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漂流する惑星『サ・ザ・ランド』
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優秀な2体のアンドロイドが2つの惑星の名前を取って漂流する惑星と名付けただけのことはあった。幾らホバークラフトを走らせても人工物はおろか自然すら見当たらなかった。しかし麗俐は諦めなかった。がむしゃらに巨大なサ・ザ・ランドと名付けられたこの惑星の規模は大きかったはずだ。
出かける前に安全確認のためと称され、ジョウジから惑星に関しての詳細を見せられたのだが、惑星の規模は最初に訪れた人類の植民惑星たる火星と同規模のものである。初日に地下水を発見したのは宇宙船からそう遠くない場所であった。
宇宙船からあまり離れていない場所でさえ地下水が発見できたのだ。もしかすれば惑星を探検していくうちに何か今後の生活に直結するもの、もしかすれば惑星脱出に役立つものが存在しているかもしれない。
麗俐はその一心で必死になってホバークラフトを走らせていた。背後にしがみついている弟が時折、自身の体周りを握る力を強めるほどの速さであったが構うことはなかった。
全ては助かりたい一心から出てきたものであった。
その甲斐もあってか、宇宙船から3時間ほどの場所に荒廃して荒れた風が吹き流れる荒野の端の方に人の手で人工的に切り取られたような森林があった。小規模な森林であるものの、森の中には確かに生命の息吹きというものを感じさせられた。
針葉樹ばかりが生えた森であるが、草も生え、地球では見られないような珍しい色の蝶が飛んでいる光景を見た。茶色の翅に目玉のような紋様の目立つ珍しい蝶だ。同じように地球では見られないような花が生えていた。大きく開いた桃色の花弁があり、綺麗な黄桃色のめしべやおしべが確認できた。
地球の森と同様に花や蝶が生息している森なので、本当に惑星ボーガーで出会ったような超能力者が待ち構えているのかもしれない。
麗俐は待ち伏せているかもしれない超能力者たちを相手に不安を覚えたが、それ以上に漂流する惑星から脱出できるかもしれないという希望を抱いた。念の為、二人はパワードスーツに身を包んで森の中へと足を踏み入れたのである。
森の奥深くまで歩みを進めていったのだが、生物の姿というのは一向に確認できていない。知性を持った宇宙人の存在も確認できない。火を使った痕跡や足跡がないことからいないと判断して間違いないだろう。
不安からか麗俐たちが生唾を飲み込みながら森を進んでいくと、とうとう森の最奥部へと辿り着いた。最奥部はこれまでとは違い、まるで人工的に切り開かれたかのように四方が切り開かれた広場があった。広場には森林と同様に何もない。
奥の方に寝そべって獲物を求めて口を大きくと開いているかのような不気味な洞窟の入り口が開いているだけである。
入り口から奥へと流れていく風によって生じる音は怪物が鳴いているかのような錯覚を2人に与えた。
「こ、これって……」
「洞窟みたいだね」
麗俐は足元にあったレーザーガンを抜きながら言った。しかもその後は躊躇うこともせずに洞窟の中へと足を踏み入れていこうとしていた。
「待ってくれよ! お姉ちゃん!!」
悠介は洞窟の入り口の側で無鉄砲な行動を取る姉を静止しようとしていた。
だが、麗俐は悠介の言葉を聞いても振り向きもせず洞窟へと足を踏み入れていった。その際に悠介は広場を振り返った。
最初と同様に何もない広場である。しかしその味気なさというか無機質な形が却って悠介の中にある恐怖心を刺激したのである。
何もない場所だからこそ怖かったのだ。もしかすれば自分が一人で姉を待っている間にガソゴソと音を立てて近くの茂みから例の恐ろしい超能力を持った住民が悠介を襲ってくるかもしれない。
或いはこの惑星に存在する凶悪な怪物が悠介の背後から噛み付いてくるかもしれない。未知の刺客に対する恐怖は悠介にとって姉の後を追わせるのに十分だった。
