いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
3 / 106
第一部 第一章 異世界転生

逆転の追捕戦

しおりを挟む
ガラドリエル・フォン・ヴァレンシュタインは今日起こった出来事を思い返す。
父親の所有する城と最愛の家族に別れを告げてから、彼女らにはヴァレンシュタイン家を妥当を掲げた巨大勢力の追手が迫っていた。
鉤十字と薔薇十字の二つの旗を掲げた騎士の団体は城から少しばかり、離れた黒の森シュヴァルツ・バルトで、とうとう女王一行とその馬車を捕らえたのだ。
リーダー格と思われる、青色の派手な装飾の入った鎧を身に纏った男はこれまた派手な装飾によって彩られた鞘から、大袈裟な装飾を施したサーベルを取り出す。
「フフフ、お姫様よ。あんたもこれでお終いだな?今のあんたを守るのは、その騎士一人だけ……チェックメイトだな」
「愚か者が、この私がむざむざ貴様ら如きの手で殺されると思うておるのか?私の首はそう容易くは取れぬぞ」
ガラドリエルは自分専用のサーベルを取り出し、相手にその刃を向ける。
だが、ガラドリエルは追手の騎士達に向かうよりも前に、制止されてしまう。他ならぬ、彼女の従者ーーガートールード・ムーンの右手によって。
「言っておくが、本来ならば、貴様ら下賤な一騎士如きが気安く口を聞いてはならぬ方であるぞ!女王陛下への数々の無礼、そして、他ならぬ暗殺を企む行為……死罪に値する!この私が裁いてくれようぞ!」
ガートールードは意気揚々と自身の腰に下げられた形の良いガッシリとした剣を手にする。
そして、その剣を両手で持って、二つの勢力によって構成された騎士団へと向かっていく。
最初に、黄銅色の鎧を被った騎士がその剣先でガートルードの喉元を貫こうとするが、ガートルードはそれを頭を下げて、避け、次に鎧の急所とも言える脇の下に向かって弧を描く。
黄銅色の鎧を被った男の脇から大量の血が出ていく。
それを見た、他の騎士達がガートールードに向かっていく。
ガートールードは騎士たちの繰り出す剣を正確に見極め、それぞれの足の脛を切っていく。
の鎧は現実の鎧と違い、少しばかり、緩い箇所があって助かった。
ガートールード・ムーンは心の底からそう思った。
彼女が胸を撫で下ろそうとした時だ。別の騎士が彼女の背後から剣を振り下ろす。
ガートールードは右方向に転げて、難を逃れ、次に起き上がって、男の首元を貫く。
男はこの一撃によって絶命してしまった筈だ。
ガートルードは確信を持って言えた。
再び前方から攻撃が襲い来る。勇敢な護衛兵は襲ってくる相手のロングソードを避けて、相手の首元を彼女自身の剣によって失血させていく。
血を流して倒れていく相手はいささか、気の毒なようであったが、女王の命を狙ったのだ。ガートールードからすれば、前の世界の陛下の次に忠誠を誓うと考えていた人物。
そんな、彼女の命を狙うのは、死罪に値するのだ。
彼女が荒い息を吐きながら、そう考えていると、
「見事だな、お前さんの剣は」
リーダー格と思われる男が土と返り血に塗れた彼女を見下ろしながら言う。
「だが、所詮はオレの剣には勝てんのよ!〈鋼鉄の聖霊よ!全てを守りし、石の王者よ!我に力を与えたまえ!〉」
その言葉を唱えた瞬間に、男の剣が前よりも一層鋭くなっていく。
男は口元をカタカナの「ン」の字に歪めて、
「冥土の土産とやらに教えてやろう!オレの魔法は鋼鉄と石の慈悲スティール・アンド・ストーン・マーシー!!特性は限界よりも多く剣の力を強くする事だッ!」
男の剣が地面に転がっていた、岩を貫く。これでは、剣で防いでも、鎧で防いでも意味はない。
「限界を超えて、様々な力を斬るのだよ。分かってるか?」
「まさか、魔法を使うとは……」
この世界における魔法は呪文の取得なのであるが、魔法の取得は世界の法律によって、貴族のみとされている。
例え、騎士であっても、平民上がりの人間ならば、魔法は教えられないのだ。
平民の叛乱を塞ぐという名目で……。
「フフフ、平民上がりの人間にはオレが悪魔にでも見えるってのかい?まあ、最後に言い残す言葉は無いか、聞いておいてやるよ」
「お前なんかにヴァレンシュタイン家は負けない!」
人生最後の言葉が前の人生で、別の相手に向かって言った言葉に酷似てしまうとは……。
ガートールードにはつくづく皮肉だなと思った。覚悟を決め、目蓋を閉ざす。
そして、男の剣がガートールードの頭上に振り下ろされようとした時だ。
男の剣と別の剣の音が重なり合う音が聞こえた。
恐る恐るガートールードが目を開けると、そこにはこの世界では馴染みのない服を着た、少年が男の剣を防いでいた。
「小僧、何者だ!?」
「お前なんかに名乗る名前はないッ!」
端正な顔をした少年は続けて、卑劣漢の剣や鎧に向かって斬りかかっていく。
ガートールードが守るべき、主人の姿を確認すると、そこには目の前の少年と瓜二つの少女がガラドリエルを守る姿を確認できた。
ガートールードはその様子を見て、ニッコリと笑い、
「よし、少年!共に戦おう!」
端正な顔をした懐かしい黒髪黒瞳の美男子は首を縦に動かす。
「ちょこざいなァァァァァァァ~!!」
女を狙う小物は剣を振り上げて、二人に向かう。
ガートルードと少年はお互いを見つめ、首を頷かせ、左右に分かれて走り、そして殆ど同時に、男の首元を斬り付ける。
二つの剣によって勢いよく斬られた男の首は首元から血をダラダラと流す肉体を放置して、上空に吹き飛んでいく。
ガートールードはその様子を笑顔で見届けたが、ガートールードとは対照的に少年はその首を見ると、気絶してしまう。
少年の体が地面とぶつかるよりも前に、ガートールードが支えてやる事によって、少年が地面に頭をぶつけて気絶という事態には至らない様だった。
ガートールードが気絶した少年を抱き上げて、主人の元へと向かうと、少年と瓜二つの美しい顔を持つ少女が、少年元へと駆け寄り、
「大丈夫!ねえ、大丈夫なの!?」
「平気だ。どうやら、戦闘でショックを受けて、倒れてしまったらしいな」
が、少女はそんなガートールードの言葉には耳を貸さずに、必死に少年に向かって叫び続けている。
ガートールードは地面に少年をゆっくりと下ろしてやり、少年と少女を放置して、主人に報告に向かう。
ガラドリエルは済ました顔でフフンと頷いてから、
「ガートールード。お前はよくやってくれた。恩に着るぞ」
ガートールードはガラドリエルの言葉をありがたく拝聴し、かつて忠誠を誓った相手を見る時、同様に深々と頭を下げる。
だが、次に主人から放たれた言葉には耳を疑わずにはいられない。
何故ならば、彼女はあの見知らぬ二人を配下に加えると言ったのだから。
「僭越ながら申し上げます!あの二人は確かに、優れた実力を持っておりますが、このまま配下に加えるのは危険が過ぎるかと……」
「仕方あるまい。今は私とお前しかいないのだ。配下を増やすのはやむを得ない事だ。我々が生きるために、仕方がなく、鶏から卵を奪い食するようなものだ」
ガラドリエルの巧みな比喩に感服した、ガートールードはもう言う事はないと、引き下がる。
とにかく、主人があの二人に剣と鎧を与える事を約束したのだ。
自分はそれには逆らえない。部下なのだから。
ガートールードはモヤモヤとした気持ちを抱えて、下がっていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

処理中です...