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漂流する惑星『サ・ザ・ランド』
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「けど、あそこに自然はあったんだ! 少なくとも食料は作れるってことだ! それをむざむざと放棄する必要なんてどこにもないだろ!?」
悠介は力強い声で拳を握り締めながらカエデへと訴え掛けた。こうすることで自分たちへの主張を認めてもらおうと考えたのである。
しかし弁論大会の人間部門で熱弁を振るう雄弁な学級委員長のような姿を見てもカエデは淡々とした口調でアンドロイドらしく反論したのであった。
「食料なら船の周辺でも作れるでしょう? 緑があるからといって悠介さんが遭遇した危険な宇宙生物がいる場所に行く必要もないと思われますが」
カエデの言葉は確かな正論だった。あの緑が生え揃った土地に行って洞窟の中にいたアンドロイドや危険な宇宙生物と遭遇する危険性というのもゼロではないのだ。
そんなリスクを全員が背負ってまで緑のある土地で植物を栽培する必要もないはずだ。
それまで腕を組んで黙って話を聞いていた修也も親として子どもの危険性を考慮してまで緑のある土地まで足を運ばせる必要などないとここにきて反対の立場を堂々と表明したのである。
「でも、ここであたしたちが動かないとみんな死んじゃうんだよ」
「食料ならまだ十分にあるし、近くでは水だって取れるぞ。砂漠地帯に生えた小っぽけなアカシアの森のためだけに危険な宇宙生物やアンドロイドを相手にする必要なんてないんだ」
修也は腕を組みながら強い口調で2人の子どもに言い放った。そこには父親としての威厳、そして権威というものが確かに存在していた。
だが、反抗期の子どもにはそうした威厳を含ませた態度で接することは逆効果であったらしい。ましてや封建時代のような父親像を見せたことはマイナスであった。却って2人からの反発を招いてしまう羽目になった。
「いいよ! そこまで弱気な態度だったらもう頼まないからなッ!」
「そうだよ! お父さんには失望したね! 明日はまた、あたしたちだけで探索に行くから!!」
「2人とも待ちなさい!」
修也は手を伸ばして慌てて引き留めたものの、2人はそのまま自分たちの部屋へと引き篭もってしまった。説得にあたって失敗してしまったということはあまりにも大きかった。
修也は自己嫌悪に陥ってしまう羽目になり、机の上で大きく突っ伏していった。
その姿をカエデは申し訳なさそうに見つめていた。
「申し訳ありません。大津さん……私の力が至らなかったことで御二方を怒らせてしまったようで……」
弱々しい口調から察するに彼女の中でも罪悪感というものが生じていることがわかった。感情が芽生えて豊かな表情を出したり、態度に表すようなことが増えたジョウジと比較してあまり感情を表に出すことがなく、これまで通りのアンドロイドとしての淡々とした喋り方を続けてきたカエデとしては珍しい態度を見せたものだ。
「いえいえ、カエデさんが悪いのではありませんよ。ただ2人とも意固地になっているだけなんです……思春期の子どもにはよくあることですから」
修也は言い訳するように言った。言い方としてはカエデを立てつつも2人を責めたりはしない模範的な解答を口にしたといってもいい。ここに修也の日本人的サラリーマンとしての気質が表れていったといってもいいだろう。
その後は互いに気まずさからか一言も喋らなかったが、やがて喉が渇いたのか、修也は給水機へと向かうと自身のカップの中に冷水を注いでいく。
味はしない。ただ冷たいと感じるだけだ。いつも通りの飲み方。いつもと変わらない味。そんな考えが頭の中を過ぎった。
だが、修也の中ではこの惑星に辿り着いてからというものの、徐々にいつも通りのやり方というものが消えていっているような気がしたのだ。
これまで訪れた惑星とは異なり、座標が掴めないので脱出もできず、救助艇を頼むこともできないという絶望的な状態にあるからだろうか。
もしかすれば今まで危機的な状況に陥ったとしてもいざとなれば地球に戻れるという安堵感が心のどこかにあったから恐れるものなどなく戦えたのかもしれない。
もしそうであれば自身は相当な自惚れ屋だ。何が護衛官だ。修也は頭を抱えていだた。締め付けられるような痛みが頭の中で響いていく。やがて耐えられなくなったのか、両手で頭を抑えながら机の上へと突っ伏した。
たまりかねたのか、カエデが穏やかな口調で提案した。
「今日はもう休んだ方がいいですよ。大津さん、御二方が出掛けている間はいつも心配しておられましたものね……」
カエデの優しさは五臓六腑にまで染み渡ったようだ。修也は小さく首を縦に動かした。聖母マリアのような慈悲に溢れた言葉を前にして修也はすっかりと甘える気でいた。弱々しい表情を浮かべながら頭を下げたかと思うともう一度水を汲み、コンピュータの元へと向かっていく。コンピュータに自身のことを相談すると、カプセルトイを売っているガチャガチャの取り出し口よりも小さな取り出し口から一錠の白いカプセルが転がってきた。睡眠薬である。
修也はシャワーを済ませ、歯を磨いてベッドの上に腰を掛けたのだが疲労を実感しているにも関わらず自然に眠ることは難しそうだったのでコンピュータによって処方された睡眠薬を口に含んだことによってようやく夢の世界へ向かうための虹の橋を渡ることができたのである。
数分後になると修也の意識は完全に夢の世界へと旅立っていた。
とはいっても安らかな夢などは見られない。夢の世界で修也は悪夢にうなされていた。苦しそうに「うぅ」と唸り声を上げていたのだが、それはジョウジが体を譲ったことによって強制的に夢の世界から現実の世界へと引き戻されてしまう羽目となった。
眠い目を擦りながら現実世界へと戻ってくると、ジョウジが心配そうな顔で自身の顔を覗き込んでいることに気が付いた。
「どうしたんですか? ジョウジさん?」
「……大変ですよ、朝食の時間の後に御二方が消えてしまったんですよ!」
その一言で眠気というものは完全に意識の外へと追いやられることになった。
修也は真剣な顔を浮かべながら問い掛けた。
「……ジョウジさん。カーゴヘリはありますよね?」
「えぇ、船の警備はカエデさんに任せますので我々2人で御二方を追おうと思っていたんです」
修也は即座にメトロイドスーツのカプセルを握り締めると、ジョウジと共に宇宙船の外へと降り立った。
宇宙船の外へと降り立つのは地下水を汲んできて以来のことである。宇宙船から外へと降り立った修也の前に巨大な武装付きのヘリが出された。
本来であれば7人という大人数で乗り込むヘリだというのに捜索のためとはいえたった2人だけで使うというのは身の丈に合わないような贅沢をしているような気がして、少し気が引けてしまった。
だが、修也にとって大事なのは2人の子どものことである。ジョウジが操るヘリコプターの中へ乗り込むと、ホバークラフトで未知の惑星を探索する子どもたちを追い掛けていった。
だが、高度が高過ぎるせいか、はたまた惑星が広いせいか肝心の子どもの姿が見当たらない。空の上から確認するに修也の子どもたちが足を踏み入れた形跡はない。
念の為メトロイドスーツを着用して森林の中に足を踏み入れたのだが、悠介も麗俐もその姿は確認できなかった。
もしかすれば洞窟の中かと思い足を踏み入れたものの、洞窟の中にも2人の姿は見当たらなかった。
不思議なのは2人が語っていたアンドロイドの姿が見えなかったことだが、修也にとって今そんなことはどうでもいいことだった。
残念そうな顔を浮かべて両肩を落とす修也に対してジョウジは優しく肩を叩いて慰めたのであった。
やむを得ずにヘリの中へと戻っていったのだが、いくら地上を見渡しても子どもたちの姿はどこにも見えなかった。
助手席の修也は額に手を抑えながら悲嘆に暮れた表情を見せた。その表情からは絶望の色というのが垣間見えており、思わず同情を誘うことになった。
「大津さん、大丈夫ですよ。きっと御二方は見つかりますから」
ジョウジはその言葉が単なる慰めにしからならないということは頭の中でハッキリと分かっていた。
しかし理性より感情の方が優先され、思わず使い回された安っぽいテレビ映画に出てくる主人公のような台詞が出てしまったのである。
修也もジョウジと同様にその言葉が単なる慰め或いは一時凌ぎの誤魔化しに過ぎないということを理解していたのだろう。
だが、それ以上にジョウジが気遣いを見せてくれたことがありがたかったのだろう。精一杯の愛想笑いを浮かべながら礼の言葉を述べてみせた。
感情が芽生えれば自然と温かい心が芽生えてくるのだろう。今のジョウジを指して血や涙といったくだらないものを持つ冷徹なアンドロイドという人物はいなくなるに違いない。
修也がそんなことを考えていた時のことだ。ふと、砂漠の上に忘れ去られたように並べられている平方状の石を発見した。単なる石の集まりというよりは規則的に置かれている。円陣状に置かれて、土塁が築かれている姿はまるで、地球のイギリスで確認され、現在でも多くの議論を呼んでいる『ストーンヘンジ』のようであった。
修也の中で『ストーンヘンジ』という言葉が思い浮かんだ瞬間に古代文明の象徴とやらであるのかもしれない。
古代文明のことを紐解いていけば脱出にも繋がるかもしれない。2人の子どもたちは心配ではあるのだが、修也の中ではどうしても砂の上に忘れ去られたように放置された石塁の類を頭から打ち消すことは不可能であった。
思い立ったが吉日だとばかりに修也は横でヘリを運転しているジョウジに向かって窓の外でうっすらと確認できる小さな石塁を指差しながら叫んだ。
「すいません! 申し訳ありませんが、ここで降ろしていただけませんか!?」
「どうしたんです? そんなに血相を変えて」
「あれですよ!」
ジョウジが修也の指差す方向を確認する。その先には直立の巨石が無造作に並べられているだけのように見える。
「こんなところに何が?」
「いいから!」
渋々といった顔を浮かべてジョウジは地面の上へカーゴヘリを置いたのだが、石へと近付くに連れて修也の判断が正しかったということを悟ったのである。
というのも、確かに風や砂によって石の表層等の一部が剥がれ落ちていたりはしていたものの、その石は確かに円陣状に並んでいたし、よく見れば石と石と間に凸凹が確認できた。石を倒れないように安心させるために作られたのだろう。
つまり、この星に文明があったという確かな証拠であった。ジョウジがその痕跡を確認するため石を触った時のことだ。
それまではゴツゴツとした手入れのされていない石の上を触る感触であったというのに、突然一部の石が切り取られたような感覚を味わった。違和感を感じたジョウジが顔をあげると、そこには確かな絵画が記されていた。
あとがき
すいません。本日より多忙のためしばらく更新頻度が少なくなります。
どうしても行わなければならないという忙しさだということもあり、皆様にはご迷惑をおかけ致します。誠に申し訳ありません。
悠介は力強い声で拳を握り締めながらカエデへと訴え掛けた。こうすることで自分たちへの主張を認めてもらおうと考えたのである。
しかし弁論大会の人間部門で熱弁を振るう雄弁な学級委員長のような姿を見てもカエデは淡々とした口調でアンドロイドらしく反論したのであった。
「食料なら船の周辺でも作れるでしょう? 緑があるからといって悠介さんが遭遇した危険な宇宙生物がいる場所に行く必要もないと思われますが」
カエデの言葉は確かな正論だった。あの緑が生え揃った土地に行って洞窟の中にいたアンドロイドや危険な宇宙生物と遭遇する危険性というのもゼロではないのだ。
そんなリスクを全員が背負ってまで緑のある土地で植物を栽培する必要もないはずだ。
それまで腕を組んで黙って話を聞いていた修也も親として子どもの危険性を考慮してまで緑のある土地まで足を運ばせる必要などないとここにきて反対の立場を堂々と表明したのである。
「でも、ここであたしたちが動かないとみんな死んじゃうんだよ」
「食料ならまだ十分にあるし、近くでは水だって取れるぞ。砂漠地帯に生えた小っぽけなアカシアの森のためだけに危険な宇宙生物やアンドロイドを相手にする必要なんてないんだ」
修也は腕を組みながら強い口調で2人の子どもに言い放った。そこには父親としての威厳、そして権威というものが確かに存在していた。
だが、反抗期の子どもにはそうした威厳を含ませた態度で接することは逆効果であったらしい。ましてや封建時代のような父親像を見せたことはマイナスであった。却って2人からの反発を招いてしまう羽目になった。
「いいよ! そこまで弱気な態度だったらもう頼まないからなッ!」
「そうだよ! お父さんには失望したね! 明日はまた、あたしたちだけで探索に行くから!!」
「2人とも待ちなさい!」
修也は手を伸ばして慌てて引き留めたものの、2人はそのまま自分たちの部屋へと引き篭もってしまった。説得にあたって失敗してしまったということはあまりにも大きかった。
修也は自己嫌悪に陥ってしまう羽目になり、机の上で大きく突っ伏していった。
その姿をカエデは申し訳なさそうに見つめていた。
「申し訳ありません。大津さん……私の力が至らなかったことで御二方を怒らせてしまったようで……」
弱々しい口調から察するに彼女の中でも罪悪感というものが生じていることがわかった。感情が芽生えて豊かな表情を出したり、態度に表すようなことが増えたジョウジと比較してあまり感情を表に出すことがなく、これまで通りのアンドロイドとしての淡々とした喋り方を続けてきたカエデとしては珍しい態度を見せたものだ。
「いえいえ、カエデさんが悪いのではありませんよ。ただ2人とも意固地になっているだけなんです……思春期の子どもにはよくあることですから」
修也は言い訳するように言った。言い方としてはカエデを立てつつも2人を責めたりはしない模範的な解答を口にしたといってもいい。ここに修也の日本人的サラリーマンとしての気質が表れていったといってもいいだろう。
その後は互いに気まずさからか一言も喋らなかったが、やがて喉が渇いたのか、修也は給水機へと向かうと自身のカップの中に冷水を注いでいく。
味はしない。ただ冷たいと感じるだけだ。いつも通りの飲み方。いつもと変わらない味。そんな考えが頭の中を過ぎった。
だが、修也の中ではこの惑星に辿り着いてからというものの、徐々にいつも通りのやり方というものが消えていっているような気がしたのだ。
これまで訪れた惑星とは異なり、座標が掴めないので脱出もできず、救助艇を頼むこともできないという絶望的な状態にあるからだろうか。
もしかすれば今まで危機的な状況に陥ったとしてもいざとなれば地球に戻れるという安堵感が心のどこかにあったから恐れるものなどなく戦えたのかもしれない。
もしそうであれば自身は相当な自惚れ屋だ。何が護衛官だ。修也は頭を抱えていだた。締め付けられるような痛みが頭の中で響いていく。やがて耐えられなくなったのか、両手で頭を抑えながら机の上へと突っ伏した。
たまりかねたのか、カエデが穏やかな口調で提案した。
「今日はもう休んだ方がいいですよ。大津さん、御二方が出掛けている間はいつも心配しておられましたものね……」
カエデの優しさは五臓六腑にまで染み渡ったようだ。修也は小さく首を縦に動かした。聖母マリアのような慈悲に溢れた言葉を前にして修也はすっかりと甘える気でいた。弱々しい表情を浮かべながら頭を下げたかと思うともう一度水を汲み、コンピュータの元へと向かっていく。コンピュータに自身のことを相談すると、カプセルトイを売っているガチャガチャの取り出し口よりも小さな取り出し口から一錠の白いカプセルが転がってきた。睡眠薬である。
修也はシャワーを済ませ、歯を磨いてベッドの上に腰を掛けたのだが疲労を実感しているにも関わらず自然に眠ることは難しそうだったのでコンピュータによって処方された睡眠薬を口に含んだことによってようやく夢の世界へ向かうための虹の橋を渡ることができたのである。
数分後になると修也の意識は完全に夢の世界へと旅立っていた。
とはいっても安らかな夢などは見られない。夢の世界で修也は悪夢にうなされていた。苦しそうに「うぅ」と唸り声を上げていたのだが、それはジョウジが体を譲ったことによって強制的に夢の世界から現実の世界へと引き戻されてしまう羽目となった。
眠い目を擦りながら現実世界へと戻ってくると、ジョウジが心配そうな顔で自身の顔を覗き込んでいることに気が付いた。
「どうしたんですか? ジョウジさん?」
「……大変ですよ、朝食の時間の後に御二方が消えてしまったんですよ!」
その一言で眠気というものは完全に意識の外へと追いやられることになった。
修也は真剣な顔を浮かべながら問い掛けた。
「……ジョウジさん。カーゴヘリはありますよね?」
「えぇ、船の警備はカエデさんに任せますので我々2人で御二方を追おうと思っていたんです」
修也は即座にメトロイドスーツのカプセルを握り締めると、ジョウジと共に宇宙船の外へと降り立った。
宇宙船の外へと降り立つのは地下水を汲んできて以来のことである。宇宙船から外へと降り立った修也の前に巨大な武装付きのヘリが出された。
本来であれば7人という大人数で乗り込むヘリだというのに捜索のためとはいえたった2人だけで使うというのは身の丈に合わないような贅沢をしているような気がして、少し気が引けてしまった。
だが、修也にとって大事なのは2人の子どものことである。ジョウジが操るヘリコプターの中へ乗り込むと、ホバークラフトで未知の惑星を探索する子どもたちを追い掛けていった。
だが、高度が高過ぎるせいか、はたまた惑星が広いせいか肝心の子どもの姿が見当たらない。空の上から確認するに修也の子どもたちが足を踏み入れた形跡はない。
念の為メトロイドスーツを着用して森林の中に足を踏み入れたのだが、悠介も麗俐もその姿は確認できなかった。
もしかすれば洞窟の中かと思い足を踏み入れたものの、洞窟の中にも2人の姿は見当たらなかった。
不思議なのは2人が語っていたアンドロイドの姿が見えなかったことだが、修也にとって今そんなことはどうでもいいことだった。
残念そうな顔を浮かべて両肩を落とす修也に対してジョウジは優しく肩を叩いて慰めたのであった。
やむを得ずにヘリの中へと戻っていったのだが、いくら地上を見渡しても子どもたちの姿はどこにも見えなかった。
助手席の修也は額に手を抑えながら悲嘆に暮れた表情を見せた。その表情からは絶望の色というのが垣間見えており、思わず同情を誘うことになった。
「大津さん、大丈夫ですよ。きっと御二方は見つかりますから」
ジョウジはその言葉が単なる慰めにしからならないということは頭の中でハッキリと分かっていた。
しかし理性より感情の方が優先され、思わず使い回された安っぽいテレビ映画に出てくる主人公のような台詞が出てしまったのである。
修也もジョウジと同様にその言葉が単なる慰め或いは一時凌ぎの誤魔化しに過ぎないということを理解していたのだろう。
だが、それ以上にジョウジが気遣いを見せてくれたことがありがたかったのだろう。精一杯の愛想笑いを浮かべながら礼の言葉を述べてみせた。
感情が芽生えれば自然と温かい心が芽生えてくるのだろう。今のジョウジを指して血や涙といったくだらないものを持つ冷徹なアンドロイドという人物はいなくなるに違いない。
修也がそんなことを考えていた時のことだ。ふと、砂漠の上に忘れ去られたように並べられている平方状の石を発見した。単なる石の集まりというよりは規則的に置かれている。円陣状に置かれて、土塁が築かれている姿はまるで、地球のイギリスで確認され、現在でも多くの議論を呼んでいる『ストーンヘンジ』のようであった。
修也の中で『ストーンヘンジ』という言葉が思い浮かんだ瞬間に古代文明の象徴とやらであるのかもしれない。
古代文明のことを紐解いていけば脱出にも繋がるかもしれない。2人の子どもたちは心配ではあるのだが、修也の中ではどうしても砂の上に忘れ去られたように放置された石塁の類を頭から打ち消すことは不可能であった。
思い立ったが吉日だとばかりに修也は横でヘリを運転しているジョウジに向かって窓の外でうっすらと確認できる小さな石塁を指差しながら叫んだ。
「すいません! 申し訳ありませんが、ここで降ろしていただけませんか!?」
「どうしたんです? そんなに血相を変えて」
「あれですよ!」
ジョウジが修也の指差す方向を確認する。その先には直立の巨石が無造作に並べられているだけのように見える。
「こんなところに何が?」
「いいから!」
渋々といった顔を浮かべてジョウジは地面の上へカーゴヘリを置いたのだが、石へと近付くに連れて修也の判断が正しかったということを悟ったのである。
というのも、確かに風や砂によって石の表層等の一部が剥がれ落ちていたりはしていたものの、その石は確かに円陣状に並んでいたし、よく見れば石と石と間に凸凹が確認できた。石を倒れないように安心させるために作られたのだろう。
つまり、この星に文明があったという確かな証拠であった。ジョウジがその痕跡を確認するため石を触った時のことだ。
それまではゴツゴツとした手入れのされていない石の上を触る感触であったというのに、突然一部の石が切り取られたような感覚を味わった。違和感を感じたジョウジが顔をあげると、そこには確かな絵画が記されていた。
あとがき
すいません。本日より多忙のためしばらく更新頻度が少なくなります。
どうしても行わなければならないという忙しさだということもあり、皆様にはご迷惑をおかけ致します。誠に申し訳ありません。
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