悠介は遊園地で迷子になりかけた子どもが母親の元へと追い縋るかのように洞窟の中をレーザー片手に探索する麗俐を追い掛けていったのである。
ヘルメットの下で息を切らしつつ、悠介は麗俐の背後を歩いていた。薄暗くて冷蔵庫の中にでも放り込まれたような寒さが襲ってくる場所であったが、姉が付いているというだけで随分と心持ちは楽になった。
特撮テレビ番組やアニメ番組に登場する妖怪や幽霊を恐れる幼い子どものように悠介は姉にピッタリとくっ付きながら洞窟の中を歩いていく。聞こえてくるのは自分たちが洞窟の中を歩くときに生じる足音だけ。見えるのはひんやりとした印象を与える洞窟の壁と床ばかりだ。
パワードスーツの中に内蔵されているライトがなければ完全なる闇の世界で2人はもがかなければならなかっただろう。そのことに関してはメトロポリス並びに地球の技術に感謝をしなくてはならない。
光を手元に持っていたことや幼い頃にアニメやドラマで見た洞窟のように道が枝分かれしていないことは幸いというべきであるが、一本道を僅かな明かりだけを頼りに進んでいくのは至難の業といえたかもしれない。
が、それにも限界が近付いた。大きな部屋のような穴に辿り着いたかと思うと、その先には右と左に道が分かれていたのだ。どうやらここから先はどちらかを選ばなくてはならないのだろう。
「ここから先は別れよう。右か左かのどちらかを選択しようよ」
麗俐の発言は合理的に考えれば確かなものであったに違いない。
だが、今の一言は悠介を見捨てるのに等しい言葉だった。それを聞いた悠介は言葉を震わせながら叫んだ。
「ダメだッ!」
流石の麗俐も悠介の言葉を聞いて驚いたらしい。両肩を竦ませた後でヘルメットの下で荒い息を吐き出す悠介に向かって問い掛けた。
「ちょっと、どうしたの?」
「嫌だ。二人で行こう……」
この時の悠介の言葉は先ほどの大声とは対照的に腹の底からようやく絞り出したかのような小さな声であった。
「だって、おれ無理だもん。こんなところに行ったら死んじゃうよ」
麗俐は悠介の弱音に対して沈黙で返した。ここで「大丈夫だよ」と答えられなかったのは麗俐自身もこの洞窟で何が待ち構えているのか分からなかったからだ。
「オレにはバスケットボール選手になるっていう夢があるんだよ! 地球に戻って転校先の高校でエースになって全国へ行くんだ……こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ!」
悠介の拳は震えていた。彼自身生に対する執着や死に対する恐怖が強かったらこそ麗俐の無鉄砲じみた行動を批判できたのである。
「まぁまぁ、でもこの洞窟で頑張ればあたしも悠介も助かる手段が見つかるかもしれないんだよ」
麗俐としては自身の探索に対して巻き込んでしまったことに対する申し訳なさから出た言葉であった。
しかし今の追い詰められた悠介からすれば火に油を注ぐような一言であった。
「お姉ちゃんには大事な夢がないからそんなことを言えるんだよ」
「……そうだね。あんたに比べると、あたしにはなんの夢もないよ。けど、あたしだって生きたいし、地球に戻ってお母さんにも会いたい。だから協力してよ」
「何が協力してだよ、こうなったのはもともとお姉ちゃんのせいだろ?」
ここにきて悠介の中でそれまで掃除機の吸い忘れで部屋の隅に溜まって積もっていた不満が爆発していった。
先ほどまで幼い子どものように姉に縋っていた姿とは対照的に強気な姿勢で不満を爆発させた。
「お姉ちゃんがあんな酷いことをしなければオレは今頃、まだ前の高校でバスケットボールを続けられたし、紗希ともまだ恋人でいられたんだ! テロリストに誘拐されることもなかったし、今回の旅に着いてくることもなかった! 全部お前のせいだッ!」
悠介はこれまで使わなかった強い二人称を用いた後で涙を交えながら自身の感情が昂るまま側にいた麗俐を大きく突き飛ばした。
いきなり弟から強く突き飛ばされた麗俐は避ける暇もなく地面の上へと倒れ込んだ。
だが、麗俐は怯むこともなくゆっくりと起き上がったかと思うと、先ほどの仕返しとばかりに弟の腹を思いっきり蹴り上げた。もともとバスケットボールで鍛えていたということもあってか、悠介の体はかなり頑強であったし、麗俐と同様にパワードスーツで全身を覆ってはいるものの、突然の不意打ちには耐えられなかったのだろう。
ヘルメットの下で苦痛による呻き声をあげているのが聞こえた。麗俐はしゃがみ込むと倒れている弟に対して手を差し伸ばしつつも淡々とした声で言った。
「さっきのお返し」
悠介はヘルメットの下で姉を睨んだものの、今の状態では無用な争いを引き起こすだけだと判断した。大人しく差し出された麗俐の右手を取ったのがその証拠であるといってもよかった。
「悠介の気持ちは分かるよ。けど、ここで進まないとどうにもならないじゃん」
「……分かったよ」
悠介も頭の中では麗俐の言葉が正しいと分かっていた。二人同時に洞窟の中を進んで、もし両者に何かあった場合はそれで探索も終了となってしまう。
父親である修也に洞窟や森林に関する報告を行うこともできなくなるだろう。
だからこそ洞窟の中で分かれて探索する意味があったのだ。
悠介は右に、麗俐は左の方向へと足を踏み入れることになった。1時間ほど歩いた後に行き止まりへと辿り着いたので悠介は右側の道から元の道へと戻ってきた。
自分が向かった先に何もないことに落胆して広場の中で1人、姉の帰りを待っていた時のことだ。
両肩を落とした麗俐が戻ってくるのが見えた。どうやら麗俐の方も何も収穫がなかったらしい。
悠介は安堵して姉を揶揄おうとした時のことだ。その姉が無言で手招きをしたのだ。言葉は何もない。
悠介が導かれるままに麗俐の後ろへと付いていき、左側の通路を進んでいくと、今度は3方向に広がる広場があった。
だが、注目するのは場所ではない。広場の中央に宝物でも包むように柔らかい草で放置された3つの卵だった。
直径の大理石のような艶を帯びた異質な卵である。それを覗き込んだ悠介は咄嗟に大声を上げた。
「こ、これってエイリアンの卵じゃあないのか!?」
最初に発見したのは麗俐である。そのため悠介は発見した麗俐に対して確認するように大声を出した。それに対して麗俐は首を縦に動かして肯定してみせたのである。
出かける前に安全確認のためと称され、ジョウジから惑星に関しての詳細を見せられたのだが、惑星の規模は最初に訪れた人類の植民惑星たる火星と同規模のものである。初日に地下水を発見したのは宇宙船からそう遠くない場所であった。
宇宙船からあまり離れていない場所でさえ地下水が発見できたのだ。もしかすれば惑星を探検していくうちに何か今後の生活に直結するもの、もしかすれば惑星脱出に役立つものが存在しているかもしれない。
麗俐はその一心で必死になってホバークラフトを走らせていた。背後にしがみついている弟が時折、自身の体周りを握る力を強めるほどの速さであったが構うことはなかった。
全ては助かりたい一心から出てきたものであった。
その甲斐もあってか、宇宙船から3時間ほどの場所に荒廃して荒れた風が吹き流れる荒野の端の方に人の手で人工的に切り取られたような森林があった。小規模な森林であるものの、森の中には確かに生命の息吹きというものを感じさせられた。
針葉樹ばかりが生えた森であるが、草も生え、地球では見られないような珍しい色の蝶が飛んでいる光景を見た。茶色の翅に目玉のような紋様の目立つ珍しい蝶だ。同じように地球では見られないような花が生えていた。大きく開いた桃色の花弁があり、綺麗な黄桃色のめしべやおしべが確認できた。
地球の森と同様に花や蝶が生息している森なので、本当に惑星ボーガーで出会ったような超能力者が待ち構えているのかもしれない。
麗俐は待ち伏せているかもしれない超能力者たちを相手に不安を覚えたが、それ以上に漂流する惑星から脱出できるかもしれないという希望を抱いた。念の為、二人はパワードスーツに身を包んで森の中へと足を踏み入れたのである。
森の奥深くまで歩みを進めていったのだが、生物の姿というのは一向に確認できていない。知性を持った宇宙人の存在も確認できない。火を使った痕跡や足跡がないことからいないと判断して間違いないだろう。
不安からか麗俐たちが生唾を飲み込みながら森を進んでいくと、とうとう森の最奥部へと辿り着いた。最奥部はこれまでとは違い、まるで人工的に切り開かれたかのように四方が切り開かれた広場があった。広場には森林と同様に何もない。
奥の方に寝そべって獲物を求めて口を大きくと開いているかのような不気味な洞窟の入り口が開いているだけである。
入り口から奥へと流れていく風によって生じる音は怪物が鳴いているかのような錯覚を2人に与えた。
「こ、これって……」
「洞窟みたいだね」
麗俐は足元にあったレーザーガンを抜きながら言った。しかもその後は躊躇うこともせずに洞窟の中へと足を踏み入れていこうとしていた。
「待ってくれよ! お姉ちゃん!!」
悠介は洞窟の入り口の側で無鉄砲な行動を取る姉を静止しようとしていた。
だが、麗俐は悠介の言葉を聞いても振り向きもせず洞窟へと足を踏み入れていった。その際に悠介は広場を振り返った。
最初と同様に何もない広場である。しかしその味気なさというか無機質な形が却って悠介の中にある恐怖心を刺激したのである。
何もない場所だからこそ怖かったのだ。もしかすれば自分が一人で姉を待っている間にガソゴソと音を立てて近くの茂みから例の恐ろしい超能力を持った住民が悠介を襲ってくるかもしれない。
或いはこの惑星に存在する凶悪な怪物が悠介の背後から噛み付いてくるかもしれない。未知の刺客に対する恐怖は悠介にとって姉の後を追わせるのに十分だった。
悠介は遊園地で迷子になりかけた子どもが母親の元へと追い縋るかのように洞窟の中をレーザー片手に探索する麗俐を追い掛けていったのである。
ヘルメットの下で息を切らしつつ、悠介は麗俐の背後を歩いていた。薄暗くて冷蔵庫の中にでも放り込まれたような寒さが襲ってくる場所であったが、姉が付いているというだけで随分と心持ちは楽になった。
特撮テレビ番組やアニメ番組に登場する妖怪や幽霊を恐れる幼い子どものように悠介は姉にピッタリとくっ付きながら洞窟の中を歩いていく。聞こえてくるのは自分たちが洞窟の中を歩くときに生じる足音だけ。見えるのはひんやりとした印象を与える洞窟の壁と床ばかりだ。
パワードスーツの中に内蔵されているライトがなければ完全なる闇の世界で2人はもがかなければならなかっただろう。そのことに関してはメトロポリス並びに地球の技術に感謝をしなくてはならない。
光を手元に持っていたことや幼い頃にアニメやドラマで見た洞窟のように道が枝分かれしていないことは幸いというべきであるが、一本道を僅かな明かりだけを頼りに進んでいくのは至難の業といえたかもしれない。
が、それにも限界が近付いた。大きな部屋のような穴に辿り着いたかと思うと、その先には右と左に道が分かれていたのだ。どうやらここから先はどちらかを選ばなくてはならないのだろう。
「ここから先は別れよう。右か左かのどちらかを選択しようよ」
麗俐の発言は合理的に考えれば確かなものであったに違いない。
だが、今の一言は悠介を見捨てるのに等しい言葉だった。それを聞いた悠介は言葉を震わせながら叫んだ。
「ダメだッ!」
流石の麗俐も悠介の言葉を聞いて驚いたらしい。両肩を竦ませた後でヘルメットの下で荒い息を吐き出す悠介に向かって問い掛けた。
「ちょっと、どうしたの?」
「嫌だ。二人で行こう……」
この時の悠介の言葉は先ほどの大声とは対照的に腹の底からようやく絞り出したかのような小さな声であった。
「だって、おれ無理だもん。こんなところに行ったら死んじゃうよ」
麗俐は悠介の弱音に対して沈黙で返した。ここで「大丈夫だよ」と答えられなかったのは麗俐自身もこの洞窟で何が待ち構えているのか分からなかったからだ。
「オレにはバスケットボール選手になるっていう夢があるんだよ! 地球に戻って転校先の高校でエースになって全国へ行くんだ……こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ!」
