女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

文字の大きさ
21 / 133

第二十一話 ゴールデンストリートウォーズーその⑤

しおりを挟む
ヴィトはトイレから脱出するやいなや、例の控え室に駆け込む。
「ふぅ、危なかったぜ……それよりも、ルーシーの援軍はいつ来るんだ?」
ヴィトがドアを閉めながら呟いていると、後ろから「もう来てるわよ」という声が聞こえた。ヴィトが振り返ると、そこには全米有数の歌手であるセルマ・アランチーニがヴィトの頭に銃口を突きつけて立っていたのだ。
「そうか、それはありがたいが……どうして、おれはきみに銃を突きつけられなくちゃあならないんだ」
セルマはヴィトに鋭い視線を向けながら言った。
「答えてあげましょうか?あなたがトンプソンで部下を全滅させたから、わたしとフランクはもうあいつらに勝てる手立てがないの、ただし……」
ここでセルマは鋭い視線と口元に浮かべていた冷笑を引っ込め、代わりに満面に笑みを浮かべた。
「あなただけを殺すのなら、簡単よ……いくら魔法を使えようとも、使まるで意味がないんだから、この意味あなたも分かるでしょう?」
セルマはいじらしく笑う。
「ぼくの頭を吹き飛ばす気か?」
「ご名答 !正解よ !高校すら出てないとバカにしてたけど……あなたやるじゃあない、わたし尊敬しちゃうわ」
そんなセルマにヴィトは怯える様子も見せずに、反対にセルマと同等の光り輝く笑みを見せた。
「なら、やるがいいさ、あんたのそのお綺麗なドレスにぼくの残骸が飛び散るんだぜ、戦争では人を殺せば、勲章がもらえるけど……戦場じゃあない場所で撃てば、あんたは今の地位を失い、電気椅子に送られるんだぜ、それでもいいなら、やりなよ」
だが、 ヴィトの挑発するような言葉にもセルマは動じることがなかった。反対にオホホホと笑い出したのだ。
「何も分かってないのは、あなたの方だわ、死体の損傷が酷ければ、誰もわたしがあなたを殺したかなんて分かるはずないわ」
その証拠とばかりにセルマは使っていない片手でワザとらしくライターを鳴らしてみせた。
「まさか……」
ヴィトの驚愕する顔が心底おかしくて仕方がないという感じで、セルマは笑い出した。
「そうよ、ルーシーの奴とカヴァリエーレ・ファミリーの連中が入ってきた瞬間にこの建物を燃やすつもりよ」
ヴィトはセルマのその考えに自分もろともルーシーと俺を焼き殺すつもりかと考えたが、次の言葉でその考えは吹き飛ばされた。
「そうね、わたしは火を点けた後はフランクの背中に乗せてもらって、このホテルから脱出……その後はまた歌を歌うわ」
ヴィトは扉を押さえている疲労と背後から銃を突きつけられている恐怖とで手がブルブルと震えていた。
「あら、あなた怯えてるのね、そうだトドメの一撃といこうかしら」
セルマはライターを一旦ポケットにしまうと、ヴィトから扉を外させるのに充分なことを口走った。
「仮にわたしがあなたを殺した事がバレても、正当防衛が成立すると思うわ、だってそうでしょう?アメリカ一の歌姫がアル・カポネと同じようなギャングの連中に襲われたのだと主張したら、弁護士や陪審員はおろか、判事や検察官までもわたしに同情するでしょうね、わたしは判事や検察官にも大勢のがいるもの」
セルマは悪魔のような声で笑う。ヴィトはとうとう押さえていた手を離してしまう。次の瞬間に世にも恐ろしい吸血鬼が部屋に入ってくる。次の瞬間に大きな悲鳴が部屋に響き渡る。
「やったか」
フランクは下に倒れているだろうと、興奮のためにつむっていた目を開ける。だが、次の瞬間には思わず目を擦らずにはいられない状態にならなくなった。
「なっ、何ィィィィィィィィ~~!」
そう、セルマ・アランチーニが血を吸われて殺されていたのだ。
「驚いているようだな、フランク……」
今度はヴィトがフランクの背後を取った。ドアの側に落ちた剣を回収し、同時にセリアがフランクに襲われた際に落とした拳銃を回収し、フランクの頭に銃口を突きつけていた。
「どっ、どうなってんだ……」
フランクは顔を青ざめるばかりだった。
「目をつむっていたのが仇になったようだな……あんたはおれじゃあなくファミリーの最大の顔役であるセルマ・アランチーニを殺してしまったのさ」
「まっ……まさかッ!」
フランクの頭の中で恐ろしい考えが考え出された。
「そうだよ、今あんたが考えてたのと同じ考えだ……」
「きっ、貴様……ドアが開いた時に倒れたなッ!それで上から飛びかかったおれは……」
「その通り、ちょうどオレの真後ろに立っていたセルマを殺してしまったのさ」
ヴィトは拳銃を突きつける手を強めながら呟く。
「どうするつもりだ?フランク……あんたの兄貴がこの事を知れば、アイツはオレ達を殺す事を放棄して、あんたを狙うだろうな、ミラノリア・ファミリーに最大の損傷をもたらした相手としてな……」
ヴィトのそんな言い方に絶望を感じていたフランクはその結論に手汗を滲ませていた。
「さてと……どうするつもりか、答えてもらうか、あんたを殺せば、もうルカに信頼できる奴はいなくなる……そうなるとミラノリア・ファミリーは落ち目の勢力となり、あんたらの皇帝陛下にルカは粛清される……いや、その前に渡すはずの領土を全て取られた事を怒るコミッション会合の連中が、ルカを全力で叩き潰すかのどっちかだな」
ヴィトのこの言葉にフランクは半ば狂乱状態となり、叫び声を上げ、乱暴に体を動かす。
「しまった……挑発し過ぎたか」
ヴィトは耐えきれずにフランクの頭から銃口を放してしまう。だが、それがいけなかった……。 
「こうなったのも、みんなお前らのせいだッ!みんな殺しやるッ!殺してやるぞォォォォォォ~~!」
フランクはまるでおかしくなった人のように黒のジャックナイフを振り回し、外へと飛び出していく。
「まさか……アイツ !」
ヴィトは最悪の事態に備え、拳銃を手に構え、そして剣を横につけ出口へと駆け寄る。すると次の瞬間にものすごい銃声の音がした。
ヴィトが扉を出て、負傷しているファミリーの構成員の一人に何があったのかを尋ねた。
「どうしたッ!何があったんだッ!」
「ボスが……ドン・ルーシー・カヴァリエーレがコウモリの怪人に連れ去られて……」
ヴィトはその言葉で全てを悟った。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―

ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。 // 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...