にはちょうどよかった。
修也はゆっくりと朝食を食し、ジョウジとと共に重い腰を上げて他の面々がいる部屋へと向かっていく。
宮殿の外で実演販売を行うためだ。地球から持ってきた風船やら何やらを試していた時のことだ。
修也たちの元に一羽の鷹が迷い込んできた。迷い込んできた鷹はせっかく悠介が
膨らませた風船を破壊し、麗俐の髪のセットを乱し、修也の頭上を旋回してけたたましく鳴いていた。
「くそッ、なんなんだよ。あの鷹はッ!」
「本当ッ! あいつのせいであたしの髪が台無しじゃあない!」
子どもたちは憤りを隠し切れなかったらしい。今にもカプセルを使ってパワードスーツを身に付けて鷹を叩き落とそうとしていた。
だが、修也はこの鷹が何者であるのかを知っていた。鋭い両目に立派な羽毛を生やした翼、そして引き絞った素晴らしい肉体。どれをとっても昨日に遭遇した劉尊そのものだ。
劉尊はしばらく頭上で鳴いていたかと思うと、そのままゆっくりと地面の上へと降りていった。
そしてあろうことか修也が咄嗟に差し出した掌の上で体を休めていったのである。
「劉尊、お前どうしてこんなところに?」
この星の言葉が分からない修也の問い掛けは日本語である。それに加えて修也は人間だ。種族が異なることもあって言葉など通じるはずがなかったのだが、劉尊はまるで返答するかのように嘴を大きく開いて声を上げた。
修也がすっかりと困惑した顔を浮かべていると、修也たちを見つめていた見物人たちをかき分けて二人の少女が姿を見せた。
その正体は紅晶公主と鳥小屋の番人である例の少女だった。二人とも身分が分からないように庶民用の服を身に纏っていることもあって、人々は少女たちの状態に気が付いていないようだ。
修也がそんなことを考えていると、紅晶が修也の掌の上に停まっている劉尊に向かって手を伸ばした。
「ほら、劉尊おいで、私は敵ではないのよ。あなたの味方なの。お願い、信じて」
だが、劉尊はそっぽを向いた。それから劉尊はなにも言わずにジッと修也を睨み付けるかのように見つめていたのだった。
そんな状況であったとしても紅晶はなおも劉尊を手なづけようとしていたが、劉尊はそのことを煩わしく感じたのだろう。
必死に手を伸ばしている紅晶を放って青空の上へと吸い込まれっていった。
「あぁ、なんてことなの」
紅晶は両膝を崩して打ちひしがれたような表情を浮かべていた。
「こ……紅晶」
彼女が公主を呼び捨てにしているのはあくまでもお忍び状態であったからだろう。
修也はそんな哀れな姿をした紅晶になんと声をかけたらよいのか分からずにオロオロとしていた時だ。
紅晶が強引に修也の手を掴んで路地裏へと引っ張っていったのだ。
他の面々が止める暇もない、一瞬の出来事であった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。
そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。
しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!
命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。
そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。
――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。
夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。
しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた!
ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。
噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。
一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。
これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる