メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

文字の大きさ
151 / 237
人と異形とが争いを繰り広げる惑星『ボーガー』

10

しおりを挟む
 超能力……。それは人の中に秘められた潜在エネルギーであるとされている。

 主に人間の力では不可能とされるような能力で、通常の人を超えた能力のことを指す言葉ともされ、魔法と同様に昔から人々の心を掴んで離さないものだった。

 1970年代の世界的なオカルトブームの時代においてはテレビの前でスプーン曲げが行われたり、トランプの透視などが行われたという実例がある。

 世界的なブームということもあって日本でも大々的に超能力は宣伝され、オカルトブーム当時はアメリカなどで人気を博したスプーン曲げの天才、ユリゲラーが来日を果たし、テレビカメラの前でスプーンを曲げてみせた。人間の神秘を生で公開され、各地のお茶の間へと届かられたことによって多くの日本人に衝撃を与えることになった。

 当時の大人たちからは眉唾物とされていた超能力であったが、現代では当時二大大国とされたアメリカとソ連の両国が水面下で超能力による諜報戦を計画していたことが明らかとなり、人間の中にある未知のエネルギーを増幅させ、さまざまなことに利用させるという取り組みは今でも地球で続けられている。

 そんな地球においてもまだ炎を操る超能力というのは未知の媒体であったといってもいい。もはや魔法といっても差し支えないかもしれない。

 問題は魔法は超能力よりも存在する可能性は低いと思われていることだ。地球では超能力より存在する可能性は低いとされているが、超能力が存在する惑星が広い宇宙の中にあったとしても不思議ではない。

 修也と戦っている男の場合はどちらなのだろうかとジョウジが考えていた時のことだ。ジョウジの体が勢いよく浮かび上がっていった。ジョウジは手足をバタバタと動かしてなんとかその場から降りようと目論んだものの、見えない縄で縛られているかのように体は動かなかった。

 ジョウジが歯を軋ませていると、もう一人の男がニヤリと笑いながらジョウジを見つめていた。

 男は陰湿な笑みを浮かべながら俗にいう金縛りで体を固定されているジョウジの体を人差し指で操作して今度は地面の上に縛り付けていった。

「ぐっ、くっ……しまった!」

「フフッ、手も足も出ないだろう? お前はここでジッとしていてもらうぞ」

「……ま、まさか、そのまま公主殿下の御命を狙うつもりでは?」

「その通り、小娘には死んでもらう」

 男は腰から剣を抜くと、それを空中の上へと放り投げていった。通常であれば剣は地面の重力へと引っ張られていき、カラーンと空虚な音を立てて転がるだけのはずだ。

 しかし男が抜いた剣は空中の上で何者かが両手で剣を握っているかのようにピタリ止まっていた。そして、今度は小学校の理科の実験で飛ばすストローロケットのように真上からゆっくりと紅晶の元へと飛んでいこうとしていた。

 非常にスローモーションに宙を漂いつつも、しっかりと狙いは定まっていた。紅晶が逃げようとすると剣もまた追い掛けてくるという追跡システムとなっていた。男は紅晶に剣が突き刺さる時間をわざと延ばして楽しんでいるように思えた。そうすることで逃げ惑う姿を楽しむことができるからだ。
 随分と趣味が悪い。嫌悪感が心のうちから湧き上がってきた。

 すると、半ば無意識のうちに、

「大津さん!」

 と、ジョウジは大きな声で相棒の名前を叫んだのだった。体は拘束されながらも声が出ていたのは不幸中の幸いであった。

 ここで大きかったのは戦いが部屋の中という限られた場所で展開されていてことだろう。すぐに声が部屋中に響き渡っていった。部屋いっぱいに響き渡っていったジョウジの声を聞いた修也は戦いを一時的に中断し、声が飛んだジョウジの方向を向いた。

 それを見たジョウジは勝利を確信したかのようにニヤリと笑ったのである。

「大津さん! 紅晶殿下の元に剣が向かっています! 止めていただけないでしょうか!?」

「かしこまりましたッ!」

 修也はレーザーガンを取り出すと、空中をゆっくりと浮遊していた剣に向かって引き金を絞っていった。
 狙いは外れてしまったものの、剣は紅晶公主ではなく、今度は修也に対して狙いを定めていったのであった。
 修也は慌てることなく、レーザーガンをどの場所へ戻し、ビームソードを構えて攻撃に備えようとしていた。

 もし今の相手が単なる人間であれば修也の目論見は成功していたに違いなかった。修也の誤算は相手がいわゆるプロの暗殺者であるということを失念していたことだ。抜き足差し足と泥棒のように音を立てずに背後から迫ったかと思うと、剣にばかり意識を向けていた修也の体をがらんじめの状態へと追い込んだのだった。

「やれ! 文單!」

 もう一人の男もとい文單は相棒である顔淵が修也の体を押さえているのをしっかりと確認してから地面の上に漂わせていた自身の剣を修也の心臓に目掛けて下ろしていこうとしていた。