悠介の拳は震えていた。彼自身生に対する執着や死に対する恐怖が強かったらこそ麗俐の無鉄砲じみた行動を批判できたのである。
「まぁまぁ、でもこの洞窟で頑張ればあたしも悠介も助かる手段が見つかるかもしれないんだよ」
麗俐としては自身の探索に対して巻き込んでしまったことに対する申し訳なさから出た言葉であった。
しかし今の追い詰められた悠介からすれば火に油を注ぐような一言であった。
「お姉ちゃんには大事な夢がないからそんなことを言えるんだよ」
「……そうだね。あんたに比べると、あたしにはなんの夢もないよ。けど、あたしだって生きたいし、地球に戻ってお母さんにも会いたい。だから協力してよ」
「何が協力してだよ、こうなったのはもともとお姉ちゃんのせいだろ?」
ここにきて悠介の中でそれまで掃除機の吸い忘れで部屋の隅に溜まって積もっていた不満が爆発していった。
先ほどまで幼い子どものように姉に縋っていた姿とは対照的に強気な姿勢で不満を爆発させた。
「お姉ちゃんがあんな酷いことをしなければオレは今頃、まだ前の高校でバスケットボールを続けられたし、紗希ともまだ恋人でいられたんだ! テロリストに誘拐されることもなかったし、今回の旅に着いてくることもなかった! 全部お前のせいだッ!」
悠介はこれまで使わなかった強い二人称を用いた後で涙を交えながら自身の感情が昂るまま側にいた麗俐を大きく突き飛ばした。
いきなり弟から強く突き飛ばされた麗俐は避ける暇もなく地面の上へと倒れ込んだ。
だが、麗俐は怯むこともなくゆっくりと起き上がったかと思うと、先ほどの仕返しとばかりに弟の腹を思いっきり蹴り上げた。もともとバスケットボールで鍛えていたということもあってか、悠介の体はかなり頑強であったし、麗俐と同様にパワードスーツで全身を覆ってはいるものの、突然の不意打ちには耐えられなかったのだろう。
ヘルメットの下で苦痛による呻き声をあげているのが聞こえた。麗俐はしゃがみ込むと倒れている弟に対して手を差し伸ばしつつも淡々とした声で言った。
「さっきのお返し」
悠介はヘルメットの下で姉を睨んだものの、今の状態では無用な争いを引き起こすだけだと判断した。大人しく差し出された麗俐の右手を取ったのがその証拠であるといってもよかった。
「悠介の気持ちは分かるよ。けど、ここで進まないとどうにもならないじゃん」
「……分かったよ」
悠介も頭の中では麗俐の言葉が正しいと分かっていた。二人同時に洞窟の中を進んで、もし両者に何かあった場合はそれで探索も終了となってしまう。
父親である修也に洞窟や森林に関する報告を行うこともできなくなるだろう。
だからこそ洞窟の中で分かれて探索する意味があったのだ。
悠介は右に、麗俐は左の方向へと足を踏み入れることになった。1時間ほど歩いた後に行き止まりへと辿り着いたので悠介は右側の道から元の道へと戻ってきた。
自分が向かった先に何もないことに落胆して広場の中で1人、姉の帰りを待っていた時のことだ。
両肩を落とした麗俐が戻ってくるのが見えた。どうやら麗俐の方も何も収穫がなかったらしい。
悠介は安堵して姉を揶揄おうとした時のことだ。その姉が無言で手招きをしたのだ。言葉は何もない。
悠介が導かれるままに麗俐の後ろへと付いていき、左側の通路を進んでいくと、今度は3方向に広がる広場があった。
だが、注目するのは場所ではない。広場の中央に宝物でも包むように柔らかい草で放置された3つの卵だった。
直径の大理石のような艶を帯びた異質な卵である。それを覗き込んだ悠介は咄嗟に大声を上げた。
「こ、これってエイリアンの卵じゃあないのか!?」
最初に発見したのは麗俐である。そのため悠介は発見した麗俐に対して確認するように大声を出した。それに対して麗俐は首を縦に動かして肯定してみせたのである。
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