 顔淵と文單のコンビネーションに隙はない。ここで修也は剣にパワードスーツの装甲を貫かれて命を散らしてしまいかねなかった。

 もし文單があちこちに気を配り、常に不安に苛まれるような臆病な性格の持ち主であれば修也のパワードスーツの装甲を剣で粉々に砕き、その心臓を貫いて絶命へと追い込んでいたに違いなかった。
 文單が背後から熱線を喰らいかけたのはジョウジのことを完全に忘れていたからだった。

 文單のみならずこの星における超能力の特性として喰らわせる対象の相手を意識している間には超能力を継続して使うことができるのだが、意識の外へその相手のことが追いやられてしまうと、超能力の効果も切れてしまうという致命的な弱点が存在していた。

 怪しげな気配を察して地面の上へ飛び上がり、熱線を避けた後で文單は荒い息を吐きながら自身の欠点というものを後悔し始めていた。

「ちくしょうッ! すっかりとあいつのことを忘れていた」

「おい、文單ーー」

 顔淵は文單に対して何かを言い出そうとしたのだが、それよりも前に修也によって腹部に強烈な蹴りを喰らい、よろめいているのが見えた。

 顔淵はそのまま反撃に臨もうとしたのだが、それよりも前に修也の手によって強力な拳を喰らって地面の上へと倒れ込んでしまった。パワードスーツの拳を真正面から喰らったのである。相手も人間であるというのであれば当分は顔に喰らった大きな負傷のため起き上がることは難しいだろう。

 あとは文單を相手にするだけである。修也はビームーソードを構えながら文單の元へと向かっていった。

「舐めるなよッ!」

 文單はそう叫ぶと、自身の超能力を使って修也を空中の上で拘束していった。これではジョウジと同様に動くことは難しくなっていた。

 危機を感じたジョウジは文單が修也に夢中になっている隙を利用して、懐から携帯端末を取り出して密かにメール機能を用いてカエデに連絡を取ったのだった。
 援軍を頼んだのである。それから自身のビームポインターを用いて反撃を試みた。
 今度はジョウジも拘束することを忘れなかった。空中の上に飛ばすと、そのまま金縛りを使って拘束したのだった。

「どうだ、手も足も出ないだろう? お前が裏で何かごちゃごちゃとしていることは知っていたが、敢えて泳がせておいたんだ。追い詰められた気分はどうだ?」

「どうでしょうね」

「なんだと?」

「さっき、私が何をしたと思います?」

「ズレたことをお前はもう終わりだ。オレの剣に貫かれるより他に道はないのさ」

「まぁお聞きなさい」

「るっせぇ!」

 文單は大きな声でジョウジの会話を遮った。ジョウジの済ました顔に腹を立てたこともあり、標的を修也からジョウジへと変えた。

 文單は紅晶の時と同様に剣をゆっくりとしたスピードで動かしていく。徐々に剣の先端が近付いていく姿は明らかに恐怖を与えることが目的だった。
 ゆっくりと近付いてくる死に対して慌てる様子を見たがっているのだ。紅晶の時も同様に感じたが、この男の趣味は最悪だ。

 ジョウジがそんなことを考えつつも、その実はこの趣味の悪さこそが男の首を絞めることを確信していた。

 というのも、男は聞く耳を持たなかったが、先ほど携帯端末のメール機能を用いてカエデに連絡を付けたのだ。もうそろそろメトロポリス社特製のパワードスーツに身を包んだ二人が姿を現すに違いなかった。ジョウジが楽観的観測を根拠に暇を潰すため天井を眺めていた時のことだ。

 待ちかねていた援軍を告げる音が聞こえた。閉められていた扉が勢いよく開かれ、『エンプレスト』と『ゼノン』の装甲に身を包んだ麗俐と悠介の両名がレーザーガンを手に扉を蹴破って押し入ってきた。

 二人は躊躇うこともなく、レーザーガンの引き金を引いて顔淵と文單の両名を抹殺しようと目論んでいた。
 だが、レーザー光線は身の危機を感じた二人が咄嗟に身を翻したことによって交わされる羽目になった。

「ちくしょう!」

 悠介は口汚い言葉を吐いた後でもう一度引き金を絞ったが、それよりも前に自身の目の前に炎が飛んできたことによって攻撃を中断して躱わさざるを得なかった。

 横にいた麗俐も引き続きレーザーガンの引き金に手をかけたものの、彼女が引き金引くよりも前に文單が慌てて空中へと飛ばしたことで彼女は永遠に武器を振るう機会を失う羽目になってしまったのだ。

「麗俐!」

 娘の危機を知った修也は声を荒げたものの、この状況にあってはどうしようもない。悔しげに拳を震わせていた時のことだ。
 得意げな顔を浮かべて笑う文單の額に向かってビーム光線が直撃した。

 同時に文單は地面の上へと倒れ込み、文單の持つ超能力によって拘束されていた修也たちは一気に地面の上へと打ち付けられる形になった。

 何が起きたのか、と慌てて辺りを見回していくと、扉の隙間からビームポインターを握ったままこちらを見つめているカエデの姿が見えた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

処理中です...